インタビュー
最新作「BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA」で,アークシステムワークスは何を目指すのか。稼働初日の秋葉原で森Pに聞いてみた
ブチ投げ,舞って,破壊する。新たに参戦するキャラクター達
■姐さんホットパンツァー「バレット」
システム面での変更は大体分かりました。次はキャラクター,とくに新キャラクターの3人について,コンセプトなどをお聞かせください。先ほどはバレットの人気が高そうとのことでしたが……。あの尋常じゃないローライズのホットパンツは,いったい誰の趣味なんですか!
森氏:
もう,完全にデザインを担当した加藤(本作のグラフィックス担当 加藤勇樹氏)の趣味です!
4Gamer:
断言しましたね(笑)。確か,石渡さんもホットパンツ好きじゃなかったですか?
森氏:
そうそう,石渡のホットパンツ好きがヤバいんですよ。あいつ「ミニスカよりもホットパンツの隙間にできる影がたまらない」とか言ってましたから。あいつの昔のイラストを見たら,確かにホットパンツが多かった(笑)。
4Gamer:
今回の新キャラクターは,どれも加藤さんのデザインということでいいんでしょうか。
森氏:
そうですね。本作では加藤がほとんどデザインを起こして,それを僕が描くという形です。だから,CSのときとはちょうど反対ですね。
4Gamer:
CS2までのキャラクターは,おおむね森さんが手がけていらっしゃいましたよね。
森氏:
ですね。ハザマまでが僕で,ツバキ,ヴァルケンハインが加藤です。あ,あとマコトも僕ですね。ちなみにプラチナは僕が描いたデザインを,加藤にブラッシュアップしてもらいました。僕が描いた時は普通のツインテールキャラだったのに,いつの間にかハート型のステッキを持ったキャラになっていたという。
4Gamer:
あれ,最初はステッキじゃなかったんですか?
森氏:
初期デザインでは,ハンマーを持たせるつもりだったんですよね。「無兆鈴!」って叫びながら,巨大ハンマーでバコーン! って感じだったんですけど。
4Gamer:
それはそれで面白そうですけど(笑)。
すいません,バレットに話を戻させてください。格闘ゲームとしてのバレットは,どんなコンセプトでデザインされたのでしょう。
森氏:
バトルデザイン的には,バレットはCTを作ったとき,テイガー用に考えていた「Dボタンで投げる」というコンセプトを元にしているんです。そのコンセプトは,最終的には「投げキャラ使いは一回転コマンド入れたいだろう」という理由で,テイガーに採用されなかったんですが,そこで考えたものが,今のバレットに反映されています。
4Gamer:
バレットは,確かにあまり投げキャラっぽくないビジュアルではありますね。
森氏:
そうですね。ガードを崩すための投げではなく,いわゆる打撃投げ――打撃のヒット後に相手をロックするタイプの投げを使うので。だから厳密に言えば,「投げキャラ」とはちょっと違うかもしれない。
4Gamer:
そうはいっても,レバー回転系のコマンドがあると,やっぱり投げキャラなのかって気もします。なにせ計7回転のコマンド持ちですから(笑)。
森氏:
業界初でしょう? そういったゲーム的な側面はもちろん,ストーリー的にも姐さん的なキャラが欲しくて,今のバレットになりました。なので,性能だけでなく見た目や性格的といった面でも,わりとすんなりと決まったキャラですね,彼女は。
4Gamer:
同じ投げキャラということで,テイガーとの絡みが気になりますね。
森氏:
フフフ。遊んでもらえば,バレットがなぜ投げキャラなのか分かるはずです。ぜひお楽しみに(笑)。
■声優・杉田智和氏のアイデアから生まれた石田キャラ「アマネ」
では,続いてアマネについてはいかがでしょう。個性が強い3人の中でも,ある意味突出して目立つキャラですが……なんでも原案は杉田さん(ラグナ役の声優 杉田智和氏)だとか?
森氏:
そう。彼がいくつかのネタを持ち込んでくれて,その中にアマネの元となるコンセプトがありまして。もともと僕が考えていたキャラに近い部分があったので,採用することにしました。ドリルに変形する布を振り回して戦うというアイデアには,キラリと光るモノがあるなと。
4Gamer:
しかし,なぜ声優であるはずの杉田さんが,ネタの持ち込みを?
森氏:
そんなの知らないよ! いきなり「考えました!」ってメールが来たんだから(笑)。
最初の方なんか,かなりふざけたキャラが書いてあったから「いい加減にしろ!」とか思ったけど。でもアマネの案はすごく面白かったので,スタッフとしっかり話し合ったうえで採用を決めましたね。
4Gamer:
「ぼくのかんがえたさいきょうのキャラ」を臆面もなく提出できる杉田さん,スゲえ!
