インタビュー
PS Vita用ソフト「真・三國無双(仮称)」は据え置き版と変わらない印象のクオリティが楽しめる。 E3会場で開発陣にインタビュー
そこで今回,E3会場でプロデューサーの小笠原賢一氏と,ディレクターの庄 知彦氏に,本作についていろいろな話を聞いてみた。およそ30分ほどの短時間のインタビューだが,Vitaで開発される真・三國無双シリーズ最新作がどのような作品になるのか。その一端を確認してみよう。
Vitaでは,据え置き機と遜色のない作品が制作できる
まず,PlayStation Vita版「真・三國無双(仮称)」(以下,Vita版無双)について,これまでの無双シリーズとの違いを教えてください。
小笠原賢一氏(以下,小笠原氏):
タッチやジャイロによる操作もそうですが,今までの無双シリーズというのは,据え置き機でじっくりとやるゲームです。大勢の敵兵をなぎ倒していくというゲーム進行で,そこに没入してもらうゲームでしたが,今回携帯ゲーム機になったので,短時間でもしっかりとメリハリの効いたゲーム展開が必要になります。
4Gamer:
具体的には,どのようなゲーム展開になるんでしょうか。
小笠原氏:
ずっと敵を倒しているのではなく,アクシデンタルバトルなど,通常の展開が変わるようなシチュエーションを用意したり,最後の一騎打ちのように,これまでのアクションとは違う遊びに変わったり,ゲームの起伏が激しくなるように,全体を通して気をつけてゲームデザインをしています。ここが従来シリーズとは大きく違うところですね。
従来シリーズは,ゲーム内に入ってしっかりと三国志の世界やキャラクターの物語を楽しむという形ですが,手軽なゲーム性,分かりやすいダイレクトなリアクション,そういったところを加味した起伏のあるゲーム展開を,このタイトルでは非常に重視しています。
4Gamer:
ダイレクトなリアクションというのは,Vitaのタッチ操作などにも関連していそうですね。Vitaという新ハードで,Vita版無双を制作するにあたって,強く意識したことを教えてください。
小笠原氏:
(カンファレンスなどで)Vitaの画面をご覧になったと思いますが,携帯ゲーム機を手に持つ距離で,あのサイズの画面を見ると,PlayStation 3に近い印象を受けるクオリティのゲームができます。
処理速度の面でも,例えば据え置き機からPSPにゲームを持っていこうとすると,とくに無双シリーズの場合は,一騎当千の爽快感をそのまま持っていけるわけではありません。ですから,いろいろ苦労しながら,迫力が出せない代わりに,遊び方を変える必要がありました。
4Gamer:
敵兵を表示できる数にしても,解像度や処理速度で大きく変わりますね。
小笠原氏:
一方のVitaは,一騎当千の爽快感がしっかりと表現できるハードです。据え置き機と比べても遜色のない作品が出せるんですよ。
4Gamer:
据え置き機とVitaで,ほぼ同じゲームが楽しめると。
小笠原氏:
ええ。ただVitaは携帯ゲーム機ですから,据え置き機と同じ真・三國無双でも,違うプレイシチュエーションや楽しみ方は必要です。その意味でVita版無双は,据え置き機とは違ったシリーズ展開の1作目としてプロジェクト化しました。
4Gamer:
単に無双シリーズをVitaに持ってきたわけではなく,Vitaならではの無双シリーズをこれから作っていくわけですか。
小笠原氏:
そういうことです。E3に持ってきたトライアルバージョンは,Vitaの持っている新しいインタフェースをしっかりと活用し,これまでのシリーズでは表現できなかったいろいろなギミックやアクション,要素を追加しています。
4Gamer:
画面タッチやジャイロを使った戦闘,背面タッチの“神速乱舞”などですね。
小笠原氏:
そうです。一方で,これは無双シリーズなのでインタフェースが変わっても,しっかりと無双らしい爽快感を出すという部分は共通しています。
4Gamer:
無双シリーズらしい爽快感とのことですが,先ほど言った画面タッチ,ジャイロ,背面タッチなど,利用する入力系統が増えたことで,単純に操作が大変になるのではないでしょうか。それによって爽快感が阻害されるのでは,という不安があります。
小笠原氏:
たしかに新しいインタフェースで,プレイヤーが覚えることは増えますが,タッチという要素はニンテンドーDSなどのゲームでも同じように,チュートリアル的なもので直感的に分かるようになっています。
