インタビュー
[インタビュー]「FFXIV:黄金のレガシー」の見どころは? 吉田直樹氏がファンフェス会場で語った“10年,20年先を見据えた運営と開発の未来”
東京ドームでの単独イベントという,ビデオゲーム史を紐解いても類を見ない舞台で開催された今回のファンイベントは,今夏リリース予定の次期拡張パッケージ「FFXIV:黄金のレガシー」(PC / PS5 / PS4 / Mac / Xbox Series X|S)の最新情報が公開された基調講演や豪華ゲストが登壇したステージ,さまざまなアクティビティなど,来場者や配信を視聴していたファンを,存分に楽しませてくれるお祭りのような催しだった。
「FFXIV」東京ファンフェス基調講演をレポート。南北に広がるトラル大陸,ロスガル女性の王女ウクラマトなど気になる数々の情報が明らかに
スクウェア・エニックスは,1月7日と8日の2日間,同社が開発・運営するMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」のファンイベント「FINAL FANTASY XIV Fan Festival 2024 in Tokyo」を開催した。本稿では,FFXIVプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏による基調講演の詳報をお届けしよう。
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「FFXIV ファンフェスティバル 2024 in 東京」のアクティビティや会場の様子などをフォトレポートでお届け
1月7日と8日に開催されたMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」のイベント,「FFXIV ファンフェスティバル 2024 in 東京」。会場は非常に大きな盛り上がりを見せたが,現地に足を運ぶことができなかった光の戦士も多いと思う。本稿では,会場で撮影した写真を中心として,その模様をお届けしよう。
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さて,2日にわたって開催されたファンフェスだが,初日(1月7日)の閉幕後にメディアに向けて本作のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏の合同インタビューが行われた。黄金のレガシーに関わる話だけではなく,開発,そしてこの先のFFXIVなど興味深い内容となっているので,ファンフェスの興奮冷めやらぬファンも,黄金のレガシーを楽しみにしているファンも一読してほしい。
――久々のリアルファンフェスで世界中をめぐっていますが,東京のDAY1まで終えての率直な感想を教えてください。
吉田氏:
単純に,ファンフェスをリアルで開催できて(※前回はコロナ禍の影響でデジタルファンフェスとして開催した),世界中の光の戦士の皆さんと直接お会いできること自体がものすごくうれしかったです。ファンフェスで直接に会える人の数は全体から見れば限定的ですが,これだけ多くの人たちが遊んでくださって,しかも遠いところから集まって盛り上がってくださるというのは開発者冥利に尽きます。
それと同時に,非常にハードだったコロナ禍を経てここまでこぎつけられたのは,世界中の医療従事者の皆さんが献身的に状況を打破しようとしてくださったおかげだと本当に思っています。今回は改めて感謝の気持ちを込めつつファンフェスを盛り上げていこうという気持ちでやってきました。
新生10年めという節目でこれだけ大きな会場で開催できたことは,開発者人生として最高の思い出になっています。まだハチャメチャの2日めが残っていますが,いまのところはそんな気持ちです。
――新ジョブにピクトマンサーを選んだ理由を教えてください。リルムとクルルのイメージの近さもあったのでしょうか。
吉田氏:
