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印刷2010/01/28 22:58

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「なぜいまGPGPUか」NVIDIAのHuang CEO,スパコンのイベントで講演

画像集#002のサムネイル/「なぜいまGPGPUか」NVIDIAのHuang CEO,スパコンのイベントで講演
Jen-Hsun Huang氏(Co-Founder, President, and Chief Executive Officer, NVIDIA)
画像集#003のサムネイル/「なぜいまGPGPUか」NVIDIAのHuang CEO,スパコンのイベントで講演
Huang氏の講演に先立って,理研の高速分子シミュレーション研究チーム チームリーダー 泰地真弘人氏が挨拶。汎用アクセラレータの選択肢として,「Clearspeed」「GRAPE-DR」「GPGPU」の三つが存在するが,なかでもCUDAの登場によるGPGPUの登場を「ビッグバンだ」と表現していた。共催するNVIDIAへのリップサービスはあるにせよ,それだけ注目を集めているのも確かなのだろう
画像集#004のサムネイル/「なぜいまGPGPUか」NVIDIAのHuang CEO,スパコンのイベントで講演
細胞のシミュレーションにどれだけの演算能力が必要かを示すスライド
 NVIDIAと独立行政法人理化学研究所(理研)は,「Accelerated Computing」と題したカンファレンスを東京・六本木で開催した。
 スーパーコンピュータにおける「アクセラレータ」(Accelerator)というアプローチについて討論するもの。なかなかお堅いイベントだが,基調講演に,NVIDIAの共同創業者でもある社長兼CEOのJen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)氏が登壇してきたので,今回はその模様をレポートしてみたい。

 さて,Huang氏が今回のテーマに選んだのは,

「なぜスーパーコンピューティングに新しいアーキテクチャが求められるのか」
「なぜGPUはベストな選択なのか」
「なぜNVIDIAはそこまでGPGPUに情熱的なのか」


という,三つの「なぜ」である。

 第1のテーマについて,氏はまず,「演算ニーズに対してリソースが足りない」という現状を説明する。細胞のシミュレーションを行うに当たって,1TFLOPS程度の性能だと,分子量270万のリボゾームをわずか2nsシミュレートするのに,8か月もの時間がかかったりするとのことで,「高度なものを計算するにはより高い演算性能が求められる」(Huang氏)わけだ。

 このような形で演算ニーズが高まる一方で,スーパーコンピュータの世界では,1986年から2000年頃までは年率平均52%ほどの性能向上が実現されてきたのが,それ以降は,同20%程度になってしまった,という事例を氏は挙げる。「仮に,年20%程度の伸び率に留まると,2016年には,年52%の伸び率をしたときと比べて,パフォーマンスは1000倍も差がついてしまう」としたHuang氏は,これを失わないためにも,新しいアーキテクチャ――GPGPUが求められるとした。

ここ数年,Huang氏が「レンガの壁」(Brick Wall)と位置づける,電力の壁やメモリの壁,命令レベル並列性の壁といった要因により,スーパーコンピューターの性能向上は鈍化の傾向にある。このままいくと,仮に年52%程度の伸びを示していたときと比べて,1000倍ものパフォーマンスが「失われる」という
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GT200世代で1TFLOPSに迫る演算性能を手にしたGPU。CPUも,マルチコア化によってパフォーマンスを向上させているが,向上率ではGPUが圧倒している……というスライド
画像集#007のサムネイル/「なぜいまGPGPUか」NVIDIAのHuang CEO,スパコンのイベントで講演
 次に第2のテーマ,「なぜGPUはベストな選択なのか」についてだが,Huang氏が最初に挙げたのが,パフォーマンスだ。

 氏は,最近NVIDIAが好んで用いる「GPUとCPUの性能向上率比較」のスライドを今回も示したほか,GPUがプログラマブルなアーキテクチャを備えたことで,テッセレーションや物理演算,トランスコードなど,GPUを使うアプリケーションが充実してきていることも強調する。

既存のXeonシステムにTeslaを追加することでコストパフォーマンスを高めるられるというスライド。TeslaとGeForceは,製品としては異なるものの,GPUコア自体は同じなので,同一コアの出荷数量によって,GPUはコストパフォーマンスの高い製品となり得ているという
画像集#008のサムネイル/「なぜいまGPGPUか」NVIDIAのHuang CEO,スパコンのイベントで講演
 そして氏は,ベストな理由としてもう一つ,パフォーマンス当たりのコストが低い点を挙げている。
 例えば,2基のクアッドコアXeonを搭載したシステムが7400ドルだとして,ここに2基のTesla GPUを加えて1万ドルのシステムを構築すると,分子動力学のシミュレーション性能は19倍,分子モデリングのシミュレーション性能は25倍に引き上げられるという。また,パフォーマンス当たりのコストはそれぞれ14倍,19倍も優れているとのことだ。

量産品とされたTeslaカードを披露するHuang氏
画像集#009のサムネイル/「なぜいまGPGPUか」NVIDIAのHuang CEO,スパコンのイベントで講演
 基調講演の最後に,量産品だというFermi世代のTeslaカードを披露した氏は,第3のテーマ「なぜGPGPUに情熱を注いでいるのか」について,「GPUコンピューティングに,大きな可能性があるから」とまとめている。いまはそうではないかもしれないが,だからといって動かなければ何も起こらない。NVIDIAとしては,GPUコンピューティングの市場が極めて大きくなると確信しており,そこに向けて,多額の研究開発費を投じ,さらに,今回のイベントのような形で,スーパーコンピュータにおけるアクセラレータの最有力候補としてGPGPUをプッシュしているのであるとまとめていた。

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NVIDIAの研究開発費推移。2005年以降急激に増えているのが分かる。「景気後退期にも,我々は投資を惜しまなかった」(Huang氏)。ちなみに,CUDAが登場したのは2006年のこと
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スーパーコンピュータ関連のイベント「SC」へ2007年に参加したとき,NVIDIAのGPUを使ってデモを行う会社はNVIDIAしかいなかったが,2009年には75社へと一気に増えたという

 以上,さすがに4Gamer読者と直接の関係はないこともあって,駆け足で紹介してきたが,基調講演後に行われた報道関係者向けのラウンドテーブルで,ちょっとわくわくする話が出てきたので,それを最後に紹介しておきたい。
 Huang氏は,FermiアーキテクチャのTeslaやGF100が30億トランジスタを集積したことを挙げて,これが,300万トランジスタを集積して1995年に発表された「RIVA 128」の1000倍,性能は1000倍以上に到達したことを指摘しつつ,次のように述べる。

 「次の15年で,コンピュータはさらに1000倍高いパフォーマンスを持つようになるだろう。あるいは5年後10年後には,誰もが好むと好まざるとに関わらず,AR(Augmented Reality,拡張現実)アプリケーションを利用するためのメガネをかける時代になっているかもしれないね」

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