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[TGS 2011]世界中のアーティストが集結した「ソウルキャリバーV」,CIAブースで行われた,音楽中心のステージイベントレポート
なおCIAは,本作の楽曲を担当している音楽制作会社で,今回がTGS初出展とのこと。音楽制作会社が単独で出展するというのはかなり珍しいような気がするが,そのあたりは,CIAの代表である由良浩明氏にお話をうかがった別記事にてお伝えする予定だ。
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「ソウルキャリバーV」公式サイト
CIA公式サイト
前作から17年後の世界で繰り広げられる,ソウルキャリバー新章
トークはまずおさらいとして,本作についての概要からスタートする。本作は1998年に第1作が発売された3D武器格闘ゲーム「ソウルキャリバー」シリーズの最新作だ。ゲーム内では前作「IV」から17年後の世界を舞台とし,キャラクターもその半数が一新されている。その代表格といえるのが,新キャラクターのパトロクロスとピュラだろう。前作の人気キャラクター,ソフィーティアの息子と娘であり,また本作の主人公でもある。バトルシステムも一新され,新世代のキャラクターと共に,ソウルキャリバーの新章が始動する,というわけだ。
なお海外での発売日は2012年の1月〜3月を予定しているという。日本での発売についてはまだ未定だが,恐らくそのあたりになるのではないか,とのこと。
キャラクター
そして話題はキャラクターについての深い話へ移っていく。登場キャラクターの選定について,夛湖氏から話を振られた小田嶋氏は,基本的に人気キャラクターは残す方針と語った。それでいえばソフィーティアはいなくなってしまっているのだが,そこは次世代ということを分かりやすく示すためなのだとか。
またTGSで初公開となった新キャラクター,ヴィオラの武器が宝玉であることについては,そもそも「武器格闘」という縛りでは考えていないと回答。いまさら片手剣のキャラクターが出てきても面白くはないし,面白ければプレイヤーは満足してくれるはずと,自信のほどを語っていた。プレイヤーが寄せるアイデアについても,武器という縛りはとくに考えなくても良いそうなので,面白いアイデアがあったらぜひ小田嶋氏のTwitter宛に送ってほしいそうだ。
バトルシステム
また上級者向けには,クリティカルゲージのもう一つの使い方,「ブレイブエッジ」に注目してほしいとのこと。これはゲージを消費することで,特定の必殺技が強化されるもの。とくに初心者と上級者向けのシステムだそうで,「ブレイブエッジ」にはかなり使いやすい技が揃っているとか。
また防御面では,避け動作を素早くおこなえる「クイックムーブ」が追加された。クイックムーブで敵の攻撃をかわせば,相手に大きな隙が生まれるので,そこにクリティカルエッジやブレイブエッジを入れるのが,本作の基本だ。これは,とくに初代「ソウルキャリバー」のプレイヤーなら,違和感なく扱えるようになっている。
なおガードインパクトのほうは,今回比較的初心者向けに作られているとのことで,クリティカルエッジが使える状況であれば,まずそれが確定するそうだ(クリティカルエッジはリバースインパクト不可)。これはガードインパクト後に何をしていいか分からない(実際は投げと打撃の2択),という意見に対する小田嶋氏からの回答だそうで,ここは気持ちよく技が振れる爽快感を楽しんでほしい,とのことである。
両氏による最後の話題は,音について。元々サウンドには定評のあるソウルキャリバーシリーズだが,CIAの協力もあり,本作でとくに豪華なサウンドメンバーが集結している。音についてのディレクターからの要望としては,とくに初代の頃のサウンド――ゲームセンターの喧噪の中でも,耳に残る熱いサウンドをお願いしたそうだ。家庭用として発売される本作では,必ずしも必要ではないのかもしれないが,当時の感動,盛り上がりを再現するためにCIAとも調整を重ねたそうである。大会などでは,フィニッシュの合いの手で盛り上がれるようになっているとのことなので,ガチ勢の人達も楽しみにしていよう。
