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「サガ」や「聖剣伝説」のバトル曲がバンドサウンドに生まれ変わった! 伊藤賢治氏のライブ「THE NEXT STAGE 〜gentle echo meeting 3〜」レポート
「THE NEXT STAGE 〜gentle echo meeting 3〜」特設ページ
「ギタドラ」「デビサバ2」「バレットソウル」の楽曲や
さらには自身のボーカルまで披露した前半戦
開演前の場内アナウンスは,声優の杉田智和さんが担当。「携帯電話をお持ちのお客様はあらかじめ電源をお切りいただき,時計などのアラームセットの解除をお願いいたします。もしお守りいただけない場合は,アサシンギルドが動きます」「死ね,ジャミル!」と,「ロマンシング サ・ガ」にちなんだネタが仕込まれており,客席を沸かせた。
このナレーションは,ラジオ番組「杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン」のオープニングテーマを伊藤氏が手がけたり,たびたびゲスト出演しているなどの縁によって実現したもの。番組レギュラーの“SP田中”氏もナレーションに合いの手を入れていた。
伊藤賢治氏(キーボード) |
寺前 甲氏(ギター) |
上倉紀行氏(ギター) |
榎本 敦氏(ベース) |
山内 優氏(ドラム) |
和田貴史氏(マニピュレーター) |
最初に,伊藤氏を除くメンバーがステージに登場し,伊藤氏不在のまま演奏がスタート。そして,イントロが終わろうかというところで,満を持して伊藤氏が姿を現した。
来場者からの拍手で迎えられる中,ショルダーキーボードを手に,1曲目「Shake and Shout!! 〜Long Version〜」(GuitarFreaks & DrumMania V7)でライブは幕開け。演奏の合間には,伊藤氏が腕を振って客席を煽り,観客も手拍子で応える。
続いては「OVER THE LIMIT! 〜Long Version〜」(GuitarFreaks & DrumMania V6)。今回のライブは伊藤氏にとっても初めてのロックバンドスタイルだったのだが,「ギタドラ」シリーズ用に書き下ろされたこの2曲は,バンド編成での演奏との相性も抜群で,ライブのオープニングにふさわしい盛り上がりをみせた。
次に,今年7月に発売された「デビルサバイバー2」から,伊藤氏のピアノソロがメインの「インタールード」と,複数の楽曲を組曲形式にアレンジした「絶体絶命/運命への挑戦/セプテントリオン」を続けて披露。
デビルサバイバー2の音楽は伊藤氏とアトラスのサウンドチームとで共同で制作したそうだが,このコラボレーションについてはアトラスのファンや業界内でも驚かれたという。
ここで伊藤氏はバンドのメンバーを紹介。メンバーの中でも,ギターの上倉紀行氏は伊藤氏とともにゲーム音楽の制作をすることも多く,今回のステージでは伊藤氏のトークの“相方”的なポジションを担っていた。
この2人がタッグを結成したきっかけは,伊藤氏にとって初めて手がけたシューティングゲームでもある「バレットソウル -弾魂-」だ。元々は伊藤氏と高橋コウタ氏のユニット“RESONATOR”として同作の作曲を担当していたそうだが,高橋氏が病気により途中降板となってしまい,ピンチヒッターとして呼ばれたのが上倉氏だったのだという。
伊藤氏が作曲したものを上倉氏が編曲するという作業の流れだったそうだが,上倉氏は「イトケンさんの曲が上がってくるのが遅い!」とスケジュール面でかなり苦労した様子であった。
そのバレットソウル -弾魂-から,最終ステージのBGM「金城湯池」と,ラストボス戦の「奸人之雄」の2曲を披露。ゲームのクライマックスに流れる曲のため非常にアップテンポで,さらに寺前 甲氏,上倉氏,伊藤氏の3人のソロパートもどんどんエスカレートする激しいアクトとなった。そのため,演奏直後のMCで伊藤氏は「こんなにハードだったっけ? 本番とリハで違うね……」と思わずこぼしていた。
今回,この2曲を演奏するにあたり,本来のボーカルである長谷川さんやnaoさんをゲストに呼ぶ案もあったらしいが,2人ともスケジュールが合わなかったとのこと。そこでボーカルを買って出たのはなんと,伊藤氏ご自身。
伊藤氏が「自分のコンサートだから,歌ってみるか!」と言うと,客席からも「おおー!!」と歓声があがり,貴重な伊藤氏の生歌による2曲が披露された。激しい演奏に負けじと張り上げられた伊藤氏のボーカルに客席も白熱。前半のハイライトといえる一幕となった。
後半戦はスクウェア時代のバトル曲
まさにファン待望のひとときに
休憩を挟んでの後半は,伊藤氏によるピアノソロから開幕。
メンバーがステージに揃ったところで伊藤氏が「サガやるよ!」と宣言すると,客席からは「待ってました」とばかりに割れんばかりの拍手が響きわたった。
さらにここで,伊藤氏がショルダーキーボードをギターの上倉氏に手渡し,これまでエレキギターで攻撃的な音を奏でてきた寺前氏もアコースティックギターに持ち替え,これまでの演奏とはまた異なる編成とアレンジで「ロマンシング サ・ガ2」の「七英雄バトル」を披露した。
