レビュー
GT200世代初のエントリーGPU,その立ち位置を探る
GV-N220OC-1GI
GV-N210OC-512I
» 新世代ATI Radeonの登場ラッシュに市場が沸くなか,比較的地味に店頭販売が始まったNVIDIAの最新エントリーGPUを,Jo_Kubota氏が評価する。トピック自体は少なくない新製品は,ゲーム用途を前提としたとき,どのように位置づけられるべきだろうか。
GT200世代初のエントリー向けGPUであることはもちろん,40nmプロセス技術で製造される点や,DirectX 10.1をサポートする点は,NVIDIAのデスクトップPC用GPUとしては初めてと,トピックには事欠かない一方,華やかな話題を振りまき続けているATI Radeon HD 5000シリーズと比べるとどうしても地味な印象を拭えない,GT 220とGeForce 210。果たして,これらはゲーマーにとって,どのような価値を持った新製品なのか。
4Gamerでは,GIGABYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)の日本法人である日本ギガバイトから,搭載製品「GV-N220OC-1GI」「GV-N210OC-512I」を入手したので,さっそく,そのポイントを整理してみたい。
GT216コアのGT 220は9500 GT後継
GT218コアのGeForce 210は9400 GT後継
そんな両モデルの主なスペックは下記のとおりだ。
GeForce GT 220の主なスペック※
- GPUコア:GT216
- シェーダプロセッサ数:48基
- コアクロック:625MHz
- シェーダクロック:1360MHz
- グラフィックスメモリ:DDR3/GDDR3,128bitインタフェース
- メモリクロック:1.58GHz相当(DDR3搭載時,実クロック790MHz),2.024GHz相当(GDDR3搭載時,実クロック1.012GHz)
- 最大消費電力:58W
GeForce 210の主なスペック※
- GPUコア:GT218
- シェーダプロセッサ数:16基
- コアクロック:589MHz
- シェーダクロック:1402MHz
- グラフィックスメモリ:DDR2,64bitインタフェース
- メモリクロック:1GHz相当(実クロック500MHz)
- 消費電力:30.5W
※最終製品のスペックはカードベンダー各社の判断による。また,GeForce GT 220には,DDR2メモリを組み合わせたラインナップも存在する。
一方,GeForce 210のシェーダプロセッサ数は9400 GTと変わらず。むしろ,メモリインタフェースが128bitから64bitへ下がっているので,この点ではスペックダウンと見るべきだろう。
ちなみに7月上旬,OEM向けGPUとして仕様が公開されたときの製品名は,「GeForce GT 220」と「GeForce G210」だった。あれから3か月経って正式にリリースされたとき,後者からは「G」が消えていたわけだ。GeForce Driverのサポートリストを見る限り,GeForce G210とGeForce 210は別のGPUとして扱われているが,スペックは同じなので,ひょっとすると,「GTX/GTS/GT/Gの序列に入れるほどの性能ではない」という判断が,この3か月の間に下ったのかもしれない。
GIGABYTEの新製品を写真でチェック
テストは上位&下位モデルとの比較が中心
以上を踏まえつつ,GIGABYTEの2製品を見てみよう。
動作クロックが引き上げられたGPUコアを適切に冷却するためか,カードに2スロット仕様のGPUクーラーが取り付けられているのも特徴といえるだろう。
Low Profileに対応しており,ブックサイズPCへの装着が可能なのはトピックといえるだろう。
この2枚を評価するに当たって用意したテスト環境は表1のとおり。比較対象としては,GT 220の上位モデル「GeForce 9600 GT」(以下,9600 GT)と9500 GT,GeForce 210で置き換える9400 GTと,もう一つ,グラフィックス機能統合型チップセットから,テストに用いたマザーボードが搭載する「AMD 785G」(グラフィックスブランドは「ATI Radeon HD 4200」,以下HD 4200)にも登場願う。「M4A785TD-M EVO」は,DDR3-1333接続で容量128MBの専用バッファ「SidePort Memory」を搭載しているが,HD 4200のテストに当たって,これはもちろん有効化した。
また,GDDR3とDDR2の2モデル用意した9500 GTも,同様に「9500 GT[GDDR3]」「9500 GT[DDR2]」と区別する。なお,後者はメーカーレベルのクロックアップがなされているが,テストに当たって動作クロックはリファレンスまで落としているので,この点もあらかじめお断りしておきたい。
