レビュー
従来比で1GHz高いメモリクロックのGTX 1080とGTX 1060 6GBをどう受け取るべきか
MSI
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G
GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G
4Gamerでは登場に合わせて,まさにこれらを採用するMSI製グラフィックスカード「GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G」「GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G」を入手し,性能速報をお伝え済みだが,ようやく残るテストデータも取れたので,カードの紹介も含め,あらためてテスト結果をお届けしたいと思う。より高いメモリクロックのGTX 1080カードとGTX 1060 6GBカードが持つ性能に何をどれだけ期待できるか,ぜひチェックしてほしい。
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gは「+なし版」」のマイナーチェンジ
搭載するGPUとメモリチップの概要紹介と,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GおよびGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gの動作クロック設定に関する話は性能速報記事で済んでいるため,本稿ではカードの概観から入っていこう。
また,マザーボードへ差したときの垂直方向にI/Oブラケットから同35mmはみ出しており,8ピン6ピン各1の補助電源がそのはみ出した基板の縁(へり)でさらに垂直方向を向いているため,マザーボードの垂直方向には相当な空間的余裕が必要となる。この点は十分に注意が必要だろう。
ちなみにここまで述べてきた仕様は,「+なし」の従来製品「GeForce GTX 1080 GAMING X 8G」と同じ。リンク先の記事を見てもらうと分かるように,見た目も瓜二つだ。
補助電源コネクタは8ピン×1,6ピン×1という構成で,8ピン×1であるGTX 1080 FEと比べると電力供給量の強化が図られている |
外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4 |
GPUクーラーの取り外しは自己責任であり,取り外した時点でメーカー保証は受けられなくなる。それを断ったうえで,今回はレビューのために取り外して,GPUクーラーと基板を詳しく見ていこう。
また,基板をほぼ覆い尽くすほど大きな放熱フィン自体も従来製品から変わっていない。クーラーの下ではメモリチップを覆うヒートスプレッダ兼補強板,電源部に対しては放熱フィン付きヒートシンクを採用している点もこれまでどおりである。
ヒートパイプの構成をはじめ,GPUクーラーの仕様はGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gから変わっていない |
基板の両面をヒートスプレッダ兼補強板とが覆い,冷却効果の向上とたわみ防止に寄与している(と思われる) |
一方の基板だが,そこにあるシルク印刷には「V336 VER:3.0」とあった。これは「+なし」のGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gの基板にあるシルク印刷とまったく同じなので,基板は共通という理解でいいだろう。
電源部は見る限り8+2フェーズ。電源部の部材はMSIが独自に定める品質規格「Military Class 4」に準拠したものとされている。
GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gは冷却機構の簡略化が入る
またGTX 1060 6GBというGPUの仕様上,SLIブリッジコネクタは採用していない。
基板側の電源部は見る限り5+1フェーズ構成。GPU用とメモリチップ用それぞれ1フェーズ分の空きパターンがあるので,基板設計上はさらなる上位モデルも実現できそうな印象だ。
その電源部だが,GPU用のMOSFETにはUBIQ Semiconductor製の「QM3816N」,メモリ用にはTexas Instrumentsの「SM7320」をそれぞれ搭載していた。
Founders Edition,そして「+なし」の現行モデルと比較してみる
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gの比較対象には,GTX 1080 FEと,「+なし」モデルであるGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gを用意。GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gのテストでも同様に,「GeForce GTX 1060 6GB Founders Edition」(以下,GTX 1060 6GB FE)および「+なし」モデルである「GeForce GTX 1060 GAMING X 6G」と比較することにした。
性能速報でもお伝えしているとおり,今回の主役となるGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GとGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gは,ともに3つの動作モードを持つため,全モードでテストを実施する。ただしスケジュールの都合から「+なし」モデルの2製品は,工場出荷時設定である「ゲーミング」モードのみでテストを実施するので,この点はご了承を。今回取りあげる各製品の公式クロック情報は以下のとおりとなる。
テストに用いたGTX 1080搭載製品の動作クロック
- GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G(OC):ベース1709MHz,ブースト1849MHz,メモリ11112MHz相当
- GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G(ゲーミング):ベース1683MHz,ブースト1823MHz,メモリ11008MHz相当
- GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G(サイレント):ベース1607MHz,ブースト1747MHz,メモリ11008MHz相当
- GeForce GTX 1080 GAMING X 8G(ゲーミング):ベース1683MHz,ブースト1822MHz,メモリ10108MHz相当
- GTX 1080 FE:ベース1607MHz,ブースト1733MHz,メモリ10010MHz相当
テストに用いたGTX 1060 6GB搭載製品の動作クロック
- GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G(OC):ベース1594MHz,ブースト1810MHz,メモリ9128MHz相当
- GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G(ゲーミング):ベース1569MHz,ブースト1785MHz,メモリ9028MHz相当
- GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G(サイレント):ベース1506MHz,ブースト1722MHz,メモリ9028MHz相当
