レビュー
カード長169mmと短い「GeForce GTX 560 Ti」搭載カードを試す
ELSA GLADIAC GTX 560 Ti mini
製品名に「mini」と示されていることから予想できるかもしれないが,GLADIAC GTX 560 Ti miniが持つ最大の特徴は「カード長が短い」ということだ。その長さはエルザジャパンの公称値で170mm。NVIDIA示すGeForce GTX 560 Tiのリファレンスカード長228.6mmと比べ,60mm弱も短縮されている。
今回は,そんなGLADIAC GTX 560 Ti miniをエルザジャパンから入手したので,カード長以外に違いがあるのかないのか,いくつかのテストから明らかにしてみたいと思う。
基板サイズの小型化に伴い
新型クーラーは動作音が増大
なお,GLADIAC GTX 560 Ti miniが搭載する補助電源コネクタは6ピン×2で,これはリファレンスデザインと同じだ。オリジナル基板を採用しても,消費電力の大幅な低減はさすがに難しかったということなのだろう。
というわけで,カード背面の4か所で固定されたGPUクーラーを取り外してみると,8mm径のヒートパイプが2本が,GPUパッケージとの接触面から放熱フィンへと伸びるデザインになっているのを確認できる。リファレンスデザインを採用したGLADIAC GTX 560 Tiだと,ヒートパイプ3本を備えたGPUクーラーを搭載しているので,GLADIAC GTX 560 Ti miniのそれは小型版,あるいは簡略化版と見ることもできそうだ。
GPUクーラーを取り外したところ。電源部にはヒートシンクが取り付けられているが,メモリチップには取り付けられていない |
GPUクーラーを別角度から見た様子。GPUと接触する部分からフィンへと2本のヒートパイプが伸びているのが見て取れる |
ちなみにGLADIAC GTX 560 Ti miniの動作クロックは,コア822MHzのシェーダ1645MHz,メモリ4008MHz相当(実クロック1002MHz)。このあたりはGLADIAC GTX 560 Tiとまったく同じだ。
入手した個体が搭載するGeForce GTX 560 Ti。パッケージ上の刻印は「GF114-400-A1」だった |
グラフィックスメモリチップはHynix Semiconductor製のGDDR5となるH5GQ1H24BFR-T2Cだ |
そこで,動作音の違いがどの程度なのかを知るべく,ストレスツールの「OCCT」(Version 4.0.0)を用いてGPUに負荷をかけ,後述するテスト環境におけるアイドル時と高負荷時の動作音を計測してみることにした。
テストは,OCCTからGPUに負荷をかけず放置している状態を「アイドル時」,GPUに負荷を与えている状態を「高負荷時」として,それぞれの状態を60秒間ずつ,合計120秒間計測するという方法で行った。GPUクーラーのファン部分からマザーボードに対して垂直方向へ100mm離れた場所で,マイクを使って録音している。カードの高さも考えてもらえればと思うが,ファンのすぐ近く,というイメージだ。
今回は,テストシステムをPCに組み込まず,いわゆるバラック状態でテストしており,動作音の違いが相当分かりやすくなっている。PCケースに組み込んだ場合,実際に聞こえる音が緩和される可能性がある点は押さえておいてもらえると幸いだ。
その結果は,下に音声ファイルとして掲載したので,ぜひ聞き比べてみてほしい。アイドル時の動作音にはそれほど違いがないものの,負荷がかかると,GLADIAC GTX 560 Ti miniの音量が大きくなってくるのが分かる。
とくに開始から90秒のあたりの音声を聞き比べるとその違いは瞭然だろう。カードサイズがコンパクトになったのは歓迎すべきポイントであるが,GPUクーラーの動作音が大きくなった点は残念だ。
3D性能は従来モデルと変わらず
GPUクーラーの冷却性能もほぼ同じ
さて,GLADIAC GTX 560 Ti miniとGLADIAC GTX 560 Tiとで基本的な仕様が同じことから,3D性能も同等であることが容易に想像できるだろう。そこで,本当に違いはないのかを確認すべく,下の表に示したテスト環境を用意して検証することにした。
これらに加えて,「Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz」のレビューなどと同じく「バトルフィールド 3」(以下,BF3)のテストも行うことにした。BF3のテスト方法は,米田 聡氏がBF3のGPU検証記事で行ったテストから「THUNDER RUN」シークエンスを採用し,検証記事と同じく「最高設定」でのテストに加えて,アンチエイリアシングと異方性フィルタリングを無効にした「カスタム設定」でのテストも実施している。
テスト結果はグラフ1〜9のとおり。グラフ1が3DMark 11,グラフ2〜5がSTALKER CoP,グラフ6,7がCall of Duty 4,グラフ8,9がBF3のものだ。
当たり前の話だが,結果を見てみるとGLADIAC GTX 560 Ti miniとGLADIAC GTX 560 Tiは見事なまでに横並び。つまり,オリジナルデザインを採用したとはいえ,3D性能に影響はないということになる。
なおグラフ内においてのみ,スペースの都合でGLADIAC GTX 560 Ti miniをGTX 560 Ti mini,GLADIAC GTX 560 TiをGTX 560 Tiと記載している点はお断りしておきたい。
3D性能が同等であるのは判明したが,消費電力が気になるという読者も多いのではなかろうか。というわけで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を計測することとした。
動作音計測時とは異なり,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各ベンチマーク実行中に最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時として,スコアをまとめた結果がグラフ10だ。
GLADIAC GTX 560 Ti miniの消費電力は,GLADIAC GTX 560 Tiと比べると若干低め。もっとも,2〜5Wと,ほとんど誤差レベルなので,基本的には「両者に違いはない」と見ておくべきだろう。
最後にそれぞれのGPUクーラーの冷却能力に違いがあるのかを見ておきたい。OSの起動後30分放置した時点をアイドル時と設定したのはグラフ10と同じだが,「高負荷時」は,3DMark 11の30分間連続実行時点を採用しているので,この点は注意してほしいが,両時点におけるGPU温度をTechPowerUp製GPUモニタリングツール「GPU-Z」(Version 0.5.6)で取得したものがグラフ11となる。
アイドル時だけ見るとGLADIAC GTX 560 Ti miniのほうが温度は若干低めだが,こちらも基本的にはほぼ同じ結果と見ていいだろう。つまり,カード長を60mmも短縮しながら,リファレンスデザインのカードと同じ3D性能,同じ冷却能力を維持し,その分だけ高負荷時に若干動作音が大きくなっているわけである。
サイズを重視したいユーザーには
有力な選択肢と言える
ただそれは,「動作音以外のすべてを維持したまま,長さを短くできた」というのと同義でもある。169mmというカード長のおかげで,小型PCケースなどにも比較的組み込みやすく,使い勝手が格段に向上しているのは間違いない。高めの3D性能と短いカード長にメリットを見出せるユーザーにとっては,待望の1枚と言えるだろう。
GLADIAC GTX 560 Ti mini製品紹介ページ
- 関連タイトル:
GeForce GTX 500
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