インタビュー
XBIG「まもって騎士」インタビュー:ゲームミュージック界のカリスマ 古代祐三氏とチーフデザイナー 和田 誠氏が語る“古くて新しい”ゲームの形とは
これぞレトロゲーム愛
作品に込められたオマージュの数々
開発でとくに苦労した部分などはありますか?
和田氏:
当初は効果音も古代にお願いする予定だったのですが,スケジュールの都合で私が作ることになったんです。以前,KORG DS-10というシンセサイザーを少しだけやっていたので,作り方も少しは知っていたんですけど,25種類も作らなければならなくて,苦労しましたね。
古代氏:
「世界樹の迷宮」を作っていたときに一緒のチームだったスタッフがいたんですけど,その彼が効果音のプロフェッショナルなんですね。なので,本当は彼に作ってもらうのが一番いいと思ったのですが,そこをあえてやらせなかったんです(笑)。
和田氏:
古代からは「効果音足りないよ」って言われて,最終的に効果音の数は70を超えました。
古代氏:
本職のスタッフが作ったほうが絶対かっこいい音に仕上がるのは確実です。でも,本職以外のスタッフが作ったものならではの“奇想天外な味”というのも,またいいものだと思うんですよね。
剣を振る音とかも,「プピプピッ」とか鳴ったりしてね(笑)。でもそのほうがファミコンっぽいんですよね。
古代氏:
専門家だと「もっとかっこよく作ろう」と,どうしても考えてしまう。それは止めたかったんです。
4Gamer:
古代さんの曲に,和田さんの効果音が乗ったときの印象はどうでしたか?
古代氏:
バッチリでした。こういう曲はこれまで何回も作ってるので,何の迷いもなかったですね。サンプルだけもらって,どういった曲を求めているのか,ということだけは確認しました。
和田氏:
私の希望どおり,タイトル画面の曲は「ドラスレIV(ドラゴンスレイヤーIV)」風でしたね。
古代氏:
サンプルがドラスレIVだったので(笑)。
4Gamer:
ゲームミュージックに詳しい人であれば,ニヤリとしてしまう部分も多そうですね。ほかにも,オマージュのようなものは込められているのですか?
古代氏:
1面の曲が割とKONAMI系なんですよ。私はKONAMIのファミコンサウンドが大好きなので,普通に三音で作ると,どうしてもKONAMIっぽいサウンドがやりたくなってしまうんです。
私が最初にファミコン音楽を手がけたドラスレIVの曲も,KONAMIサウンドに多大な影響を受けてますからね。
和田氏:
デザイン面で言えば,初期の“ファイナルファンタジー”のテイストを参考にしました。
4Gamer:
元ネタ探しも,レトロゲームファンには楽しめる要素になりそうですね。
新作のアイディアはすでに生まれている!
「まもって騎士」は,エインシャントのダウンロード専用タイトル第1弾とのことですが,同作の続編や,新作タイトルの構想はありますか?
和田氏:
ええ,それはもう当然考えています。
古代氏:
アイディアはすでにいろいろ練っていますよ。次回作もXbox 360になるかどうかは,現時点では確約できないのですが,ダウンロード専用タイトルを中心に,ラインナップを強化していこうと考えています。
あまり他社さんがやっていないジャンルにしていきたいとは思ってるんですけど,その時々によってトレンドが違うので,内容については,今後あらためてアナウンスさせてください。
4Gamer:
楽しみにしています。せっかくなので,お聞きしたいのですが,「まもって騎士」の他機種への移植は考えていますか?
古代氏:
残念ながら,今のところはないですね。
4Gamer:
仮に移植が決定しても,和田さん一人では難しいですもんね(笑)。
和田氏:
そうなったら完全に別のスタッフに任せますね。私の本職はプログラマーではないので,そこまでは手が回らないです(笑)。
古代氏:
和田は独特のプランニングテイストを持っているので,その味を生かした作品を,今後も定期的にリリースできればいいなと,あれこれ考えています。
和田氏:
新作の構想もすでに複数あるのですが,「まもって騎士」のような,「どこをとってもレトロゲーム」という作品を欲している人達も少なくないでしょうし,そういう人達が,「そうそう,それだよ!」と思ってくれるようなタイトルにしたいですね。
4Gamer:
うーん,楽しみですね。ちなみにエインシャントとして,現在関わっているゲーム作品はほかにありますか?
古代氏:
デベロッパとしては,「まもって騎士」のようなインディーズタイトルや,モバイルコンテンツが主ですね。本当はPSPなどで中規模の作品を作りたいのですが,今はどこのメーカーさんも厳しいので,なかなか実現しないんですよ。
今の状況が変わって,ゲームらしいゲームが必要とされる時期がくればいいんですけど,それを待っているわけにもいかないので,やれるところから,自分達にしかできないゲームを作っていこうと考えています。
音で“懐かしさ”を表現するためのさまざまなこだわり
古代さんのファンにとっては,サントラの発売も気になるところだと思うのですが。
古代氏:
まだ予定はないですね。曲数が7曲+ジングル2曲と少々物足りないので,単体で出すのも難しいですから,出すのであれば,ダウンロード専用タイトル第2弾,第3弾が無事発売されたタイミングにあわせて,まとめて収録するといった方法を取ることになりそうです。
4Gamer:
しかし,古代さんの曲が楽しめるインディーズゲームって,とんでもなく豪華ですよね……。しかも240マイクロソフトポイントで購入できるなんて。
古代氏:
ありがとうございます。ほかの仕事と並行して曲作りをしていたので,結構大変でしたねぇ。最初は,もっとサックリやろうと思っていたのですが,デモ版を出したときの評判が想像以上に良くて,「これは力を入れてやらないとマズい」と思い直した結果です(笑)。
4Gamer:
作曲するうえでこだわった部分はありますか?
古代氏:
ファミコンのルールはきっちり守らないといけないんで,同時発音数には注意しました。当然,ファミコン時代の開発機材はないので,エミュレートしたシンセサイザーを使うんですけど,発音数がオーバーしないように厳密に管理していましたね。必ず1トラックに1音以上鳴らないように設定して打ち込みました。
4Gamer:
音色に関してはどうでしょう?
古代氏:
音色に関しても,ファミコンの音をエミュレートしたものですね。モノモードにしないで作っていくと,前の音が次の音に被るんです。これってファミコンじゃありえないんですよ。
4Gamer:
なるほど,そこが“懐かしさ”の一つのポイントでもあるんですね。
古代氏:
はい。当時の音を知っている人からすると,音が重なっているだけで微妙に違和感が出てしまうはずなので,そこはかならずモノモードに切り替えて打ち込んでいきました。最初はポリモードで作っていたので,あとで全部作り直すハメになりました。
4Gamer:
他社さんのタイトルでそこまでやったら,レトロゲーム風タイトルとはいえ,かなりお金がかかってしまいそうですね……。
古代氏:
まあ,そこは自分の会社で出すものなので(笑)。
4Gamer:
古代さんの昔からのファンも納得の出来,ということですね。
古代氏:
ええ,そこはいい評価をいただきました。「次はメガドライブ音源の曲も聴きたい」という意見もあったので,次回作以降の参考にしようと思います。
- 関連タイトル:
まもって騎士
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ドラゴンボールオンライン
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