連載
【ヒャダイン】「あつまれ どうぶつの森」にハマっています。
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第75回「『あつまれ どうぶつの森』にハマっています。」
ども。ご多分に漏れず「あつまれ どうぶつの森」(以下,あつ森)にハマっています。始めるのは正直遅かったんです。過去作にも触れてこなかったので,イノベーター理論で言えばレイトマジョリティくらいのタイミング。
どうして今? と思う方もいるでしょうが,やはり緊急事態宣言による自粛で4月の仕事がぐわっと減ったんですよ。まあその間に曲を作ればいいんだけど,なんか家にいなきゃいけないって気持ちが強くなると,遊ばなきゃいけないようなメンタルになっちゃって。
それなら,これまでやれなかったゲームをやろう! と思い立ち,「デビル メイ クライ 5」(PC / PlayStation 4 / Xbox One)とあつ森を同時に始めるというメンタル大丈夫かよ状態。朝から晩までゲーム漬けでした。
でね。あつ森を始めた初期は「絶対ネットを見ないでやろう」と決めていました。最近は,すぐに攻略サイトを見て一番効率のいい遊び方を探ってしまうという悪いクセがあって。なんか,大切なお金を出して買ったゲームの寿命を,効率のためだけに縮めているような気がしてきちゃって。
なので攻略サイトを見ずにとりあえず「クリア」までいこうと。まあ,なにがクリアかすらも分からないので,エンドロールが出たらクリアということにしました(結果,とたけけさんのライブがそれでした)。
最初は正直,たるい! 何このゆったりとしたスピード感。会話とかスキップできないし,しゃべるの遅いし,欲しいアイテムは全然出てこないし,「たぬきショッピング」で買えたとしても一日待たなきゃいけないし,施設を改装するのも住民の引っ越しも橋も坂道も一日待たなきゃいけないし,イライラしちゃう! と思ってました。
良くないねえ。この性格。今までどれだけ効率重視で生きてきたんだろう。確かに近年,デジタル社会のおかげで効率がほんといい。キャッシュレス決済の普及で現金を使うシーンは減ったしパスワードだってMacが覚えてくれている。ネットもサクサクだしShazamでたまたま流れている知らない曲の情報だって分かる。万能感があるよね。
でも,あつ森の島ではそういうわけにはいかない。ここでは効率よりも大切なものがある。きっとそれはゲームの中だけではなく、実生活の自分にも大切な何かだと思う。そう考えて,じれったくてもぐっとこらえてプレイを続けました。
「果物を穴に埋めたら木が生えるんだ」とか「石を叩いたら鉄鉱石が出るんだ」とか「ハチって網で捕まえられるんだ」とか,過去作体験者なら初めから分かっていそうなことでも,ネットで調べたりせず,トライアンドエラーで学んでいきました。4Gamerの編集の方に島に来てもらったり。そのときにもらったナシの大切さを知らず,食べてしまったり(自分の島で採れない果物をゲットしたら栽培して増やせば良かったのに)。
そんなこんなで文字どおり闇雲に島を開発していき,ついにとたけけさんがライブに来てくれるレベルの島へと成長させました。感動。とたけけさんの優しい歌声がしみるなあ。一匹ずつ増えていった仲良しの住民達も嬉しそうです。きれいなエンディングを迎えました。
……ええ。なめてました。分かった気になってました。ああ,ほのぼのしたゲームだったなあって。しかし! ライブ後に開放される「島クリエイター」機能。川や崖を自在に開発できたり道や床を塗り替えられたりという,新たな楽しみが増えた途端,このゲームの様相が変わりました。
というか,やっと始まった! って感じです。やりこみ要素しかない。ゴールのない,答えのない,終わりのない島暮らしがやっと始まった。そしてこれをきっかけに僕のネット断ちも解禁。ガンガン攻略Tipsをネットで探すようになりました。
そこで分かったのは,いかに自分が乱暴に島開発をしていたかってことです。まず商店や住民の家の配置の適当さたるや。戦後,我先にと好き勝手に建築を進めていった東京じゃないんだからさ。てことでまずはベルをはたいて商店を1か所にまとめ,そして家は長期計画でほぼ全棟を同じ区画にまとめました。いわゆる住宅密集地にしたわけです。
次に,やはり僕ってばミュージシャンなので野外音楽堂を設置。サウナーでもあるので温泉地と,それに付随するスパ施設なども建設しました。
で。気付いたわけです。「これはコンセプトを決めると面白いぞ」と。主人公に勝手にストーリーを背負わせたらもっとゲームが立体的になるんじゃねえか,と。
そう考えているときに初期メンのクリスが「今日からヒャきちと呼ぶぞ」と勝手にニックネーム宣言。小さい頃からニックネームを付けられることに憧れていた僕は「トクン……」。一方もう一人の初期メン,アグネスが「島を出ていこうと思ってるんだ」と突然の離島宣言。かちーん! こんなに頑張って島を開発してきたってのに!!
