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Fusion APU「A-Series」のデスクトップPC向けモデル,ついに登場。ラインナップとアーキテクチャを確認しておこう
そのラインナップは次のとおりだ。
- A8-3850/2.9GHz(4 CPUコア,400 GPUコア,TDP 100W,7月3日発売予定)
- A8-3800/2.4GHz(4 CPUコア,最大2.7GHz,400 GPUコア,TDP 65W,今夏発売予定)
- A6-3650/2.6GHz(4 CPUコア,320 GPUコア,TDP 100W,7月3日発売予定)
- A6-3600/2.1GHz(4 CPUコア,最大2.4GHz,320 GPUコア,TDP 65W,今夏発売予定)
※「最大〜GHz」と記載されている動作クロックは,「AMD Turbo CORE Technology」有効時の最大動作クロック。記載がない製品は同機能をサポートしていない。TDPは「Thermal Design Power」(熱設計消費電力)のこと
上のリストにもあるとおり,A8-3850とA6-3650の2製品は,7月3日に国内で発売予定。日本AMDによるメーカー想定売価は,前者が1万3980円(税込),後者が1万1980円(税込)だ。
この理由について,AMDでCPUアーキテクチャ開発を統括するChuck Moore(チャック・ムーア)CTOは,「TDP 100W版のデスクトップ向けFusion APUは,TDPの設計に余裕があるため,高負荷時にすべてのコアがフルスピードで動作することを優先した」と述べていた。「低負荷時に使われていないCPUコアやGPUコアがアイドル状態になるため,省電力性にも優れている」とも同氏は補足している。
「デスクトップ向けA-Seriesの演算性能は
Xbox 360用GPUの2倍」
AMDのEric Demers(エリック・デメル)CTO兼副社長は,「デスクトップ向けのA8に統合されるGPUは,400コアの『Radeon HD 6550D』。コアクロックが600MHzとノートPC向けA-Seriesより大幅に引き上げられており,単精度浮動小数点演算性能も最大480GFLOPSに達する」と説明する。
一方,デスクトップ向けのA6に統合されるGPUは,320コアの「Radeon HD 6350D」だ。こちらは,443MHzのコアクロックで駆動し,最大284GFLOPSの単精度浮動小数点演算性能を持つ。
AMDによれば,これらGPUコアは,Sandy Bridge世代のCore iシリーズが統合しているグラフィックス機能を3D性能で大きく上回り,演算性能ではXbox 360が搭載するGPU「Xenos」の2倍に達するという。
デスクトップ向けA-Seriesと第2世代Core iシリーズとの性能比較。両者とも約10億基のトランジスタを集積しているが,A-SeriesはGPUにおけるトランジスタ数の比重が大きい |
デスクトップ向けA-Seriesのコンピューティング性能は,「Core i7-2600K/3.40GHz」の倍以上。Microsoftの「Xbox 360」が搭載しているGPU「Xenos」比でも2倍という |
「3DMark Vantage」のPerformanceプリセットで,GeForce GT 520よりも優れるいうスライド。ただし,テストは「AMD推奨環境」ということで,PhysXが無効化された状態である |
1600×900ドット解像度かつ,複数のゲームでグラフィックス設定を中程度にした場合におけるフレームレートを平均化して価格と合わせて分布図にしたもの |
「Radeon HD 6350D」を統合したA6-3650とCore iシリーズとをDirectX 9世代のゲームで比較した結果。1366×768ドットの解像度ではあるものの,すべてで30fpsを超えている |
1600×900ドット解像度において,A8-3850を用いてDirectX 11世代のゲームを実行した場合のフレームレート。6つのテストタイトルで30fpsを上回っている |
一方,デスクトップ向けA-Seriesに統合されているCPUコアは,ノートPC向けA-Seriesと同じ「Husky」(ハスキー)。現行のPhenom II X4などと同世代のアーキテクチャが採用されている。
ただし,デスクトップ向けA-SeriesのPC3-14900(DDR3-1866)メモリモジュールのデュアルチャネル動作サポートには,「チャネルあたり1モジュール」になるという制限もある。4DIMM構成のマザーボードに4枚のメモリモジュールを差す場合は,PC3-12800(DDR3-1600)までの対応になるので,この点は注意が必要だ。
ノースブリッジ機能では,デスクトップ向けA-Seriesは,計24レーンのPCI Express 2.0インタフェースも備えるのがトピックとなる。グラフィックス用インターフェースは16レーン(x16×1もしくはx8×2)が割り当てられ,残る8レーンは4レーンがAPUとFCH間を結ぶUMI(Unified Media Interface),4レーンが汎用に割り当てられている。このあたりは,ノートPC向けA-Seriesと同じ構成だ。
PCI Express 2.0 x8×2というレーン構成に対応することから分かるかもしれないが,同A-Seriesは,2枚までのグラフィックスカードによるCrossFireX構成にも対応している。ただ,拡張スロットのレーン構成にもよるので,実際にサポートされるかどうかはマザーボード次第だ。
