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Intel,Broadwellコア採用のサーバー向けSoC「Xeon D」を発表。DDR4/DDR3Lメモコンや10GbE LAN機能を統合したXeon初のSoCに
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印刷2015/03/10 00:30

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Intel,Broadwellコア採用のサーバー向けSoC「Xeon D」を発表。DDR4/DDR3Lメモコンや10GbE LAN機能を統合したXeon初のSoCに

画像集 No.006のサムネイル画像 / Intel,Broadwellコア採用のサーバー向けSoC「Xeon D」を発表。DDR4/DDR3Lメモコンや10GbE LAN機能を統合したXeon初のSoCに
 2015年3月10日0:30,Intelは,Broadwellコア採用のサーバー&ワークステーション向けCPU「Xeon D」(Xeon Processor D)を発表した。初のBroadwell版Xeonは,DDR4/DDR3L対応のデュアルチャネルメモリコントローラ10 Gbit Ethernet LANコントローラ論理層をオンダイで統合しただけでなく,I/Oコントローラなどもオンパッケージで統合した,初のSoC(System-on-a-Chip)版Xeonとなる。

 Xeonシリーズの常として,Xeon Dもゲーマーが積極的に選ぶようなCPUではない。ただ,14nmプロセス技術を用いて製造されるBroadwell世代の製品としては初となる“ノートPCやモバイル端末以外”をターゲットにしたCPUであり,その仕様的にも見るべきものが多いことから,2015年中頃に登場するといわれるデスクトップPC向けCPU「Broadwell-H」(開発コードネーム)の姿を占えるかもしれない。今回は,そんなXeon Dの概要をまとめてみることにしよう。

Xeonの新ファミリーとなるXeon Dは,CPUにネットワーク機能や周辺回路を統合したSoCとなった
画像集 No.007のサムネイル画像 / Intel,Broadwellコア採用のサーバー向けSoC「Xeon D」を発表。DDR4/DDR3Lメモコンや10GbE LAN機能を統合したXeon初のSoCに


Xeon E3の下位モデルとして投入されるXeon D

置き換え対象はAvotonに


 従来,Xeonファミリーは「Xeon E7」と「Xeon E5」,「Xeon E3」という3モデル構成になっていたが,Xeon Dは,それら3モデルのさらに下位モデルとして用意された新製品だ。Intelがそう言っているわけではないが,Core i7・i5・i3に対するCore Mのようなものだと理解しておくといいかもしれない。

 既存のXeonはおおまけに分けて,Xeon E7が4-way(≒4ソケット)以上,Xeon E5が2-way(≒2ソケット)まで,Xeon E3が1-way(≒1ソケット)のみとなっている。Xeon E3よりも下位に位置づけられるXeon Dも1-wayのみの対応だが,Xeon E3+PCH(=サウスブリッジ)の組み合わせと比べ,マザーボード基板上の占有スペース(=フットプリント)が小さくなるというのが,大きな特徴だ。

 Intelによれば,Xeon Dは現行のXeon E3-1200 v3よりも性能が若干高くなるが,これは「Xeon E3ファミリーのBroadwell版が登場していないことによる,過渡的な状態」とのこと。Xeon Dが置き換える対象はあくまでも,SilvermontマイクロアーキテクチャのCPUコアを採用する「Atom C2750」「Atom C2730」になるという。

Xeon Dは量産前サンプルの時点で,Atom C2750よりも最大3.4倍の性能,最大1.7倍の電力効率を実現できているという
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 「Avoton」という開発コードネームで知られたAtom C27x0シリーズは,インターネット向けのサービスを行うサイトなどのエッジサーバーや単純なWebサーバー,企業向けNAS(ネットワーク接続型ストレージ)などといった分野に提供されてきたが,あくまでもAtomベースということで,Xeon E3との性能差が大きすぎた。それを,Atom C2750比で最大3.4倍のプロセッサ性能,最大1.7倍の電力効率を実現したXeon Dによって置き換え,そのギャップを埋めようというのが,Intelの狙いである。

緑色の部分が,Xeon Dのターゲットとなる用途。クラウドのエッジサーバーやWebサーバー,企業向けのストレージシステムなどが想定されている
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発表時点でのラインナップは2モデル

