企画記事
仕事の振りしてCiv5を遊んだついでにゲームの話でもしようじゃないか――【切込隊長×徳岡正肇×TAITAI】が贈る年末トーク
……ともあれ,マルチプレイも無事終わり,ここから先はストラテジー&マルチプレイゲーム好きの三人が,昨今のゲームの現状や将来への希望なんぞを語り合ってみた記録である。言いたかないが,本当にぐだぐだなので,あまり期待しないで読み進めていってほしい。
マルチプレイゲームの変遷と遊びやすさの関係
うん,なかなか面白かった。
TAITAI:
いやぁ,シヴィライゼーションもマルチを実際やると面白いんですけどね。なかなか時間が……。
隊長:
ある程度は腰を据えて遊ばないと駄目だからね。ゲームのプレイ時間が多少長い分,どうしても遊ぶまでの敷居が高くなる。でもまぁ,プレイバイメール(※)とかに比べると,圧倒的に短く済むわけで。あの時代から比べると,今のお手軽さは天国のハズなんだけどなぁ。
※古くは郵便,最近では,メールを使ったマルチプレイゲームの総称
徳岡正肇(以下,徳岡):
マルチプレイゲームとしてストラテジー/シミュレーションゲームというジャンルを見た時に,古くはボードゲームから始まって今があるというわけですから。で,アナログな時代から比べると,今の環境(遊びやすさ)って確かに天国なんです。
TAITAI:
でも,流行らない(笑)。いや,RTSにしろ三国志大戦にしろ,エッセンスを残しつつ違う形で一時代は築きましたけどね。
隊長:
プレイ手段や環境がどうあれ,結局,ストラテジーゲームそのもののシステムが「遊ぶのに時間がかかる」って部分がネックなんだよね。
徳岡:
最近のRTSにしても,決着つくの早いゲームが多いですからね。1時間も対戦してるゲームなんてまず見ない。15分くらいで決着がつくゲームが多いですよ。
隊長:
あるいは逆に,トラビアン系のゲームのようなタイプ。
徳岡:
ゆっくりプレイできる系。
TAITAI:
昔,記事でもそれっぽいことを書いたんですが,時代の流れとしては,コンパクトにまとめてプレイ時間を短くするか,非同期型のプレイスタイルに移行しつつありますよね。
隊長:
でもトラビアン系のゲームは,結局勝つためにはPCに張り付かないといけないのが厳しいよ。
徳岡:
そうですね。まじめにやると,全然1日数分じゃ済まない。生活が完全に支配されちゃいますね(笑)。
隊長:
そして結局は,廃プレイヤーが続出と。
ただあの手のゲームって,生活を完全に拘束されちゃうからこそ思い出に残って,「面白かった!」っていう補正がかかってる部分もあると思うんですよね。
隊長:
ブラウザで気軽に遊べる一方で,攻めこまれて負けると,限りなく再起不能に追い込まれるゲームバランスだからかね。滅ぼされたくなければPCに張り付くしかない。
TAITAI:
しかも,プレイして時間が経てば経つほど,頑張れば頑張るほど滅んだ時のショックが大きいからなおさら(笑)。
徳岡:
でもそうやって張り付いて,一回でも上手く攻撃を切り抜けたり,逆襲できちゃったりすると,それがまた面白いわけですよね。
TAITAI:
まぁMMORPGとかも,そういう側面はありますよね。飴と鞭じゃないですけど,結局のところどこかで「頑張って遊ぶ」部分は残さないと駄目なんでしょう。ゆるいだけじゃ得られない快感というか。
そう,苦労の先にカタルシスがある。
例えば「ブラウザ三国志」は,その部分を「お金をかければ切り抜けられる」っていう形にしてあって,課金部分の設計はかなりうまく作ってたんだよね。あれは上手だった。でも一方で,ゲームとしては中途半端な部分もあって。要するに「結局,これはどうやって決着をつけるんだ?」ってことになりがち。
徳岡:
あの手のブラウザゲームは,その辺が課題としてありますね。
隊長:
「何を目的として遊べばいいのか」「どこを決着とみなせばいいのか」がね。それで結局,お客さんが止めどきを見失って,サーバがリセットされて2クール目に入った途端,大量の引退者が出てしまうわけで。
徳岡:
そういえば,世界的に見てトラビアン型のブラウザゲームの「エンディング」っていうのは,実に簡素というか,なんというか……。
TAITAI:
「はい,これで終わり」って感じですよね。
徳岡:
ある日アクセスしてみたらサーバにアクセスできなくて終了,とか(笑)。
隊長:
そうそう(笑)。どっか遠いところで大変なことがありました,みたいな。ある意味で残念な終わり方。まあ,結局は結末よりも過程を楽しんでいるわけだから,そこはどうでもいいんだけどね。
新ジャンル「ブラウザゲーム」とゲームバランス
まあでも,大枠で言うなら,日本でもこのジャンル(トラビアン系)がそこそこ流行って良かったと思うよ。そういえば,噂の「戦国IXA」はどう思います?