中鶴氏と由良氏が語る,ソウルキャリバーの音楽
夛湖氏と小田嶋氏のあとを継ぎ,ステージに上がったのは本作のサウンドディレクターを務めるバンダイナムコゲームスの中鶴潤一氏と,CIAの代表であり本作でも音楽監督を務めるの由良浩明氏(以下,由良氏)。ここからはまさにCIAの独壇場となり,本作の音楽についてのトークが繰り広げられていく。
バンダイナムコゲームス サウンドディレクター 中鶴潤一氏 |
CIA代表 音楽監督 由良浩明氏 |
まずは中鶴氏と由良氏の出会いについて。これは5年ほど前,由良氏が楽曲の使用許可を得るために,中鶴氏にコンタクトを取ったのが最初だという。由良氏はゲームやアニメの音楽を演奏するプロオーケストラ「エミネンス交響楽団」を率いていて,ソウルキャリバーの音楽を演奏したかったのだとか。その当時の印象について,中鶴氏は「すごいゲーマーの若者が来て,熱く語っていった」と語る。それまでも同様の依頼は何度かあったそうだが,由良氏の熱意に「これまでの人とは違う」という感想を持ったそうだ。
その縁があって,エミネンス交響楽団はソウルキャリバーIVで幾つかの楽曲の演奏を担当し,今回の「V」では新たに音楽制作会社を立ち上げた由良氏が,音楽監督として制作に関わることとなった。
ちなみに音楽監督とは,ゲーム中で流れる楽曲のディレクションを担当する人のこと。作曲家,演奏家,スタジオの手配,打ち込みなのか生演奏なのか,演奏の監督,ミキシングなど,その範囲は多岐にわたる。
そして中鶴氏の担当するサウンドディレクターは,ゲームのサウンドすべて――効果音,ボイス,音楽と,それをどう鳴らすかというプログラムまでを見る,ゲームの音の責任者だ。ゲームの中にどういう音が必要で,その音をどう用意し,どう効果的に鳴らすかを考え,プランを立てる。
制作の流れとしては,まず制作チームから上がってきた曲を由良氏がディレクションを行い,最終チェックを中鶴氏が行う形で進めているそうだが,一部中鶴氏が書いた曲は由良氏がディレクションするという逆のケースもあるそうだ。
続いて本作の音楽制作にあたり苦労した点について。これについて中鶴氏は,チーム全体でイメージを共有することの難しさについて語った。これまでのシリーズでは,基本的に中鶴氏を中心とした社内制作チームが曲を作り,中鶴氏自らでディレクションしていたので,思い描いたことを自分達の手で作ってしまえば良かったという。しかし今回は,それを由良氏に伝えて,さらに由良氏から各作家に伝えてもらわなければならない。由良氏自身がシリーズのファンであるため,ゲームの世界観等を1から10まですべてを説明する必要はないものの,最後の8〜10の部分はちゃんと伝えておかなければならない。
由良氏は,今回チームに参加したメンバー――INON ZUR氏(代表作:「Fallout 3」 「Prince of Persia: The Two Thrones」 「Dragon Age: Origins」など),CRIS VELASCO氏(代表作:「God of Warシリーズ」 「Warhammer 40,000: Space Marine」など)などはいずれも優秀な作家ではあるものの,最後の解釈の部分は,ちゃんと分かる言葉で共有する必要があると補足した。また海外の作家が参加しているからといって,洋ゲーのような音楽にしたくはなく,日本人の魂の部分を(由良氏「ミツルギの侍スピリッツをね」),しっかり受け継いだものになっているとのこと。
ゲストに菊田裕樹氏と三好智己氏を迎えて続く音楽トーク
