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GeForce GTX 400
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  • 発表日:2010/03/26
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2009年旧正月明け特別企画(3):グラフィックス&DirectXロードマップを整理する
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印刷2009/02/18 12:00

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2009年旧正月明け特別企画(3):グラフィックス&DirectXロードマップを整理する

太陰暦の正月休みを終え,台湾や中国のPC関連ベンダーが動き出した2009年2月というタイミングで,PC業界における主要プレイヤーのロードマップを確認しようという特別企画。最終回となる今回は,お待ちかねのグラフィックスロードマップを整理してみよう。NVIDIAとAMDの2巨頭はもちろん,Windows 7の出荷を控えるMicrosoft,そしてIntelの動向も要注目だ。

2009年旧正月明け特別企画(1):IntelのデスクトップPC向けCPU&チップセットロードマップを整理する
2009年旧正月明け特別企画(2):AMDのCPU&チップセットロードマップを整理する

 55nmプロセスを採用したハイエンド製品,「GeForce GTX 295」「GeForce GTX 285」で,AMDに奪われた市場シェア奪回を図るNVIDIAだが,次世代製品のロードマップは未だ不鮮明だ。

 グラフィックスカードベンダー関係者は,2009年第2四半期にも,「GeForce 9600」「GeForce 9500」のそれぞれプロセスシュリンク版で,40nmプロセス技術を採用した「GT130」「GT120」「G110」(いずれも開発コードネーム)が市場投入される計画であると伝えている。

画像集#002のサムネイル/2009年旧正月明け特別企画(3):グラフィックス&DirectXロードマップを整理する

 NVIDIAが「GeForce GTX 280」で製品の命名ルールを変更したのはご存じのとおりだが,3桁のモデルナンバーは,最初の1桁がGPUの世代,残る2桁が「パフォーマンスナンバー」となる。また,NVIDIA関係者によると,「GTX」を構成する3文字は,

  • G:Graphics(グラフィックス)
  • T:Tesla(CUDAなど汎用コンピューティング機能)
  • X:eXtreme(ハイエンド)

を指すとされ,それを踏まえると,GT130とGT120は「グラフィックスおよび汎用コンピューティング能力を持つミドルクラスモデル」,G110は「グラフィックス機能をメインとした,G8x/Gx世代のエントリーモデル」,という意味になる。

 ところでNVIDIAは,1月に米国で開催された見本市,「2009 International CES」において,G120やGT130のモバイル版という位置付けになるノートPC用GPU,「GeForce G100M」シリーズを,下記のとおり発表している。

  • GeForce GT 130M:55nmプロセス,32SP,128bitメモリインタフェース,コアクロック1500MHz,メモリクロック800MHz(GDDR3)/500MHz(DDR2)
  • GeForce G 110M:55nmプロセス,16SP,64bitメモリインタフェース,コアクロック1000MHz,メモリクロック700MHz(GDDR3)/500MHz(DDR2)
  • GeForce G 105M:55nmプロセス,8SP,64bitメモリインタフェース,コアクロック1600MHz,メモリクロック700MHz(GDDR3)/500MHz(DDR2)

GeForce GT 130Mのイメージショット
画像集#003のサムネイル/2009年旧正月明け特別企画(3):グラフィックス&DirectXロードマップを整理する
 ポイントは,GeForce G100Mシリーズが55nmプロセス技術で製造される点だ。前述のとおり,GeForce 100シリーズのデスクトップPC向けGPUは40nmプロセス技術を採用して製造されるため,これよりも汎用シェーダユニット「Streaming Processor」(SP)数が増える可能性は高い。
 実際,グラフィックスカードベンダー関係者は,GT130が64SP,GT120が32SP,G110が16SPになる見通しと伝えている。これは,65nmから55nmといった中間プロセスへのシュリンクでは,(回路の最適化こそ必要になるものの)露光技術を使って,基の回路設計をそのまま縮小する「オプティカルシュリンク」が可能だが,65nmから40nmといったメジャープロセスをまたぐシュリンクでは,半導体回路そのものを再設計する必要が生じ,再設計時にシェーダプロセッサ数を増やしたりすることが容易だからだという。

 一部には,40nmプロセス版G100シリーズが,「GeForce GT 200」もしくは「Geforce G 200」シリーズにリネームされるという噂もある。NVIDIAは,最近も「GeForce 8800 GT」を「GeForce 9800 GT」にリネームした“実績”があるので,プロセスシュリンクを機に,最新の命名ルールに型番を揃える可能性はたしかにゼロではないが,まだ噂の域を出ていないというのが実情だ。

