インタビュー
XBIG「まもって騎士」インタビュー:ゲームミュージック界のカリスマ 古代祐三氏とチーフデザイナー 和田 誠氏が語る“古くて新しい”ゲームの形とは
古代祐三氏が語る,ゲーム業界の過去と現在
現在,日本のゲームメーカーがどこも苦戦しているという話がちらっと出ましたが,ゲームを取り巻く環境も,ずいぶんと変化しましたね。
古代氏:
今と決定的に違うのは,当時はハードの選択肢が,実質ファミコンくらいしかなかったってことですよね。
4Gamer:
はい。誰もが知っているゲーム機というとやはりファミコンで,パソコンでゲームを楽しむのは,ごく一部のマニアックな層でした。
古代氏:
それが今では,一体いくつ選択肢があるんだって状況ですよね。最近だとiPhoneも,カジュアルなゲーム機として認識されていますし,さらにはiPad専用タイトルも出てきている。特定のハードを選んでゲームをする,というゲーマーが,昔と比べると圧倒的に減っている印象があります。
あと,当時はソフト的にも選択肢が少なかったので,いわゆるライトユーザー層も,大作ゲームに注目しやすかった。今はコンテンツが豊富にあるので,ライトユーザーでは,一体何を遊べばいいのかさえよく分からない。
4Gamer:
現在,ゲームの情報を熱心に追って,購入すべきタイトルを明確に決められる人は,そもそもライトユーザーではないでしょうね。
古代氏:
ええ,今は本当にゲームが好きな人じゃないと,わざわざゲームを買わないでしょう。ほかにも,余暇を過ごすのに最適な娯楽が,山ほどあるんですから。昔みたいに,何気なくゲームを買うという人は,確実に減っているでしょうね。
4Gamer:
昔はファミコンを買えば,それだけでほかのファミコンユーザーとのコミュニケーションのきっかけが生まれましたが,ハードもソフトも多様化している現在,友人と同じゲームで遊ぼうとするのも一苦労です。
古代氏:
それはあるかもしれないですね。流行を意識するのは大事ですけど,それを追いかけすぎても,トップは取れないんじゃないかなと思います。
昔は日本のゲーム産業が世界を席巻していましたけど,残念ながらさまざまな理由から,今はそれが収縮してしまった。やはりダウンロード販売モデルというのは,流通やプロモーション,レーティングなどの厄介な問題に対する,一つの有効な手段だと思います。クリエイターがある程度自由に制作でき,ハードにもよりますが,リリースした瞬間に世界中の人に届けられるというのは,ゲーム業界が苦しい時代にこそ適している。
XNAの授賞式(関連記事)でも,学生が創ったレベルの高い作品を見て,プロのクリエイターさんも刺激を受けると言っていました。
古代氏:
学生さんは若いですから,頭も柔らかいし時間もある。しかも,会社に束縛されてないから思いどおりに作れるんですよね。これがゲーム会社になると,どうしても“守り”に意識が向いてしまい,無難な続編やキャラクターゲームを量産せざるをえない。
なので,学生さんの作品を見て刺激を受けたとしても,それをゲーム開発に直接生かせるかといわれると,ちょっと難しい部分はありますよね。
4Gamer:
それこそが,「まもって騎士」をXbox インディーズ ゲームとしてリリースした理由の一つというわけですか。
古代氏:
はい。我々のようなデベロッパは,さまざまなしがらみに縛られないで,比較的自由に制作できるのが強みだと思います。その分,リスクは自分で背負うことになりますが,今回は我々の強みを生かせる土壌が,Xbox 360上にあることが分かったので,これからも積極的に動いていきたいと思います。
4Gamer:
カジュアルなゲーム機としてのiPhoneや,ソーシャルゲームなどの登場で,ゲーマーの裾野は確実に広がってきている印象があります。そういった「ゲームっぽい何か」を楽しんでいる人が,次に目を向けるのは,もしかしたら「ゲームらしいゲーム」かもしれませんね。
古代氏:
ええ,今はiPhone用アプリやブラウザゲームのほうに流れているクリエイターも少なくないですが,やはりゲームは,思い通りに動かせる入力デバイスで遊びたくなるもの。「気軽に楽しめるゲームらしいゲーム」への需要が消えることはないはずです。
4Gamer:
ともあれ,「まもって騎士」のスマッシュヒットによって,Xbox インディーズ ゲームの持つ可能性が,分かりやすい形で認知されたのではないでしょうか。
古代氏:
まだまだそういう探り方ってできると思うんですよ。ゲーム開発がどんどん息苦しく,保守的な方向に寄ってしまっているからこそ,Xbox インディーズ ゲームでの挑戦には,大きな意味があるはずです。
古代氏の手がける「ドラゴンボールオンライン」の楽曲は
原作BGMのシンフォニックアレンジ?
