連載
【RAM RIDER】「ファー:ローン・セイルズ」,ストーリーも目的も分からないままクリアして見えたもの
RAM RIDER / アーティスト / 音楽プロデューサー
RAM RIDER「明日なにあそぶ?」公式サイト:https://ramrider.com/ |
第2回:「ファー:ローン・セイルズ」
先日Xboxを買いました。といっても「S」でも「X」でもなく前機種のXbox One X。過去に海外通販やメッセサンオー カオス館で購入したディスク作品の洋ゲーをあらためて高解像度で楽しむために,光学ドライブ付きのモデルが欲しかったのです。
手始めにアメリカ兵となって,絶叫しながら銃刀片手に攻めてくる日本兵と戦う日本語版未発売の「Call of Duty: World at War」(PC / PlayStation 3 / Xbox 360)を10年ぶりにクリアしました。もちろんそれだけじゃもったいないのでXbox Game Passにもどーんと3年分加入してみました。遊び放題のタイトルには以前PlayStation Storeで購入したお気に入りのインディーズゲームも数多くラインナップされていて,もっと早く入れば良かったと後悔しています。
さてこの連載は有識者の方からRAM RIDERがまだプレイしていなそうな,あるいは手を出さなそうなゲームをオススメしていただき,そのプレイ雑感を記していこう,という企画です。第2回のレコメンドは同業と呼ぶのもおこがましいヒットメーカー! 音楽クリエイターのヒャダインさんです。
■選者:ヒャダイン
■オススメ作品:「ファー:ローン・セイルズ」(PC / PlayStation 4 / Xbox One / Nintendo Switch)
■発売元:Mixtvision(PC / Xbox One),H2 INTERACTIVE(PlayStation 4 / Nintendo Switch)
■発売日:PC版 2018年5月18日 / PlayStation 4版 2019年5月23日 / Xbox One版 2019年4月2日 / Nintendo Switch版 2020年1月23日
■オススメコメント:
RAM RIDERさん,こんにちは!
私のRAMさんに対するイメージっておしゃれでかっこよくて内省的でエッジが効いていて,といった感じなので,「こりゃ雰囲気ゲーがいいな」と思いまして「ファー:ローン・セイルズ」を推させていただきます(「LIMBO」や「INSIDE」も推させていただいたのですがプレイ済みとのこと。さすがです)。
雰囲気ゲーあるあるですが,操作方法の説明は一切なし。とりあえず提示された状況と条件で孤独に歩みを進めていくのは楽しいものですね。ストレートにプレイしたら数時間で終わる,とのことなんですが,私は2回ほどYouTubeで攻略動画を見てしまいました。電脳時代の悲しきイージートリッパー。
にしても,だんだん色がついていく演出や,さりげない音楽の使い方が本当に素敵な作品です。主人公のモチベーションや社会的な状況など何一つ分からないですが,自分なりの解釈で考えるのもいいですよね。正解は一つじゃないですものね。正解慣れしている現代人へのアンチテーゼなのかもしれません。気に入ってもらえるといいのですが!!
