ゲーマーとパワーユーザーをターゲットに製品展開を行っていくとされる,台湾発の新興ブランド,
「BitFenix」 (ビットフェニックス)。かつてCooler Masterで
「CM Storm」 ブランドを統括していたメンバーが中心となって設立された同ブランドは,2010年6月に開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2010の時点で日本市場への参入計画を明らかにしていたが(
関連記事 ),第1弾となるPCケース製品
「Colossus」 (コロッサス)が,いよいよ国内市場に登場する運びとなった。
4Gamerでは,BitFenixの販売代理店であるディラックから,9月中旬に想定売価2万円前後で発売予定となっているColossus実機の貸し出しを受けることができた。そこで今回は取り急ぎ,その特徴的な外観を中心に,写真メインでお伝えしてみることにしたい。
スリットが青or赤で光るColossus
スマートな見た目とセキュリティを追求
赤色LEDを光らせたところ。前面パネルと天面はラバーコートされ,独特の肌触りになっている
Colossusは,白と黒の2色展開がなされる,スチール製フルタワーPCケースだ。本体サイズは245(W)×582(D)×558(H)mmで,一般的なフルタワーPCケースと比べると,横幅が若干大きい。
今回4Gamerで入手したのはご覧のとおり白モデルのほうだが,本体色にかかわらず,
本体前面の扉と側板部にスリットが設けられており,ここが青か赤で光るようになっている
本体前面の扉と天面部はABS樹脂製で,(Razerブランドのマウスなどでよく見られる)ラバーコートがなされ,“うるさく”なりがちな白を落ち着かせている
ボタン類は隠されており,扉などを閉じた状態ではすっきりしたシルエットになっている
のが,外観上の大きな特徴だ。
上蓋を開けたところ
この光るギミックの制御機構や電源ボタンなどは,本体天面上部の上蓋を開けたところに集約されている。蓋を開けると,後述する内蔵ファンの回転数を無段階で調整するダイアル式ファンコントローラを中央に,ATXソフトパワーとリセット,LEDの発光方法切り替えボタンが並んでおり,LEDについては,青と赤を切り替えられるほか,常時点灯と常時消灯,そして選択色による明滅の3パターンを切り替え可能だ。
※ムービーファイルへのリンク
小物入れの側面に各種インタフェースを引き出し可能。向かって左に2つ並んで見える青いUSBポートはUSB 3.0,右はeSATAだ
上蓋部が提供するのはそれだけではない。ボタン類の並んだところから一段下がったところに小物入れ的なスペースが用意されており,その側面にUSB 3.0×2,USB 2.0×2,ヘッドフォン出力ミニピン×1,マイク入力ミニピン×1,eSATA×1を引き出し可能。さらに,ケーブルマネジメント用の溝と,上蓋にカギをかけて開かなくするための機構も用意されており,これらを利用することで,LANパーティの会場などにおいて,手持ちの小物や周辺機器のセキュリティを確保できるという。
このように,USB接続の入力デバイスやアナログ接続のヘッドセットなどを接続し,手前の溝を使ってケーブルを這わせる。そのうえで上蓋にカギをかければ,引っこ抜けなくなる(≒盗まれなくなる)というわけだ。BitFenixはこの「小物入れ兼用セキュリティ機能」に,「S3」 (Storage compartment and Security System in one)という,どことなくおっさんPCユーザーホイホイな名称を与えている
ケーブルは本体の一番下まで引き回すこともできるうえ,スリットに高さを合わせて設けられている“脇道”から外に出すこともできる
日本だと,LANパーティにBYOC(Bring Your Own Computer,PC持ち込み)で参加するケースはあまり多くないと思われるが,しかし,周辺機器のケーブルをすっきりと配線できるのは,国内でも需要がありそうだ。
前面の扉は,上下2か所の蝶番(ちょうつがい)を外して反対側に取り付け直すことで,左/右開きのどちらにも対応可能。LED給電用のコネクタが扉内部の左右両方に用意されているのだが,給電ケーブルは標準で本体向かって左側にしか引かれておらず,右に蝶番を取り付けたときには,自分でそのケーブルを引き回し直さねばならない。やってみるとこれがけっこう面倒だった
本体カラーと統一された色の内部はE-ATX対応
230mm角相当のファン2基を標準装備
外部からアクセスできる機能を一通り見たところで,今度は内部構造をチェックしていこう。まず,左右側板だが,LEDシートを内蔵することもあって,電源ケーブルが“生え”,さらにシートがプラ板で覆われているという,ちょっと特殊な構造になっている。
側板の内側(左)。LEDシートを保護するプラ板を取り外した状態が右だ
LEDシート用の給電コネクタや,ファン用給電コネクタ,USB 3.0用の補助電源コネクタ類は,本体右手前側にまとめられている。最終製品でも同じ仕様かどうかは分からないが,未開封でディラックから届いた状態で,LEDシートとファンの給電コネクタはいずれも外れていた
本体向かって右側の話が出たのでこちらから先に紹介。最近のゲーマー向けPCケースで流行となっているマザーボード背面のケーブルマネジメントシステムをColossusも採用している。マザーボードベースと右側板との間には実測20mm程度のクリアランスが設けられており,余裕が感じられた
