連載
攻めるなら横方向がお得? 連載「そうだったのか! シヴィライゼーションV」の第1回は,マス目についてネチネチと語るの巻
ということで本連載では,Civ5でより高みを目指すためのTipsを紹介する,のではなく,直接的に攻略の役に立たない小ネタを中心にお伝えしていこうと思う。だって,プレイヤー諸氏が今のペースで睡眠時間をゲームに費やし続ければ,だんだん自分なりの戦術とかセオリーとか安定パターンとか見つけられはずで,それが楽しいゲームなんだし。
……ここでちょっとだけ脱線するが,Civ5の難度が低めでシステムがシンプルなのは,「自分の手でゲームを攻略していく」という原初の楽しさを,より広く開放するという観点からは,妥当な選択だったと思う。人間,いつまでも山を登り続けることはできない。一度山を降りればこそ,次の山を目指せるのではないだろうか?
あー,さて。役に立たない小ネタと言ったものの,1回目は「ほんのちょっと役に立つかもしれない」レベルのお話をしよう。テーマは「貴様が南(あるいは北)から攻めて来る限り,我が国は負けん!」だ。ちなみに,本作のレビューを掲載してあるので,基本システムなどはそちらで確認してもらいたい。
ヘックス対スクエア,どっちが偉いんじゃ〜。たぶん引き分けというお話
ストラテジックコマンド |
とにかく,ヘックスという方式は,アナログのストラテジーゲーム(ウォーゲーム)において発達してきた手法で,PCゲームの黎明期においてもストラテジーゲームといえばヘックスを使うのが一般的だった(大戦略シリーズなど)。最近でもコアな作品においてはヘックスを使用するケースが多い。
一方,コンシューマゲームの世界で非リアルタイムのストラテジーといえば,スクエアを使うのが一般的で(「タクティクスオウガ 運命の輪」など),この傾向は現在も続いている。
図1:斜め移動を許すと,AからBへの移動と,AからCへの移動が等価となる。この程度ならば発生する誤差は小さいが,AからD,AからEの距離が「移動力的には同じ」となると…… |
一方,「連続していない」と定義すると,「斜めに存在するタイルに移動するには約1.4倍の移動力が必要」となり,距離の矛盾が大きくなる。長射程のユニット(4マス,5マス先まで攻撃できるものなど)を採用すると,この傾向は一層顕著になるのだ。
もちろんスクエア方式を採用したとしても,ゲームシステムで縛ることでゲーム内部の矛盾は解消できる。だが,例えば物理エンジンと組み合わせるなどということをした時に,スクエア方式は絶望的なまでの矛盾発生装置となってしまうのだ。
図2:赤い丸が,パンダがいるヘックスから距離2の円で,水色が,中央のヘックスからの「距離2ヘックス」だ。この図での差は小さいが,距離が大きくなるにつれて大きくなる |
ともあれ,先行する作品群のなかでヘックスが一般的に使われるせいか,「スクエアは初心者用」という不可解なイメージが一人歩きしている傾向がある。ひどくなると,「ヘックスは距離に対して無矛盾で高度なゲーム,スクエアは単純なゲーム」といった偏見まで飛び出すことがあるのだ。
実際には,上記のように「どちらも矛盾する」が正解で,「ヘックスのほうがより矛盾が小さい」というのが妥当な判断だろう。
……が,「スクエアでは無矛盾で,ヘックスでのみ発生する矛盾」という課題が,実は存在するのだ。ジャジャン。
太古の知識――ヘックスの目
突然だが,「ヘックスの流れ」「ヘックスの目」という言葉をご存知だろうか? これが正式なタームかどうかの確証はないが,ヘックスマップには大きく分けて2種類が存在するのだ。文章で説明するよりも図版のほうが分かりやすいので,実際に下のヘックスマップを見てほしい。左が「縦目」で右が「横目」だ(本稿では,この用語を使用する)。
縦目 |
横目 |
縦目と横目の違いを簡単にいうと,「縦目はユニットを縦に一直線に並べられ,横目はユニットを横一直線に並べられる」ことだ。
6角形の連続でマップを作る場合,どうしても縦横どちらかはきちんとした一列にはならないために,こういった現象が発生する。もちろん,対応策がないわけではないが,話が脇道にそれまくるので,本稿では省略させて頂く。
