レビュー
PS4リモートプレイ対応の8インチ薄型防水タブレットをゲーマー目線で評価する
ソニーモバイルコミュニケーションズ
Xperia Z3 Tablet Compact
そんなXperia Tabletシリーズの最新モデルが,2014年11月に発売された「Xperia Z3 Tablet Compact」(以下,Z3 Tablet)である。Xperia Tabletシリーズでは初となる8インチサイズの液晶パネルを採用する製品で,PlayStation 4(以下,PS4)上で動作するゲームをネットワーク経由でプレイできる「PS4 リモートプレイ」に対応するのが特徴となっている。
そこそこ大きな画面でPS4をリモートからプレイできるという時点で食指が動く読者も少なくないだろうが,その総合性能は,ゲーマーが選ぶに値するものとなっているだろうか。じっくりと検証してみたので,その結果をお届けしたい。
手に持つと分かる圧倒的な薄さと軽さ
ただ,手に持って触っている限りにおいては,強度に不安は感じない。それでいて防水(IPX5,8)&防塵(IP6X)対応というのだから大したものである。
同じ8インチサイズの液晶パネルを搭載するAndroidタブレットとして,今回はNVIDIAの「SHIELD Tablet」とさまざまな面で比較することにしたのだが,薄さと軽さはZ3 Tabletの圧勝だ。SHIELD Tabletは8インチクラスのタブレットとしては重量級の製品で,本体サイズは221
横置き状態での本体左右端には,
なお,対応ヘッドフォンと組み合わせることでハイレゾ音源の音楽再生が可能とのことだが,ゲームでその利点を感じる機会はないだろう。
左右端にはスリット形状のステレオスピーカーを搭載。ゲームのサウンドを再生するには十分な品質といえる |
横置き時の下側面(=縦置き時の左側面)には,防水カバーに覆われたmicro SDカードスロットと,別売りのドックに接続するための接点がある。なお,試用機材は試作機であるためmicro SDカードスロットの隣にSIMカードスロットがあったが,製品版のWi-Fiモデルでは塞がれているとのことだ。MHL 3.0対応のUSB 2.0(Micro-B)端子は,本体右側面に用意されたキャップの下。左側面には何のインタフェースも用意されていない。
下側面の防水カバーを開けると,microSDカードスロット(左側)とSIMカードスロット(右側)が並んでいた |
右側面のカバーを開けるとUSB 2.0(Micro-B)端子が顔を出す。キャップレス防水仕様の端子を使わないのは,デザインを優先したためだろうか |
一方,上側面(=縦置き時の右側面)には,前述したボタン群のほか,上端付近にはマイク孔と3.5mmミニピンのヘッドセット用端子が並ぶ。
液晶パネルのバックライト輝度は高め
色温度もやや高めに
Z3 Tabletの液晶パネルで目立つ特徴は,バックライトの最大輝度が非常に高いことだ。スペック値は未公開なのだが,最大輝度に設定した画面は非常に明るく,外光の明るい屋外でも画面の視認には問題ないだろう。
視野角は,狭くはないがそれほど広くもないといった程度。非常に視野角が広かったGoogleの「Nexus 9」には及ばない。
Z3 TabletとSHIELD Tabletを並べて同じ画像を表示させてみると,発色の傾向が大きく異なる点が見えて興味深い。下に掲載したのは,両製品でテストパターン画像を表示した状態と,4Gamerの記事を表示した状態を並べて撮影したものだ。
どちらも最大輝度で表示しているので画面が白飛び気味ではあるが,発色の傾向が異なることは分かるだろう。Z3 Tabletは寒色寄りでやや青みがかっている一方で,SHIELD Tabletは暖色寄りの赤みがかった発色となっている。Nexus 9のファーストインプレッション記事でSHIELD Tabletと並べて比較したときよりも,発色の違いは大きい印象だ。
青みがかっていると言っても,写真やWebサイト,ゲーム画面の見栄えが悪いというわけではないので,実用上問題とはならないだろう。暖色寄りの発色を好む人は気になるかもしれないといったところか。
オンにしておいても性能面でのデメリットはほぼないことをベンチマークテストで確認しているので,オンにしたままでいいだろう。今回のテストでも,オンのままで計測している。
「PS4 リモートプレイは画面の大きなタブレットにこそ向く」ことをZ3 Tabletで実感
本稿の冒頭でも触れたとおり,Z3 Tabletは,PS4 リモートプレイに対応している。
PS4 リモートプレイとは,いわゆるゲームストリーミング機能の1種で,PS4上で動作しているゲームを,無線LANやインターネット経由でPS4と接続したスマートフォンまたはタブレット上でプレイする機能だ。見た目は端末側でPS4用のゲームが動いているように見えるが,実際にゲームが動作しているのはPS4側。PS4はゲームを動かしながら映像と音声をストリーミングビデオに変換して,ネットワーク経由で端末側に配信する。ストリーミングビデオの配信を受けた端末側では,それを再生しつつ,プレイヤーの入力をPS4へ送る。結果として,端末側でPS4のゲームをプレイできるという仕組みだ。