- GeForce GTX 1060 GAMING X 6G(ゲーミング):ベース1569MHz,ブースト1784MHz,メモリ8008MHz相当
- GTX 1060 6GB FE:ベース1506MHz,ブースト1708MHz,メモリ8008MHz相当
なお,381.65と381.89の両ドライバはいずれもRelease 381世代なので,性能面にそれほどの影響はないものと考えている。381.89で修正の入った「アイドル状態の駆動電圧が高い問題」の影響はあるが,これはやむを得ないものとして話を進めたい。
そのほかのテスト環境は表のとおりだ。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション19.0準拠。ただし「3DMark」のテストは性能速報記事で済んでいるため,今回は割愛する。
解像度は,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gのテストにあたっては3840
ちなみにここまで説明してきたテスト環境と方法は,4月18日に掲載した「Radeon RX 580」のレビュー記事とまったく同じ。そこで今回,GTX 1060 FEのスコアは,流用できる限り先の記事から流用している。
最後になるが,MSI製カードはグラフ中に限り「MSI 1080 X+」「MSI 1080 X」「MSI 1060 6GB X+」「MSI 1060 6GB X」と表記し,さらに動作モードはその後ろに丸括弧で加えていることをここでお断りしておきたい。
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G:メモリクロック引き上げの効果は最大約5%ながら,ほぼ得られないことも
まずはGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gの性能から見ていこう。
グラフ1,2は「Far Cry Primal」のテスト結果だが,ゲーミングモード同士で比較すると,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gは,「+なし」のGeForce GTX 1080 GAMING X 8G比で4〜5%程度高いスコアを示している。両製品の間にある違いはほとんどメモリクロックのみと言っていいレベルなので,メモリクロックの約1GHz引き上げがこの違いを生んだということになるだろう。ちなみにGTX 1080 FEに対しては6〜10%程度高いスコアだ。
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gの動作モード間で比較すると,OCモードの効果はほとんどないと言わざるを得ない。一方,3DMarkだとPower Limitの影響でGTX 1080 FEよりスコアを落としていたサイレントモードがここではGTX 1080 FEと同等以上に立ち回っており,この点は興味深いところである。
続いてグラフ3,4は「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)の結果である。
ARKでは「Low」プリセットの2560
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gにある3つの動作モード間にある違いも,Far Cry Primalのそれと大差ない。
Vulkanモードで実行した「DOOM」は,ここまでと異なるスコア傾向が出た(グラフ5,6)。GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GのゲーミングモードはGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gと2〜3%程度のスコア差しか付けられていない一方,GTX 1080 FEに対しては描画負荷が高まるほどスコア差を開き,最大では約16%ものギャップが生じている。DOOMにおいてはメモリクロックの引き上げよりもGPUコアクロックのほうがフレームレートに効くというのがよく分かる結果である。
グラフ7,8は「Fallout 4」のテスト結果だ。ここでは2560
DOOMとは異なる,Fallout 4はいまとなっては十分に“軽い”タイトルという理由で,ここではGPU性能のほうがスコアを左右しやすくなっているということなのではなかろうか。
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果がグラフ9,10だが,このクラスのGPUにとって「標準品質(デスクトップPC)」のスコアはあまり意味がなく,実際,スコア差も大してついていないため,より現実的な「最高品質」のスコアを見ていこう。
すると分かるのは,ゲーミングモードで動作するGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GがGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gに対して1〜3%程度,GTX 1080 FEに対しては9〜10%程度高いスコアを占めていることだ。おおざっぱにまとめると,Far Cry Primalのスコア傾向とFallout 4のスコア傾向の中間,どちらかと言えば後者寄りといったところか。
グラフ11,12はDirectX 12モードで実行した「Forza Horizon 3」のテスト結果だが,2560
GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G:メモリクロック引き上げ効果はここでも数%程度
続いてはGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gである。グラフ13,14だが,ここでゲーミングモードのGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gは「+なし」のGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gに対して3〜5%程度高いスコアを示した。両製品のGPUクロック設定はほぼ同じなので,この3〜5%程度というのが,約13%メモリクロックを引き上げた効果ということになるだろう。
対GTX 1060 6GB FEだと,スコアは6〜7%程度高かった。また,OCモードとサイレントモードのスコアは,それぞれゲーミングモードと比べると最大約2%,フレームレートにして1〜2fpsの違いを生んでいる。
ARKのテスト結果がグラフ15,16だが,Lowプリセットの1920
グラフ17,18はDOOMの結果だが,ゲーミングモードにおけるGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gのスコアは対GeForce GTX 1060 GAMING X 6Gで100〜102%程度。GTX 1060 6GB FEとの比較だと約5%高いスコアなので,ここでも「クロック全体を引き上げた効果はあるものの,メモリクロックだけをさらに引き上げたことの効果はそれほど大きくない」結果になっていると言える。
Fallout 4のテスト結果がグラフ19,20だ。ここでGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gのゲーミングモードと「+なし」のGeForce GTX 1060 GAMING X 6G間でスコアはほぼ横並び。メモリクロックはスコアに影響をまったく与えていない。
