インタビュー
KONAMIとトライエースのタッグで制作される3DS用新作RPG「ラビリンスの彼方」。開発陣が目指す“新しさ”とは?
発売まで2か月を切ったものの,まだまだ謎の多い本作の気になる部分について,KONAMIの向峠慎吾プロデューサー,米山雅基ディレクター,そしてKONAMIと共に開発を手がけるトライエースの勝呂隆之ディレクター,鏡 研太郎アートディレクターに直撃した。
KONAMI ディレクター 米山雅基氏 |
KONAMI プロデューサー 向峠慎吾氏 |
トライエース ディレクター 勝呂隆之氏 |
トライエース アートディレクター 鏡 研太郎氏 |
「ラビリンスの彼方」公式サイト
3DSでプレイヤーの心を掴むために
提案したのが,少女という存在
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは「ラビリンスの彼方」を,KONAMIさんとトライエースさんが組んで制作することになった経緯からお聞かせください。
ラビリンスの彼方の企画が持ち上がったのは,同じくトライエースさんと取り組んでいる,12月22日発売の「FRONTIER GATE(フロンティアゲート)」の企画立ち上げが少し落ち着いた頃でした。確かニンテンドー3DSが発表される前の頃で,ハードウェアの技術研究を兼ねてスタートしました。
4Gamer:
なるほど,では最初からダンジョンRPGを作るという企画ありきのプロジェクトではではなかったんですね。
向峠氏:
ええ。まずは3DSというハードウェアで何かRPGを作ろうと,トライエースの五反田(義治)社長と話をしました。そこでどうせやるならば,立体視を活用したいという話になり,3DダンジョンRPGではどうかということになったんです。
3DダンジョンRPGというジャンルは,ニンテンドーDSでも一定層の需要がありますし,他社からも3DS用にいろいろ出てくるだろうという予想もあったので,早めに進行していたんです。
米山雅基氏(以下,米山氏):
私と勝呂さんがプロジェクトに加わったのが,それが決まった頃です。せっかくトライエースさんと一緒に進めるのなら,オリジナリティのあるものを作って,3DSのRPGの決定版になれるものを作ろうと,勝呂ディレクターとは話し合いました。
4Gamer:
勝呂さんが加わって話し合いを始めた頃の様子を教えていただけますか?
3DダンジョンRPGというジャンルは決まっていて,やることはある程度限定されていました。そこで,いくつかシステム的な提案をしたんですが,向峠さんの食いつきが良くなかったんです(笑)。
向峠氏:
確かに勝呂さんとは,当初システムの話ばかりしてた気がします(笑)。
勝呂氏:
そこで別方向からのアプローチとして,今回の女の子が出てくるという企画案を出したら,やっとOKをもらえました(笑)。
最初にお話をいただいたときは,KONAMIさんはオーソドックスなダンジョンRPGを求めているのかなと思いつつも,僕らとしては普通のものを作っても仕方ないという考えがあって,そのあたりで,最初の向峠さんの食いつきが悪かったのかもしれません。
米山氏:
トライエースさんにお願いする以上,システム面は確実にしっかりしたものになると,我々では予想していましたからね(笑)。
そこを心配するよりもまずは,3DSで最初に出すための何かキャッチーな“つかみ”がほしかったんです。そのうえで,じっくりと時間をかけて企画を詰めていくという流れでした。
4Gamer:
確かに,少女が常に画面にいるというシステムは,インパクトが大きいですね。
向峠氏:
3DダンジョンRPGと聞くと,とかく硬派なイメージがあって,画面も地味になりがちですよね。3DS本体の発売からさほど経過していない時期に発売するソフトとしては,それまでDSをプレイしていた層なども見据えると,ややライト寄りの人達の目も惹けるような“キャッチーさ”がほしかったんですよ。
さらにRPGというジャンルには,ストーリー性を求めるファンも大勢いらっしゃいます。ストイックになりがちなダンジョンRPGの画面の中に常に少女がいて,ストーリーテラー的な役割をしてくれることで,見た目の華やかさもストーリー性もグッと上がるという判断をしました。
4Gamer:
女の子のアイデアは勝呂さんが発案したものなんですか?
