テストレポート
話題のNTTドコモの2013年夏スマホ&タブレット 計4機種をじっくりテスト。ベンチも計測してみた
従来,NTTドコモのスマートフォンはハイスペック志向の「NEXT」と,メインストリームにあたる「with」の2シリーズに分かれていた。しかし今回よりこの2シリーズは,「ドコモ スマートフォン」に統一されることとなり(子供向けやシニア向けは別シリーズ),どれがハイスペックでどれがそうでないのか,いささか分かりにくくなった面もある。
そこで今回はこれらの新製品から,特徴的なスペックを備える以下の4製品について,会場で計測したベンチマークテストの結果も合わせてレポートしたい。
- GALAXY S4 SC-04E
- ARROWS NX F-06E
- AQUOS PHONE ZETA SH-06E
- AQUOS PAD SH-08E
なお発表記事にもあるとおり,新製品に共通した特徴は,CPUコアを4基統合したQualcomm製SoC(System-on-a-Chip)「Snapdragon 600」の搭載と,大容量バッテリーの標準搭載にある。また新しい高速無線LAN規格「IEEE802.11ac(Draft)」に対応する製品が多い点も,近い将来に普及するであろう無線LAN環境の先取りとして好感が持てる。
一方で,先に夏モデルを発表したソフトバンクモバイルがアピールしていた地上デジタル放送の「フルセグ」対応テレビチューナーを内蔵する製品は,NTTドコモのラインナップでは,スマートフォン1製品とタブレット1製品だけであった。製品数こそソフトバンクモバイルと同じとはいえ,11製品中2製品だけというのは,スマートフォンでのフルセグ視聴に対する温度差を感じずにはいられない。
ディスプレイは拡大,でも重さは軽くバッテリーも増量
GALAXY S4 SC-04E
まずは外観の特徴から見ていこう。S4のカラーバリエーションは,「Black Mist」(黒)と「White Frost」(白)と,グローバルモデルに先んじて登場したという「Blue Arctic」(青)の3色構成となっている。
四隅が丸い形状や,本体正面の下側中央にハードウェアボタンの[ホーム]ボタンを備え,右側面には[電源/スリープ]ボタン,左側面には音量調整用ボタンを配置する基本デザインは,日本でも人気を呼んだ2012年モデルの「GALAXY S III」を踏襲したものだ。
Blue Arcticの正面と背面。メタリックながら落ち着きある風合い。背面にはアウトカメラとフラッシュがある定番のレイアウトだ |
本体頂部と底部。頂部にはワンセグ受信用アンテナとヘッドフォン端子,底部にはUSB Micro-B端子があるだけ |
本体左側面と右側面。左側面には音量調整用ボタン,右側面には[電源/スリープ]ボタンが配置。ボタン配置もGALAXY S IIIと変わらない |
本体正面にある大きなボタンは[ホーム]ボタン。長押しでタスクマネージャーとランチャーが起動する。[ホーム]ボタン左右には,タッチタイプのメニューボタンと[戻る]ボタンがある。通常,左右ボタンのLEDは消灯しており,タップで点灯する仕組み |
スペック面にも目を向けて見よう。先に述べたとおり,S4が搭載するSoCは,Snapdragon 600の「APQ8064T」である。CPUコア「Krait 300」を4基と,同社独自のGPUコア「Adreno 320」を搭載するSoCで,動作クロックは最大1.9GHzと,2013年夏モデルの中では最も高いクロックである。
これだけ速いのならば,さぞかしベンチマークテストの結果もいいのだろうと,筆者のスマートフォンテストでは定番となった,「3DMark」のAndroid版によるグラフィックス性能の計測と,連射測定アプリケーション「ぺしぺしIkina」によるタッチパネルの連打に対する応答性を計測してみた。
まずは3DMarkの結果だが,モバイルデバイス向けテスト「Ice Storm」の総合スコアが9496,より負荷の高い「Extreme」プリセットでは6309と,スペックのわりには物足りない結果となった。APQ8064/1.5GHzを搭載する「Xperia Z SO-02E」が,Ice Stormで1万を超えるのだから,それを上回っても良さそうに思えるがこのとおり。あるいは,バックグラウンドで動いてるアプリやサービスの負荷が,高いのかもしれない。
3DMarkのIce Storm(左)とIce Storm Extreme(右)のスコア。思いのほか振るわない |