2009年2月時点で,GeForce GTX 260は55nmプロセス版搭載モデルが各社から揃い始めたところだが,第3四半期には40nmプロセスへ移行した後継製品が登場の見込み(※写真はエルザジャパンの「ELSA GLADIAC GTX 260 V2 896MB(55nm Edition)」)
画像集#004のサムネイル/2009年旧正月明け特別企画(3):グラフィックス&DirectXロードマップを整理する
 ところで,NVIDIAの次世代アーキテクチャ製品については,ほとんど情報が漏れて来ていない。NVIDIAに近いグラフィックスベンダー関係者によれば,Direct3D 11をサポートする「GT300」(開発コードネーム)が第3四半期以降に投入される見通しであることや,「GeForce GTX 260」を40nmプロセスへシュリンクさせた製品などが検討されているようだ。ただし,「この1年,NVIDIAのロードマップは製品スケジュールだけでなく,仕様やコードネームも頻繁に変更されるため,製品化直前にならないと確かなことは分からない」と語るグラフィックスベンダー関係者は多い。


AMDは第3四半期以降に「R800」系製品群を順次投入


 GPU業界,もう一つの巨頭であるAMDは,第2四半期に,40nmプロセス技術を採用したミドルクラス市場向けGPU,「RV740」を市場へ投入する計画を持っている。
 AMDのパートナーとなるベンダーからは,「GeForce 9600 GT」と価格的,性能的に対抗できる製品の投入が求められており,AMDはそれに応える形で,RV740のシェーダプロセッサ数を(ATI Radeon HD 4600シリーズの320基から)増やすことも検討しているようだ。

画像集#005のサムネイル/2009年旧正月明け特別企画(3):グラフィックス&DirectXロードマップを整理する

 ある大手OEMベンダー関係者は,「RV740は『ATI Radeon HD 4830』の40nmプロセス版という位置づけになる予定だ」と語る。つまり,プロセス移行に伴う半導体の再設計で,RV740は640SP仕様になるというわけである。ただし,同関係者は「世界的な金融危機の影響を受け,AMDの半導体製造計画は大幅に後退している」と述べており,第2四半期登場予定とされるRV740が,果たして予定通りのスケジュールで登場するかは,今をもってなお不透明な状況にある。

 一方,次世代アーキテクチャ製品計画は明瞭だ。
 AMDはDirect3D 11に対応した「RV870」(開発コードネーム)を第3四半期に投入し,そのデュアルGPUソリューションとなる「R800」(開発コードネーム)や下位モデル「RV830」(同)を,2009年末にかけて順次投入する予定。これら新製品は,いずれもTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)の40nmプロセス技術で製造される見込みで,アーキテクチャ面でも手が加えられると見られている。

 同時にAMDは,このR800アーキテクチャを採用したノートPC用GPUに,「Manhattan」(マンハッタン)という開発コードネームを与えている。旧ATI Technologies時代から続くコードネームとは毛色の違った名前なのは,

  • R800世代で,エントリー市場向けのGPUの製造を,AMDも出資する合弁ファウンダリーへ移行し,2011年に市場投入予定となっているFusion APU(※CPUとGPUを統合したプロセッサ)のベースとする
  • AMDが計画していた米ニューヨーク州ファブで製造することが計画されていたことから付いた開発コードネームである

ためだと,同社に近いOEMベンダー関係者は指摘している。


Windows 7&DirectX 11でIntelが飛躍?!


 グラフィックス市場の行方を占ううえで,Microsoftの動きからは目が離せない。2009年中の出荷開始が予定される次世代Windows,「Windows 7」におけるグラフィックスサポート環境は,Microsoftが第3のGPUメーカーを後押しすることになると指摘する業界関係者が多いからだ。第3のGPUメーカーとは,ほかならぬIntelである。

Windows 7のDirectX 10.1では,DirectX 9ハードウェアもDirect3D 10 Level 9としてサポートされる
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 Microsoftは,Netbookなど,グラフィックス性能が非力な製品でもWindows 7を軽快に動かせるようにすべく,Windows Vistaよりもグラフィックスハードウェアに対する要件を緩和させる。これにより,Windows 7のDirect3D 10.1では,Intel 965Gグラフィックス機能統合型チップセットや,GeForce FX/PCX,ATI Radeon 9000といった,プログラマブルシェーダ2.0(Shader Model 2.0)世代,DirectX 9世代のハードウェアも,「Direct3D 10 Level 9」ハードウェアとしてサポートされるようになる。DirectX 10で廃止されたCAPS(CAPability Set check)を復活させ,CPUによるエミュレーションを可能にする。