グラフ21,22はFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの結果で,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GのゲーミングモードはGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gに対して2〜3%程度高いスコアを示した。メモリクロックが約13%高いことを考えればわずかだが,少なくとも上で示したFallout 4よりは景気の良い数字だ。
GTX 1060 6GB FEに対しては3〜7%程度高いところにいる。
Forza Horizon 3のテスト結果がグラフ23,24で,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GのゲーミングモードはGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gとほぼ横並び。Fallout 4と同じく,メモリクロック引き上げの効果は得られていない。
メモリクロック引き上げによる消費電力の増加はごくわずか。Twin Frozr VIの冷却性能と静音性は申し分なし
さて,クロックアップモデルでは,どうしても消費電力の増大が懸念される。そこで今回も,ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定してみよう。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。
まず,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gとその比較対象におけるテスト結果はグラフ25のとおりだ。アイドル時はGTX 1080 FEが若干低いものの大差はなく,横並びと言っていいだろう。
ではアプリケーション実行時はという話になるが,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GのゲーミングモードはGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gとほぼ変わらず,GPUの個体差かどうか,むしろテストによっては低い消費電力を示している。少なくとも,グラフィックスメモリチップの高クロック化に伴うペナルティは大きくないか,無視できるレベルだと言えるだろう。
GTX 1080 FEと比べると12〜50W増大してしまっているものの,これはPascal世代のGeForce上位モデルに共通する傾向であり,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gだけの特性というわけではない。
GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GのサイレントモードがGTX 1080 FEから8〜28W低いスコアを示している点は目を惹くところで,ゲーム性能に大差がない割に,Power Limitの効果が出ている点は評価できそうだ。
続いて,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gとその比較対象におけるテスト結果がグラフ26となる。こちらもアイドル時はGTX 1060 6GB FEが若干低いものの,全体としては横並び。アプリケーション実行時もGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GとGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gとで消費電力に大差はないという,グラフ25を踏襲した結果となっている。
なお,こちらのサイレントモードでPower Limitがかかっていないという話は性能速報記事でお伝えしているとおりだが,実際,目立った消費電力の低減はなく,むしろわずかながらGTX 1060 6GB FEより高い。
Twin Frozr VIクーラーの冷却性能を確認すべく,GPU温度も確認しておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 1.20.0)からGPU温度を取得することにした。テスト時の室温は24℃で,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態でテスト用の机に置いている。GPU温度が低い状態ではファン回転を止める,工場出荷時設定を用いた。
グラフィックスカードの場合,GPUごとに温度センサーの場所は異なる可能性が高く,また搭載するクーラーも,その制御法も異なるため,横並びの比較はできない。なのであくまでもGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GとGeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gの温度がどれくらいかを見るに留めるが,グラフ27,28を見ると,高負荷時における両製品のGPU温度がまったく問題ないレベルにあることが分かる。
アイドル時にファン回転を止める仕様のため,どうしてもFounders Editionと比べるとアイドル時のGPU温度は高くなるものの,それでもGeForce GTX 1080 GAMING X+ 8Gで44℃なのだから,まったく問題ない。とくに,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6Gのアイドル時における30℃台半ばというのは,ファンが停止していることを考えると見事だ。
なお,横並びの比較に意味はないと言っておいてなんだが,同じクーラーを採用することもあり,「+あり」と「+なし」のMSI製カードでGPU温度に大差がない点は目を惹くところだ。Twin Frozr VIクーラーの能力に「+あり」と「+なし」とで大きな違いはないと見ていいだろう。
気になる動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8GはGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gと,GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6GはGeForce GTX 1060 GAMING X 6Gと大差なく,いずれも比較対象となるFounders Editionと比べて明らかに静かだ。定評あるTwin Frozr VIクーラーは十分な静音性を確保できている。
高いクロックに大きな期待は禁物。価格差を見て取捨選択したい
問題は価格設定で,2017年4月29日現在の実勢価格で比較すると,以下のような感じになっている。
- GeForce GTX 1080 GAMING X+ 8G:8万6200円前後
- GeForce GTX 1080 GAMING X 8G:7万7200〜8万円程度
- GeForce GTX 1060 GAMING X+ 6G:4万3000円前後
- GeForce GTX 1060 GAMING X 6G:3万2400〜3万5500円程度
これを見る限り,「+付き」の2モデルが数%の性能向上に見合った価格かと言うと,少なくとも現時点ではノーだと言わざるを得ないだろう。発売からしばらくして,価格がこなれてくると,「メモリクロックの高いGTX 1080やGTX 1060 6GBも一考の価値あり」と言えるのようになるのではなかろうか。
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