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ARM,64bit対応のプロセッサIPコア「Cortex-A50」を解説。big.LITTLEで性能と低消費電力性の両方を引き上げる
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印刷2012/12/05 18:27

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ARM,64bit対応のプロセッサIPコア「Cortex-A50」を解説。big.LITTLEで性能と低消費電力性の両方を引き上げる

画像集#002のサムネイル/ARM,64bit対応のプロセッサIPコア「Cortex-A50」を解説。big.LITTLEで性能と低消費電力性の両方を引き上げる
 英ARMの日本法人であるアームは2012年12月6日に同社主催の技術系イベント「ARM Technology Symposium 2012」を都内で開催するが,それに先立つ形で,報道関係者向けの説明会を開催した。テーマは,ARMのプロセッサIPコアとして初めて64bitの演算処理とメモリアドレス空間(※)に対応するCortex-A50シリーズと,ARMによるサーバー市場への取り組みで,後者は4Gamer的に少し縁遠い話となってしまうが,シンポジウムの前哨戦ということで,本稿では前者,ARMの64bitソリューションをおさらいしてみることにしよう。

※厳正を期すと仮想メモリアドレス空間は48bitなのだが,ここでは64bitという理解で問題ない。


big.Littleで2種類のコアが用意される

Cortex-A50シリーズ


Kenith Clarke氏(Vice President, Embedded Processors, Processor Division, ARM)
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 説明会は,前半が64bit製品を含むARMの製品戦略説明,後半がサーバー市場への取り組み紹介だったが,前半を担当したのは,ARMで組み込みプロセッサ担当の副社長を務めるKenith Clarke(ケニス・クラーク)氏だ。

 ARMは創業以来,ここまで一貫して32bitのアーキテクチャを維持・拡張してきた。32bitのARMアーキテクチャはさまざまな製品に応用されており,4Gamerの読者に馴染み深いところだと,最近ではPlayStation VitaがARMアーキテクチャを採用している。

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 いまのところ,ゲーム機や,ARMがこれまで主なターゲットとしてきたモバイル機器だと64bitの必要性は低いのだが,リッチなメモリ空間を必要とするWindowsがWindows RTでARMアーキテクチャに対応したり,モバイルアプリケーションの高機能化が進んでいたりすることから,そう遠くない将来に64bitが必要になることは間違いない。そしてもちろん,ローエンド以外のサーバーではすでに64bitが必要とされている。
 そうした状況を受けて,ARMは2011年に,新たに設計された64bitの命令セットを含むARMv8(ARM version 8)アーキテクチャを発表した。そして,Cortex-A50シリーズは,そんなARMv8アーキテクチャを採用した初めてのプロセッサコアIP製品となるわけだ。

 10月31日の記事でお伝えしているように,Cortex-A50シリーズでは,「Cortex-A57」と「Cortex-A53」という,2種類の製品が用意される。

ARMv8アーキテクチャを採用するCortex-A50シリーズでは,高性能寄りのCortex-A57,小さなダイサイズと低消費電力が特徴のCortex-A53の2種類が用意される
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 Clarke氏によれば,Cortex-A57は「高性能に最適化されたソリューションで,現在のスーパーフォン(=ハイエンドのスマートフォン)と比べて3倍の性能を持つ」という高性能なIPコアだ。

Cortex-A57の概要。暗号化の高速化を実現する命令セットや,最大16コアのマルチコアがサポートされ,モバイルからサーバーまで幅広いセグメントに適合すると,Clarke氏は説明していた
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 一方のCortex-A53は「マスマーケット向けのソリューションで,現在のCortex-A9並の性能を40%縮小したダイサイズで実現する」とClarke氏。性能はそこそこながら,ダイサイズ(≒コスト)や消費電力パフォーマンスはほどほどに抑え,ダイサイズや消費電力の効率化に振ったIPコアというわけだ。

こちらはCortex-A53の概要。32bitでCortex-A9並みの性能を確保しつつ64bitにも対応し,ダイサイズはCortex-A9比で40%小さくなる。高い電力効率も特徴とされている
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 ARMは省電力のコアと高速なコアを組み合わせ負荷に応じて切り替える「big.LITTLE」戦略をプッシュしているが,64bit世代となるCortex-A50シリーズでも,Cortex-A57をbig,Cortex-A53をLITTLEとして用いるbig.LITTLE処理に対応する。これにより,「Cortex-A57の性能を発揮させつつ,消費電力は(現行世代のエントリー市場向けスマートフォンでよく採用される)『Cortex-A7』に近いレベルを実現できる」というのがClarke氏の弁だ。

