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BenQのディスプレイ担当者に直撃取材。ゲーマー向け新製品「XL2420TE」の特徴と,将来のゲーマー向けディスプレイが目指すものを聞いてきた
XL2420TEのポイントは144Hz対応,
応答速度1ms,フリッカーフリーバックライトの3点
既報のとおり,XL2420TEはBenQのゲーマー向け液晶ディスプレイ上位モデルであるXLシリーズの新製品で,24インチサイズ,解像度1920×1080ドットのTNパネルを搭載する「XL2420T」の後継機種に当たるものだ。
XL2420Tからの変更点は,垂直リフレッシュレート144Hzに対応することと,中間調応答速度が1msに高速化されたこと,そしてフリッカー(チラツキ)がなく,長時間見続けても目が疲れにくいと謳われる「フリッカーフリーバックライト」を採用したことの,3点に絞られる。
逆に,それ以外の仕様,たとえばFPS向けの画質設定「FPSモード」の搭載や,外付けOSDメニューコントローラ「S.Switch」の付属,ディスプレイの角度や高さ調節機能を備えたスタンドといった点は,XL2420Tからそのまま継承しているとのこと。つまりXL2420TEは,前モデルから液晶パネル周りの仕様を強化したものと理解しておけばいい。
外付けのコントローラS.Switch(左)や,上下の傾き(チルト),左右の向き(スイーベル),高さや画面の回転が可能なスタンド(右)といった特徴は,前モデルからそのまま継承している |
XLシリーズの特徴であるFPSモードを,XL2420TEでも試してみた。左は画質設定「標準」の状態で,右が「FPS2」の状態。画面左側のマーカーが映っている屋台のあたりを見ると,暗部が明るめに描写されているのがわかる。元々明るい部分も明るくはなるものの,白飛びするほどではなく,違和感はあまりなかった |
変更点の中で,今ひとつ従来製品との違いが分かりにくかったフリッカーフリーバックライトについても,詳しい説明がなされた。フリッカーフリーバックライトはBenQのゲーマー向けディスプレイの中では,XL2420TEと,ゲーマー向け下位モデル「RL2455HM」に採用されている。
XL2420Tまで採用されていたLEDバックライトは,その制御にPWM方式(パルス幅変調方式)という仕組みを採用していた。
おおざっぱに説明すると,この仕組みではバックライトの輝度を最大にした状態では,常に点灯したままになるのでフリッカーが生じないが,輝度を少しでも下げると,高速にオンオフを繰り返して点滅をするようになる。輝度を下げれば下げるほど,バックライトがオフになっている時間が長くなり,結果的にフリッカーが目立つようになるという。
液晶ディスプレイのバックライトを輝度最大で常用するという人は少ないだろうから,我々は知らず知らずのうちに,フリッカーを目にしているというわけだ。
これに対して,フリッカーフリーバックライトを採用した液晶ディスプレイでは,
会場では実際に,通常型のバックライトを搭載する液晶ディスプレイと,フリッカーフリーバックライトを備える液晶ディスプレイを並べて,両ディスプレイの手前に小型扇風機を置くことで,フリッカーを視認しやすくした状態でのデモが行われていた。なるほど,通常型では輝度が最大ならば,フリッカーは見られなかったが,輝度を下げる少し下げただけで,フリッカーが見えるようになった。一方のフリッカーフリーバックライト搭載機では,そのような現象はまったく起こらない。
ゲームをプレイする際には,長時間にわたって画面を見つめ続けることが多いだけに,フリッカーの存在は気付かないうちに,目を疲労させる原因になっているかもしれない。「最近ゲームをしていると,目が疲れることが多いな」と感じている人にとって,フリッカーフリーバックライトを搭載するXL2420TEは,目をいたわりながらプレイするのに役立つかもしれない。
VAパネルとフリッカーフリーバックライト採用の
CAD向け27インチ液晶ディスプレイも発表
ゲーマー向け製品以外に,ベンキュージャパンは9月12日に,27インチサイズ,解像度2560×1440ドットのAHVA(Advanced Hyper Viewing Angle)パネル採用の液晶ディスプレイ「BL2710PT」を,9月27日に発売すると発表している。メーカー想定売価は7万5800円前後だ。
CAD向けを謳うだけあって,中間調応答速度は4msと,ゲーマー向け製品に比べれば速くはないものの,スタンドはチルトやスイーベル,高さ,さらに画面の回転(ピボット)も可能で,使用環境に合わせた位置や向きに調節できる点が特徴である。
27インチサイズで解像度2560×1440ドットのBL2710PT。ピボット機能を備えており,27インチの大きな画面を縦位置で表示できる |
また,Windows用のアプリケーションとして,画面の回転を検知すると,追従してデスクトップ画面を回転させたり,デスクトップを仮想的に分割して,複数のアプリケーションを任意のサイズや位置で表示させる機能を持つ,「ディスプレイパイロットソフトウェア」というものも付属している。
画面の回転はそう頻繁には使わないだろうが,このアプリケーションが持つ画質設定の切り替え機能などは,頻繁に画質設定を切り替えたくなるゲーマー向けディスプレイでも役立ちそうに思える。ゲーマー向けに改良したものが提供されると,S.SWitchを持たないRLシリーズの液晶ディスプレイを使いやすくできるのではないだろうか。
来日したBenQのディスプレイ製品担当に聞く
XL2420TEと「将来の製品」
今回の内覧会には,BenQでディスプレイ製品の開発に携わるScread Liao(スクリード・リャオ)氏に,国内発売されたばかりのゲーマー向けディスプレイ最新作,XL2420TEのポイントについて話を聞くことができた。氏の口からは,BenQが開発している将来のゲーマー向けディスプレイに関する情報も飛び出してきたので,以下,まとめてお伝えしてみたい。
4Gamer:
お久しぶりです。さっそくですが,XL2420TEについて聞かせてください。
今回の新製品は,「XL2420T」のマイナーチェンジと理解していますが,上位モデルなのでしょうか。それとも後継製品ですか。
Liao氏:
後継製品です。
4Gamer:
では製品名末尾にある「E」は何の意味なのでしょう?