話はガラッと変わりますが,古代さんは現在「ドラゴンボールオンライン」のサウンドも手がけていますよね。
古代氏:
はい,バリバリやってますね。ドラゴンボールオンラインの曲はシンフォニックなものやロックテイストなものが多いんですけど,「まもって騎士」の曲を制作している最中も曲を制作していたので,頭の切り替えが大変でしたね。最先端のサウンドとレトロサウンドですから(笑)。
4Gamer:
ドラゴンボールオンラインは,やはりアニメ版のドラゴンボールを意識したサウンドになっているのでしょうか?
古代氏:
オンラインゲームの性質上,世界中に向けて発信していくというのが大前提にあるので,日本の“ドラゴンボール的なBGM”という方向性でいいのか,それとも,もっとグローバルな感じがいいのか,という議論は最初にありました。
開発自体は4年くらい前から始まっているんですが,その当時はシンフォニックな方向でいこうという流れだったんですけど,いろいろ試行錯誤していくうちに,やっぱり日本のBGMのテイストも入れていこうという意見が多くりましたね。
そして何度も議論を重ねた結果,シンフォニックなものと日本的なものをミックスしたサウンドにしよう,という方向性に落ち着きました。
4Gamer:
一体どんな曲に仕上がるのか,非常に楽しみですね……。エインシャントの新作ともども,大いに期待させていただきます。それでは,最後にファンの方へメッセージをお願いします。
古代氏:
特定の層かもしれないですが,今後もハートを直撃するようなゲームを作っていきたいですね。これからもスタッフ一同,いいものを作るべく頑張っていきます。Xbox 360もお安くなってますので(笑),ぜひハードを購入して,「まもって騎士」,そして今後エインシャントがリリースする作品を楽しんでください。
和田氏:
今回は,プロモーションを含めやりたい放題やらせていただいて,それがすごくいい評価につながったことを,非常に嬉しく思います。次回作も,やりたい放題やろうかなと思いますので,楽しみにしていてください(笑)。
4Gamer:
ありがとうございました。
ゲーム産業の巨大化や,ゲーム制作の複雑化にともない,さまざまな“縛り”がゲームに課せられ,クリエイターを苦しめている昨今,同作のようなタイトルが,Xbox インディーズ ゲームとして発売され,好評を博したのは象徴的な出来事かもしれない。今後,日本のゲーム業界がどのように変化していくのかは誰にも分からないが,Xbox インディーズ ゲームに限らず,ダウンロード専用ソフトが大きな意味を持ち続けることだけは間違いないだろう。
ともあれ,本稿を読んで「まもって騎士」に興味を持ったという人は,公式サイトからPC用体験版をダウンロードして,ぜひ一度プレイしてみてほしい。古代祐三氏の楽曲,および8ビットゲーム機に特別な愛着を持っている人であれば,それこそXbox 360を買ってでも,製品版を遊んでみたくなる……とは限らないが,忘れかけていた何かに,ふと気付くことはあるように思う。すでにアイディアは複数出ているようなので,エインシャントの次なるダウンロード専用コンテンツにも,期待して待とう。
「まもって騎士」公式サイト
- 関連タイトル:
まもって騎士
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ドラゴンボールオンライン
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