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[GDC 2011]パックマンの父 岩谷 徹氏がゲームデザインを語る。「Classic Game Postmortem - PAC-MAN」講演レポート
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印刷2011/03/03 19:41

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[GDC 2011]パックマンの父 岩谷 徹氏がゲームデザインを語る。「Classic Game Postmortem - PAC-MAN」講演レポート

 GDC 2011の3日目となる2011年3月2日,GDC開催25周年を記念した特別セッション「Classic Games Postmortem」(クラシックゲーム回顧録)の一環として,パックマンの生みの親として知られる岩谷 徹氏による「Classic Game Postmortem - PAC-MAN」というレクチャーが行われた。
 この「Classic Games Postmortem」は,12名の業界著名人が,それぞれ出世作品の裏話を披露するというもの。本稿では,岩谷氏が行った,その講演の模様をレポートする。

画像集#005のサムネイル/[GDC 2011]パックマンの父 岩谷 徹氏がゲームデザインを語る。「Classic Game Postmortem - PAC-MAN」講演レポート

バンダイナムコゲームス 岩谷 徹氏
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 岩谷氏がパックマンを作り出してから31年が経過した今年。昨年2010年には30周年でワールドワイドでキャンペーンを行ったそうだが,岩谷氏は,そんな古典に近いタイトルのことを,会場にいる若いゲーム開発者達が知っているかどうか,心配だったと語ったところから講演は開始。もちろんそれは杞憂であったようで,会場からは「もちろん知ってますよ!」という意味を込めた歓声が上がっていた。

 岩谷氏は自身が考えるパックマンがヒットした要因を,これまでにさまざまな場所で話してきた。これらは普遍的な内容なので,ぜひ活用してほしいと話を続けた。

 まずパックマンの開発は,女性向けのゲームを作ろうというアイデアからスタートしたという。当時ゲームセンターは完全に男性の遊び場であり,そこに女性に来てもらって,明るい場所にしたかったのだそうだ。そこで岩谷氏は女性の好きなものについて考えた。「ボーイフレンド」や「ファッション」などといった単語も思い浮かべつつ,氏は「デザート」が好きというところに着目する。そして「食べる」という動詞を中心として,ゲームをデザインしていったそうだ。
 岩谷氏はゲームの根幹部分というのは,シンプルで分かりやすいことが非常に重要だと考えている。一目見てやることがすぐに分かり,また操作方法もすぐに分かることが大事なのだ。

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 初めはとにかくモノを食べるゲーム,ということでアイデアを練ったが,ゲームとして成立させるには,敵が必要だということに思い至ったそうだ。そこで出てきたのがパックマンの敵であるゴースト達だ。もちろんこのゴースト達も女性に可愛いと思ってもらえるように,敵だけれども憎めない,キュートなデザインにした。シンプルであることを心がける一方で,岩谷氏は,最初のプランに固執せず,新しいアイデアを取り入れることも重要だと説いた。

 アイデアがまとまったら,次はプログラムやアルゴリズムを練り込んでいく。パックマンの場合は4匹のゴーストに,それぞれ違う性格が設定されている。赤いゴーストは,パックマン目指してまっすぐに追いかけてくる。ピンクのゴーストは,パックマンの進行方向35ドット先を目指して動く。青のゴーストはパックマンの点対称の位置を目指す。オレンジの動きはランダムだ。このようにすることで,ゴーストはパックマンの周囲を,自然な動きで取り囲んでいく。このアルゴリズムが存在せず,ゴーストがただパックマンをまっすぐ追いかけるだけのゲームだったら,あそこまでのヒットにはならなかったはずだ。

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 次に岩谷氏は,パックマン開発当時の手書きの企画書を公開した。この資料を見せるのは,世界初であるとのことだ。そこにはゴースト達のスピードの変化のしかたが書かれていた。
 パックマンでは,プレイ中,ゴーストがふと離れていくこともある。これらはもちろんゲームデザインのうちで,常に追いかけ回されているとプレイヤーはイヤな気持ちになってしまうので,時折解放してあげると良いのだそうだ。またパックマンにはワープトンネルやパワーエサなど,プレイヤーが「逆転」できる要素も盛り込まれている。このように,ゲームを作る際には,プレイヤーにとって気持ちの良いことを常に考えて,それを用意することもまた重要なのだ。岩谷氏は欧米の開発者に対して,このようなことを“Itareri-Tsukuseri(いたれりつくせり)”というのだと説明していた。

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 そして岩谷氏は,これらのゲーム作りに対する姿勢を「Fun is First !」という言葉にまとめていた。岩谷氏から見ると,今は複雑すぎるゲームも多く,プレイヤーが虐められているような気分になるとのこと。難しさも悪くはないが,原点にかえり,楽しさを一番に考えることが大事なことであると結んだ。

 パックマンは,グラフィックスとサウンドも含めた全プログラムのサイズが,たったの24kbなのだそうだ。現在のゲームのデータはもっともっと大きいが,そのほとんどはグラフィックスデータだ。そして核となるプログラム部分のデータは意外と小さい。岩谷氏はこのことからも,冒頭の「ゲームの根幹部分は,実はシンプル」という持論を展開し,普段からそのような視点を持っておくこと――ゲームの要素をどんどん分解し,なぜそのフィーチャーが面白いのか,研究することが大事であると語った。

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 そして,そうして積み重ねた研究の一つの成果であるとして,「PAC-MAN Championship Edition」PS3 / Xbox360)を紹介した。この作品はディレクターの井口氏が,パックマンの「面白さの要素とはなにか」を,とことん研究したうえで作り上げた作品だそうだ。

 パックマンから得られる面白さを突き詰めていった結果,「PAC-MAN Championship Edition」は,スピーディでスポーツライクなものに仕上がっている。フィールドは左右二つのエリアを連結したような構成になっていて,ゲームの進行によって刻一刻と姿を変える。プレイヤーに課せられた制限も,残機数ではなく時間制限になっており,旧来のパックマンを知っている人にとっては,ちょっと戸惑う部分もあるそうだ。とくに時間制限への変更などは,岩谷氏でも,初めは「えっ」と驚いたそうだ。しかし結果としては,この変更が同作をとてもエキサイティングなものにし,正当進化と呼べる作品になっているとのこと。
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 講演の最後に,岩谷氏は「実は今,次のパックマンを考えている」と話し,それは“歌うパックマン”であると明かした。会場に「どう思いますか?」と問いかける岩谷氏。オーディエンスは歓声で応え,それに対して岩谷氏がサンキューと礼を述べて,講演は幕となった。

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講演内では,2009年に開催された「パックマン展」の模様や,岩谷氏が教鞭を執っている東京工芸大学ゲーム学科の様子も紹介された
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  • 関連タイトル:

    PAC-MAN Championship Edition DX

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