そこで主人公のキャラが確定しました。「クリスに偏った愛情を抱きながら,自分の思い通りにいかないことがあれば激昂する住民」というちょっとヤバい設定です。
まずネットで見つけてダウンロードした血のマイデザインを島中に貼りたおし,さらには自分の服装も返り血。顔もハチに刺されたままをキープ。部屋を映画「冷たい熱帯魚」をコンセプトにしたものに変更。「こうじげんばの床」を手に入れたときは震えました。部屋の雰囲気にピッタリです。浴槽にトイレ,刃物に燻製器,でかいスピーカーからは「こわいうた」が流れている。さらにこだわりはクリスのポスターを異常な数,貼りまくっているところ。まるで次のターゲットを忘れないようにするために,です。
猟奇性はアグネスにまで。島を出て行こうと言ったばっかりに,家は壁で囲われて,その周りは誰も入れないように有刺鉄線が張り巡らされ,くさったカブまで撒き散らすという徹底ぶり(最近,解放して島を出て行ってもらいました)。
さらに威圧のつもりでしょうか。刑務所も制作,独房を二つ設置。ちゃんと運動場も作ってます。受刑者の健康にも配慮しているんですね。
さらに,治安が悪そうな人の目につかない怪しいスペースも作りました。夜中には絶対に歩きたくない場所を目指しました。何かの取引や行為がされていそうな場所です。
そしてミステリアスさも演出するために宗教色を強めました。海のそばの岸壁に祈祷場を作りました。座布団と木魚,焚き火の両脇にでかいステレオを2機設置。違う曲を流しています。だんだんスピーカーが顔に見えてきて,両脇のスピーカーを倒さないと本体を倒せないボス戦のようになりました。
文章だけ取り出してみると顔をしかめたくなる設定ですが,あ〜ら不思議。こちらがどんなにネガティブなコンセプトで島づくりをしようと,あつ森は徹底したポジティブ力で跳ね返してくれます! これは見事。
住民はいつもにこにこしているしお話は楽しいし,島はなんだかんだでキラキラしているし。この徹底したポジティブがこの自粛期間の窮屈さの軽減に力をくれているんじゃないかと思っています。
自分の味付け濃いめのコンセプトだって,今回の自粛ストレスからくるものもあったんじゃないか。そのストレスを大きな世界観で包み込んでくれるこのゲームの母性のようなものが,世界中での大ヒットの要因の一つではないかと思えました。
そんなこんなで今ボクがハマっているのはバラの栽培です。青いバラの交配を一生懸命に頑張っています。丸くなったなあ,おい。まだまだやることがいっぱいあるぞ!
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ ヒャダイン氏は,YouTubeの「情熱大陸 公式チャンネル」で公開されている,「1時間で新曲は作れるのか?ヒャダインが挑戦してみた。」という動画に出演しています。実際に新曲が作れるのかどうか,ぜひ動画でチェックを。なお,ヒャダイン氏の公式チャンネルでは「HYADA in my room」と題したトーク番組も公開中。初回ゲストの千葉雄大さんに続き,宮本亞門さんゲスト回も公開中です。 |
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