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Intel,Ivy Bridge-EXこと「Xeon E7v2」ファミリーを発表。CPUコアは最大15基,メモリ容量は最大1.5TBに到達
ゲーマーが購入するような製品ではないとはいえ,Xbox One向けXbox Liveがクラウドサービスの活用に重点を置くなど,大規模サーバーシステムを支えるCPUはゲームにも間接的に関わっている。そうした大規模サーバーシステムに使われるXeon E7 v2の詳細を簡単にまとめてみたい。
最大15基のCPUコアと37.5MBのL3キャッシュを搭載
Coreマイクロアーキテクチャ世代のIntel CPUは,以下の表1にあるような進化を遂げてきた。既存の大規模サーバーシステム向けCPU「Xeon E7」に採用されたWestmere世代のマイクロアーキテクチャは,現在最新の第4世代Coreプロセッサこと「Haswell」からすると3世代も前のものだった。それがXeon E7 v2では,一気に2世代も新しくなったわけだ。
とはいえ,Xeon E7 v2が採用するマイクロアーキテクチャは,最新のHaswellではなく1つ前のIvy Bridge世代である。最新アーキテクチャの採用よりも安定性や可用性(※止まらずにサーバーが動くこと)を重視するという,Xeon E7ファミリーの路線を継承したためであろう。
表1 Coreマイクロアーキテクチャの変遷
アーキ |
Nehalem | Westmere | Sandy Bridge | Ivy Bridge | Haswell |
---|---|---|---|---|---|
製造 |
45nm | 32nm | 22nm | ||
製品登場年 | 2008年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 |
第2の特徴は,その強力なスペックにある。Xeon E7 v2は,6/8/12/15基のCPUコアを搭載するモデルが用意され,ほとんどのモデルがHyper-Threading Technologyもサポートしているので,15コアの製品なら最大30スレッドの同時実行が可能だ。共有L3キャッシュ(LLC)は,各CPUコアごとに最大2.5MBのLLCスライスで構成され,15コアのモデルであれば,L3キャッシュの総容量は最大37.5MBに達する。
ちなみにCPU内部そのものは,2013年9月に登場したミドルレンジのサーバー向けCPU「Xeon E5v2」(開発コードネーム,IvyBridge-EP。関連記事)と多くの部分が共通しているそうだ。
CPUコア数は最大15基(左)。各コアあたり最大2.5MBのL3キャッシュが3本のリングバスで接続されており,総容量は37.5MBという大容量となっている(右) |
このSMI Gen2には,メモリ拡張バッファ「Intel C102/C104」(開発コードネーム,Jordan Creek)が接続されており,メモリ拡張バッファの先に伸びる2本のDDR3チャネルに,最大6個のメモリモジュール(DIMM)を装着するというのが,Xeon E7 v2のメモリ構成だ。
4基のメモリ拡張バッファに,それぞれ最大6個のDIMMを装着可能ということは,1個のXeon E7 v2には最大24個ものDIMMを搭載できることになる。Xeon E7 v2はメモリ容量64GBのDIMMに対応しているので,CPU 1ソケットあたりの最大メインメモリ容量は,64GB×24個=1.5TBにも達するわけだ。8ソケットのシステムであれば最大12TBものメモリが搭載可能となる。さすがは大規模サーバーシステム向けのCPUといったところか。
なお,CPUソケット同士を結ぶインタフェース「QPI」(Quick Path Interconnect)は3本を用意。QPIのリンク速度は,Xeon E5v2と同じ最大8.0GT/sとなり,最大6.4GT/sだったXeon E7よりも高速化されている。
製造プロセスは22nmでトランジスタ数は約43億個,ダイサイズは約541平方mm2とのこと。Intelによれば,Xeon E7 v2ファミリは全製品がこれと同じシリコンダイを用いているという。つまり,15コア未満の製品は一部のCPUコアとキャッシュを無効化して出荷されているわけだ。
ついにItaniumの領域に到達したXeon E7 v2
※1 Reliability,Availability,Serviceabilityの頭文字で,安定性や可用性,保守性を保証するための機能のこと。
Xeon E7 v2のRAS機能は「Intel Run Sure Technology」と呼ばれており,高可用性のひとつの目安である「99.999%の可用性」,つまりハードウェアに起因するダウンタイムは0.001%以下を実現できるという。
ただし,RAS機能そのものは既存のXeon E7にも実装されているので,Xeon E7 v2に搭載された改良版に,Intel Run Sure Technologyというマーケティング用の名称を与えたと見てよさそうだ。
Intel Run Sure Technologyでは,とくに「システムRAS」と呼ばれる機能の拡充が大きな特徴となっている。システムRAS機能とは,簡単にいえば致命的なエラーとなる障害を診断して,必要があれば回復するためのものだ。そしてシステムRAS機能の中でも,とくに「MCA Recovery」(Machine Check Architecture Recovery)と称する機能を実装したことには,大きな意味がある。
それというのもMCA Recoveryは,サーバー向けハイエンドCPUである「Itanium」が備えていた機能で,Xeonに対するItanium最大の差別化ポイントとしてIntelが謳っていたものなのだ。つまり,Xeon E7 v2がMCA Recoveryを実装したということは,Itanium最後の差別化ポイントがなくなったことを意味しているわけだ。
Xeon E7 v2のおもなRAS機能(左)。とくに「システムRAS」の拡充により(右),Xeon E7 v2はItaniumと肩を並べるRAS機能を持つことになった |
Xeon E7 v2の登場によって,筆者は「いよいよItaniumも終わりに近づいたのかな……」という印象を受けた。もちろん,サーバーシステムの世界では実績からくる信頼性や後方互換性が極めて重要なので,Itaniumベースのサーバーシステムが短期間で駆逐されることはない。それでも,これまで足を踏み入れていなかった基幹サーバーの領域にまで,Xeonが浸透していくことは確実であろう。
Xeon E7 v2は1個で1200〜6800ドルほどもする製品なので,ゲーマーが個人で購入してどうこうする類の製品ではない。とはいっても,「15コアで最大メインメモリ容量1.5TBのx86 CPU」と聞けば,ちょっと心が躍る面はある。遠くない将来,オンラインゲームを支えるクラウドサーバーシステムにも,Xeon E7 v2が使われるような日がくるのかもしれない。
Xeon E7ファミリー 製品情報ページ
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