ここでMCは,各バンドメンバーにとってのサガシリーズの思い出話に。伊藤氏は「スクウェア(当時)に入って2か月目で作曲した」とSa・Ga2当時のことを振り返る。Sa・Ga2は「FINAL FANTASY IV」と同時進行で開発が進んでいたため,両方で作曲を担当していた植松伸夫氏が「よっぽど忙しかったんだろうね」とのことで,伊藤氏に白羽の矢が立ったそうである。
一方,プレイヤーとしてサガシリーズに親しんできたメンバーはというと,ドラムの山内氏が「ロマサガ1か2か覚えてないけど,とにかく難しかった……」と述べ,観客の笑いを誘った。また,マニピュレーターの和田氏はゲームボーイのサガシリーズを小学生の頃に遊んでいたらしく,「あの時の音楽の人が今ここに!」と感慨深げに語っていた。
続く「ロマンシング サ・ガ3」の「四魔貴族バトル1」「四魔貴族バトル2」のメドレーでは,特徴的なイントロが流れた瞬間に早くも大歓声が上がる。その歓声に応えるように,曲中では寺前氏,上倉氏,伊藤氏によってパワフルなソロ合戦も披露された。
さらに,伊藤氏の「いくぞー!」のかけ声とともに同じくロマサガ3の「ラストバトル」に突入。ハイテンポな熱いバトル曲の連続に,これまで席についていた観客も次々と立ち上がり,手拍子が会場に響く。
ここで,各曲名について伊藤氏が「もっといろいろ考えておけばよかった」と後悔するひと幕も。ゲーム本編の開発が終了してすぐにサウンドトラックの作業に入るため,そこで曲名を考える際には「“下水道”でいいや……」となってしまう,と伊藤氏が明かすと,観客は爆笑。
ちなみに,「ロマンシング サ・ガ」の中でも人気の高い楽曲「下水道」については,元々は全キャラクター共通のテーマ曲として作ったはずが,下水道のBGMとして使われた――という裏話がある(関連記事)。
そして「ミンストレルソングいきますか!」のかけ声とともに,「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」より,「戦いの序曲」「Believing, My Justice」を演奏。ソロパートで各メンバーの見せ場を作りつつも,曲のキメとなるフレーズではバッチリと6人の演奏が重なり,バンドの生演奏ならではの迫力をもったサウンドがホールに響く。
いよいよ最後の曲。伊藤氏が「ラストといえば――」の振りに,上倉氏が「下水道ですか?」とひとボケを挟みつつも,「決戦! サルーイン」を披露した。まさにラストにふさわしい楽曲で,伊藤氏と寺前氏が背中合わせで演奏するなど,見せ場のパフォーマンスも満載の演奏であった。
伊藤氏の「まだミンストレルソングいきますよ! ツーバスですよ!」の振りから,アンコール1発目は「呼び醒まされた記憶」。
後半はここまでサガシリーズ一色だったが,伊藤氏といえば「聖剣伝説」シリーズの楽曲も手がけている。つい先月も,聖剣伝説20周年を記念し,伊藤氏はアレンジアルバム「Re:Birth」をリリースしたばかり(関連記事)。
サガシリーズと聖剣伝説シリーズ,いずれも新作を熱望するファンが客席には非常に多く,伊藤氏が「今までの作品のリメイク版と新作,どっちがいい?」と問いかけると,客席からすかさず「両方!!」との声が多数飛び出した。
もちろん実現するかどうかは別だろうが,伊藤氏も「例えば俺と浜渦(正志)君でコラボレーションとかね」と述べるなど,機会さえあればぜひ参加したいといった様子であった。
演奏とはまた違った部分で盛り上がったところで,アンコールの2曲目に「聖剣伝説DS チルドレン オブ マナ」より「マナの嬰児」を演奏。曲の終了と同時にステージの左右から大きな音で大砲が鳴り,銀色のテープが飛び出す演出付きであった。
そして,「本当に本当に最後の曲」として演奏したのは「聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜」から「戦闘2 -勇気と誇りを胸に-」。終盤からアンコールにかけてハイテンポな楽曲が続いたが,フィナーレはあえて,ミドルテンポの美しいメロディーが響く曲である。観客は総立ちで手拍子を合わせ,会場全体が一体感に包まれた中,このライブは終演を迎えた。
なお,伊藤氏の演奏が次に楽しめるのは,2012年1月8日にギタリストの太田光宏氏によって開催される「はあとのおと vol.4」へのゲスト出演だ。今回とは全く違った編成のライブのため,伊藤氏のまた別の一面が見られることだろう。
なお,先日のリハーサルの際に伊藤氏が語ったところによると,「“gentle echo meeting”は来年はお休みしようと思うんです。再来年にまた,全然違う形でやろうかな」とのこと。少々先の話ではあるが,再来年には,伊藤氏にとってもファンにとっても新しい展開が待ち受けていそうだ。
また,こうしたバンド編成のライブについては「“スピンオフ”みたいな感じで,“バトル曲聴きたいぞ”という要望があれば,無いこともない――という感じでやっていこう」と述べており,残念ながら今回来場できなかった人も,決して諦めずに今後の情報をチェックした方が良さそうだ。
筆者自身も,いち観客として言わせてもらえるのなら,「このバンドの演奏を観られるのが1回限りだなんて,あまりにもったいない!」と感じる素晴らしいライブだった。それだけに,ぜひ今後もこの編成で,今回のセットリストに入っていなかった曲も含め,またライブに参加したいと願うばかりだ。
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