いや〜どうですか。皆さん。第2回にしてヒャダインさんですよ。メッセージをいただいた当日は僕自身についてのコメント部分だけ何往復もしてしまって先に進めませんでした。数日間寝かせたのち,ありがたくご提案していただいた「ファー:ローン・セイルズ」を購入。「LIMBO」「INSIDE」をリストアップしてくださったことも好みが近いようで嬉しいですし,それも含めてこのメッセージ自体がゲームのレビューとして成立している,という非常に高度かつありがたい推薦文でした。ありがとうございます! さっそくプレイ。
「ファー:ローン・セイルズ」はヒャダインさんも書いていたように,ゲーム開始時に最低限の移動とアクションボタンがアイコン表示される以外はストーリーも目的も一切説明のない不思議なゲーム。主人公は少年(あるいは少女)で,どうやら壊れた家のような場所から一人で旅立たないといけない様子だ。この時点ではジャンルも定かではないが,「これは右へ向かうゲームだ!」という直感を信じ,本能の赴くまま右へ向かう。そこら中に散らばっている使い道のわからない箱のような樽のようなアイテムを無意味に拾ったり捨てたりしながら迷い込んだのは,家のような工場のような不思議な場所。明かりをつけながら2階へ上がり,無事脱出。ここで「ボタンを押すとエネルギーが生じてなんらかのアクションが起き,さらにゲームを進めることができる」ことを知る。
その先にあるボイラー室のような小屋ではエレベーター状の鉱炉に落ちていた荷物を送り込むと,それが水源のようになって室内のあらゆる機械が音を立てて動き出した。世界に散らばっているアイテムがすべて「燃料」であることに気付かされる瞬間だ。実はこの小屋自体が車輪のついた「船」で,その燃料で蒸気を起こして車輪を回し,ときには帆を広げ,道なき道を,海の上をひたすら「右」に進むゲーム,ということらしい。
相変わらず旅の目的は分からないが,時に修理をしながら,新しいパーツを取り付けながら右へ右へと進む。水墨画のような美しいグレースケールの世界の中でゲームの進行に関係するパーツだけにさりげない赤い彩色が施されているため,手探りでもどうにか乗り越えられるような作りになっている。
主人公が蒸気を動力とした乗り物で旅に出る,という絵面だけみると「ハウルの動く城」的なスチームパンク世界をイメージしてしまうが,いざ一人で荒廃した世界の中を燃料を拾いながら旅をしていると,映画「ウォーリー」のようなよるべなさが先立つ。加えて旅を進めると登場するガジェットが巨大になるほど,それに反比例する形で主人公が小さく映し出されるため,ますます心細い気持ちになり,その分愛着もわいてくる。「うまいなあ」と思う。
しかし,操作に慣れてくると「燃料を放り込み蒸気で車輪を回しながら圧力を調整,メンテナンスをしながら余裕をみて燃料を拾うために動く船から飛び降りる」というような一連の作業をスムーズにこなせる自分に気付かされてなんだか笑ってしまった。最初はあんなに苦労していたのに。まるで自転車に乗れない頃の感覚を忘れてしまったような不思議な感じだ。
主人公はさまざまな仕掛けや障害を乗り越えながら自身の乗る「船」を大きく,便利なものにし,旅を進める。驚いたのはその音楽の使い方だ。基本的に無音で進む本作では,「船」が一定以上の勢いをもって走り出したとき,つまり物語が大きく進むときにだけ音楽が流れ出す。この感覚は言葉では表現しづらいが,ある意味「引き算」の表現方法だ。音楽家が音楽家に勧めるのにこんな音の使い方をするゲームをチョイスするヒャダインさん,憎い。憎いというか,好き! となってしまったのも仕方のないことだろう。
このゲームの難度をレベルで表現するのは難しいが,「3分悩んで分からなくても,5分いろいろ試せば次へ進める」というような印象だ。非常に巧みなゲームデザインに唸らされたが,途中どうしても分からないところがあり,攻略Wikiなどを参考にしてしまった(偶然だけど僕も2回でした)。原稿のためじゃなければ,あともうひと押し自力で頑張ればいけたな,という印象。
そして最後にたどり着いた場所で主人公とプレイヤーが目にする景色とは? そこに描かれる「人生そのもののような何か」はまさにアートといって差し支えないゲーム体験でした。ヒャダインさん,素敵なオススメありがとうございました。
偶然だけど続編の「ファー:チェンジング タイド」(PC / PlayStation 5 / Xbox Series X / PlayStation 4 / Xbox One / Nintendo Switch)がXbox Game Passに入っていることに気付き,早速インストールしました。入って良かったゲムパス!
■■RAM RIDER(アーティスト / 音楽プロデューサー)■■ バカリズムライブや,とあるゲーム作品の楽曲が一段落し,現在はアーティストの方の歌を制作中。最近は仕事の合間にずっと自動車のプラモデルを制作しつつ,通販サイトを眺めながらエアブラシを買うか深夜まで迷う日々を送っているとのこと。 |
- 関連タイトル:
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