10 Gbit EthernetやSATA,USBをSoCとして統合


 今回発表されたXeon Dのラインナップは,CPUコアが8基の「Xeon D-1540」(以下,D-1540)と,CPUコア4基の「Xeon D-1520」(D-1520)の2製品で,いずれも出荷時期は2015年3月中とされている。Broadwell世代なので,14nmプロセス技術を用いて開発されていることは確定ながら,トランジスタ数やダイサイズは今のところ公表されていない。

 冒頭で紹介したとおり,Xeon Dは,デュアルチャネルDDR4-2133およびデュアルチャネルDDR3L-1600対応のメモリコントローラを統合している。
 搭載できる総メインメモリ容量はRegistered(レジスタード)タイプで最大128GB,Unbuffered(アンバッファード)タイプで最大64GBだ。UnbufferedタイプではDIMMだけでなくSO-DIMMもサポートする。
 「デュアルチャネルで最大容量128GB」というスペックは,サーバー向けCPUとしては規模が小さいこともあってか,Xeonの上位ファミリーが持つ「メモリミラーリング」といった機能などは省略されている。

Broadwell世代で初めてDDR4に対応したXeon D。デュアルチャネルでメモリモジュールは最大4枚装着できる
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 Xeon Dでは,

  • PCI Express 3.0レーン×24
  • PCI Express 2.0レーン×8
  • 10 Gbit Ethernetコントローラ論理層×2
  • Serial ATA 6Gbps×6
  • USB 3.0×4
  • USB 2.0×2

の各機構を統合するのも大きな特徴だ。下に示した図を見ると,PCI ExpressスイッチがIIO(Integrated I/O)として接続され,その先に10 Gbit Ethernetコントローラ論理層(Media Access Control,MAC)やPCH(≒サウスブリッジ)機能などが接続される構造なのがよく分かると思う。IIOなどをオンダイで統合しただけでなく,PCHなどもオンパッケージで統合したのが,SoCであるXeon Dにおける大きなポイントだ。

Xeon Dのブロック図。サーバーシステム構成に必要な周辺回路や汎用のPCI Expressだけでなく,10 Gbit Ethernetコントローラ論理層やPCHなども統合されている。なお,図の左下,赤枠で囲まれたPCH部分は,オンダイではなく別のダイとなっているそうだ
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 なお,ここまで「論理層」と繰り返していることから想像できるとおり,Xeon Dで10 Gbit Ethernetを利用するには,物理層(PHY)と呼ばれる回路を別途組み合わせる必要がある。
 物理層は,ネットワークの物理的仕様に合わせる必要があり,ネットワーク形式により異なる。10 Gbit Ethernetの場合,従来と同じ銅線を使うもののほかに,光ファイバーを使うものがあり,しかも光ファイバーの場合はさらにいくつかの方式があって,デファクトスタンダードが固まっていない。また,コストの違いもあるので,現時点では理にかなった実装といえそうだ。

Xeon Dは10Gigabit Ethernetコントローラ論理層を統合。2チャネルあり,いずれも仮想化やプロトコルオフローディングなどに対応している
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 なお,24レーンのPCI Express 3.0は,x16とx8に分割されている。エラー制御機構「ECRC」(End to End Cyclic Redundancy Check)が用意されているため,エラー検出ならびに訂正が可能だ。

PCI Express 3.0周りの主なスペック。ECRCに対応するのがトピックといえる。念のため付記しておくと,PCH側のPCI Express 2.0コントローラにECRCベースのエラー訂正機構は用意されていない
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 そのほか主なスペックはにまとめておいたので,参考にしてもらえればと思う。

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Broadwellベースながらも

手が入っているXeon DのCPUコア


 D-1540とD1520のCPUコアは,第5世代Coreプロセッサと同じBroadwellベースだ。そのため,Haswellで採用された改良版AVX(Intel Advanced Vector Extensions)命令セットである「AVX 2.0」や,AESの新命令は,漏らさず対応している。

 Xeon Dならではの特徴として挙げられるのは,トランザクションメモリ命令「Transactional Syncronized Extentions」(TSX,以下略称表記)のサポートだろう。これは,Haswellで一旦実装されながら,出荷後にバグが発見されて無効化された機能である。