森氏:
ま,最初に杉田くんが持ってきた案のままだったら,かなり扱いづらいキャラになってたと思うけど。そのあたりはウチでブラッシュアップして,しっかり遊べるキャラに仕上がってます。会議にもしっかりと杉田くんを呼んで,話し合ったから。
4Gamer:
見た目やキャラクターの設定も,杉田さんのアイデアですか?
森氏:
「アマネ」という名前だけ最初に決まっていましたね。フルネームで「アマネ=ニシキ」と名付けたのは僕です。ああ,声優に石田 彰さんを使うというのも杉田くんからの提案ですね。僕としても,あの見た目なら石田さんの声が合うだろうなと思ったし。
4Gamer:
最初はもっとオカマっぽいキャラなのかなと思ったんですが。
森氏:
その点も,杉田くんとの話し合いで決めたんですよ。あんな見た目だけど,性格はチャッキチャキなキャラにしたいって。でもそこはたぶん,僕が一人で決めたとしても,今の形になってたと思います。ジンを見てもらえば分かるとおり,見た目そのまんまのキャラって,僕はあまり好きじゃないので。
4Gamer:
杉田さんの初期案では,どんなコンセプトのキャラクターだったんですか?
森氏:
簡単にいうと「ドライブでガリガリと体力を削っていくキャラ」でしたね。実際の対戦でも,アマネは「削り」を意識して戦ったほうが,強いと思いますよ。
4Gamer:
おお,コンセプトどおりに具現化されたわけですね。見た目やボイスからは,女性人気も高そうな気がします。
森氏:
うーん,戦うときの「距離」がすごく大事なキャラなので,やっぱり初心者が扱うのは,ちょっと難しいかもしれない。普段格ゲーを遊ばない女性プレイヤーには,もしかしたらハードルが高いかも。その「距離」さえ掴めれば,相当強いはずなんだけど……。
4Gamer:
キャラ愛が試されるキャラクターだと?
森氏:
そう。でも実際どうなるかは,フタを開けてみないと分からないですね。ハザマも,僕は当初かなり難しいキャラだと思ってたんだけど,九州でハザマ使いの女の子にボッコボコにされた過去がありますから。やっぱりすべては愛なんですよ(笑)。
■森P待望の正統派ガチムチキャラ「アズラエル」
では3人目,アズラエルはどうでしょう。先の2キャラとは違って,すごく格闘ゲームらしい,豪快なキャラクターという印象を受けますが。
森氏:
そうそう。BLAZBLUEシリーズって,線の細い連中が多いじゃないですか。そろそろ根っからの筋肉マッチョがほしかった。それがアズラエルです。見てのどおり正統派のガチムチで,ぶん殴ってぶっ壊しながら突き進んでいくタイプです。
4Gamer:
まあ既存キャラでも,バング殿なんかはマッチョキャラかもしれませんが……正統派かというと,違うでしょうね。なにせ忍者ですし(笑)。
森氏:
アイツは一応服を着てますからね。そりゃアストラルヒート決めれば,フンドシ姿になるけども。アズラエルはもっとこう……ビスケット・オリバ(板垣恵介氏の漫画「グラップラー刃牙」に登場するキャラクター)みたいなマッチョなんだ。戦闘スタイルも,見てのとおり武器を持たず,下手な小細工もなしで,とにかくブン殴る。リボルバーアクション※のコンボルートも,ほかのキャラとまったく違うから,プレイフィールもかなり異色に感じるはずです。
※リボルバーアクション……キャラクターごとに決まった順番でボタンを押すことで,通常技を連続で繰り出すゲームシステム。いわゆるチェーンコンボ。
4Gamer:
パワーでガンガン押し込んでいけるキャラ,ということですか。
森氏:
うん。3連続で入力するコマンドがあるんで,初心者が使うには少しとっつきが悪いけれど,それさえ慣れてしまえばガンガン行けます。コマンドが難しいなら,操作タイプをスタイリッシュにすれば,連打だけでも大ダメージがとれるのでオススメですね。アマネもさっきちょっと難しいって言ったけど,スタイリッシュで戦うなら,初心者でもぜんぜん行けますよ。
4Gamer:
初心者でなくても,新しいキャラクターを始める時に,基本的な動かし方やコンボなんかを覚えるのにスタイリッシュでプレイしてみると,分かりやすいかもしれませんね。連打だけでオススメコンボが出るわけですから。
森氏:
そそ。車で例えるなら,スタイリッシュはオートマなんです。で,慣れてきたらテクニカルっていうマニュアル車にも乗ってみようかなとか,そういう感覚です。
新しく参戦するキャラクターって,すでに個性が出まくりの既存キャラクター達の中で埋もれないように作るわけですから,どうしたって初心者には取っつきづらくなります。オーソドックスなキャラという意味では,すでにラグナ,ジン,ノエルがその位置にいますので,これから,という人には,まずそのあたりから触ってもらえればいいんじゃないかな。
4Gamer:
なるほど。でも,キャラ愛で選んでしまっても構わない?