こちらからでしたね。ダンジョンが立体視になったとしても,結局は視覚的なものなので,新しいシステムには直接結びつきにくいんです。そこで3DSに合った世界観を考えて浮かんだのが,今回の設定でした。
思いついたときには,向峠さんをはじめKONAMIさんの希望に沿えるだろうという自信はありましたね。
4Gamer:
そこで選んだのが“少女”だった理由はあるんでしょうか? たとえば大人の女性や少年,あるいは動物などという選択肢もあるかとは思うのですが……。
勝呂氏:
さすがに動物が出てくるのはちょっと違うと思いますが(笑),女性でも少年でもよかったとは思います。ただ,ジャンル的にどうしても男性のプレイヤーが多いので,若い女の子のほうが,最初のつかみはいいだろう,と。
米山氏:
そこで男の子にしようという議論は,さすがにどこからも出ませんでしたね(笑)。スタッフ間でも満場一致でコンセンサスがとれました。
少女の存在により,
ダンジョンがより立体的に見える
4Gamer:
当初は技術研究という側面もあったようですが,実際に3DSで開発するにあたって,何か苦労されたことはありましたか?
勝呂氏:
新しいハードですので,最初の開発機材上で動いていたときはメモリ容量やロード時間などの技術的な部分で厳しくなったこともありました。でも,現時点ではプレイしていて気になる部分はありません。
向峠氏:
画面内に現れる女の子が1人ということで,そこにリソースを絞れたので,画面表示についての大きな苦労はありませんでしたね。それが2人や3人出るとなると難しくなってしまうんですけど。
3DSの立体視で遊ぶダンジョンRPGというオーダーをしてみたものの,それがうまくいくかどうかは組んでみないと分からなかったんです。でも実際に作り始めてもらうと,すごく奥行きが効果的に見えて,トライエースさんらしい美しい背景が見られるようになりました。そこに少女を立たせてみると,視点が定まって,ほかのゲームと比べても奥行感が出たんです。
向峠氏:
画面内にキャラクターがたくさん出て,見るべき場所が多かったりすると,あまり立体的に感じられなくなるんですよね。そういう意味でも,女の子を1人だけ画面に出すというのは,設計としても正解だったと思います。
4Gamer:
3D画面で立体視するいうことに関していうと,ダンジョンのデザインもすごく独創的ですね。
鏡 研太郎氏(以下,鏡氏):
まずはハードの特徴を一番活かせるところに最大限の労力を割こうということで,ダンジョンの奥行きや広さ,高さに関してはかなり力を入れてデザインしています。
3Dダンジョンって,普段は正面しか見ていないですよね。それを踏まえて,今回はダンジョンの上や下も眺めてもらいたいなと考え,視点移動を地形や敵のデザインに盛り込む形で,正面以外を眺めつつ遊べるように設計しました。
ただ,そういった独自のゲームデザインが盛り込まれていることによって,「3DダンジョンRPGっぽくない」と思っている方もいるようです。
4Gamer:
確かにこれまでのダンジョンRPGとはかなり雰囲気は違いますね。
勝呂氏:
黎明期のFPSは,かつてのダンジョンRPGをベースに発展させたものじゃないかと思っているんですが,今回はダンジョンRPGをFPSとは違う方向に発展させたらどうなるかと考えました。
ただ,操作感としてはFPS的なものを意識しています。敵もランダムエンカウントではないですし。
画面を見ると上が抜けていてダンジョン独特の閉鎖感がないのも,ほかの作品とは違う雰囲気になっている理由ですね。
とはいいつつも,オーソドックスなダンジョンRPGもリスペクトしていて,マップは方眼紙にマッピングできるような1歩ずつ進むものにしました。
勝呂氏:
最初はマス目を1歩ずつ進むのではなく,ヌルヌル歩けるように設計していたんです。ところがそれで遊んでみると,意外とストレスがたまるんですよ。アクションゲームのように微妙な操作をする必要のないゲームには,ちょっと合ってないな,と。
検証を重ねた結果,結局マス目を歩くほうがしっくりきたので,最終的にそちらに落ち着きました。
向峠氏:
移動というと,スピードについてもかなり調整しましたね。プレイアビリティを求めると移動は速いほうがいいんですが,そうすると少女がついてこられないんです。
プレイヤーが歩くスピードに合わせて女の子が超絶ダッシュするというのは,ゲームデザインとして美しくないですからね(笑)。
米山氏:
下画面を見るとすごくシステマチックですが,上画面はそれを感じさせない没入感のある表現をしていますから,そのバランスをどこに持ってくるかですよね。
システム面だけを考えると,移動速度はもっと速くしてもいいんですが,そうすると没入感が削がれてしまいます。最終的にその兼ね合いを考えた落としどころにはなりましたが,そこまでの調整には時間をかけました。
4Gamer:
TGSで出展されていたものを触ってみて,少し遅いかなという印象もあったんですが……。
勝呂氏:
TGSバージョンよりは速くなりましたのでご安心ください。
TGS版の移動スピードでも,慣れれば気にならないと思っていたのと,さらに開発スケジュールも切迫していたので,そのまま行くことも考えていました。でも,米山さんが「対応スタッフを増やすから調整してもいいよ」と言ってくれたので,調整しました。
魔法の谷に迷い込んだ少女を救う物語は,
少女と主人公達の友情物語でもある
4Gamer:
まだ謎の部分が多い世界観についてですが,本作の舞台は一体どういう世界なんでしょうか?