TAITAI:
んー,まあ,僕は「ブラウザ三国志より良くなってる」と思います。少なくとも,ブラウザ三国志で課題だった部分に手を入れようという意志は感じられる設計ですから。ただ,課題に手を入れることで,別の課題も見えてきて。なかなか難しいなぁと。
隊長:
12月の終わりに懸案のアップデートが来るわけですが,私はもう疲れちゃったよ。
TAITAI:
えー,遊ぼうって誘ってきたの隊長の方じゃないですか(笑)。
一応説明しておくと,TAITAIさんはなにげに「戦国IXA」を凄いちゃんとプレイしていて,ほんと,おまえ仕事してるのかってくらいやってるんですよ。「忙しい」とか言いながら,なんかランキングで1位とか2位とかになってて,あからさまに廃的な人達とトップ争いをしちゃってる(笑)。
徳岡:
なんか酷い言われような気が(笑)。
TAITAI:
いやいや。「戦国IXA」は寝られるから全然楽ですよ。ゲームシステムとして,深夜はプレイできないないようになっているんで。Yahoo!と組んだプロジェクトとして,比較的ライトなプレイヤーさんが多く入って来たであろうことを考えると,この設計は正しかったんだと思います。
だって,「トラビアン」はほんと寝てもいられなかったですから。寝たら普通に滅んでるんで。で,一回でも滅んだが最後,あとはカモられるだけの世界。厳しいです。
隊長:
でも,逆に「戦国IXA」はペナルティがなさすぎて,「なんか守らなくていいよねー」みたいになっちゃうのが問題だよね。
徳岡:
あのあたりのバランスを上手くとれればいいなあと思うんですが,ちょっといま市場が過当競争気味ですよね。それでまた,どれもトラビアン型のゲームが抱えている問題の焦点に迫っている気配が感じられなかったりする。
隊長:
そうだね。……とかいう話をしちゃって大丈夫なんですか,TAITAIさん的に。
TAITAI:
いいんじゃないですか。
廃れていくRTSというジャンル
リアルタイムストラテジー(以下,RTS)というか,オンラインストラテジーゲームっていうジャンルでブラウザゲームのスタイルが隆盛した背景には,例えば「Age of Empires」(以下,AoE)みたいな,がっつり作り込まれた/やり込むタイプのゲームが廃れて,ジャンルとしても枯渇してしまったというところがあるよね。
徳岡:
世界的には,「ウォークラフト III」と「StarCraft II」が人気っちゃ人気ですけど。日本に限って言うと,見事に死滅してしまった感は否めない。
隊長:
確かにWarcraftにはプレイヤーが沢山いるね。でも,AoEシリーズは死んでしまった。面白かったんだけどなあ。「エンパイア・アース」とかも死んで,「ライズ オブ ネイション」も死んで……。私が好きな作品達は見るも無惨。
徳岡:
今,生きているタイトルというと,「ウォークラフト」の派生型みたいなやつですかね。「Defense of the Ancients」とか,「Heroes of Newerth」とか。
隊長:
ただ,ジャンル全体としては,RTSはかなり残念な感じになってしまいましたよ。もう世界的なセールスで見ても,ジャンルとしては衰退してしまった。
「エイジ オブ エンパイア III」(以下,AoE3)とか,発売当時はとても期待してやってたんですけど,バージョンアップするたびに客がいなくなっていったんだよね。
TAITAI:
AoE3で強く感じたのは,強い人が1人いれば弱い人のぶんまでカバーできる的なゆるさが完全に消えちゃったことですね。例えば3対3とかだと,全員が自分の役割を理解してプレイしないとゲームにならない。ゲームシステム/バランスとしては,AoE3の方が洗練されていたんですが,あれでは初心者が入りづらいですよ。
隊長:
そうだなぁ……。
Co-opの勃興,あるいは再発見
徳岡:
ただ振り返ってみると,RTSというジャンルの中でも,いろいろな努力がされていたとは思うんですよ。例えばですが,「カンパニー オブ ヒーローズ」で,プレイヤー1人が戦車1両だけを扱うルールを作ったりとか,あるいは陣地を協力して守るCo-op(協力プレイ)モードを作ってみたりとか。
隊長:
ああいうのは,チャレンジとしては良かったと思うんだよ。チャレンジとしてはね。ああ,分かる分かる,と。
徳岡:
だから,ユニットが多すぎて管理が大変とか,対戦でギスギスするのが嫌だとか,作り手側がそういう問題点を把握してるのは,プレイヤーの立場からも感じてたんですよ。
隊長:
でもそこから先に進まなかった。お客さんのニーズとか,RTSというジャンル自体への飽きの問題をどう回避するか。結局,やりたいことは全部やったってことだと思うんですよ,作り手側は。
でも結局のところ,間口の広さや遊び易さ,その他諸々の要因で,「Left 4 Dead」とか,あのあたりの作品に太刀打ち出来なかったというのが結論だっただけで。