本体左側から内部を見てみると気づくのは,本体前面と天面に230mm角相当のファンを搭載し,基本的には写真右下から左上に空気が流れるようになっている点と,ストレージドライブ用のシャドウベイが7つ,5インチベイが5つという仕様になっていること。ストレージドライブベイはカートリッジ式で簡単に引き出せるようになっているのと,3.5&2.5インチドライブ両対応になっているのがトピックだ。
本体左側面から見たカット。底面には140/120mm角ファン,背面には140mm角ファンをそれぞれ取り付けられるスペースが用意されるものの,基本は230mm角相当×2という構成になる
ドライブベイにはツメが4つ設けられており,引っかけることで3.5インチドライブをネジなしで固定可能。一方2.5インチドライブの固定には,カートリッジ底面のネジ穴を使う必要がある
5インチドライブの固定もネジは不要だ。ストッパー中央にあるBitFenixロゴマークを押して,横へズラすと固定できる。ちなみに写真では下から2つめが固定した状態になっている
5インチベイのうち1つは3.5インチオープンベイとしても利用可能。変換トレイと前面カバーが用意されているので,カードリーダーなどを取り付けたいというニーズに応えられる
天板部の内側に搭載する230mm角ファンは,外して,140mm(あるいは120mm)角ファン2基分の液冷用ラジエータに換装することもできる
マザーボードトレイは,バックプレートを使って固定するタイプの大型クーラーを脱着しやすいよう,CPUソケットの裏部分が大きくくり抜かれているのも目を引くところ。
ちなみにマザーボードトレイは標準でExtendedATXをサポートしているのも特徴だ。
底面前後中央部には140mm角ファンを取り付けられるネジ穴が用意されているのだが,標準では防塵フィルタがネジ留めされているので,ここに吸気ファンを取り付けるつもりなら,マザーボードなどを取り付ける前に処理したいところだ。なお,電源ユニット用の吸気孔にも防塵フィルタが設けられているが,こちらは簡単に取り外し可能
8つ用意された拡張カードスロット部もネジ留めいらず。大型で,滑らかに動き,少なくともすぐ壊れてしまうような印象はないストッパーが取り付けられている
USB 3.0ケーブルは,ケース内を通し,液冷のホース用に用意された穴などから外に出して,マザーボード側のコネクタと接続する仕様
USB 3.0インタフェースをもたないマザーボード用には,USB 2.0のピンヘッダに変換するケーブルが用意されており,上蓋部のインタフェースがムダにならない
価格からするとかなりの要素を詰め込んだ印象
見た目を重視するゲーマーの選択肢となり得る
Colossusには紙のマニュアルが付属していない。ディラックによると,BitFenixからダウンロードできるようになるとのことだ。Colossusには,マザーボードを固定するネジ穴を応用してグラフィックスカードを縛り,セキュリティの向上を図るというバンドも2セット付属していたのだが,このあたりをどう使うかはマニュアル待ちになる
以上,駆け足でチェックしてみた。
細かいことを言えば,最初の製品ということもあってか,品質管理周りが原因か作りの甘い部分がいくつか見られる。側板の立て付けが左右で異なり,右は開閉が大変だった……というのは,個体差もあると思われるが,それでも,開閉を繰り返すと塗装が一部禿げてしまったのはマイナス評価だ(※側板に内蔵されたLEDシートの電源ケーブルを撮影したカットにその痕跡が見られる)。
また,上でも触れたように,ケーブルの取り回しにも練り込み不足が見られた。とくに気になったのは,本体右手前の内部という,「いったんPCを運用し始めたら,トラブルでも起こらない限りまずアクセスしない場所」に電源コネクタが集約されている点だ。このあたりは,自分で解決できるだけのスキルがないと,いろいろ不便を感じることもあるだろう。
何をもってゲーマー向けとするかどうかはさておき,著名なブランドなら2万9800円とか3万4800円という値札を付けてきてもおかしくないなあという印象はある。いや,もちろん,冷却能力など,テストしなければいけない部分はあるので,結論までは出せないが
付け加えるなら,PCを床に置いた場合はケーブルマネジメント周りはおそらくメリットにならない。さらに,ラバーコートされた部分が使い込んだときにどういった色になっていくのかなど,長期で使ってみなければ結論を下せない部分も懸念として残る。
ただ,そういったマイナス点を差し引いても,Colossusはよくできている。見栄えにフォーカスしつつ,拡張性とストレージ周りのメンテナンス性に注力したデザインを採用しながら,想定売価が2万円というのは,十分にアリと言っていいだろう。上でも触れたとおり,BYOCが一般的でない日本において,「魅せるPCケース,すなわちゲーマー向けPCケース」とするのは無理があるものの,ハイエンドのグラフィックスカードを余裕で搭載可能なフルタワーPCケースの選択肢として一考に値する,というのが第一印象である。
冒頭で紹介したとおり,Colossusには黒モデルも用意される。気になった人は,馴染みのPCショップが入荷したのを見計らって,店頭へ見に行ってみてはどうだろうか。
※2010年9月21日追記
初出時,Colossusが「EVGAの「『Classified Super Record 2』(型番;270-WS-W555-KR)をサポートする」としていましたが,ディラックから「対応できない」と,情報のアップデートがあったため,本文から該当箇所をカットしました。