それぞれは別の事象です。ストーリー上の都合もありますが,クルルというキャラクターの成長や心情を考えたときに,きっと暁のメンバー,それから英雄である光の戦士と一緒に肩を並べて前線に出たいという気持ちがすごくあったと思うんです。
いずれかのタイミングで行かせてあげたかったのですが,「暁月のフィナーレ」ではヴェーネスとシンクロする役回りがあり,やるなら「黄金のレガシー」だろうと考えていて。それならジョブチェンジさせて前線に出してあげたいという気持ちがありました。
ピクトマンサーに決めたのは,僕らはジョブで考えるのではなく,ロールを先に考えています。さらにその上にゲームデザインがあり,多くのお客様にいろいろなジョブで遊んでもらうときに,どんなロールを入れることでゲーム全体が盛り上がり,よりマッチングが早くなり,安定して楽しくFFXIVがプレイできるかという点で決めます。
ただ,攻撃を主体にするDPSロールの人気は断トツなので,拡張パッケージで複数のジョブを実装するとなると絶対外せません。タンクとヒーラーはこれまで実装してきて,いまは数的にちょうどいいバランスになっているので,足すなら2ジョブともDPSでいこう。片方が近接ジョブなら,もう片方は遠隔ジョブ。いまのところ同一ロール内に3職しかないのがキャスターなので,キャスターだろうというところから考ました。そこから現状のFFXIVにさらなる面白さ,絵的な魅力を加えつつ,世界中のファンの皆さんの期待に対して応えられるのは? と考えた結果,ピクトマンサーになりました。
もちろん,最初からピクトマンサーに絞っていたわけではないですが,有力な候補の1つとして考えられていました。実際に絵を描くことを攻撃に置き換えられるのか検証をして,アイデアを出し合って,形にできそうだと決まったときに,「じゃあ,クルル(のジョブ)じゃないか?」という流れでつなげていきました。
結果的に,絵や発表を見て,すごくシンクロしていて最初から計画されていたんじゃないかと感じていただけたのであれば,それはチームとしてうまくやれている証拠だと思います。各種の種,ネタ,薄い導線をみんなで手繰り寄せてつないで,一本の太いロープにするというのを繰り返してきたので,チーム力の賜物だと思っています。
――ロスガル女性,および新NPCのウクラマトについて開発時にどのような点を重視しましたか。
吉田氏:
これも先ほどのクルルの話と一緒です。
「黄金のレガシー」は,FFXIVの物語の新たな門出であり,今までにない拡張のスタイル,さらにFFXIVにはいろいろな側面があることをプレイヤーの皆さんにお見せしたいという思いがあり,主人公が主人公じゃなくて,王位継承レースの助力であり,あくまでオブザーバーに近い立場になります。でも,魅力的なキャラクターが王位に就くのを手助けするという物語じゃないと「こんなヤツ,もうどうでもいいよ」となってしまいます。
ウクラマトというキャラクターをどう魅力的に書くか,というところから構成を始めて芯が固まったタイミングと,ロスガル女性も実装してほしいという多くの声に対して約束を守ろうと考え,グラフィックスアップデートもあるなかでグラフィックスのチームがやりますと言ってくれたタイミング。
この2つのタイミングがかみ合うのであれば,もっとも注目度の高い新しい種族にウクラマトを充てて,彼女を通じてロスガル女性というキャラクターの魅力や考え方,種族の集落との関わりを深く描けるので,それらをつなぎ合わせて作り上げました。
彼女はパッチ6.55パート2のメインシナリオから活躍します。これまでにないキャラクターに仕上げていますし,あえて最初から完璧なキャラクターではない描写にしているので,彼女の成長も1つのキーワードだと思っていただけるとうれしいです。彼女の成長を通じて,ロスガル女性という種族が人格を伴った場合にどういった魅力があるのかを表現しています。
――「黄金のレガシー」のメインストーリーは二部構成のようになっているそうですが,途中からまったく違うストーリーが展開していくのでしょうか。
吉田氏:
なんて言ったらいいか……プレイしたあとに「あー,確かに二部構成か」となるような気がしています。もちろん,「黄金のレガシー」自体は一本の物語になっています。ただ,大きなヤマが何度かある中で,ここが分岐点だったな,といった印象を感じてもらえるんじゃないでしょうか。
1つの物語を進めていく中で様変わりする価値観やさまざまなキャラクターたちの葛藤を表現しつつ,同時に世界の命運に対し,急激なハンドルの切り返しにチャレンジしています。ニュアンスで本当に申しわけないですが,新しいFFXIVの側面をお見せできるんじゃないかと。
正直,いままでやっていないことにチャレンジしているので,不安がゼロなわけではないですけれど,(制作で)上がってきているものを見ていると不安よりも期待のほうが高いので,ぜひ次なるFFXIVの展開を楽しみにしていただければと思います。
――大規模戦闘,プレイヤー間交流,QOL(クオリティ オブ ライフ)の充実など,いろいろなプレイ体験がありますが,「黄金のレガシー」で重視した項目は何になりますか。
吉田氏:
いま少し話したように,新たな挑戦,新たな側面をできるだけ感じてもらいたいです。でも,僕はゲームデザインに関しては,新しいことが正義だと思っていなくて。やっぱり面白いが先に来て,かつ新しい。どんなゲームも新しいから面白いじゃないと思うんですよね。
「これは新しいシステムです」と言われても「でも,つまんないよね」と言われたら価値がなくなるじゃないですか。だから,ちゃんと押さえるところは押さえて,安心してこれまでどおりのクオリティを感じられるベースラインをしっかり取る。その上に新しさを感じてもらえるような……先ほどの急ハンドルの展開だったり,コンテンツ1つひとつのクオリティの底上げだったりを今回の目標にしています。
10年前,2013年8月に「新生エオルゼア」をローンチさせて以来の,第二の新生みたいな感覚で僕らは挑んでいるつもりです。ただ新生当時と比べて,はるかに我々は経験を積ませていただいているので,3倍,4倍のしっかりしたゲーム体験をお届けできる思っています。楽しみにお待ちください。
――「新生エオルゼア」からの10年間で,スキル,ジョブ,ボスの効果やギミックなど,さまざまなゲームデザインが実装されてきましたが,FFXIVは新コンテンツを追加するたびに,プレイヤーに新鮮な驚きと面白さを提供しています。こうしたデザインのアイデアがどこから生まれているものなのか,アイデアが枯渇しないために気を付けていることがあれば教えてください。
吉田氏:
どこからアイデアが出るかは答えづらい質問です。これだけ巨大なゲームになってくるとゲームデザインを一言ですべて語るのは難しくて。
ゲーム全体のかじ取りは僕がディレクターとしてやっていて,次に挑む世界はこうだ,そこで訴えかけるべきテーマはこれで,こういうフィーリングをプレイヤーの皆さんに与えるんだ,という話を全体のゲームデザインとして伝えます。
その中にストーリーを作り,各コンテンツを配置していくのですが,僕は各担当に裁量を大きく渡すタイプのディレクターなので,コンテンツ中のゲームデザインの企画が上がってきた段階でブレスト(ブレインストーミング)のすべてを確認します。それが仕様になったらもう一回チェック,実機で仮実装されたら,バランス調整が実装されたら,最後に通しで……と,チェックは細かくやりますが,面白ければいいんです。
バランスはなんとかみんなで取るから,とにかく面白いと思うものを作ろうというのが,FFXIVチームがずっとやってきたことです。
そして,新しいスタッフもできるだけ重用していく……と言うとカッコいいんですけれど,第三開発事業本部は下剋上気質でして,バイトから入っても3年も経ったらサブリーダーという人もいるんです。年齢は関係なく,本当に面白いものを,しっかりしたコスト感覚で,いろいろな人に支えてもらいながら作れるというのは本当に得難い才能です。そういう人たちのアイデア,チャンスを先輩たちのサポートを受けて形にしてきたので,常に新しい,新鮮さがあるのかなと思っています。