TAITAI:
マルチプレイというキーワードで考えてみても,Co-opっていう段階で,対戦よりは圧倒的にハードルが下がるじゃないですか。そこは日本だろうが世界だろうが変わらない部分だと思うんです。だからこそ,日本では「モンスターハンター」が流行り,海外だとL4Dとかが流行っていったんじゃないかなあ。
「Left 4 Dead」 |
「モンスターハンターポータブル 3rd」 |
隊長:
ただCo-opの見せ方も,日本とヨーロッパだとだいぶ違ったりするよね。一昔前にあった,ファンタジックなCo-opなんかは,市場としてはほぼ完全に消えてしまったわけで。Microsoftが出してた「Dungeon Siege」なんかもお亡くなりに。
TAITAI:
いわゆるディアブロ・クローン系ですね。
徳岡:
ハックアンドスラッシュ系のCo-opはほんと少なくなりましたね。
TAITAI:
まぁ「Diablo III」を待っている状態ですよね。仮に久しぶりにハックアンドスラッシュ系を遊びたいなーと思ったとしても,結局は「Diablo II」が一番面白いというところに落ち着きますから。
隊長:
Blizzardの作品は完成度が高すぎて,競合がまったく育たない(勝てない)という,ある種の弊害があるよね。
徳岡:
Diablo IIが今なお十分面白かったりしちゃいますしね。
TAITAI:
100点満点のゲームがある以上,その隣に95点のゲームがあろうが,90点のゲームがあろうが,やらないってことなんですよね。そうなると,そのジャンルからは競争性とか切磋琢磨感とかがなくなってしまって,市場としてはむしろ残念な感じになる。
隊長:
長い目で見るなら,やっぱり競っていてナンボだとは思うんだよね。競い合うことでいろんな可能性が試されて,そこで花開く何かってのは必ずありますから。
TAITAI:
RTSに限らず,例えば格闘ゲームなんかでも,2Dでは「ストリートファイターII」や「餓狼伝説」や「キング・オブ・ファイターズ」,3Dでは「バーチャファイター」があり「鉄拳」がありって時代が一番盛り上がっていたわけですよ。でも「オレはこっちでいいや」って一度決まっちゃうと,ユーザーはなかなかそこから動いてくれない。そして縮小再生産が始まる。
隊長:
ま,そこはあらゆるジャンルが通る道ではあるな。
「アルファケンタウリ」のリメイクを切望するの会
隊長:
さっきの話っていうのは,ジャンルが煮詰まるっていうか,発展が止まるときどうするか,という話だよね。
徳岡:
まぁただ,「シミュレーションゲーム」なんかは,もう100年くらいかけて煮詰まってきたわけで。商用のシミュレーションゲームの誕生が第一次大戦の頃ですから,100年っていう表現もそろそろ大げさじゃなくなってきてます。
隊長:
物事をどうシミュレートしてゲームに落とし込むのかっていう,その抽象化の手法とか概念とかが出尽くしちゃうと,次のブレイクスルーまで時間がかかるんだよね。で,そうなってくると,モチーフとかデザインでなんとかしていくしかなくなって,結果的にキャラゲーになってみたり,映像ゲーになってみたり,データ物量ゲームになってみたりするわけですよ。
TAITAI:
マルチプレイゲームはとくに,抽象化の仕方がとても難しいと思いますよ。文明の衝突みたいなのを扱ったゲームでも,抽象度を上げた結果,現実味がなくなってどうしようもなくなるっていうパターンをよく見るので。
Civ4なんかでも,商品として文明を増やしていくのは仕方ないとは思いつつも,「これ文明じゃないだろ」みたいなものまで入っていくわけですよ。そういう意味では,シヴィライゼーションシリーズもちょっと行き詰まっているのかなあ,とは感じます。
正直,シヴィライゼーションにも行き詰まりは感じますね。個人的には,システムは4でも5でもいいから,「シド・マイヤーズ アルファケンタウリ」(以下,SMAC)をリメイクしてくれと思うんですが(笑)
隊長:
まったく! SMACはほんとうに画期的でしたよ!(力強く)。……でもSMACは,マルチやると落ちるんですよ,これが。
徳岡:
ということは,まさに今こそ2が。
隊長:
求められてます(キリッ)。
TAITAI:
確かにあれは傑作でした。
徳岡:
いや,わりと本気でアリだと思うんですよね。もちろんあれそのままっていうわけじゃなくて,現代にもアピールするグラフィックスであったりシステムであったり,多少の手は加えるとして。
隊長:
「ヤン議長」のカタルシスたるやね! まあ,対戦ゲームとしてはバランスが取りづらいにしても,相当良いゲームだったのは間違いない。概念的にも秀逸なゲームデザインだし,完成されたゲームだったと思います。
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