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新世代GPU「Radeon HD 6800」,機能面のキモになる第2世代「Eyefinity」と「EyeSpeed」とは
正式発表を伝えるニュース記事では,Radeon HD 6800の3Dグラフィックスアーキテクチャ周りを中心に紹介したが,本稿ではその続きとして,先の記事で「稿をあらためる」としたマルチディスプレイ技術「Eyefinity」と,高品位の謳われるメディア再生技術「EyeSpeed」を中心に続報をお伝えしたい。
AMD,新世代GPU「Radeon HD 6800」を発表。HD 5800シリーズの後継を179〜239ドルで
「Radeon HD 6870&6850」レビュー。Northern Islands世代の開幕を告げる新製品は,誰のためのGPUか?
DisplayPort 1.2で強化されたAMD Eyefinity
リファレンスカードでも6画面表示が可能に
Radeon HD 6800に搭載されるEyefinityは第2世代で,Eyefinityをより柔軟に,使いやすいものとすべく改良が加えられている。
ハードウェア面では,DisplayPortとHDMIの両インタフェースが,それぞれ最新バージョンである「DisplayPort 1.2」と「HDMI 1.4a」に対応し,機能強化された点がポイントといえるだろう。
VESA(DPの規格策定元)の資料によるMSTの概要。DPは「micro-packet」と呼ばれるパケット転送方式を用いるため,単一のコネクタから複数のディスプレイを接続できる |
Radeon HD 6800シリーズは,DP 1.2に対応したことで,1出力端子で複数のディスプレイに対応。また,サウンド信号の転送もサポートされた |
DP 1.2における最大の強化点は,1基のDP端子で複数台のディスプレイと接続できる「Multi-Stream Transport」(以下,MST)に対応したことだ。MST対応ディスプレイを使ったdaisy chain(デイジーチェーン,数珠つなぎ)接続や,MST対応ハブ/スプリッタを用いた接続が使うことで使用可能だ。
Radeon HD 6800のリファレンスデザインでは,2基のMini DP端子が搭載されているが,DP端子1基あたりに割り当てられるRadeon HD 6800シリーズのディスプレイコントローラに数の制約はない(※ただし,1080p/60Hz対応を果たすなら,1端子あたり4台構成が最大となる)。MST対応のディスプレイやハブ,スプリッタを利用すれば,DVIやHDMIを含めて最大6台のディスプレイを接続可能だ(※正確には「1GPUあたり最大6台のディスプレイ接続」だが)。もちろんこの場合,各ディスプレイには独立した画面内容を出力できる。
ATI Radeon HD 5000シリーズ時代,1枚のグラフィックスカードで6画面出力を行う場合は,Mini DP端子を6基備えた「Eyefinity 6 Edition」という特別な仕様の製品が必要だった。対してRadeon HD 6800なら,MST対応機器を使うだけでいい――MST対応機器の入手性は別の話だが――というわけである。
実際。Radeon HD 6800のMini DP端子の場合,リフレッシュレート50Hz時に最大解像度4096×2160ドットに対応するとのこと。これによって,従来のEyefinity環境で発生していた「ディスプレイインタフェース側の制約によるフレームレートの落ち込み」を抑えられるようになったという。
Eyefinityエコシステムの
拡大を目指すAMD
AMDは,Eyefinityをより使いやすくすべく,周辺機器やソフトウェアのサポートも充実させていく。
さらに氏は,「Radeon HD 6800シリーズのリファレンスデザインで用意される5基の外部出力端子すべてを,ディスプレイデバイスと1:1で接続した,縦長表示×5台でのEyefinity構成も可能になるよう,ドライバの開発を進めている」と語り,Eyefinityエコシステム(=業界全体の収益構造)拡大のため,積極的にハードウェアやソフトウェアの開発を続けていると明らかにした。
またDemers氏は,Radeon HD 6800シリーズにおけるEyefinity環境のゲームプレイにも言及。シングルカード構成で,1920×1080ドット表示のディスプレイ3台と接続しても,代表的なゲームタイトルの多くで30〜50fpsのフレームレートが得られるとし,「3台の1080p表示環境でも,シングルカードで十分なパフォーマンスを発揮する」とアピールしている。
氏は,EyefinityとNVIDIAのマルチディスプレイ技術を比較し,「Eyefinityならば,マザーボードやグラフィックスカードの制約もなく,より安価に多画面環境を構築できる。Dual-Link DVIとMini DPを活用すれば,Eyefinityによる3D立体視も容易に構築可能だ」(※ただし,3D立体視を行う場合,フレームレートへの制約はある)とまとめた。
待望の(?)3D立体視技術
「AMD 3DHD」もついに採用
HD3Dは,2010年3月に開催されたGame Developers Conference 2010(以下,GDC 2010)でアナウンスされた,3D立体視におけるオープンスタンダード(を標榜する)仕様「Open Stereo 3D」をベースとしている。
Deep Diveの会場でAMDは,Open Stereo 3D Initiativeに参加する3D立体視ソフトの開発メーカー「DDD」と「iZ3D」の3D立体視ドライバが,DirectX 9世代以降のゲーム400タイトル以上に対応していることを発表。HD3D対応ハードと対応するゲームタイトルがある場合,変換ソフトを購入すれば既存タイトルが3D立体視でプレイできるため,「AMD製グラフィックカードのオーナーは,手軽な出費で3D立体視を楽しめるようになる」と,Demers氏は述べた。