表2は,以上を踏まえて,「今回テストに用いたGPUのステータス」をまとめたものだ。2009年秋の時点におけるNVIDIAの下位モデルGPUは,同じモデルナンバーでも製造プロセスが異なったりするが,今回は,このスペックでテストを行うということを憶えておいてもらえれば幸いだ。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション8.2準拠。ただし,エントリーGPUでは荷が重すぎる「Crysis Warhead」は省略する。また,4xアンチエイリアシング&16x異方性フィルタリングを適用する「高負荷設定」も割愛し,テストは「標準設定」(※「バイオハザード5」は「エントリー設定」)の1024×768/1280×1024/1680×1050ドットに絞った。
9500 GT以上,9600 GT未満に落ち着くGT 220
GeForce 210は,ゲームには使えない
というわけで,ここからはベンチマークテスト結果を考察していきたい。
まずグラフ1は,「3DMark06」(Build 1.1.0)のテスト結果である。GT 220[GBT]は,クロックアップの効果で,GT 220[REF]よりも7〜9%程度高いスコアを示しているが,どちらも9600 GTにはまったく歯が立たない。スコアはざっくり6〜7割といったところだ。
GeForce 210は,ゲーマー視点だと「残念」としか言いようがない印象。HD 4200(=AMD 785G)をわずかに上回る程度のスコアしか出せないというのは,ゲーム用の単体グラフィックスカードとしては不合格と言わざるを得ない。
続いては「Left 4 Dead」の結果だが,基本的には3DMark06と同様の傾向だ(グラフ2)。GT 220は,間違いなく9500 GTよりワンランク上と述べていい。
GeForce 210は,メモリ周りのボトルネックがそれほど大きくないのか,9400 GTに迫るレベルのスコアだが,2009年秋の新作GPUが「迫るレベル」でいいのかという疑問は残る。
続いてグラフ3は,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のテスト結果。上位3GPUの傾向はこれまでと変わらないが,1280×1024ドット解像度で,GT 220[GBT]が,レギュレーション8.2の合格点である60fpsを超えている点には注目しておきたい。
一方のGeForce 210はとうとう,HD 4200の後塵を拝してしまった。ドライバの問題という気もするので,あらためてテストし直す必要は感じるが,ともあれ,この結果をもって,ひとまずはGeForce 210の3D性能考察を打ち切ることにする。
グラフ4は,エントリー設定で実行したバイオハザード5のテスト結果だが,1280×1024ドット以上で9600 GTとGT 220[GBT]&GT 220[REF]との差が大きく開くことを除けば,おおむね,ここまでと同じような傾向を示しているといえるだろう。
だが,「ラスト レムナント」だと,1024×768ドットから,9600 GTとGT 220の間には大きな違いが生じる(グラフ5)。1280×1050ドットで,「ゲーム内のグラフィックス設定を高めに設定しても快適な動作が見込める」とされる65fpsを超えるのが,今回のテスト対象のなかでは9600 GTのみというあたり,GT 220には,エントリーモデルとしての限界も見て取れよう。
3D性能検証の最後は「Race Driver: GRID」(以下,GRID)。グラフ6だと,一見,GT 220搭載の2製品が健闘しているように見えるが,実のところは,組み合わせたCPU「Phenom II X3 720 Black Edition/2.8GHz」が理由となった,スコアの頭打ちによるものだ。
ただそれでも,プレイアブルかどうかの分水嶺である40fpsを基準に見比べると,「9500 GTと比べて,GT 220にはパフォーマンスの底上げが見られる」とはいえる。
アイドル時の消費電力が低いGT 220
Blu-ray再生時のCPU負荷はHD 4200よりやや高い
NVIDIAは,GT 220について,「低負荷時の消費電力は7W」とアピールしているが,実際のところはどうか。OSの起動後,30分経過した時点を「アイドル時」,アプリケーションベンチマークの実行時を「アプリケーション実行時」として,ログを取得できるワットチェッカー,「Watts up? PRO」を利用し,システム全体の消費電力を計測してみることにした。
