スパコン最新情報にLogan世代の車載コンピュータ開発機,電気自動車,果ては(北米で)発売直前のSHIELDまで登場したGTC Japan 2013レポート
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今年は直近に目立った新製品がないだけに,4Gamerの関心を引きそうなネタはあまり多くなかったのだが,それでも見るべきものは多々あったので,今回は要点をかいつまんでお伝えしてみたいと思う。
基調講演で米PGIの買収を発表
CUDA関連のソフトウェア部門をさらに強化へ
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Buck氏は,「CUDAの生みの親」として知られる人物だ。米スタンフォード大学在籍時に,CUDAの原型になったGPU向けのプログラミング言語「BrookGPU」を開発。その後NVIDIAに入社し,現在は「GPU Computing Software」部門のジェネラルマネージャを務めている。
いまさら説明するまでもないだろうが,CUDAはNVIDIAのGPUコンピューティング事業における最大の柱の1つだ。その柱を作った人なのだから,当然,重要人物なのである。
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PGIはSTMicroelectronicsの子会社として,主にスーパーコンピュータ向けの開発環境を提供してきた企業だ。近年はNVIDIAとパートナーを組んでリリースしている製品も多く,たとえばいまNVIDIAが力を入れているOpenAACも,PGIが強力に推進していたりする。
それだけに,「NVIDIAがPGIを買収したこと」それ自体にあまり驚きはなかったりもするのだが,NVIDIAの幹部がよく口にする「ハードウェアメーカーだと思われているが,実はソフトウェアエンジニアの数が半数以上」という方向性で,さらに強化が進んだわけだ。NVIDIAはどんどんと,GPUコンピューティング向けの開発環境を提供するソフトウェアメーカーになってきているのである。
Tesla K20Xで単精度演算性能強化
東工大の松岡教授が「TSUBAME 2.5」を語る
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「TSUBAME 2.5」については,GTC Japan 2013の前日となる29日に発表があった(※リンクをクリックするとpdfファイルのダウンロードが始まります)ので,概要を把握している読者もいるだろう。簡単にまとめると,TSUBAME 2.5というのは,TSUBAME 2.0で採用されていたFermiアーキテクチャ採用の数値演算用カード「Tesla M2050」を,Keplerアーキテクチャ採用の「Tesla K20X」へ換装し,演算能力向上を図ってきたものである。
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その結果が下のスライドで,NVIDIA製品以外では「Xeon Phi 5110P」と「Xeon E5-2670」が挙げられているのだが,「超人ではなく,人間レベルでできるチューンを行った結果」(松岡教授),Tesla K20Xは,Xeon Phi 5110P比で最大で2倍以上ものスコア差を見せつけたというのは面白い。
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なお,前世代のサーバークラスタで,演算カードだけ差し替える場合,ノード間インターコネクトの帯域幅とTesla K20X内のメモリバス帯域幅に大きなギャップが生じるが,この点は「ノード間の転送を隠蔽するアルゴリズム上の工夫によって,解決可能と判断した」(松岡教授)とのこと。Tesla M2050をTesla K20Xに換装するだけというシンプルな強化で済ませた背景には,そういった工夫もあるという。
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さらに松岡教授は,2015年から2016年になるという「TSUBAME 3.0」への見通しとして,「Linpackにおいて20 PFLOPS程度の性能は達成できるのではないか」という見解を述べていた。これまでの例からすれば,TSUBAME 3.0でもGPUを導入する公算は高く,これからも日本のGPUコンピューティングを牽引し続ける存在になりそうだ。
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NVIDIAは国内に自動車向け組み込み製品を猛アピール
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さて,その説明会には,NVIDIA本社で自動車関連製品部門のディレクターを務めるDanny Shapiro(ダニー・シャピーロ)氏が登場。自動車向けに,Tegra搭載の小型モジュール「Vehicle Computing Module」(以下,VCM)をリリースしており,すでに独Audi(アウディ)や米Tesla Motors(テスラモーターズ)の車載インフォメーションシステムに採用されているという。
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Shapiro氏によると,車載向けのソリューションでも,NVIDIAが得意としてきたビジュアルコンピューティングの経験が非常に役立っているとのこと。VCMでは見栄えのよいユーザーインタフェースを開発するフレームワークなどをNVIDIAが提供しているとのことである。
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また,将来的にはGPUの演算能力が,たとえば音声の認識や道路上の障害物の検出,果ては自動運転へとつながっていくのではないかという期待もShapiro氏から語られた。NVIDIAが目指すものは大きいようだ。
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ご存知のように日本は,世界的に知られる複数の自動車メーカーがひしめく自動車大国。日本の自動車メーカーにNVIDIAのソリューションが採用されれば,ビジネス的にはかなりの大きな成功につながるだろう。
それを意識してか,会場にはNVIDIAのVCMを搭載するTesla Motorsの「MODEL S」実車が展示されていた。従来の車内とはかなり趣が異なる車載システムの様子を,ぜひ下の写真でチェックしてほしい。
![]() 5人乗りセダンで約6万ドルからという電気自動車,MODEL S。展示されていたのは国内向けの試乗車だった |
![]() 展示しながら充電中。GTC Japan 2013の閉会後,NVIDIA Japanのスタッフが自走して返却しに行くそうだ |
![]() ダッシュボードのメーターパネル部の表示。VCMによるものだ。全面的に液晶パネルというのは,どこを見ていいのか分かりづらい感じもあったが,“未来感”は確実にある |
![]() センターコンソールには17インチワイドの液晶パネルが埋め込まれ,各種情報の表示や自動車の設定などが行える。操作性,見た目とも良好だが,運転中に操作すると事故を起こしそうな気も |
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(北米市場で)発売直前のSHIELDも触ってきた
会場に用意されたNVIDIAのブースには,北米市場で31日発売予定となっているポータブルゲーム機型Android端末「SHIELD」の製品版実機が3台展示されており,製品ボックスも置かれていた。
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Borderlands 2」をストリーミングでプレイしてみたが,イベント会場という,ワイヤレスネットワーク的には非常に不利な状況にもかかわらず,シングルプレイでラグを感じることはなかった。マルチプレイだとまた別の話があるかもしれないが,「GeForce搭載のメインマシンでゲームを実行し,それを寝っ転がりながらSHIELDでストリーミングプレイする」という用途には,やはり,十分に堪えそうだ。
矢戸氏によると,Borderlands 2のようにSHIELDを正式サポートするタイトルの場合,直前までキーボードとマウスパッドを利用していても,SHIELDでプレイし始めると,ゲームパッド操作モードに自動的に切り替わるとのこと。また,「競合のGPUに最適化されたタイトルかどうかを問わず,(XInputベースの)ゲームパッドで操作できるように開発されていれば,たいていは動作する」そうだ。また氏によれば,「HAWKEN」のように,メインメニューでゲームパッドが使えないタイトルも,メインメニューだけ画面をタッチ操作することで,なんとかなってしまうことが多いという。
まだNVIDIA Japanに届いて間もないため,十全な検証が済んだわけではないと断りつつも,「最悪,タッチ操作と,マウス操作のエミュレーションが使えるので,まったくどうにもならないケースはあまりないのではないか」と矢戸氏が述べていたことは,押さえておきたいところである。
残念ながら,依然として国内展開に関する明るい話題はないのだが,こうして見せられ続けるのも歯がゆいところ。どんな形でもいいので,関係各法の基準をクリアのうえ,国内市場へ導入してほしいところだが……。
NVIDIAのSHIELD公式Webサイト(英語)
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- ライター:米田 聡
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