このOpen Stereo 3Dによる3D立体視には,Intelも次世代CPU「Sandy Bridge」(サンディブリッジ,開発コードネーム)でサポートする意向を示していることから,2011年には対応コンテンツが一気に増える可能性を秘めている。
HD3Dに関連したハードウェアやコンテンツ情報を提供するサイトの準備を進めていることも,Deep Diveでは語られたので,この点も付記しておきたい。
UVD3+DirectComputeで高画質な
ビデオ再生を実現するEyeSpeed
続いてはEyeSpeedだが,これは,ATI Radeon HD 2000シリーズ以降で搭載されてきたビデオ再生支援エンジン「UVD」(Universal Video Decoder)と,DirectCompute&OpenCLによるメディアトランスコードやポストプロセッシング(後処理)の高速化などを組み合わせ,より高品位なマルチメディア再生を実現しようというものだ。
Radeon HD 6800では,GPUに組み込まれるUVDが第3世代の「UVD3」へ進化。中心となる改良点はBlu-ray 3Dのデコードへの対応だが,同時に,DivXやXvidといったMPEG-4 Part2系コーデックのデコード機能も追加されていること,「UVD2」では部分的なサポートに留まっていたMPEG-2のデコード機能が,UVD3では完全な再生支援が可能なものになっていることも,トピックといえるだろう。
Radeon HD 6800シリーズでは,UVD3から出力されたビデオに対し,GPUコンピューティングによるポストプロセッシング処理を実行し,再生品質を向上可能になった。さらに,同様の処理をビデオトランスコードの前処理に用いることで,より高品位なビデオ変換や編集が可能になるというのが,AMDの主張だ。
「New post-processing setting the bar for HD content playback」とあるので,従来製品よりも、さらにHDビデオ再生画質向上を果たしたようだ |
AMDはビデオ再生時の画質評価ベンチマーク「HQV 2.0」でのスコアを公開。Radeon HD 6870,そしてUVD3の高画質がアピールされた |
なお,Deep Diveでは,EyeSpeed以外のGPUコンピューティング関連情報も明らかになったので,併せてお伝えしよう。
比較的大きな話題としては,AMDがこれまで「ATI Stream」として進めていたGPUベースの並列コンピューティング技術を,「AMD Accelerated Parallel Prpcessing Technology」(以下,APP)というブランドに変更すると発表した点が挙げられる。
AMDはAPP SDKの配布と併せて,OpenCL向けの開発者支援サイト「OpenCL Zone」も開設した |
APPへの取り組みを語るManju Hedge氏(Corporate Vice Presidnet, Fusion Experience Program, AMD) |
AMDでAPPを推進するのは,「PhysX」で知られるAGEIA Technologies創設者の1人であり,NVIDIAに買収された後はしばらくCUDAを担当し,2010年になってAMDへ移ったManju Hedge(マンジュ・ヘッジ)副社長だ。
氏は,「オープンスタンダードを採用したAMDのAPUやGPGPUへの取り組みこそが,ヘテロジニアスコンピューティングへの移行を加速する。今後はビデオ再生やトランスコードソフトだけでなく,そのほかのジャンルでもGPUのリソースを有効に使ったソフトウェアが登場するはずだ」と語り,優れたGPUコンピューティング性能を活かしたユーザー体験が,そう遠くない将来にも実現するという見解を示した。
Northern Islands世代は
エントリーやノート市場にも
Radeon HD 6800で強化された多数の機能が紹介されたDeep Diveだが,AMDは最後に,PCゲームを再び話題の中心に据えた。
Demers氏は締めの言葉として,あらためて「Gamers First」(ゲーマー第一主義)のマニフェストを掲げ,「AMD製品のユーザーであるか否かにかかわらず,すべてのゲーマー,ゲームデベロッパ,そしてゲーム産業に対して,最高のゲーム体験をもたらし続ける」と宣言。今後もDirectX 11環境で業界をリードしていく意向を示した。
併せてSkynner氏は,「今後はNorthern Islandsの持つ優れたパフォーマンスを,エントリー市場にも拡大する計画だ。モバイル製品にも同等のアーキテクチャを採用した製品を投入していく」と宣言。今後も,積極的にグラフィックス性能や機能の底上げを行っていくことを予告している。
DeepDiveの最後で,AMDはあらためてゲーマー第一主義宣言を繰り返した |
「DirectX 11によるより緻密な3D表現と,Northern Islandsの持つパフォーマンスの高さが,PCゲームを新しいステージに導く」とAMDは主張する |
AMD,新世代GPU「Radeon HD 6800」を発表。HD 5800シリーズの後継を179〜239ドルで
「Radeon HD 6870&6850」レビュー。Northern Islands世代の開幕を告げる新製品は,誰のためのGPUか?
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(C)2010 Advanced Micro Devices, Inc.