若干とはいえ薄型軽量化されたにも関わらず,バッテリー容量は従来機種よりも500mAh増量されて,2600mAhとなっている。NTTドコモでは,「実使用時間で45時間以上動作」謳っているが,ゲームを長時間プレイしてもバッテリー切れで困ることは少なくなりそうで,素直に歓迎したい強化点と言えよう。
●GALAXY S4 SC-04Eの主なスペック
- メーカー:Samsung Electronics
- OS:Android 4.2
- ディスプレイパネル:5.0インチ有機EL,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 600 APQ8064T」(クアッドCPUコア,1.9GHz)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)+microSDXC(最大64GB)
- 外側カメラ:有効画素数約1320万画素
- 内側カメラ:有効画素数約210万画素
- バッテリー容量:2600mAh
- 3G連続通話/待受時間:約720分/約410時間
- Xi対応:あり
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- 本体サイズ:70(W)×8(D)×137(H)mm
- 本体重量:約134g
- 本体カラー:Black Mist,White Frost,Blue Arctic
- 主な対応サービス&機能:spモード,spモードメール,GPS,dマーケット,ワンセグ,おサイフケータイ(NFC),WORLD WING,赤外線リモコン(IrRC),Bluetooth(Version.4.0),Wi-Fiテザリング,NOTTV
大柄ボディでスペックもバッテリーも充実
ARROWS NX F-06E
本体背面の四辺はカーブを描いたラウンドフォルムとなっているのだが,70mmの横幅と角の尖ったデザインが,見た目以上に大きさを感じさせるように思う。なおカラーバリエーションは,「Black」と「White」の2色構成である。
本体正面にはハードウェアボタンはなく,[ホーム]ボタンや[戻る]ボタンはオンスクリーンのソフトウェアキーである。物理的なボタン類は,左側面にある[電源/スリープ]ボタンと音量調整用ボタンだけだ。
本体背面。アウトカメラの下にある黒い四角は,スリープ解除などに使える「スマート指紋センサー」だ |
本体左側面。上から順に音量調整用ボタン,[電源/スリープ]ボタンが並ぶ。右側面にはなにもない |
本体頂部(左)と底部(右)。頂部にはテレビアンテナやカードスロット,ヘッドフォン端子が並んでぎゅうぎゅう詰めだが,底部はUSB Micro-B端子だけ。なおカバー類はすべて防水カバーになっている |
スペック面では,ARROWS NXは2013年夏モデルの中でも,トップクラスの充実ぶりを見せる。SoCはAPQ8064T/1.7GHzと,動作クロックではS4に譲るものの,内蔵ストレージ容量は夏モデル最大の64GBを誇る。アウトカメラの有効画素数も,約1630万画素と夏モデル最も大きく,さらにNTTドコモの夏モデルスマートフォンでは唯一,「フルセグ」対応のテレビチューナーを内蔵する。
そのうえ内蔵バッテリー容量も,夏モデル最大の約3020mAh。この大容量バッテリーの搭載により,実使用時間では60時間以上を謳う。謳い文句どおりに動くなら,ほぼ3日間は充電いらずというわけで,このスペックでこのスタミナは好評価できるだろう。ただし,ユーザーによるバッテリーの交換はできない。
3DMarkとぺしぺしIkinaの結果も見てみよう。まず3DMarkだが,Ice Stormの総合スコアは9908,Extremeプリセットは6759と,同じSoCで動作クロックが高いはずのS4よりも高得点を記録した。やや意外な結果だが,テスト回数が1回だけなので,誤差も考慮する必要はあるかもしれない。
ARROWS NXでの3DMarkのIce Storm(左)とIce Storm Extreme(右)のスコア |
ARROWS NXでのぺしぺしIkinaの測定結果。ゲームでも問題ないスコアだ |
「ホバー」機能の設定は,Androidの設定画面では「ホバリング設定」にまとめられている。対応アプリが増えないと,メリットはなさそうだ |
ちなみに今回の夏モデルでは,液晶画面に指を触れずに,軽く浮かせた状態のまま画面を操作できる「ホバー」機能に対応した製品が何機種か用意されている。ARROWS NXもその1台だ。
「ロック画面の解除操作のときに,指を浮かせたまま操作できるので,指の跡が残らずセキュリティ面で安心」というふれ込みの機能ではあるが,正直言って,どの程度浮かせた状態で操作できるのかが分かりにくく,反応もいまひとつよくない。またアプリケーション側がホバー機能に対応しないと動作しないので,使える場面も少なそうだ。このままでは,アイデア倒れに終わりそうな機能である。