テスト結果はグラフ7にまとめたとおり。実際にアイドル時の消費電力が7Wなのかどうかまで,このスコアから断言することはできないが,GT 220[REF]が,HD 4200や9400 GT,GeForce 210と同レベルのスコアに落ち着いていることは確かだ。
アプリケーション実行時の消費電力は9500 GTと同じレベルで,シェーダプロセッサの数が1.5倍になったことを踏まえると,まずまず良好だが,ATI Radeon HD 5000シリーズの強烈なスコアを見たあとなので,いささかインパクトに欠ける感も否めない。
その結果はグラフ8のとおりだ。搭載するGPUクーラーが異なるうえ,9400 GTはファンレス(※右の写真参照)仕様だったりもするので,横並びでの比較には適さないが,GT 220の温度はかなり低く,クーラーの冷却能力が高いことを窺い知れる。動作音もほとんど気にならないレベルだ。
GeForce 210の温度はやや高めだが,これは,ファン回転数が相当に低く抑えられているのがその理由である。実際,動作音は非常に小さかった。
さて,ゲーム用途とはまったく関係がないため,ここまであえて触れてはこなかったが,GT 220とGeForce 210は,デスクトップPC向けのNVIDIA製GPUとして初めて,HDMI Audio Class準拠のサウンド機能を内蔵しており,標準でHDMI 1.3aに対応しているという特徴がある。
ここ最近,GeForce搭載グラフィックスカードに,2ピンのケーブルが付属しているのを憶えている人も多いだろう。ほとんど使われていないような気もするが,あれはS/PDIFケーブル。従来のGeForce搭載グラフィックスカードでHDMIを利用したサウンド出力を行いたい場合は,マザーボード上のHD Audio CODECなど,外部サウンドデバイスからのデジタルサウンド出力を,このケーブル経由でグラフィックスカード上のピンヘッダ経由で入力し,HDMIにパススルーしてやらなければならなかったのだ。“HD 2000時代”からGPUにサウンド機能を内蔵していたATI Radeonと比べると,スマートさに欠けていたのだが,ようやくこれで追いついたことになる。
HDMIまわりの説明ついでに,PureVideo HDの効果もチェックしておこう。
今回は,GT 220[REF]とGeForce 210,そしてHD 4200の3製品で,Blu-ray Discに収録された高解像度ビデオコンテンツの再生を行い,CPU負荷率をざっと見比べてみることにした。テストに用いたコンテンツは「銀河ヒッチハイクガイド」(MPEG-4/AVC)。再生ソフトには,CyberLinkの「PowerDVD 9 Ultra」(biuld 2115)を用いている。
その結果は,下にタスクマネージャのキャプチャで示したとおりだが,GT 220とGeForce 210は,おおむね10〜20%程度で推移。HD 4200は10%前後で推移していたので,数値上はHD 4200のほうがCPU負荷率は低い傾向にある。
もっとも,このクラスだと体感上の差はない。「きちんとGPUアクセラレートを行えている」という点では,どちらも問題ないことを期待できる値だ。
GT 220は3DオンラインゲームPC向け
GeForce 210は動画再生&CUDA専用か
そろそろまとめに入ろう。
GT 220は,長らく,3Dオンラインゲーム推奨PCで定番の位置にあった9500 GTの後継製品として,可もなく不可もなしといった趣のGPUだ。パフォーマンスを志向する3Dゲーマーからは見向きもされない一方,DirectX 11世代のエントリークラスGPUが流通するようになるまでの間,コンパクトな筐体を採用した低価格なゲームPCでは,積極的に採用されることになるものと思われる。
一方のGeForce 210は,一瞬,何の意味があるのか分からなくなるほどの3D性能だが,おそらくNVIDIAはこれを,「9400 GTよりも安価なCUDAアクセラレータ」として訴求したいのだろう。例えば,一般PCユーザーにとって分かりやすいCUDAの利用例であるビデオのトランスコードだと,128bitか64bitかというメモリインタフェースの差はそれほど重要ではないはずなので,ここでコストを下げたというのは合点がいくからである。
むしろ両製品は,HDMIケーブル1本でHDMI 1.3a準拠のビデオ&サウンド出力を行えることや,CUDAベースのトランスコード性能に期待しつつ,アイドル時の消費電力が低いことを重視する,一般PCユーザー向けのアイテムであると捉えるべきではなかろうか。
- 関連タイトル:
GeForce GT 200
- 関連タイトル:
GeForce G200/200
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