「Excellent」(エクセレント,優れていること)の意味ですね。144Hzのリフレッシュレート,フリッカーフリー,そして1msの応答速度という新要素があることから,末尾に追加しました。
4Gamer:
その144Hz化ですが,すでにASUSTeK Computerが実現していますよね。我々も試したのですが(関連記事),正直なところ,今ひとつメリットが分かりませんでした。
Liao氏:
144Hz化のメリットは,120Hzと比べて,動きが滑らかになることです。おっしゃるとおり,一般的な人だと,その違いは感じないかもしれません。ですが,プロゲーマーやコアゲーマーは,その違いを感じられるのです。
4Gamer:
今回もプロゲーマーとのコラボレーションというか,共同開発はされているんですよね。今回,一緒に開発したのは誰なのでしょうか。
Liao氏:
NiP(Ninjas in Pyjamas)ですね。
4Gamer:
ああ,HeatoNとの関係は現在も続いているんですね。確かに彼らなら違いが分かるかもしれません。
フリッカーフリーはいかがでしょう。
Liao氏:
ご存じのように,プロゲーマーは長い時間をゲームの練習に費やします。そのとき,輝度を100%にするということはありません。そうなると,従来のゲーマー向けディスプレイでは,どうしても画面のちらつきが出て,目が疲れやすくなるのです。XL2420TEにおけるフリッカーフリーの実現は,この問題への解決策となります。
4Gamer:
1msの応答速度というのは,どのように実現したのでしょうか。XL2410Tでは1msでしたが,これは確か「AMA」(Advanced Motion Accelerator)によるものでしたよね。
Liao氏:
今回も,AMAによって実現しています。
4Gamer:
XLシリーズの「XL2720T」や,RLシリーズの「RL2455HM」だと,AMAの設定は「オフ」と「高」「プレミアム」の3つがありました。そしてXL2720TとRL2455HMは中間調の応答速度が1msと,XL2420TEと同じですね。つまり1msというのは,AMAの「プレミアム」を選択することで実現できるという機能という理解でいいのでしょうか。
Liao氏:
はい。「オフ」で5ms。これがパネルのスペックで,「高」で2ms,「プレミアム」で1msとなります。
4Gamer:
我々のテストだと,XL2720TやRL2455HMで「プレミアム」にすると,むしろ残像感が増したような印象も受けるのですが……。
Liao氏:
確かに,「プレミアム」では,そういう副作用が出ることがあり,実際,2msのほうがよいという方も多くいらっしゃいます。そのため,「高」と「プレミアム」の両方を用意して,よいほうを選んでいただく形にしてあるのです。
4Gamer:
なるほど,そういうことだったのですね。
しかしそうなると,パネルの特性自体は,XL2420Tとそんなに大きくは変わっていないような気がするのですが。
Liao氏:
パネル自体は,XL2420Tで採用していたものと同じものですね。
4Gamer:
となると,144Hz対応というのは,オーバークロック的な手法で実現しているのでしょうか。それとも,パネル自体がもともと144Hzに対応していて,今回はそれを制限せずに使っているのですか。
Liao氏:
XL2420Tで採用していたパネルも,それ自体は144Hz駆動に対応していました。
しかし,回路上の問題があって,144Hz駆動時に不安定さを招いていたのです。今回のXL2420TEではその問題を解決できたため,144Hz駆動対応としています。
4Gamer:
やはりそうなんですね。やはり全体として,XL2420TEはXL2420Tのブラッシュアップ版といった感じですね。
となると気になるのは,当然開発されているであろう,次世代モデルなのですが,何かヒントをいただくことはできますか。
Liao氏:
XL2420TEの144Hz対応と1ms化で,性能面では十分なところに達したと思います。そこで次の世代では,「Motion Blur」(モーションブラー)の低減に力を入れる予定です。
4Gamer:
Motion Blurですか。それはいわゆる残像感とは違うんですか。
Liao氏:
この「視点を大きく動かすときのブレみたいなもの」がMotion Blurで,それを低減することで,視点を大きく動かしたときにもくっきり捉えて,敵を察知できるようにしようと。