それともう1つ,実はFFXIVをMMORPGだと思って作っていると,おそらくアイデアは枯渇していたと考えていて,ここは「ファイナルファンタジー」で幸いだったと思います。
やはり日本人は,とくに開発の主力世代はMMORPGやオンラインでゲームを遊び始めたわけじゃなく,(オフラインの)家庭用ゲーム機での体験で育ってきた人がまだまだ多いです。そんな彼らの(体験からくる)アイデアをMMORPGにしたときにどうなるかというチャレンジは,意外とMMORPG業界ではやれていないんです。
ここがFFXIVの強みで,(シングルプレイの)FFだったらどうするだろう,新しいFFとしてこんなことをやったら面白いね,と考えて「MMORPGでどう実現しよう」となる。それが,もしかしたらアイデアが枯渇しない秘訣なのかなと思います。
なので,世界中で素晴らしいゲームが出れば,うちの部はみんなゲーマーなので(その体験から)結果的に我々もアイデアが枯渇しなくなる(笑)。ゲームだけではなく,漫画もアニメも含めてアイデアは出てくるので,これからも続けていきたいと思います。
――「紅蓮のリベレーター」からプレイを始め,いままでFFXIVを本当に楽しくやっていて,今回のファンフェスティバルに来られて良かったです(※質問者は韓国から来日したメディア関係者)。新生から10年,FFXIVをもっとも人気のあるMMORPGの1つ,さらに1つの文化にしました。新生から黄金のレガシーを経て,FFXIVを1つの文化にできたと思いますか。
吉田氏:
僕の中には文化という大それた感覚はなく,あくまでゲームを作り続けている。単純に世界中の人たちが一緒に遊べる公園,カッコよく言えばテーマパークですが,それを近所の子供たちで集まって,ひたすら遊びを考えて,いろいろな人に遊んでもらうためにひたすら作り続けているという感覚です。
たしかに,メタバースの成功例に近いと言われたり,メタバース業界から講演してほしいといった話が来たりはするんですけど,あんまりそういう感覚はなく,僕らはあくまでゲームでありエンタメだと思っています。
だから,これからも変わらず,10年は節目ではあるんですけどまだまだ通過点なので,もっと遊びきれないようにしようと考えています。
と言いますか,この遊びきれないという感覚は,果てが見えているから遊びきれないものだと思っているんです。例えば宇宙の果ては分からないから,星なんて数えるのをやめるじゃないですか。それでも天文学者は数えるんですけど(笑)。
でも,こんなにたくさんのコンテンツがあって遊びきれないという発言は,カウントできる程度に果ては見えている。全部遊ぼうなんて感覚にならないぐらい(の数)にして,いつ始めてもらってもいいし,いつお休みしていただいてもいい,いつ帰ってきてもらっても変わらずワイワイ楽しめる世界をこれからも作っていこうと思っています。
だからあんまり綺麗な言葉とか,堅苦しい言葉は僕にもチームにも必要ないので,とにかく面白い,楽しい,この世界いいねと言ってもらえるようがんばります。
――1月16日に早くも公開となるパッチ6.55について,物語やコンテンツの見どころをそれぞれ教えてください。
吉田氏:
これまでのメインシナリオのパート2は,わりとあっさりとした印象があったと思うんですけど,今回はウクラマトの魅力を描くために,けっこう遊べるように作ってあるので,普通にプレイしても2時間以上はしっかりメインを楽しめます。キャラクターたちのかけあいや突っ込みあいといった,ちょっとコミカルな側面もお見せできるかな,と。
あとは「帰ってきたヒルディブランド」が完結して,帰ってきたのにまたいなくなるのかどうか,そしてローポリヒルディことブラディヒルンドの運命がどうなるか,ぜひご注目いただきたいです。我々がアホなノリを全開で突っ込み,リテイクまでして作りあげたヒルディの完結編をぜひ楽しんでください。
そのほかにも,断続的にパッチ6.57や6.58も準備していきますので,「黄金のレガシー」が出るまでの間,いろいろなコンテンツを楽しんでいただければと思います。