向峠氏:
すべてを隠しているわけではないんですが,冒頭から割とネタバレな要素を含んでいるので,そこは実際にプレイして確認していただくのがいいと思うんです。買っていただいた方の楽しみを,あまり事前に奪いたくないですからね。でも,隠しているのは物語の冒頭部分だけなんですよ。ゲーム自体はTGSにも出展していますし,システムも詳しく公開していますから。
ただ,多くのゲームの場合,序盤やオープニングをプロモーションで大々的に紹介することが多いのに,本作ではそこをお見せしていないので,なんとなく謎が多いような雰囲気になってしまうという(笑)。
4Gamer:
確かにストーリー以外の情報は,すでに多く出ています。
差し障りのない範囲でお話しをすると,少女がいた世界にはかつて魔法が存在していて,その魔法が封印されている場所が,ゲームの舞台となる谷なんです。そこに少女が迷い込んでしまったという設定ですね。
4Gamer:
そこにプレイヤーがどう関わってくるのか,気になりますね。
向峠氏:
一番のポイントはそこなんですよ(笑)。ダンジョンの中に迷い込んだ女の子がいて,プレイヤーの4人パーティが彼女を助けてあげるという設定なんですが,その出会いについてのくだりは,ゲームの電源を入れてから冒頭まで遊んでいただければ,ほとんど分かりますね,そこは楽しみにしていてください。
4Gamer:
分かりました。すごくもどかしいですが(笑),楽しみにしています。
ところでプレイヤーのパーティなんですが,もともと複数人数という設定だったんですか?
米山氏:
数の調整はありましたが,最初から複数でしたね。トライエースさんから出していただいた当初の企画書から,パーティと少女のふれ合いを大事にしたいということが伝わってきたので,シナリオでもそこが主軸になっています。
4Gamer:
そのシナリオはどんな内容なんですか?
そこは先ほども出ましたが,魔法の谷に迷い込んだ少女を4人の主人公が助けてあげるという,すごく王道の展開です。でも,僕らとしては,話の筋を楽しむことよりも,むしろ冒険を通した経験を少女と共有することで発生するコミュニケーションを楽しんでいただきたいんです。
勝呂氏:
その昔,「スタンド・バイ・ミー」という映画がありましたが,あのような雰囲気を狙っています。冒険を通して少女やパーティメンバーとの友情を深めていくというのが趣旨で,主人公が1人ではなく4人なのも,そのイメージを汲んでいるんです。
向峠氏:
最初にお見せしたビジュアルやスクリーンショットが,やや神秘的で儚げなイメージに捉えられていたようですが,あの少女は意外に元気で爽やかなキャラクターなんです。でもそのギャップも,実際に遊んでみると魅力に感じてもらえると思いますよ。
4Gamer:
プレイヤーの行動によって,彼女のリアクションが変わったり,性格が変わったりすることはないんですか?
勝呂氏:
行動によってちょっとしたリアクションをとることはありますが,性格や態度が変わったりすることはないですね。いわゆる恋愛ゲームの萌え要素的なものは入れていません。
4Gamer:
とはいえ,この衣装をプレイヤーが作れる着せ替え要素には,すごく萌え的なオーラを感じるんですが……(笑)。
勝呂氏:
確かにそうですね(笑)。着替え的な要素を好きな人は必ずいらっしゃるので,入れてみたんですが,着替えをさせるとなると衣装を用意しなくてはならないわけで,デザイナーの手間も考えて,いっそプレイヤーに作ってもらおうと思って……(笑)。
鏡氏:
勝呂さんは簡単に言いますけど,結構手間がかかってるんですよ,コレ。既存のツールではなく,イチから作っていますからね。
向峠氏:
これが凄く良くできているんで,初めて見たときはびっくりしました。下画面で絵柄を描くと,上画面の女の子の服にリアルタイムで反映されますからね。しかも着せ替えだけでなく,彼女の髪の毛の色なども変更できますから,いろいろといじってみると,ずいぶん印象は変わると思いますよ。
勝呂氏:
描いたデザインはSDカードにJPEG形式の画像として保存されていますので……,あとはいろいろとみなさんで楽しんでいただければと思います。
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ラビリンスの彼方
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