BenQ ZOWIE(以下,ZOWIE)の「ゲーマー向けの机,完全eスポーツ仕様」を憶えているだろうか? 「
ZONE」と名付けられた机は,電動昇降機能を搭載し,自由に動かせるアーム付きの液晶ディスプレイが標準で取り付けられ,ZOWIE製USBサウンドデバイス「
VITAL」の機能を内蔵し,さらにはPCも搭載するため,「机の形をしたゲーマー向けオールインワンPC」とも紹介できた製品である。
日本ではその後,とんと続報を聞かなくなってしまったため,ひっそりと事業終了になったのではと失礼ながら思っていたのだが,実態はその逆。eスポーツ大会やネットカフェ文化の強い国や地域での人気はかなりあり,各社からのフィードバックを受けて今回,ブラッシュアップ版となる
第2世代ZONEが登場するに至ったのだそうだ。
第2世代ZONE。やはり机である
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ZOWIE DIVINA Women’s Invitational PUBG会場
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第2世代ZONE発表の場となったのは,2018年12月13~16日の会期で中国,上海において開催中となっている,PC版「
PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)の女性限定トーナメント「
ZOWIE DIVINA Women’s Invitational PUBG」である。
このイベントを主催するのは中国版Twitchと言えるimbaTVなのだが,imbaTVは最初の顧客として,大会公式ゲーム環境となる48台の第2世代ZONEを実際に運用してみせている。
大会初日のプレマッチとなる「Duo Show Matches」から,ずらりと並んだ第2世代ZONE(左)。プレイヤー達は,事前にディスプレイ設定を最適化して対戦に臨んでいた
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ZONEは第2世代モデルで何が変わったのか
第1世代ZONEへの反響が大きく,実際にeスポーツ大会の主催者やネットカフェ事業者からさまざまなフィードバックを受けて各部の改良を行ったものというのが第2世代ZONEの立ち位置だが,ある意味で最も大きな改善は梱包と言えるだろう。
第1世代ZONEでは,机1つ取っても部品単位で細かく分かれた梱包だったりして,組み立てはもちろんのこと,梱包を解くことすらも一仕事になっていたという。
バックヤードを撮影させてもらった。写真奥に注目してほしいが,確かに段ボールの種類が少ない
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それに対して新世代ZONEでは机とPC,ディスプレイのわずか3梱包となっており,問題の机本体でも部品点数が大幅に減っているとのこと。そのため,「大人が2人いれば15分で組み立てられる」(ZOWIEのPrasad Paramajothi氏)レベルにまでシンプル化を果たしているそうだ。
さて,組み上がった状態の新世代ZONEだが,横幅,奥行きは第1世代ZONEと同じ。昇降機構を使って上げ下げできる範囲もほぼ同じだ。実際,昇降の挙動も大きくは変わった印象を受けなかった。
ただ,もちろん細部にはeスポーツ大会の主催者やネットカフェ事業者の要望に応えるアップデートが入っている。
キャスターは見るからにゴツくなった。赤い歯車のようなものが調整機構だ
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まずは机そのものだが,一般家庭への販売を難しくしている重量は第1世代ZONEの約75kgからほとんど変わっていない一方,机を支える脚のところに付くキャスターには,完全に固定する状態から相当に軽く動かせる状態にまで緩くできる調整機構を搭載することで,大会での設置や撤収,店内での模様替えやイベント対応を行いやすくしてあるという。
カメラを片手に,片手でZONEを動かして背面側から撮影したカット。ざっくり75kgある第2世代ZONEだが,片手で簡単に動かせるレベルにまでキャスターは軽くできる
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続いては液晶ディスプレイ周りだ。ディスプレイを固定するアームでは軸の2つで硬さを変更できるようになり,「緩くして動かし,適当なところで締めて固定する」という操作が容易になった。
アーム部には2か所につまみが用意された。これを回すと軸の硬さを調整できる
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さらに,「
XL2540」ベースとなるディスプレイ本体は,持って動かすときに額縁側のタッチセンサーが反応しないよう,物理的にタッチセンサーを廃し,本体背面側に電源ボタンと4方向操作対応スティックを用意したカスタムモデル「
XL2540W」に変わっている。
「ユーザーは本体側面下側を持って液晶ディスプレイを動かすことが多く,その場合に液晶ディスプレイ正面向かってXL2540の下段右寄りにあったタッチセンサーと干渉しやすい」というフィードバックを受け,OSDメニューの操作系は背面左右中央寄りに移動した
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付け加えると,机側の本体正面向かって右にある設定用ボタンを押せば,XL2540Wの主要な設定項目をオーバーレイ表示させて,マウス操作によって設定をカスタマイズできる。単純に「マウスクリックで選べる」に留まらず,数値はホイールで調整できたり,キーボードから直接入力したりできる。
しかも,その設定内容はUSBフラッシュメモリへ書き込め,また読み出せる。つまり,ZONEがずらりと並んだ大会で,マッチごとに机が変わるという場合でも,最初に決め打った設定を即座に適用できるわけだ。
オーバーレイ表示されられる主要なメニュー(左,中央)。フルでマウスオペレーションできる。ただ,より細かく設定したい場合はOSDメニューを使うことも可能だ(右)
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タッチセンサーを搭載し,操作系もVITALそのものとなったサウンドデバイス機能。ヘッドフォン出力とマイク入力の両3.5mmピン端子は下向きに付いている
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続いては統合するサウンドデバイス機能だ。前述のとおり,第1世代ZONEはUSBサウンドデバイスであるVITALの機能を搭載するという触れ込みだったが,操作系は簡略化されており,必ずしもVITALと同じ操作性を実現してはいなかった。だが,今回はタッチセンサーを活用した操作系も含め,VITALそのものを統合してきた。
なお,単体製品版のVITALに対しては「タッチセンサーが過敏すぎる」というフィードバックが多かったそうで,そこの改善も図った改良版になっているとのことだった。
最後は搭載するPCである。分かりやすいところでは,GPUが「GeForce GTX 1080 Ti」,CPUが「Core i7-8700K」へとスペックアップしており,「GeForce GTX 1070」と4コア版Coreプロセッサという構成だった第1世代ZONEよりもXL2540W(≒XL2540)の240Hzという素直最大リフレッシュレートをより活かしやすくなっている。
電源タップの向きなどケーブルマネジメントが改善し,見た目の配線がすっきりしたのも見どころだ。「外へ出るケーブルは電源と有線LANの2本だけ」という点は第1世代から変わらず
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ZOWIEによると,今回をスタートとして,これから世界各地のeスポーツ大会事業者やネットカフェ運営者への営業を開始するとのことだ。
興味のある法人があれば,BenQ本社まで英語で直接連絡してくれれば日本へも出荷するとのことなので,これからeスポーツコーナーの拡充を考えているような事業者があれば検討してみてはどうだろうか。
机上の左奥にAC電源×1とUSB 3.1 Gen.1×4,右奥にUSB 2.0×2とスピーカー用の3.5mmミニピンライン出力×1という端子群を用意する(左,中央)。電源端子が第1世代の2つから1つに減った理由は明らかにされなかった。右は飲み物とモバイル端末ホルダーで,これは第1世代から継続しての採用となる
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