――「黄金のレガシー」に関する新発表について,ファンの反応はいかがでしたか。
吉田氏:
僕自身,「暁月のフィナーレ」でハイデリン/ゾディアークのサーガが,あそこまで完璧に,綺麗に終わって「Fin」と出せるとは思っていなかったんですよ。これはみなさんも感じてくれたこともかもしれませんが。え,マジで終わったんだけど。めっちゃスッキリしたし,これからどうすんだろ? と。
ただ,これは終わらせるからこそ得られるもので,「新生エオルゼア」から石を積み上げてきたからこそのクライマックスと,それを一気に倒すカタルシスだと思うんです。
開発にはよくドミノに例えるんですけど,「新生エオルゼア」から1個1個みんなでせっかく並べてきたけど,ドミノは倒さないとカタルシスが得られない。1回めのドミノは全部倒したんで,さあ2回めをまた並べていくぞ,というのが「黄金のレガシー」の出発点となります。
ただ,あれだけのクライマックスを体感したからこそ,人は本来だとさらなるクライマックスを求めるんです。よく昔の(週刊少年)ジャンプで例えるんですけど,「もう果てがない! 宇宙で戦ったから次はどこにいくんだ」と,どんどんインフレしていきます。
そのインフレを1回リセットして,戦うべきものは強さだけじゃないというところを(FFXIVで)出したい。それがあるからこそ物語をこの先何年も,それこそまた10年も続けていけます。
(暁月をプレイした)プレイヤーさんの満足感の中で,その一歩めに対しては期待感と不安感が入り混じっていたはずです。でも,ファンフェスでいきなり「ラスボスはコイツです! すごい話なんで期待してください!」とは言えないので(笑)。
ファンフェスの1回め,2回めで,期待感を抱いてもらえるよう情報出しに気を付けて「自然地形の中での,のびのびとした冒険なんだな」みたいなイメージを作り,それを一気にバーンと「なんだこれ,全然思っていたのと違う。どうなるんだコレ!」という演出ができたと思います。
僕の今日の日程が過密すぎて(発表に対する)皆さんの反応はそこまで追えていないんですが,空き時間で拝見した限りではすごくポジティブにいろいろな要素を楽しみにしていただいているので,ひとまず大満足しています。
――友好部族の紹介画像でペルペル族の隣にいるアルパカが気になります。マウントなどとして登場するのでしょうか。
吉田氏:
開発チーム内でアルパカが大人気でございまして(笑)。なぜかと言うと,今回ついに実装された“ファーシェーダー”,いわゆる毛並みを表現するシェーダーが思う存分に使われていまして。それだけ愛でられているキャラクターというか生き物ですので,おそらく光の戦士を乗せて大地を駆けるでしょうし,なんだったら空も飛ぶんじゃないかなと思っています。
――世界中の光の戦士に向けて,「黄金のレガシー」の前にやっておいたほうがいいことがありましたら教えてください。
吉田氏:
大丈夫です,ないです。
これは僕がいつもコンセプトにしているのですが,拡張が来るからこれをやっておかなきゃ,あれをやっておかなきゃは,ゲームにのめり込んでいるうちはいいんですが,疲れたとき急につらくなるんです。あれもこれもやらなきゃいけないとなると,拡張に対するモチベーションも上がらないと思うので,別に何もご用意していただかなくても大丈夫です。
アイテムレベルも,皆さんよくご存じのとおりレベルキャップが開放されると大きく変わりますので,装備が中途半端な状態でも全然問題ありません。クエストやサイドクエストをやっていくだけで,装備もどんどん溜まっていきますし,事前情報を追わなくても完全新作RPGとして楽しんでいただけるように我々は作っています。
今回,とくにグラフィックスアップデートによって,さらにキャラクターメイクにこだわる要素も出てくると思うので,何も考えずにストレートに遊んでいただければと思っています。
というのがディレクターとしての答えなんですけど,プロデューサーとしてはもちろんもっと早く,いまアカウントを止めている方は復帰してもらって,準備してもらったほうが我々的にはうれしくあります(笑)。