 大雑把に説明しておくと,TSXというのは,ほかのスレッドから特定のアドレスに対するメモリ書き込みを検出して処理を最初からやり直すトランザクション処理を実現したり,メモリロックによる速度低下を防いで,マルチスレッドによる並列処理を高速化したりするものだ。
 TSXは,ノートPC向けBroadwellでも実装されながら無効化されているのだが,Xeon Dでついに問題が修正され,有効化されたことになる。その点において,Xeon Dでは,同じBroadwellベースでありながらも,先行するノートPC向けと比べて手が入っていると紹介することができるだろう。

Xeon Dに採用されたBroadwellコアの特徴。Haswellで無効化され,Broadwell-YやBroadwell-Uでもそのまま放置されていたTSXが復活している
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 また,CPU内部のバッファもHaswellから拡大されたものがある。まず,パイプラインに対する命令発行順を管理する,スケジューラに保持できる命令数「Scheduler Entries」が,Haswellの「60」から「64」へと増量された。また,命令デコーダに送られる前のx86命令を保持しておく「Instruction Que」も,Haswellの「20」から「25」へと増量されているのが明らかにされている。

Broadwellにおける内部バッファの拡大を示したスライド。このあたりはHaswellで大分改良された部分だが,Broadwellではさらに手を入れてきたわけだ
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 Xeon Dでは,クライアントPC向けCPUにはないRAS機能※1が搭載された点も,触れておく必要があるだろう。ただし,Xeon E3などが持つすべてのRAS機能を備えているわけでなく,メモリ関連のRAS機能などは省略されており,総じて,下位モデル相応の仕様となっているようだ。

※1 Reliability,Availability,Serviceabilityの頭文字で,安定性や可用性,保守性を保証するための機能のこと。

Xeon Dが搭載するRAS機能を,Atom C2000やXeon E3と比較したスライド。上位のXeon E3が持つすべてのRAS機能が,Xeon Dにも搭載されているわけではない
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Xeon Dの仕様から,デスクトップPC向けBroadwellのことを考えてみる


 これまでの経緯を考えると,Intelが今回,わざわざXeon Dを用意した背景には,「既存のXeon Eシリーズを,従来どおりの『CPU+チップセット』という構成で継続する」という意向があるように見える。そのうえで,ブレードサーバーのような,小型フットプリントが必要な市場に対して,性能面で難のあったAvotonに代わるものとして,SoC版Broadwellを持ってきたというところだろう。ここは,ARMアーキテクチャの64bit版プロセッサなども狙ってきている市場なので,絶対性能で勝るものを用意してきたと見ることもできるはずだ。
 そのうえで上位モデルたるXeon Eシリーズでは,Xeon Dにおける経験を踏まえ,TSXを有効化し,RAS機能を追加し,キャッシュやCPUコア数を増量したうえで,順次切り替えていく計画なのだと思われる。

Xeon Dの製品概要まとめ
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 また,XeonにSoCが導入されたことからは,今後,小さなフットプリントが望まれる市場,それこそノートPCや2-in-1,あるいはNUC(Next Unit of Computing)のような小型〜超小型デスクトップPCといった市場でも,Intel製プロセッサのSoC化が進む可能性が見て取れる。
 興味深いのは,D-1540で,合計12MBものL3キャッシュ容量を実現していること。キャッシュはダイの中で比較的大きな面積を取ることを考えると,これよりキャッシュメモリ容量の少ないLGA1150版Core i7の後継製品をSoC化することも,それほど難しくはないだろう。Broadwell世代ではひょっとすると,デスクトップPC向けCPUのSoC化が一気に進むことになるかもしれない。

 もう1つ,DDR4-2133がXeon Dでサポートされたことも,重要なポイントである。現時点だとまだDDR4メモリモジュールは高コストなので,Broadwell世代のデスクトップPC向けプロセッサがDDR4をサポートするかは分からないが,技術的に「いつでもいける」状態になったことは,押さえておく必要があるだろう。

Intel日本語公式Webサイト


※2015年3月10日11:30頃追記
 「どこまでがオンダイか」について,Intelに確認が取れたので,記事を一部アップデートしました。

  • 関連タイトル:

    Xeon

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