4Gamer:
動的に,「Black eQualizer」(※BenQのゲーマー向けディスプレイに搭載されている,暗部の視認性改善機能)みたいな機能を提供するイメージですか。
Liao氏:
Black eQualizerと同じかはともかく,センサーを使って「動的に」対応するという点ではそのとおりです。
4Gamer:
それは面白いですね……。
Liao氏:
いままさに開発中なので,最終的に「次世代モデルに搭載するか」も決定していませんし,詳しくもお話しできませんが,現在,プロゲーマーと「どんな設定がいいのか」を調整しています。
4Gamer:
機能的にはいかがですか。
Liao氏:
S.Switchの改良は検討しています。「何が」はお話できませんが,改善されることだけは間違いありません。
4Gamer:
次世代,それ以降の製品で採用する液晶パネルについても聞かせてください。昨年,シンガポールでも似たような質問をしましたが,IPS方式やVA方式の液晶パネルを搭載するゲーマー向けディスプレイの可能性はどう考えていますか。
Liao氏:
XLシリーズでは,垂直リフレッシュレート120Hz以上が必須ですけれども,IPSパネルにはこれを満たすものがありません。VAだと,弊社グループの(パネルメーカーである)AUOにはありません。シャープさんが持っていますが,シャープさんは医療用と位置づけていて,非常に高価です。一般的なユーザーが購入できる120Hz対応パネルとしては,TNしかないという状況に変わりはありません。
4Gamer:
なぜ繰り返し質問させていただいたかというと,個人的には,120Hzや144Hzパネルの将来が不安なんですね。これらのパネルは,NVIDIAの「3D Vision」を契機として市場に出てきたものの,3D Visionは事実上の失敗に終わっています。となると,今後も製造され続けるのか,進化していくロードマップがあるのかと,どうしても気になってしまうのですが。
Liao氏:
XLシリーズで採用しているパネルはAUOのものです。なので,供給の心配はありません。安心してください。
もちろん,もしIPSやVAで,120Hz以上のリフレッシュレートに対応に対応したものが出てくるなら,採用の検討はしますけれども。
4Gamer:
新しい製品ということでは,BenQさんが「ゲーム機向けディスプレイ」を用意していないことが気になっています。次世代機も出てきますし,そろそろ……なんてことも思っているわけですが。
Liao氏:
来年には,ゲーム機向けの液晶ディスプレイを出せるでしょう。
4Gamer:
なんと! それはXLシリーズとは違うシリーズになるんですか。
Liao氏:
ええ。ゲーム機とPCでは,求められる要素がちょっと違うんですね。たとえばサウンド面では,スピーカーやサウンド入出力端子をどうするかといった要素です。そのためシリーズを分けます。
4Gamer:
つまり,HDMIでビデオとサウンドを同時に入力するのが大前提となるので,入力されたサウンドをディスプレイ側で鳴らすのか,あるいはどうやって外部機器に出すか,という話ですね。
Liao氏:
内蔵スピーカーが欲しいという意見はあるんですが,ご存じのとおり,一般的なディスプレイに内蔵されるスピーカーって,音が……じゃないですか。ならば,外に出すかどうかといったことを検討しています。
4Gamer:
最後に,額縁に関してはいかがでしょう。最近は,額縁がないようなデザインのディスプレイもよく見られるようになってきました。
Liao氏:
ゲーマー向け以外の製品では考えられますが,ことゲーマー向けに関していえば,採用は考えていません。ゲーマーにとっては,OSDの操作しやすさが重要です。XLシリーズのタッチセンサーのような。でも,額縁をなくしてしまうと,指を筐体の裏まで回して,手探りで操作しなければならなくなりますよね。
あと,重要なこととして,我々のゲーマー向けディスプレイは持ち運びに耐えねばなりません。それだけの強度を確保しようとすると,超狭額縁,あるいは額縁レスというのは現実的ではないですね。
4Gamer:
まさか,将来の製品についてもいろいろ聞かせていただけるとは思っていませんでした。本日はありがとうございました。
(取材記事担当:小西利明,インタビュー担当:佐々山薫郁)
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