4Gamer:
分かりやすいのは間違いないでしょうね。
小笠原氏:
例えば一騎打ちは過去のシリーズにも入れていましたが,一騎打ちをよりゲーム性の高い内容で落とし込んでいくと,どんどん格闘ゲーム寄りになっていきます。そうなると無双シリーズの大きな特徴である,誰でも手軽に楽しめるというところが実現できなくなります。
ですが,タッチアクションであれば,すぐに理解できます。Vitaでは,そうした新しい遊ばせ方,表現の仕方を,従来のシリーズ以上にチャレンジして実現できそうな手応えを感じています。また,新しいチャレンジをした結果によって複雑になってしまうことは,このインタフェースではおきにくいと考えています。
4Gamer:
Vitaを実際に触った感触としては,手の大きさによって操作し辛いという人もいるのではと感じました。また,背面タッチパネルの反応が良いせいか,指が触れてしまい,神速乱舞を誤って発動してしまうこともありますよね。
小笠原氏:
そうですね。今回は展示用のバージョンなのでまだまだ調整が必要です。ちなみに,この(背面タッチをした場所の)マーカー表示も製品版では非表示にします。
4Gamer:
現状のものが,そのまま製品版に適用されるわけじゃないんですね。
小笠原氏:
はい。そういったところをブラッシュアップして,戸惑うことなく楽しめる形にまで持っていって製品にしたいと思います。
まだ試行錯誤をしている最中ですからね。ジャイロを使うと電車内では遊びづらいですし,場所も限定的になります。そういうところの対応を予定しています。
4Gamer:
新しいハードで,とくにローンチに合わせる作品では,わりと実験的に作られるゲームもあると思います。発売後にはプレイヤーからのフィードバックがあるでしょうし,シリーズを通じて洗練されていくということはありそうですね。
小笠原氏:
いま目指しているのは,「これってやっぱり無双だよね」というのを感じてもらえるように,無双のベース部分をしっかりと作ろうということです。そこに新しいインタフェースを使ったチャレンジが乗っかるわけですが,これもしっかりと爽快感が得られるように,まとめていこうと思っています。
もちろんプレイヤーさんの声で,どんどんブラッシュアップしていきます。初作で,何もかもがうまくいくとは思っていませんので。
一方で,我々はニンテンドーDSやWiiのリモコンなどといったデバイスを経て,Vita版無双に新しい要素を取り入れているので,無双の爽快感をシンプルに,ダイレクトに伝えるという形はちゃんと導入できると考えています。
SCEさんからも「ゲームがしっかりとできる,高性能な“携帯ゲーム機”」だと言われていますので,無双がまったく不満なく,携帯ゲーム機で楽しめるというところを大事にしたいと思っています。
真・三國無双6のキャラクターは登場させたい。携帯ゲーム機のスペック上昇でゲームエンジンの共有が可能に
Vita版無双では,どれくらいのプレイヤーキャラクターを出そうと思っていますか?
小笠原氏:
「真・三國無双6」で出てきたキャラクターは登場させたいと考えています。
4Gamer:
かなりの人数ですよね?
小笠原氏:
ええ。ですが,これについては実現させたいですね。
4Gamer:
それは嬉しいですね。やはりVitaくらいのスペックがあれば,これまでのリソースを共有したりできるのでしょうか。実は,今回見た趙雲のモデルがもしかして? と思ったのですが。
小笠原氏:
おっしゃるとおりで,このデモのキャラクターは真・三國無双6とほぼ同等のキャラクターモデルを使っています。Vitaは非常にモデルデータを活用しやすいハードだと思います。とくにプレイヤーキャラクターは,PS3並のクオリティが出せます。
4Gamer:
以前から,Vitaの作品は開発しやすいという話が出ていましたが,やはりデータの共有のしやすさも一因なんでしょうか。
小笠原氏:
そうだと思います。Vitaぐらいのスペックがあれば,据え置き機のシステムをほぼそのまま持ってくることができるんですよ。そこから最適化していくことに注力するだけで,ある程度は動いてしまいます。
4Gamer:
Vita版無双もω-Forceによる制作ですが,ゲームエンジンは真・三國無双6と共有していたりするんですか?