森氏:
もちろん! そのために,これだけ個性的なキャラクターを用意しているんだから。どのキャラを使っても,「ダッシュから小技を当てて,エリアルにつないで締め」みたいなゲームは,僕はあんまり好きじゃないですから(笑)。
■タイムリリースキャラ「ν-No.13-」「μ-No.12-」「イザヨイ」
4Gamer:
さて,この記事が載る頃には,タイムリリースキャラである「ν-No.13-」「μ-No.12-」「イザヨイ」※についても,かなり情報が出ていると思うのですが,彼らについても,もう少し教えていただけないでしょうか。
※「ν-No.13-」は11月28日に,「μ-No.12-」は12月5日に,それぞれすでに公開済み。「イザヨイ」は,12月12日に公開となる(関連記事)。
森氏:
そうですね。ν-No.13-とμ-No.12-は選択可能になっているはずなので,ここであれこれ言うよりも,ぜひ触ってみてほしいと思います。もう一人のイザヨイについては……もう,ものすごい中二っぷりが堪能できるキャラクターになってますんで,こちらもぜひお楽しみに。
4Gamer:
おお。ちなみにイザヨイはどんなキャラクターになっているんです?
森氏:
状況に合わせてモードを切り替えながら戦うキャラクターですね。初心者向けという意味では,新キャラの3人よりも使いやすいかもしれない。動かし方を覚えたら,超面白いですよ。
お? どういった意味合いで「面白い」んですか?
森氏:
コンボが鬼のようにカッコイイんですよ。それに,モードによってダッシュの性能が変わるので,その使い分けも面白い。
4Gamer:
その……「すごい中二ぶり」というのは?
森氏:
何と言っても,ドライブ名が「スカーレットジャスティス」ですからね。
4Gamer:
……ヒュ〜。そういった造語って,全部森さんが考えているんですか?
森氏:
だいたい僕が考えてます。とくにCPに出ている造語は,全部僕ですね。アズラエルなんて,「暴虐呪」と書いて「エンチャントドラグノフ」ですから(笑)。
4Gamer:
……もうカッコ良すぎて,失禁しちゃいますね。
森氏:
そしてイザヨイの「増幅陣」は「ゲインアート」と読む(笑)。
4Gamer:
失禁しました。……ちょっと脱線するんですが,中二病って,今やすごくメジャーな言葉になってますよね? 森さんは,そんな中二病患者の中でも,ずっと以前からトップを走り続けている人だと思うんですが,その森さんがリアル中学生だった頃って,どんなダークフレイムマスター※だったんですか?
※ライトノベル「中二病でも恋がしたい!」の主人公。闇の竜の力を狙う組織や,過去の敵の生まれ変わりとやむを得ず戦うことになる運命を背負った宿命。現在,テレビアニメが放映中。
森氏:
リアル中二の頃は……「めぞん一刻」の音無響子さんが大好きでしたね。ダークフレイムマスターほどこじらせていたかというと,ちょっと違うかもしれないけど,でもやたらと黒い服を着たり,指ぬきグローブはめたりさ(笑)。
4Gamer:
指ぬきグローブ! 世代を問わない必須装備ですね。
森氏:
ダークフレイムマスターって,どちらかといえば今っぽい,テンプレ化した中二病じゃないですか。僕らの世代だと「宇宙刑事ギャバン」とかああいうのを見て,ポーズをマネたりしてた気がする。さらに高校の頃には,「湘南爆走族」とかの影響を受けて,格好をマネてみたり。今からすると,ただのバカなんだけど。
4Gamer:
ああ,オタク文化とヤンキー文化って,すごく親和性が高いって言いますよね。それでも,それがカッコイイと思ってしまう時期がある。
森氏:
ヤンキーなんて,あれみんな中二病だからね? 昔,知り合いだったヤンキーなんて,なぜか「OL進化論」が大好きで,車に自筆のイラストをペイントしてたんだから。あれ,今だったら完全に痛車ですよ。
4Gamer:
た,確かに。でも森さんの場合,中二病を発症したきっかけって,何だったんですか? 例えば,お得意の「漢字にカタカナでルビを振る」スタイルって,どこから来ているんでしょうか。
森氏:
どこかで聞いたような台詞だけど,中二病なんてなるもんじゃなくて,気がついたらなってるものだから。でも,そうだな……カタカナルビで言うなら「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」とか?
4Gamer:
ああ,確かに! 「爆霊地獄(ベノン)」とか「七鍵守護神(ハーロ・イーン)」とかありましたね。コミックスの後ろに呪文リストまで載ってて。
森氏:
あと「風魔の小次郎」とか「聖闘士星矢」もそうだよね。どれか一つというわけではないけれど,その辺りからはかなり影響を受けてるんじゃないかな。
4Gamer:
……あれ,もしかして全部ジャンプのせいなんじゃ?
森氏:
ほんとだ(笑)。でもだからこそ,今こうして中二病がメジャーになり得たのかもしれない。だからさ,やっぱり男の子の夢なんだよ,中二病って。
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