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AMD,世界初のDX11 GPU「ATI Radeon HD 5800」を発表。HD 4800の大幅な進化形
パフォーマンス検証はレビュー記事,関連情報は別途掲載したニュース記事に任せ,本稿では,米カリフォルニア州アルメダ市で開催された事前説明会の内容を中心に,HD 5800シリーズのポイントをお伝えしていきたい。
→[レビュー]「ATI Radeon HD 5870」レビュー。世界初のDirectX 11カードは「速い」だけに留まらない
→[DirectX 11アップデート]DirectX 11が加速するゲームの進化〜AMD,新世代DirectXのポイントとメリットを解説
当初のラインナップは2モデル
HD 4800よりも一段高い価格設定に
モデルナンバーからすると,HD 4800シリーズの現行製品,HD 4870と「ATI Radeon HD 4850」を置き換えるイメージだが,実際の店頭価格は,前世代よりも一段高くなる。具体的な市場想定売価は,HD 5870が400ドル以下,HD 5850が300ドル以下とされているので,HD 5850がHD 4870を置き換えることになるだろう。
動作クロックなど,基本的な仕様は下記のとおりだ。
●ATI Radeon HD 5870
- シェーダプロセッサ数:1600基
- テクスチャユニット数:80基
- コアクロック:850MHz
- メモリクロック:4.8GHz相当(実クロック1.2GHz)
- グラフィックスメモリ:GDDR5 256bit,1GB
- レンダーバックエンド数:32基
- ディスプレイインタフェース:DVI-I×2,DisplayPort×1,HDMI×1
- 電源供給:6ピン×2
- 最大消費電力:188W
- アイドル時消費電力:27W
- 北米市場想定売価:400ドル未満
●ATI Radeon HD 5850
- シェーダプロセッサ数:1440基
- テクスチャユニット数:72基
- コアクロック:725MHz
- メモリクロック:4GHz相当(実クロック1GHz)
- グラフィックスメモリ:GDDR5 256bit,1GB
- レンダーバックエンド数:32基
- ディスプレイインタフェース:DVI-I×2,DisplayPort×1,HDMI×1
- 電源供給:6ピン×2
- 最大消費電力:151W
- アイドル時消費電力:27W
- 北米市場想定売価:300ドル未満
※2009年9月28日追記
初出時,ATI Radeon HD 5850の最大消費電力を170Wとしていましたが,AMDから修正の連絡が入ったため,記事をアップデートしました。
HD 5870の概要(左)と,3Dグラフィックス性能(右)。競合の「GeForce GTX 285」と比べて,平均50%強高速と謳われる | |
こちらはHD 5850の概要(左)と3Dグラフィックス性能(右)。シェーダプロセッサ数が削られているが,それでも演算性能は2TFLOPSを確保。そして,GeForce GTX 285と比べて平均30%高速だという |
アーキテクチャはHD 4800の進化形も
SP数倍増&細部の最適化で性能は大幅に向上
HD 5800シリーズのアーキテクチャは,ATI Radeon HD 4800(以下,HD 4800)シリーズの進化形と言えるものである。HD 4800のアーキテクチャに「TeraScale Graphics Engine」(テラスケール・グラフィックスエンジン)という名が与えられていたことを憶えている読者は多いだろうが,HD 5800シリーズのそれは,その後継であることを感じさせる「TeraScale 2 Engine」だ。
ただし,その細部を見ていくと,新世代APIへの対応やGPGPU(≒汎用演算処理)性能の向上を果たすべく,さまざまな改良が加えられている。
統合型シェーダ(Unified Shader)ユニットの役割を果たす「SIMD Engine」の構成は,呼称が若干変わったが,基本的にはHD 4800シリーズと同じ。「Stream Processing Unit」(ストリーミングプロセッシングユニット。「Stream Processor」「Stream Core」ともいう。以下 SP)5基は,“4SP+1ビッグSP+1分岐ユニット”という形で,「Thread Processor」(スレッドプロセッサ)となり,さらにThread Processor 16基は,テクスチャユニットやL1キャッシュと1セットの「SIMD Engine」(SIMDエンジン)としてまとめられている。
HD 5870だと,SIMD Engineは20基搭載。なので,「5(SP)×16(Thread Processor)×20(SIMD Engine)=1600SP」というわけだ。
しかも,“ただSP数が倍増しただけ”ではなく,HD 5800シリーズでは,各機能を強化するとともに,より効率的な処理を行えるよう,レイアウトの見直しが図られている。また,DirectX 11への対応に当たって,グラフィックス命令のスケジューリングやSIMD Engineへの命令の割り振りを行う「Graphics Engine」が大幅に強化された。