小笠原氏:
ええ,ベースとして多くの部分で共有化しています。もちろん,スペック的にはPS3よりも落ちますので,PS3でやっている処理を落としている部分もあります。大切なのは,数字でどう出ているかではなく,最終的に画面に現れるものを見たときのプレイヤーの印象です。まだまだチューニングの余地がありますが,トライアルバージョンでも,PS3の真・三國無双6と同レベルのクオリティで趙雲が動いていると感じていただけると思います。
4Gamer:
PSPと比べると,段違いの表現力ですよね。
小笠原氏:
ええ,PSPの綺麗なゲームというレベルではありませんよね。
4Gamer:
これだけ映像が綺麗に出せると,開発するときのコストが大変になるのではと思うのですが。
小笠原氏:
そうですね。Vitaの性能いっぱいまでフルスクラッチで作ろうと思えば,ほぼ据え置き機と同等のコストが掛かると思います。ですので,先ほど言ったリソースの共有というわけではないですが,SCEさんがVitaとPS3で連動したゲームのスタイルを話していたように,今後そういった形が増えると思います。
4Gamer:
PS3とVitaでセーブデータの共有や連動が,かなり行われそうな雰囲気ですよね。
小笠原氏:
ええ。おっしゃるように,PS3とVitaでゲームデータを共有するようなこともあると思いますし,VitaではVitaの,据え置きでは据え置きの,それぞれ異なったゲームシステムがあり,2つのゲーム間でどうリンクさせるかという新しいチャレンジもできます。
結果として,2つのプラットフォームでそれぞれゲームをリリースすることになりますので,その意味で効率化は図れると思います。
4Gamer:
PS3とVitaの連携については,どんなものが登場するのか楽しみですね。ちなみにVita版無双では,真・三國無双6,もしくはほかの作品との連動は考えていないんですか?
小笠原氏:
今はまだ,はっきりとお答えできる状態にはありません。まずは本作ならではの新しい爽快感をしっかり完成させるべく,制作を進めています。
4Gamer:
分かりました。
いつでもどこでもネットに繋がるVita
3G(Wi-Fi)を利用したネットワーク機能の搭載
Vitaの新機能を考えると,3G回線の利用もありますよね。
小笠原氏:
そうですね。Vitaの大きな特徴である3Gの通信機能については,いかに活用するかを考えています。
4Gamer:
どういったものを考えていますか?
小笠原氏:
いつでも,どこでもアクセスできるという環境が携帯ハードに備わるので,シングルプレイだけどほかのプレイヤーが影響してくるような,ソーシャル的な繋がりを考えています。例えば,GPSを使って取得した,ほかのプレイヤーの情報でゲーム展開を変化させたりする仕組みですね。
4Gamer:
Vitaは3GモデルとWi-Fiモデルがありますが,Wi-Fiでも同じことができるようにするんですか? GPSは3Gモデルだけでしょうから,難しそうですが。
小笠原氏:
いつでもどこでもと言うわけにはいかなくなりますが,Wi-Fiでもできるようにしたいと考えています。位置情報については,3GのGPSほど精度は高くないものの,Wi-Fiで取得できる技術(※)はあるので,Wi-Fi版でも状況は限定されますが,遊び的には同じシチュエーションが実現できるかもしれません。
(※編注:おそらくPlaceEngineのようなものだと思われる)
4Gamer:
なるほど。ネットワークについて,先ほどソーシャル的な繋がりを話していましたが,直接的な協力プレイや対戦プレイなどは考えていますか?
小笠原氏:
そこについては,もちろん入れたいと考えています。それを実現したうえで,さらに3G(Wi-Fi)ならではの機能を活かした新しい楽しさを実現したいと思います。
4Gamer:
真・三國無双6では,2人での協力プレイができましたが,本作でもそれは同じですか?
小笠原氏:
とりあえず,オーダーとしては4人でできるようにしてと,庄には伝えました(笑)。
おお,4人ですか。それだけ増えると真・三國無双 Onlineっぽいものをイメージしてしまいますが。
庄氏:
そういう感じではなくて,現状予定しているのは,4人で協力して戦うものですね。それと,明言はできませんが,2vs.2の対戦もできれば実現したいと思っています。
4Gamer:
分かりました。では最後に,4Gamer読者にコメントをお願いします。
庄氏:
Vitaが発表されてから反応をずっと見ていましたが,ゲーマーの方々が気にしているのは,本作に限らず「無理矢理Vitaの機能を使っているのでは」という点でした。Vita版無双に関しては,無理矢理というよりも,やりたかったことに関するちょうど良い機能があったので採用しています。
新しい無双シリーズを作るために,必然的に使っている機能が多いので,心配せず,お待ちいただけたらと思います。
小笠原氏:
Vita版無双は,PS3に近いクオリティで一騎当千の無双が楽しめることを大切にしているので,今までのプレイヤーさんも安心して遊べると思います。
その上に,Vitaの新機能をきっかけとして,新しいチャレンジをいっぱいしています。携帯ゲーム機ならではの遊びをしっかりと詰め込んだ無双は,どういう形で新しく進化しているのか。そして入力が変わると,表現の仕方も爽快感もこんな風に変わっていくんだというのを実感していただけると思います。ぜひ期待していただきたいです。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
(現地時間,2011年6月9日――)
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真・三國無双 NEXT
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