●ARROWS NX F-06Eの主なスペック
- メーカー:富士通モバイルコミュニケーションズ
- OS:Android 4.2
- ディスプレイパネル:5.2インチTFT液晶,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 600 APQ8064T」(クアッドCPUコア,1.7GHz)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量64GB)+microSDXC(最大64GB)
- 外側カメラ:有効画素数約1630万画素
- 内側カメラ:有効画素数約130万画素
- バッテリー容量:3020mAh
- 3G連続通話/待受時間:約680分/約560時間
- Xi対応:あり
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- 本体サイズ:70(W)×9.9(D)×139(H)mm
- 本体重量:約163g
- 本体カラー:Black,White
- 主な対応サービス&機能:spモード,spモードメール,GPS,dマーケット,フルセグ,おサイフケータイ(NFC),WORLD WING,赤外線通信,Bluetooth(Version.4.0),Wi-Fiテザリング,NOTTV,防水,防塵
ユーザーの声を反映した独自の操作系を備える
AQUOS PHONE ZETA SH-06E
ソフトバンクモバイルの2013年夏モデル「AQUOS PHONE Xx 206SH」もそうなのだが,シャープ製の最新スマートフォンは,ハードウェアボタンの配置が一風変わっている。
AQUOS PHONE ZETAは,本体頂部の中央に,[電源/スリープ]ボタンが配置されている。サイズの小さな端末なら気にならないかもしれないが,5インチ弱の液晶パネルを搭載する端末でこの配置は,指が届きにくい使いにくい。この配置を採用した理由を説明員にたずねたところ,「これまでのボタンレイアウトでは,押し間違いの報告が多かったため,この配置を採用した」とのことだった。
本体右側面。上寄りの位置に音量調整用ボタンがある。左側面にあるのはストラップホールのみ |
本体頂部。[電源/スリープ]ボタンが中央にあるのは,あえて押しにくい位置にしたためだという |
AQUOS PHONE ZETAの特徴はなんといっても,ディスプレイに4.8インチ・解像度1080×1920ドットの「IGZO」液晶パネルを採用する点にある。バッテリー容量は2600mAhと,S4と同容量であるが,低消費電力が売りのIGZO液晶を採用した効果だろう,ARROWS NXと同じ「実使用時間60時間以上」を謳っている。バッテリー駆動時間を重視するユーザーに喜ばれるだろう。ただし,こちらもユーザーによるバッテリーの交換はできない。
搭載SoCは,ARROWS NXと同じAPQ8064T/1.7GHz。メインメモリ容量は2GBで,内蔵ストレージ容量は32GBだ。ベンチマークテストを行ってみたところ,3DMarkはIce Stormの総合スコアが10611,Extremeプリセットでは6848と,ARROWS NXをやや上回る結果を残した。なかなか優秀な成績と言える。
AQUOS PHONE ZETAでの3DMarkのIce Storm(左)とIce Storm Extreme(右)のスコア |
●AQUOS PHONE ZETA SH-06Eの主なスペック
- メーカー:シャープ
- OS:Android 4.2
- ディスプレイパネル:4.8インチTFT「IGZO」液晶,解像度1080×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 600 APQ8064T」(クアッドCPUコア,1.7GHz)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)+microSDXC(最大64GB)
- 外側カメラ:有効画素数約1310万画素
- 内側カメラ:有効画素数約210万画素
- バッテリー容量:2600mAh
- 3G連続通話/待受時間:約750分/約530時間
- Xi対応:あり
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- 本体サイズ:70(W)×9.9(D)×138(H)mm
- 本体重量:約157g