そんなデスクトップ向けA-Seriesは実際にどの程度の性能を持っているのか。4Gamerでは,GPUコア編とCPUコア編とに分けて別途レビュー記事を掲載している。性能が気になるという人は,ぜひそちらを参考にしてほしい。
デスクトップ向けA-Series「A8-3850」レビュー記事,GPUコア編
デスクトップ向けA-Series「A8-3850」レビュー記事,CPUコア編
デスクトップ向けプラットフォーム「Lynx」でも
Dual Graphicsをサポート
6月27日の記事で詳しく解説しているが,Lynxプラットフォームは,「AMD A75」(以下,A75)および「AMD A55」(以下,A55)どちらかのFCH(Fusion Controller Hub)とA-Seriesとを組み合わせたものである。
なお,マザーボード上のCPUソケットは「Socket FM1」。905ピン仕様だ。
いずれのチップセットもディスプレイ出力は2系統で,APUからDisplay Port,Dual-Link DVI,HDMI出力をサポート。アナログRGB出力はFCHに内蔵されたDACを介して行われるため,Display Port出力の1つがAPUとFCH間の接続に用いられているが,このあたり,実際の仕様はマザーボードによって異なる。また,ディスプレイ出力が2系統ということからも分かると思うが,APU単体でのEyefinity動作には非対応だ。
なかでもA75がサポートするUSB 3.0は,FCHにUSB 3.0のコントローラが統合されているため,別途USB 3.0コントローラを搭載している場合よりも転送速度が高速と謳われている。
Dual Graphics機能が有効なシステム,例えば,Radeon HD 6550Dと「Radeon HD 6670」とを組み合わせた構成の場合は「Radeon HD 6690D2」といった具合に,より大きなモデルナンバーが与えられるのもノートPC向けA-Seriesと同じだ。
AMDによれば,Radeon HD 6650Dと「Radeon HD 6570」とを組み合わせた構成でDual Graphics機能を有効にした場合は,Radeon HD 6570単体に比べて最大50%のパフォーマンス向上が実現できるとのこと。
AMDでテクニカルマーケティングを担当するDavid Nalasco(デビッド・ナラスコ)氏は,「Radeon HD 5000シリーズでもDual Graphics機能はサポートできるが,『UVD 3』などの機能をフルに活用するためにはRadeon HD 6000シリーズとの組み合わせを推奨する」と,一世代前のGPUのサポートすることも検討はしているものの,基本的にはRadeon HD 6000シリーズとの組み合わせを想定していると述べていた。
なお,Dual Graphics機能を利用するには,OSとしてWindows 7を利用する必要があるので,この点はご注意を。
4Gamer読者にはおなじみであろう“Catalyst Guru”ことTerry Makedon(テリー・マケドン)氏は,Fusion APU向けのドライバセット「VISION Engine Software」を,「Catalyst」と同じように,Microsoftの認証を得たうえで毎月更新していくことを明らかにしている。これにより,DirectComputeやOpen CL,C++ AMP(Accelerated Massive Parallelism)などを利用したGPGPUアプリケーションにおいても,Fusion APUの持つ性能がフルに活かせる環境を提供していくとのことだ。
デスクトップ向けA-Seriesの遅れは
ノートPC向けの順調さが原因
この理由について大手OEMベンダー関係者は,「ノートPCベンダーからノートPC向けA-Seriesの需要が高まり,当初にAMDが予想していたものを大きく上回ったため,デスクトップ向けA-Seriesを確保するのが難しくなった」と指摘する。
「ノートPCベンダーからのモバイルAPUへの需要が同社の予想を大きく上回ったため,デスクトップ版APUの確保が難しくなったようだ」とは,大手OEMベンダー関係者はの弁。実際,ノートPC向けAPUの製造コストが大きくなりすぎたためか,AMDはデスクトップPC向けA-SeriesおけるデュアルCPUコア版となるA4シリーズの投入計画を撤回している(※大手OEMベンダーのオールインワンPC向けにA4を供給する可能性はまだ残っているようだが)。
もっとも,ノートPC向けA-Series発表時に明かした「Llano2」計画は生きているそうで,Llano2投入のタイミングにあわせて,Socket FM1版の「AMD E2」を投入する計画はあることも明らかにされている。
なお,夏頃の投入が予定されるTDP 65W版A-Seriesは,そのコストパフォーマンスの高さから,マザーボードベンダーから大きな期待を集めているようである。もうすでに十分すぎるほど気温は夏であるだけに,早い時期での登場と供給の安定に期待しつつ待ちたいところだ。
デスクトップ向けA-Series「A8-3850」レビュー記事,GPUコア編
デスクトップ向けA-Series「A8-3850」レビュー記事,CPUコア編
日本AMDによるA-Series特設ページ
- 関連タイトル:
AMD A-Series(Llano)
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