グラフ中,青色の折れ線がピーク性能,緑色の折れ線が消費電力を示す。Cortex-A57とA53のbig.LITTLE処理では,現行製品であるCortex A15とA7によるbig.LITTLEと比べて,性能は圧倒的に工場し,消費電力は若干下がるとARMは主張している
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 上のスライドで示されているCortex-A57とA53のbig.LITTLEはCortex-A53×2,Cortex-A57×2という構成だが,Clarke氏は「One Size Does Not Fit All」(1種類ですべてをまかなうことはできない)として,Cortex-A57とA53の組み合わせにはさまざまな可能性があることを示していた。

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 たとえば,エントリー市場向けスマートフォンならCortex-A53×4のみとしたり,スーパーフォンやタブレットならCortex-A57×2+Cortex-A53×4,ノートPC的なデバイスならCortex-A57×4+Cortex-A53×4,サーバーならCortex-A57×16といった具合だ。Clarke氏は,この柔軟性がCortex-A50シリーズの大きな特徴だと語っていた。

Cortex-A50は柔軟なSoC構成が取れるとするスライド
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ちなみにClarke氏は,ARMが展開するGPU IPコア「Mali」についても「Cortex-A50シリーズとの整合性が取れている」とClarke氏は語っていた。ARMv8では物理&論理アドレス空間が拡張されるため,GPUの物理的な接続をどうするか,あるいはグラフィックスメモリをどうするかといった課題が生じるわけだが,そうした部分の整合性もすでにとれているという意味だと思われる
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 またClarke氏は製造周りに関しても触れており,Cortex-A50シリーズではGLOBALFOUNDRIESやSamsungなどが製造にあたるとしつつ,Cortex-A57の開発では台湾TSMCと連携して開発を進めていると述べていた。現行製品の20nmプロセス版は2013年中に製造が始まる予定で,さらに「FinFET技術についても,パートナーと密に連携して開発を進めており,2013年中にはFinFETを用いたテストチップを出せる予定だ」という。
 FinFET技術は,Intelがいう3次元トライゲート・トランジスタとほぼ同等の技術。プロセス技術ではIntelに対して不利と言われるARMだが,着実に開発を進めているとアピールしているわけである。

Clarke氏によると,Cortex-A50シリーズでは当初,28nmと20nmプロセスに対応する物理IP(プロセスに対応する設計図のようなもの)が提供されるという。どちらで製造されるかは2014年のプロセス事情にも左右されると思うが,SoC製品は28nmスタートの可能性が高いのではなかろうか
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現時点で発表済みの「Cortex-A50シリーズのプロセッサIPコアをライセンスされている企業」一覧。AMDとCalxedaはサーバー向けSoC,そのほかのメーカーは(主に)モバイル向けSoCを投入する見込みだ
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 発表されているとおり,Cortex-A50シリーズのプロセッサIPコアを搭載するスマートフォンやタブレット,ノートPC,あるいはサーバー製品は,2014年の登場予定だ。再来年の話なので,むしろ4Gamer読者的には,Cortex-A15コア採用スマートフォンやタブレットの性能のほうが気になるというのが本音かもしれない。
 ただ,そう遠くない将来,ARMアーキテクチャが64bitへ移行することだけは間違いない。そのときには,スマートフォンやタブレットでも,メモリを大量に使うアプリケーションが動くようになり,いよいよ既存のPCとの違いが少なくなっていく可能性があることは,憶えておいても損はしないだろう。

4Gamer的にはあまりにも遠い話なので割愛するが,説明会の後半では,ARMでシステムデザイン部門の上級副社長を務めるJohn Cornish(ジョン・コーニッシュ)氏がサーバー市場への取り組みを紹介した。ARMはサーバー市場の中でも「軽から中程度の負荷を必要とするサーバー製品にフォーカスする」とのことで,x86サーバー市場を押さえるIntelと全面戦争するわけではない旨を語っていたのは興味深かった
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ARM日本語公式Webサイト

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