Direct3D 10 Level 9は,サポートされるプログラマブルシェーダ世代の違いなどから三つのクラスに分けられる。各クラスの処理性能にも開きがある
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DirectX9ハードウェアで処理できない機能などは、Direct3D WARP 10によってソフトウェア処理することによって、機能差を吸収する
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 Windows 7では,CPU上でDirect3D 10/10.1の全機能をフルサポートするソフトウェアラスタライズ機能,「Direct3D WARP 10」(WARP:Windows Advanced Rasterization Platform)が搭載される。これにより,DirectX 9世代のグラフィックス機能でもDirectX 10/10.1アプリケーションを実行できるようになるのだ。要件は「動作クロック800MHz以上のCPUを搭載したPC」で,マルチコアCPUを搭載したシステムでは,ローエンドのグラフィックス機能統合型チップセットよりも,優れたグラフィックスパフォーマンスを発揮できるという。

Intelが2010年後半に投入を計画しているLarrabeeのブロックダイヤグラム。ROPなどの固定機能ユニットを持たず,ベクタプロセッサとスカラプロセッサを統合する各コアが、すべてのグラフィックス処理をこなす
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画像集#011のサムネイル/2009年旧正月明け特別企画(3):グラフィックス&DirectXロードマップを整理する
 この,Direct3Dにおける下位互換性の確保がIntelに有利だと業界関係者が指摘する理由は,Direct3D 11における最大の特徴の一つとなるテッセレータも,DirectX 11世代では,CPUによるアクセラレーションを利用できるようになるからだ。
 2008年後半に,Intelが開発中のグラフィックスプロセッサ「Larrabee」(ララビー,開発コードネーム)の概要を明らかにすると,NVIDIAやAMDの関係者は,「固定機能ユニットを持たないLarrabeeでは,テッセレーションがパフォーマンスのボトルネックとなる可能性が高い」と指摘していた。これは,テッセレータの機能をシェーダユニットで処理すると,一部のシェーダクラスタがテッセレーション処理だけで占有され,シェーダユニット全体の効率が落ちるため。当初,MicrosoftがDirect3D 11でテッセレータを固定機能ユニットとして実装する方式を選んだのも,処理効率を考えてのことであると言われている。
 しかし,Windows 7ではDirect3D 11も,WARPによってソフトウェアエミュレートすることができることになった。つまり,固定機能ユニットとしてのテッセレータの代わりにCPUを使ってしまえば,NVIDIAやAMDが指摘する,パフォーマンスの問題は解消してしまう。

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Direct3D 11最大の特徴となるテッセレータは当初,固定機能ユニットとして実装する方向で考えられていた
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Direct3D 11における汎用コンピューティング機能「DirectX Compute Shader」のパイプライン処理
 このMicrosoftの“変心”に,ある業界関係者は「Intelを,Microsoftの汎用コンピューティング環境に引き込むための手管だ」と皮肉る。いわゆるGPGPU(General Purpose GPU,汎用GPU)機能では,Appleが提唱するOpenCLのサポートが広がっている。CUDAでこの市場をリードするNVIDIAも,(Appleとの良好な関係もあって)OpenCLのサポートを早々に表明しているが,この状況で,Microsoftが推す「DirectX Compute Shader」を標準環境へ押し上げるためには,強力なバックアップが必要だ。そこで,Intelと手を組み,DirectX 11世代で互いの弱みを打ち消そうとしたのが,Windows 7へのWARP実装ではないか,というわけである(※NVIDIAがAppleへの傾倒を強めているのに対抗してのものだと見る業界関係者もいる)。

 もっとも,Intelが32nmプロセス技術で製造されるLarrabeeを市場へ投入できるのは,早くても2010年後半と言われており,NVIDIAやAMDにとっては,対抗してDirectX 11へ最適化するのに,十分過ぎるほどの時間があるのも確かだ。

Appleが提唱し,Khronos Groupが標準化を進めてきた汎用コンピューティング言語Open CLは,GPGPUの標準言語として期待される
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 一方,WARP実装は,エンドユーザーに恩恵をもたらすと指摘する,GPUベンダー関係者もいる。同関係者は,「テッセレータをエントリーモデルに実装すると,トランジスタ数が膨れあがってしまう。低価格を維持しようとすると,パフォーマンスを上げられなくなるが,WARPの利用を前提に,例えばエントリーモデルではハードウェアテッセレータを省いたりできれば,その分,汎用シェーダユニットを増やせる」とし,WARPの採用が,エントリー環境のパフォーマンス向上に寄与すると指摘する。

 場合によると,NVIDIAやAMDの次世代エントリーGPUでは,Direct3D 11をハードウェアでフルサポートしないかもしれない。それこそDirectX 7世代のハードウェアT&Lよろしく,「ハードウェアテッセレータはミドルクラスGPU以上のプレミアム機能」なんてことになる可能性が出てきたというわけだ。
 その意味において,次世代グラフィックス市場のキャスティングボートを握っているのは,Microsoftなのかもしれない。
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