例えばお友達との再会とか,今のシステムに慣れておくとか,そういうことのために拡張で復帰するぞと思っている方は,1か月前と言わず2か月前,2か月前といわず3か月前から,ゆっくり体を慣らしていただければ幸いです。
――10周年おめでとうございます。FFXIVの次の10年に向けて何を見据えていますか。また,20,30年先のことかもしれませんが,引退や世代交代など運営の引継ぎについてお考えになられることはありますか。
吉田氏:
まさしくさっきお話ししたとおり,1回めのドミノ倒しを壮絶に気持ちよく我々もやらせていただいたので,しっかり次の最高になっていくであろうドミノを1つずつ並べて積み上げていきたい,というのがいまの感覚です。
とはいえ,まだ「黄金のレガシー」は開発中ですし,ファンフェスも明日(1月8日)がまだ残っていますが,いま僕の頭の中には「黄金のレガシー」以降の展開が,もうある程度どっちへ行こうかと思い付きはしているので。まあ,9.0くらいまでは,今のまま僕がやっていてもアイデアは枯渇せずに行くんじゃないかと思います。
これについては自分の頭の中にしかなくて,あまり先のことをスタッフに言っても逆にやりづらくなるかもしれないので,今を全力でやったうえで,僕がそのイメージしている次の,さらにその先の展開に向けてかじ取りを調整しながら進んでいくつもりです。なので,引き続き安心してFFXIVという船に乗って,一緒に航海をしていただければと思います。
一応,ライフワークというふうにお話しさせていただいているので,ゲーム業界から引退するまで……スクエニをクビになったら関われない可能性がありますけど,それでもスクエニと契約して関わることはできると思うので,ゲームに関わっている限り,FFXIVはしっかり僕ができることを全部やり切っていこうと思っています。いまの決意としてはそれぐらいですね。
20年後,30年後は……僕,太く短く生きたい人間なので死んでいる可能性もあるんですけど。別に病気を抱えているわけじゃないですが,仮に今すぐ僕が倒れてしまって,意識がなくなったとしても,FFXIVチームはもう大丈夫です。
たしかに,この東京ドームのステージで,これだけのお客様を前にして拡張の話を2時間ひたすらプレゼンできる人材がいるかと聞かれると,それは無理だと思います。でも,何人かで分担してやれば,同じような興奮や情報のお届けは,今のチームなら間違いなくできます。ディレクション,ゲームデザインに関しても今の方向性は,ごく一部の人間に軽く話しています。
今の僕がFFXVIのプロデューサーとFFXIVのプロデューサー兼ディレクターの両方をやれたのも,僕の機能をどんどん持っていってくれてる人たちがいるからです。もちろん人の三倍は働いている自負がありますけど。なので,この瞬間,僕が倒れたとしてもプロデュース部分はチームとして成り立つし,ゲームデザイン,ゲームディレクション部分に関しても数人で全然やれると思います。
唯一変わるとしたら,僕の言うアホみたいなことを実現しようとする人がいなくなる可能性はあります。逆に,僕が重しになって,それができない人たちだってかなりいるはずなので,そういった新しいアイデアが出るチャンスかなとも思います。
20,30年は(FFXIVを)続けられるぐらい,本当にチームが育っています。僕がちょっとキャラ的に強烈なのもあって「吉田さんと比較されるから前に出たくない」というのは当然だと思います。みんなはゲームを開発するのが仕事で,前に出るのは仕事じゃないから「そこはいいよ,俺がやれるかぎりはやるから」と話をしています。
とはいえ,チームは皆さんが思っている以上に強くたくましく成長していて,当面何があってもFFXIVは安泰なので,ぜひ安心してプレイしていただきたいと思います。仮に僕がゲーム業界を引退しても大丈夫です。1プレイヤーとして,ずっと開発チームに文句を言う役を僕が引き受けますので(笑)。
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