- 本体カラー:Black,White,Red
- 主な対応サービス&機能:spモード,spモードメール,GPS,dマーケット,ワンセグ,おサイフケータイ(NFC),WORLD WING,赤外線通信,Bluetooth(Version.4.0),Wi-Fiテザリング,NOTTV,防水
IGZO液晶搭載でフルセグ対応の7インチタブレット
AQUOS PAD SH-08E
AQUOS PAD SH-08E |
AQUOS PADで4Gamerのトップページを表示した様子。高解像度かつ横幅がやや広いため,Web閲覧も快適にこなせる |
AQUOS PADもシャープ製らしく,「IGZO」液晶パネルを採用する点が特徴である。解像度が1200×1920ドットと,フルHD解像度よりもやや縦方向が長い。試作機を見たところ,今までに見たIGZO搭載スマートフォンよりも液晶パネルのコントラスト比が,高くなったような印象を受けた。説明員に聞いたところ,詳細は非公開だが新型のパネルを採用しているのだという。
IGZO液晶パネル採用で期待されるバッテリー駆動時間だが,残念ながら発表時点では未定とされていた。内蔵するバッテリーは容量4200mAhと公表されているので,先行する7インチタブレットよりも長い動作時間が期待できそうだ。
本体左側面。[電源/スリープ]と音量調節用ボタンが並ぶ。ハードウェアボタンはこれだけ。右側面には何もない |
本体底部。防水カバーの中にSIMおよびmicroSDXCカードスロットと,USB Micro-B端子が配置されている |
本体サイズは107(W)×9.9(D)×190(H)mmで,重量は約285g。7インチAndroidタブレットの代表格であるNexus 7の場合,サイズが120(W)×10.45(D)×198.5(H)mm,重量は約340gなので,一回り小さく重量はかなり軽い。持ち歩いて使うのも苦にならなさそうだ。
ARROWS NXと同様に,AQUOS PADはフルセグ対応のテレビチューナーを内蔵している。液晶パネルサイズが大きい分だけ,フルセグのテレビ視聴にはスマートフォンよりも適しているように感じられた。
フルセグ対応チューナーを内蔵。ドックには有線のテレビアンテナを接続できるので,卓上テレビにも向いている |
本体背面。頂部近くにアウトカメラが配置されている |
中身も見てみよう。AQUOS PADはタブレットだが,Androidタブレットでは定番の「Tegra 3」ではなく,スマートフォンと同じAPQ8064T/1.7GHzをSoCとして採用している。メインメモリ容量は2GB,内蔵ストレージ容量は32GBで,こちらもスマートフォンと変わらない。
気になる性能だが,残念ながら会場で触れたのは試作機であったため,性能面を評価できる状態ではなかったようだ。とくにぺしぺしIkinaは,正常な値が取れなかった。あくまでも試作機での参考値であるが,3DMarkのIce Stormの総合スコアは8239,Extremeプリセットは5967だった。同じSoCを搭載するARROWS NXやAQUOS PHONE ZETAとは,だいぶ差があるので,製品版ではこれよりも高いスコアになると期待される。
AQUOS PADでの3DMarkのIce Storm(左)とIce Storm Extreme(右)のスコア |
●AQUOS PAD SH-08Eの主なスペック
- メーカー:シャープ
- OS:Android 4.2
- ディスプレイパネル:7インチTFT「IGZO」液晶,解像度1200×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 600 APQ8064T」(クアッドCPUコア,1.7GHz)
- メインメモリ容量:2GB
- ストレージ:内蔵(容量32GB)+microSDXC(最大64GB)
- 外側カメラ:有効画素数約810万画素
- 内側カメラ:有効画素数約210万画素
- バッテリー容量:4200mAh
- 3G連続通話/待受時間:未定/未定
- Xi対応:あり
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- 本体サイズ:107(W)×9.9(D)×190(H)mm
- 本体重量:約285g
- 本体カラー:White
- 主な対応サービス&機能:spモード,spモードメール,GPS,dマーケット,フルセグ,赤外線通信,Bluetooth(Version.4.0),Wi-Fiテザリング,NOTTV,防水,防塵
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