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「なぜいまGPGPUか」NVIDIAのHuang CEO,スパコンのイベントで講演
スーパーコンピュータにおける「アクセラレータ」(Accelerator)というアプローチについて討論するもの。なかなかお堅いイベントだが,基調講演に,NVIDIAの共同創業者でもある社長兼CEOのJen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)氏が登壇してきたので,今回はその模様をレポートしてみたい。
さて,Huang氏が今回のテーマに選んだのは,
「なぜスーパーコンピューティングに新しいアーキテクチャが求められるのか」
「なぜGPUはベストな選択なのか」
「なぜNVIDIAはそこまでGPGPUに情熱的なのか」
という,三つの「なぜ」である。
第1のテーマについて,氏はまず,「演算ニーズに対してリソースが足りない」という現状を説明する。細胞のシミュレーションを行うに当たって,1TFLOPS程度の性能だと,分子量270万のリボゾームをわずか2nsシミュレートするのに,8か月もの時間がかかったりするとのことで,「高度なものを計算するにはより高い演算性能が求められる」(Huang氏)わけだ。
このような形で演算ニーズが高まる一方で,スーパーコンピュータの世界では,1986年から2000年頃までは年率平均52%ほどの性能向上が実現されてきたのが,それ以降は,同20%程度になってしまった,という事例を氏は挙げる。「仮に,年20%程度の伸び率に留まると,2016年には,年52%の伸び率をしたときと比べて,パフォーマンスは1000倍も差がついてしまう」としたHuang氏は,これを失わないためにも,新しいアーキテクチャ――GPGPUが求められるとした。
氏は,最近NVIDIAが好んで用いる「GPUとCPUの性能向上率比較」のスライドを今回も示したほか,GPUがプログラマブルなアーキテクチャを備えたことで,テッセレーションや物理演算,トランスコードなど,GPUを使うアプリケーションが充実してきていることも強調する。
例えば,2基のクアッドコアXeonを搭載したシステムが7400ドルだとして,ここに2基のTesla GPUを加えて1万ドルのシステムを構築すると,分子動力学のシミュレーション性能は19倍,分子モデリングのシミュレーション性能は25倍に引き上げられるという。また,パフォーマンス当たりのコストはそれぞれ14倍,19倍も優れているとのことだ。
NVIDIAの研究開発費推移。2005年以降急激に増えているのが分かる。「景気後退期にも,我々は投資を惜しまなかった」(Huang氏)。ちなみに,CUDAが登場したのは2006年のこと |
スーパーコンピュータ関連のイベント「SC」へ2007年に参加したとき,NVIDIAのGPUを使ってデモを行う会社はNVIDIAしかいなかったが,2009年には75社へと一気に増えたという |
以上,さすがに4Gamer読者と直接の関係はないこともあって,駆け足で紹介してきたが,基調講演後に行われた報道関係者向けのラウンドテーブルで,ちょっとわくわくする話が出てきたので,それを最後に紹介しておきたい。
Huang氏は,FermiアーキテクチャのTeslaやGF100が30億トランジスタを集積したことを挙げて,これが,300万トランジスタを集積して1995年に発表された「RIVA 128」の1000倍,性能は1000倍以上に到達したことを指摘しつつ,次のように述べる。
「次の15年で,コンピュータはさらに1000倍高いパフォーマンスを持つようになるだろう。あるいは5年後10年後には,誰もが好むと好まざるとに関わらず,AR(Augmented Reality,拡張現実)アプリケーションを利用するためのメガネをかける時代になっているかもしれないね」
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CUDA
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