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[GDC 2012]“シミュレーションゲームの父”ことシド・マイヤー氏が語る「デザインとは,興味深い選択の連続」の真意
そもそも「デザインとは,興味深い選択の連続」というセリフは,1989年のGDCの講演において,マイヤー氏の口から飛び出した何気ない言葉だった。それが現在でも,ネット上でゲーマーや開発者達に語り継がれているという事実を,マイヤー氏は“自分の名前で検索”して知ったという。
しかも自分の発言にはさまざまな尾ひれがつき,賛否両論となっているらしく,今回のセッションではあらためて,この「興味深い選択」(Interesting Decisions)について考え直してみたという。
この「興味深い選択」が何なのかについてだが,マイヤー氏は「プレイヤーが何かを決めるときに,どちらのチョイスを優先するか」という選択肢を与えることだと明言。例えばRPGで,今500ゴールドの剣を買えば,戦闘には有利だがサブクエストの達成が遅れてしまうというケースや,レースゲームで自分の車のハンドリングをアップグレードするか,それともエンジンを先にアップグレードするかで変化する,その後のプレイスタイルなどが当てはまる。マイヤー氏のCivlizationにおいては,スカウトを先に生産することで拡張を急ぐか,戦士を生産してバーバリアンの侵攻に備えるかで,中期的なゲームの展開が変わってくるという類の話だろう。
このように「興味深い選択」とは,短期,中期,長期的な複数階層に及ぶ影響をゲームに与えていくもので,さらにプレイヤーのプレイスタイルやパーソナリティによっても変化していくべきというのが,マイヤー氏の持論である。
そんなマイヤー氏は,「常にプレイヤーの席に座ったつもりでゲーム開発をするべきだ」と,会場に集まった若手開発者たちに説く。実際マイヤー氏は,自分ですべてのプログラミングをしていた時代から,テストプレイを兼ねて制作中のゲームで遊ぶことを繰り返し,内容をブラッシュアップさせる手法を取っているが,今でも開発期間の半分は,彼自身によるテストプレイの時間だという。「アイデアを提供してくれそうな歴史マニアや,自分の思い通りにゲームを展開できないと満足しないゲーマーから,役に立つフィードバックが得られることは少ない」が,そういう人々がコンピューターの向こうに座っているのを意識すべきだということである。
マイヤー氏は最後に,「もっとも,興味深い選択を並べていくだけで,良いゲームが生まれるわけではありませんよ」と会場に念を押した。そして,こういったゲームシステムの無機質な部分を,ファンタジーというオブラートで包んでしまうことが,プレイヤーとゲームの友好関係を築いていくための秘訣であると締めくくった。
- 関連タイトル:
シドマイヤーズ シヴィライゼーションV 日本語版
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