2014年12月時点において国内販売されている製品では,Z3 Tabletと「Xperia Z2 Tablet」,そしてスマートフォンの「Xperia Z3」と「Xperia Z3 Compact」(関連記事)のみがPS4 リモートプレイ対応端末となる。
ネットワーク経由でストリーミングビデオを配信し,それに対する入力も受け付けるという格好になるため,帯域幅が広く遅延も少ない家庭内LANで利用するのがPS4 リモートプレイの基本的な使い方である。ただ,十分な帯域幅と容量を確保できるなら,外出先からインターネットを経由して自宅のPS4にあるゲームをプレイすることも可能だ。
リモートプレイアプリをインストールしたホーム画面。プリインストールはされていないので,Google Playから入手する必要がある |
リモートプレイアプリを起動したら,最初にDUALSHOCK 4のペアリングを行おう |
続いて,Google PlayからZ3 TabletにAndroidアプリ「PS4 Remote Play」(以下,リモートプレイアプリ)インストールしておく。リモートプレイアプリを起動したら,続けてDUALSHOCK 4をZ3 Tabletに登録する。
次にDUALSHOCK 4をZ3 Tabletと接続(=ペアリング)する必要があるのだが,ここで注意すべきは,「すでにPS4とペアリング済みのDUALSHOCK 4をZ3 Tabletとペアリングし直すときは,いったんPS4とのペアリングを解除しなければならない」ということ。ペアリング解除と再登録は,DUALSHOCK 4の[SHARE]ボタンと[PS]ボタンを長押しすることで行うのだが,このときにPS4本体が近くで動作していると,Z3 TabletではなくPS4側とペアリングしてしまう。その場合は,PS4本体の電源をオフにしておくか,十分に離れた場所まで端末とDUALSHOCK 4を持っていって行う必要があるので,この点はご注意を。
ここまでの設定が終わったら,今度はPS4側から「リモートプレイ接続設定」でリモートプレイを有効にしておき,続いて「機器の登録」でつなげる端末を登録する。といっても難しいことはなく,PS4側に表示される数字をリモートプレイアプリに入力するだけだ。
リモートプレイアプリ側には,画面のビデオ品質を設定したりする機能もあるが,とりあえずプレイしてみるだけなら触らなくていい。
PS4側のリモートプレイ設定画面(左)。ここで「機器を登録する」を選択すると,リモートプレイアプリ側に入力する8桁の数字が表示される(右)。これをZ3 Tabletで入力すれば登録完了だ |
Z3 TabletからPS4に接続する(左)。接続が完了するまでは少し時間がかかった(右) |
リモートプレイアプリの設定画面(左)。PS4 リモートプレイを利用するにはPlayStation Networkへのサインインも必要だ。「ビデオ品質」設定では,画質を2段階から選択する。初めは「標準」のままで試し,自分のネットワーク環境なら安定したプレイが可能であることが確認できたら,「高」に上げるのがいいだろう |
映像の品質やレスポンスに対する反応を見てもらうために,PS4 リモートプレイで「KNACK」をプレイした様子を動画で撮影してみた。動画を見ると分かるが,キャラクターの前で障害物が動いたのを見てから,回避している場面が何度かある。見てから避けても間に合う程度に遅延が少ないことが,ここからも分かるだろう。ジャンプ攻撃にやたらと失敗しているが,これは遅延の影響などではなく,筆者がヘタなだけだ。
ただ,4分2秒あたりで通信が途切れ途切れになり,画面の表示が大きく乱れている。4分20秒あたりでキャラクターが大きくなる場面でも,映像に顕著なブロックノイズが発生しており,そして4分33秒で,とうとうPS4との接続が切れてしまった。この日はテストに使った4Gamerの編集部内ネットワークが調子悪かったので,それが影響したのだろう。ゲームストリーミング技術である以上,ネットワークの状況に左右される面があるのはどうしようもない。
ちなみに,接続が切れるとゲーム側は自動でポーズがかかった状態になった。
以上,実際にZ3 TabletでPS4 リモートプレイを試してみたが,想像していた以上にこれは使える印象を受けた。筆者にとって,PS4 リモートプレイの初体験は,Xperia Z3スマートフォンと組み合わせたデモで,そのときはあまりにも画面が小さすぎ,あまり魅力的だとは思えなかった。
だが,8インチサイズのZ3 Tabletでは,“PS4 リモートプレイにおける最大の問題”が解決しており,十分,ゲームになる。布団の中などで最大限くつろいだ状態でも,離れた部屋にあるPS4のゲームをプレイできるというのは,相当にオツなものである。
性能面ではSHIELD Tabletに及ばずも