では,ユニットを一直線に並べられる方向が異なると,なにが起きるのかというと,戦術に差が出る。つまり,上下左右いずれか一直線にユニットを並べたときと,一直線には並べられない方向に並べたときでは,一直線にならない戦線の方は,防御力が弱くなるのだ。実際にユニットを配置してみると,これは一目瞭然なので,図版を見てほしい。
一直線に並んだユニットは,同時に2つのユニットからしか攻撃されない(図3)。これに対し,一直線に並べられていないユニットは,同時に3つのユニットから攻撃されうる(図4)。たとえ6角形の一辺に沿ってユニットを配置していっても,戦線の角度が変化する一点が必ずウィークポイントとなる。
図3:このようなヘックス配列だと縦1列にならんだ場合,ライオン軍もパンダ軍も2方向からしか攻撃できない |
図4:ヘックスが“横目”で並んでいると,敵軍1ユニットに対して3方向から攻撃が可能だ |
図5:斜め方向への攻撃を許可してもしなくても,ライオンA,ライオンBともに攻撃を受ける方向の数は変わらない。また,Cマスを空けておくことで,Cマスに入り込んだパンダにはライオンが2方向から攻撃できる。Dマスにライオンの予備を入れておくとさらに良い |
Civ5のルールでも,この「縦目・横目」現象は存在する。しかるに,Civ5のヘックスは「横目」であり,これはつまり横方向からの侵攻に対して脆弱であるということだ――Civ5のマップは全体的に横方向に長い長方形になるにも関わらず!
Civ5のマップが横目なのは,消耗戦を肯定しているという見方もできる。戦力の喪失が早いほうがゲームは早く終るし,戦争をするリスクが上がる。リードデザイナーがそこまで考えて設計したかどうかは分からない。だが世界で合計すれば,何十万試合というオーダープレイをされるゲームのデザインを考えねばならないことを鑑みれば,合理的だといえるだろう。
この写真のように,Civ5では縦に垂直にユニットを並べることはできない |
戦略マップを表示させたところ。ヘックスマップの様子がよく分かる |
最後の抵抗のお供になるかも知れない横目有利の理論
イギリス軍の戦列をアメリカ軍が受け止めようとしている場面だ。アメリカ軍は縦に整列しているが,この形ではワシントンは3方向からの攻撃を許してしまう……。といっても,ここからほとんど増援なしで英軍をロンドンまで押し返したので,横方向から攻撃されたというだけでは,ゲーム的な差は微妙 |
筆者の個人的な感触で言うと,Civ5におけるヘックスの目による差は,たぶん1ユニット差にも満たないだろう。はっきり言えば,誤差だ。もちろん前述の通り,「何十万というオーダー」で統計を出せば,プレイ時間の短縮に貢献しているとは思う。
だが,1ユニット未満の差で勝敗を分けた経験のある人であれば,この1ユニット未満の差を重んじてくれるかもしれない。そこに一縷の望みを託して外交交渉するのも悪くはないと思う。人間,やれることは全部やってから滅びるべきだ。
ということで,実プレイにはほとんど役に立たないシヴィライゼーション豆知識,次回も無駄な小ネタ満載でお届けしたい。
「シドマイヤーズ シヴィライゼーションV 日本語版」公式サイト
- 関連タイトル:
シドマイヤーズ シヴィライゼーションV 日本語版
- この記事のURL:
キーワード
(C) 2010 Take-Two Interactive Software and its subsidiaries. All rights reserved. Sid Meier’s Civilization V, Civ, Civilization, 2K Games, the 2K logo, Firaxis Games, the Firaxis Games logo, and Take-Two Interactive Software are all trademarks and/or registered trademarks of Take-Two Interactive Software. All other marks and trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.