これら命令セットの拡張は,グラフィックス性能を向上させるというよりも,将来のヘテロジニアス(Heterogeneous:異種混合)CPUの実現に向けて,GPUの汎用演算性能を高める意味合いを持っているようにも見える。
テクスチャユニットやキャッシュ周りも大幅に強化された |
レンダーバックエンドの性能は従来製品比2倍に |
レンダーバックエンドの強化により,8xアンチエイリアシングを適用しても,パフォーマンスの低下は最小限に抑えられるという |
HD 5800シリーズに搭載されるテクスチャユニットは,テクスチャ帯域を拡大することで,最大680億Texels/sのバイリニアフィルタリング性能と,最大2720億Fetch/sのテクスチャ性能を実現。併せて,L1テクスチャフェッチの帯域幅は1TB/sに,L1とL2間のキャッシュ帯域幅は435GB/sまで高められ,DirectX 11でサポートされた1万6000×1万6000ピクセルのテクスチャ処理や,32/64bit HDRテクスチャ処理などをストレスなく処理することを可能にしたとされる。
L2キャッシュ容量は,HD 4800シリーズの2倍となる128KB。詳細は明らかになっていないが,L1キャッシュやレジスタ容量も増やされている。アンチエイリアシング処理などを司るRender Back-End(レンダーバックエンド)も,HD 4800シリーズ比で2倍の性能を実現するよう拡張された。
さらに,ポリゴンデータやテクスチャを各SIMDエンジンで共有しやすくすべく,各ユニットのレイアウトにも工夫が凝らされている。20基あるSIMDエンジンと,それに対となるテクスチャユニットやL1テクスチャキャッシュは,10基ずつの2ブロックに分けられ,その中間にData Bus(データバス)を配置。これにより,ポリゴンやテクスチャなどの共有データを一時的に格納するGlobal Data Share(グローバルデータシェア)を,10基ずつのSIMDエンジンブロックの中間に配しており,効率的なデータ共有が可能になるとのことだ。
メモリコントローラや
ディスプレイエンジンは再設計
大幅に強化されたGPUコアの性能を生かすためには,メモリバス帯域も増やす必要があるが,AMDはここで,HD 4800シリーズで採用したGDDR5対応メモリコントローラユニットの再設計という決断を行っている。
HD 5800シリーズのGDDR5コントローラでは,書き込み/読み出しエラーを検視するEDC(Error Detection Code)の精度を高めることで,信号の信頼性を高め,より高速な動作を実現したという。また,メモリチップに搭載された温度センサーと連係し,メモリの状況に応じて動的に電圧やクロックを制御することで,5Gbpsのデータ転送速度も実現できる安定性を確保したとされる。
HD 5800シリーズでは,RGB各10bitに対応する6本のディスプレイ・パイプラインが搭載され,これに6基のTMDS/Display Port出力ユニットと,2基のアナログDACが組み合わされると,シングルGPUで最大6台のディスプレイ出力が可能になる(※何画面出力が可能かは,カードの出力ポート構成による)。
AMDは,Samsungとパートナーシップを結び,同社の狭縁ワイドLCDディスプレイとの組み合わせで,マルチディスプレイによるゲーム環境を推進していくとともに,マルチディスプレイ用のスタンドなど,周辺機器環境の整備を進めていく予定。同社は,EyefinityをWindows 7と同Vista,Linuxでサポートする意向を示しているので,ゲームだけに留まらない,新しいマルチディスプレイ環境として訴求していく構えだ。
なお,3Dパフォーマンスとは直接関係しないが,ビデオ再生支援機能であるUVD2(Universal Video Decoder 2)も強化されている。HD 5800シリーズでは,2系統の1080p再生支援が可能になっているほか,HDMI 1.3aに対応することで,Dolby TrueHDやDTS-HD Master Audio出力や,RGB各色12bit出力もサポートされた。
DirectXの世代を問わず,世界最速GPUの座を奪還
年内に上位&下位モデル,年明けにはエントリーモデルも
この点について,AMDでデスクトップグラフィックス製品のマーケティングを統括するDavid Cummings(デビッド・カミングス)氏は,「HD 5800シリーズの開発に当たり,既存のDirectX/OpenGLタイトルにおけるパフォーマンス向上も重要課題として取り組んできた」として,同製品がDirectX 11だけをターゲットにした製品ではないことを強調。「DirectXのバージョンに関係なく,“世界最速のGPU”の座を奪還する」と宣言した。
同時にAMDは,DirectX 11タイトルのサポートや,DirectComputeを使った物理演算処理機能をゲームへ実装する試みも進めている。ゲームデベロッパへの支援を増やしつつあるようだ。
さらに,2010年第1四半期には,エントリー市場向けの「Redwood」(レッドウッド,同)と,ローエンド製品「Cedar」(シダー,同)も投入する。
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