バッテリー駆動時間は大きく上回る
続いてはスペックをチェックしていこう。
メインメモリ容量は3GBで,内蔵ストレージ容量は16GBもしくは32GB。microSDカードスロットも装備し,容量128GBのmicroSDXCカードに対応しているが,これらはハイエンドタブレットではごく一般的な仕様といったところ。最近はAndroid用ゲームでもGB級のデータ容量を使うものも珍しくないので,ゲーム用途で選ぶのであれば32GBモデルをお勧めする。
搭載OSは,Android 4.4.4(KitKat)。Android 5.0(Lollipop)へのアップデートが提供されるかどうかは不明だが,現時点では有名ゲームでAndroid 5.0対応が行われていなかったりする状況なので,ゲーム用途としては問題あるまい。
そのほかの主なスペックとしては,IEEE 802.11a/g/n/ac対応無線LAN機能の搭載や,アウトカメラ810万画素,インカメラ220万画素のカメラを搭載するといったあたりが挙げられるだろうか。ソニーの製品情報ページにあるスペック情報には,バッテリー容量の数字が記載されていないのだが,海外でZ3 Tabletが発表された時点では,4500mAhという数字が明記されていた。バッテリー駆動時間は,無線LANによるWebブラウジングの場合で約12時間とされている。
それでは,各種ベンチマークテストを使ってZ3 Tabletの実力を検証してみよう。今回は比較対象として,SHIELD Tablet(※OSはAndroid 4.4.2)でも同じテストを実施。両機種とも省電力設定は初期設定で,バッテリー駆動時間のテスト以外ではACアダプターを接続した状態で計測している。
まずは,グラフィックス性能のチェックとして,Android版「3DMark」による「Ice Storm Unlimited」プリセットのテストを実施した。グラフ1は,Ice Storm Unlimitedのスコアを比較したものだ。Z3 Tabletの「17513」というスコアは,2014年10月に登場したXperia Z3が「16717」,同じく「GALAXY Note Edge」が「15312」だったのと比べれば,優秀なほうであるのは間違いない。しかし,SHIELD Tabletのスコアに比べると半分程度に留まっている。それだけSHIELD Tabletはグラフィックス性能が高いということなのだが。
グラフ2は,Ice Storm Unlimitedの各項目をまとめたものだ。Graphics test1および2の結果は,総合成績どおりSHIELD Tabletの半分程度しかない。Physics testではやや差を詰めるものの,それでもSHIELD Tablet比で約66%程度のスコアに留まっている。
次なるテストは,Kishontiが開発したグラフィックスベンチマークソフト「GFX
実ゲームに近い性能を見るにはオンスクリーンの結果を,SoCの性能比較にはオフスクリーンの結果を参照すればいい。スコアはいずれも,計測中にレンダリングできたフレーム数を示している。
結果はグラフ3のとおり。3DMark以上に大きな差がついており,とくにMan
続いては,Android用総合ベンチマークツール「AnTuTu Benchmark」の開発元,AnTuTu Labsが提供するグラフィックスベンチマークソフト「3DRating for OpenGL ES 3.0」と「3DRating for OpenGL ES 2.0」だ。これらは,OpenGL ES 3.0またはOpenGL ES 2.0を使ってゲームを模した同じシーケンスを描画して,3Dグラフィックス性能を計測するものとなっている。ただし,オフスクリーンで描画する機能はないので,スコアは画面解像度の影響を受ける。
その結果をまとめたのがグラフ4だ。OpenGL ES 3.0のスコアは約4.3倍もの差がついており,勝負にならないレベル。一方のOpenGL ES 2.0では,約2.2倍程度となっている。今後,
グラフィックス性能ではSHIELD Tabletに圧倒されてしまったが,純粋なCPU性能の比較ではどうだろう。Primate Labsのベンチマークソフト「Geekbench 3」を使用して計測してみることにした。
グラフ5が総合成績である「Single-Core Score」と「Multi-Core Score」を比較したものである。Single-Coreだとそれほど大きなスコア差は生じていないが,
Geekbench 3の細目も確認してみよう。細目別スコアから一部を抜粋したものがグラフ6となる。クリックすると細目別スコアをすべて並べたグラフ6’を表示するようにしてあるので,興味のある人はそちらもチェックしてほしい。
細目別のスコアでは,とくにInteger Performance(整数演算性能)テストの
一方,メモリアクセス性能テストに属する「Stream Copy」以下の8項目では,なぜかZ3 TabletがSHIELD Tabletをやや上回るケースが出ているのは興味深い。