今はCIAに所属している菊田氏だが,「ソウルキャリバーV」への参加を打診された際には,(かわいい系のファンタジーが多い,これまでの自身の作品傾向を考えれば)意外に思ったのと同時に,「ついにきたな!」と嬉しく思ったそうだ。実は菊田氏の最も好きなゲームのジャンルは格闘ゲームで,いつか格闘ゲームの曲を作りたいと,常々思っていたそうなのだ。ソウルキャリバーについても,初代からプレイしているとのことで,本作の楽曲には,そんな氏の20年分の情熱が籠っているとのこと。
そんな菊田氏が担当したのは,新キャラクター「ヴィオラ」の楽曲。未だ詳しい設定が明らかになっていないヴィオラだが,そのイメージについて菊田氏は,「ソウルキャリバーの中でも,新しいキャラクター」で,かつ「ダークな面を備えつつ,複雑な心理を持った深いキャラクター」と語る。そしてそれは氏にとっても,描きたいと思わせるに足るキャラクターだったのだとか。
実際の楽曲については,女性キャラクターということで,重厚さよりも繊細さ,武器の宝玉と爪から,素早いイメージのスピーディな曲にしあがっているそう。また格闘ゲーム好きの菊田氏らしく,キャラクターの動きや攻撃とのシンクロにはかなり気を使っているそうである。本作の発売を心待ちにしている人は,実際に曲が聴けるのを楽しみにしていてほしい。
菊田氏からは最後に,「ソウルキャリバーは最新のゲームであり,かつ古いゲーム。これまでの歴史があって,ファンが沢山いる分,思い入れも強い。それに加えて,僕の個性がちゃんと反映されたものを,というのが今回のチャレンジでした。頑張って魅力的なものに仕上げたつもりなので,ぜひ遊んで楽しんでいただければ嬉しいです」とコメントがあり,次のゲストに席が譲られた。
中鶴氏も「彼の曲は目をつぶって音を聞いただけで,シーンやシチュエーションがちゃんと浮かぶんです。それって映像音楽としてはすごく大事なことで,もちろんこのシーンの曲を,とお願いするわけだけど,それをこの年でできてしまうのがすごいし,うらやましい」と,絶賛を重ねていた。
本作への参加については,主にバトルシーン以外の部分,デモシーンやストーリーシーン部分の曲を担当しているとのこと。なんでも高校の夏休み中に仕上げようとしていたため,1日1曲というハイペースでの作業になり,由良氏も困ったほどのワーカホリックぶりだったそうだ。一方,本人は作曲自体が趣味であり,また映画音楽が好きなこともあって,すごく楽しい作業だったのだとか。
ただデビューについてのプレッシャーは感じていたようで,作業中はかなり悩みもあったそうだ。本作の参加を打診された際にも,三好氏自身プレイ経験があるタイトルだったこともあって,耳を疑ったとのこと。また最初は「実際に参加する体(てい)」で実戦経験を積むために,由良氏から与えられた練習なのかも,と思っていたそうだ。
最後は中鶴氏と由良氏から,本作を楽しみにしているファンに向けたコメントが寄せられ,イベントはお開きとなった。
中鶴氏「音楽についてもそうですが,今回は効果音やキャラクターボイスなど,それ以外の部分にも新しいチャレンジをしています。パトロクロスの声優さんはKENNさんという方ですが,生意気な感じがすごく良い。収録していてもムカつくらいで,でもそれが凄くあってるんです。本作はソウルキャリバーの新章として,新しい世界観を描いています。そこには期待や自信もあるし,不安もある。まだ発売までには時間があるので,それを100%の確信にできるよう,作り込んでいきたいと思ってます。来年の発売を,ぜひ楽しみにしてください。」
由良氏「今回は世界中からメンバーを起用して,すごく豪華なチームになっています。日本だけじゃなく,世界で受け入れられるゲームしたいと思っているので,楽曲にも期待していただければと思います。」
新たなキャラクターとシステム,そしてサウンドで,これまでとは一味違うタイトルになりそうな「ソウルキャリバーV」。2012年の早々に始まる新たな戦い,新章の幕開けに,いまから期待しておこう。
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