続いては,総合ベンチマークテストである「PCMark for Android」の結果を見てみよう。今回は,Webブラウジングとビデオ再生,テキスト編集に写真編集といったワークロードの処理性能を見る「Work Benchmark」と,バッテリー動作でこれらのワークロードを実行した場合のバッテリー駆動時間を検証する「Work battery life」の両方を測定している。
Work Benchmarkのスコアをまとめたのがグラフ7だ。「Web Browsing」のスコアがほぼ同等なのを除けば,各項目でSHIELD TabletがZ3 Tabletを大きく上回っており,総合成績の「Work performance score」では約25%ほどの差が付いた。Z3 Tabletのスコアが低いわけではないと思うが,SHIELD Tabletの前では霞んで見えてしまう。
グラフィックスやワークロードのスコアでSHIELD Tabletの後塵を拝したZ3 Tabletだが,Work battery lifeではどうだろう。今回は,両製品とも200cd/m2をやや上回る程度にバックライト輝度を設定したうえで,満充電の状態から開始して20%に減るまでに要した時間を計測することにした。輝度の計測には筆者の私物である「GALAXY Note 3」の内蔵照度計を使用しているので,簡易な計測ではあるが目安にはなるだろう。
その結果がグラフ8となる。SHIELD Tabletが283分(4時間43分)で音を上げたのに対して,Z3 Tabletのスコアは424分(7時間4分)。ゲームほどではないとしても,Work battery lifeはそれなりに高い負荷をかけ続けるテストである。そのテストでこれだけのバッテリー駆動を実現してみせたのは評価に値するのではなかろうか。
ちなみに,グラフ9はWork battery life中のスコアだ。SHIELD TabletはWork Benchmark計測時と比べて4〜9%程度のスコア低下が見られたのに対して,Z3 Tabletのスコアは1〜3%程度しか低下していない。
最後に,ごく簡単にだがタッチパネルの応答性についても言及しておこう。今回は連射測定アプリケーションではなく,Androidの開発者向けオプションにある「ポインタの位置」機能を利用するごく簡易な方法で検証したのだが,秒間6〜7連射程度の連打であれば,飽和することもなくタッチを認識していた。これくらいの連打スピードでよければ,タッチが認識されないという問題は起こらなさそうだ。
軽さと長時間駆動,防水,そしてPS4 リモートプレイに魅力を感じるなら選ぶ価値アリ
以上のように,ゲーム用のAndroidタブレットとしては現時点で最高性能を誇るSHIELD Tabletと比べてしまうと,Z3 Tabletがハードウェア性能で見劣りしてしまうことは否めない。Z3 Tabletの性能が低いわけではないものの,単純にゲーム用途でのハードウェア性能を追求するのであれば,SHIELD Tabletを選ぶほうがいいだろう。
4万円台前半から半ばで販売されているSHIELD Tabletと比べて,実勢価格が16GBモデルで4万円台半ばから後半,32GBモデルは4万円台後半から5万円台半ばとやや高い点もネックとなりそうだ。
そして何より重要なのが,そんな携帯性や防水性に優れるタブレットが,PS4 リモートプレイに対応しているということである。DUALSHOCK 4には防水機能がないので,一緒に風呂場へ持ち込むわけにはいかないが,アクション要素のないゲームなら仮想ゲームパッドでもプレイできないことはないので,「お風呂でPS4のゲームをプレイ」だって現実的なのだ。
こうした特徴に惹かれる人や,タブレットは積極的に持ち歩いて使いたいという人ならば,Z3 Tabletは魅力的な選択肢となるのではないだろうか。
●Xperia Z3 Tablet Compactの主なスペック
- OS:Android 4.4.4(KitKat)
- ディスプレイパネル:8インチTFT液晶,解像度1200×1920ドット
- プロセッサ:Qualcomm製「Snapdragon 801」(クアッドCPUコア「Krait 400」+「Adreno 330」,最大CPU動作クロック2.5GHz)
- メインメモリ容量:3GB
- ストレージ:内蔵(容量16GBまたは32GB)+microSDXC(最大128GB)
- アウトカメラ:有効画素数約810万画素
- インカメラ:有効画素数約220万画素
- バッテリー容量:4500mAh
- LTE対応:対応モデルあり
- 無線LAN対応:IEEE 802.11a/g/n/ac
- 本体サイズ:123(W)×213(D)×6.4(H)mm
- 本体重量:約270g
- 本体カラー:Black,White
- 主な機能:GPS,NFC,防水(IPX5,8),防塵(IP6X)
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