レビュー
トム・クランシーファンはもちろん,単純に空戦ごっこを楽しみたい人にもお勧め
H.A.W.X
シリーズ初のフライトアクションだが
トム・クランシー作品おなじみの魅力が満載
・決して非現実的ではない軍事危機
・現実から乖離していないからこそ登場する現実の武器/兵器
・洗練されたシステムやリアルさはストーリーのため,であることの徹底
たとえゲームの主役が戦場の兵士であろうと戦闘機であろうと,この伝統が守られている点は,シリーズファンにとって嬉しいところだろう。
とくに,ステージ1のミッションがいい。地上で作戦を行う部隊を,空から援護するという内容のミッションなのだが,その地上部隊は“ゴーストリコン”。ほかにも,爆撃機の護衛をしながら地上のSAM(地対空ミサイル)を排除していくステージなどでは,EndWarのコマとして戦争に参加している感覚を味わうことができる。トム・クランシーの世界観が好きで,その名を冠した作品をいくつか遊んでいる人であれば,無条件で楽しむことができるだろう。
※本稿で使用しているムービーは,筆者のフレンド達に許可を得て撮影/掲載したものです
ちなみに,いくつもの有名ソフトに名前が付いているトム・クランシー。知らない人にとっては「誰?」とという人物かもしれないが,ゲームに限定しなくても,彼は有名人であり,人気作家である。映画化された作品だけでも「レッド・オクトーバーを追え!(1990年)」「パトリオット・ゲーム(1992年)」「今そこにある危機(1994年)」「トータル・フィアーズ(2002年)」と,いくつも存在している。すべてがテロや戦争に関わるもので,戦争モノを書かせればトップクラスの作家と言ってもいい。
そんな人物が関わる作品群であり,ゲームのクオリティに関しても評価が高いことで有名なのが,一連のトム・クランシーシリーズというわけだ。まだ未体験ならこれを機に,どれか一つは遊んでみてほしい。軍事モノが好きならば,まず間違いなく楽しめるはずだ。
ミッションに応じて機体を選ぶ楽しみ
すべてのステージにはミッションがあり,スタンダードな目標の破壊をはじめとして,援護,護衛などさまざまな任務が用意されている。良くあるタイプと言えばそのとおりなのだが,どちらかというと護衛ミッションが多めになっているのが特徴的か。敵を殲滅するよりも,味方を護衛するステージの方が多いのだ。
「殲滅すれば護衛も楽勝でしょ?」と考えるのは早計だ。このゲームでは敵,味方を含めて,現代兵器やその延長のテクノロジーを用いた兵器しか登場しない。現代空戦でエースと呼ばれるパイロットでも,撃墜数は5〜10ほど。つまり,いくらゲームとはいえ,単機で100機を相手にするのは自殺行為としか言いようがない。
そこで,敵にわざとロックオンされて味方を守るという戦術も必要になってくるし,できる限り遠距離から迎撃できる武器を用意するという発想も必要になってくる。ステージごとに機体や武装を変更でき,ミッションに応じた調整は必須といえる。
乱戦が予想されるなら旋回能力が高い機体に全方位ミサイルを,迎撃ミッションなら遠距離ミサイルと高速機を,地上戦の援護ならアタッカーにクラスター爆弾を,といった具合に,いろいろと考えながらプレイするのがめっぽう面白い。選択画面でオススメ機体/武装が表示されるので,戦闘機などに詳しくない人でも,プレイしながら徐々に“考える楽しみ”が味わえるようになるはずだ。
カメラワークに関しては,基本的に自機後方視点,モニター視点,コクピット視点と,ある程度自由に変更できる。周囲を見渡したいのであれば,カメラを廻すことで後方まで確認できる自機後方視点が一番優秀だ。
低空時に自機の傾きを確認しながら飛行するようなケースでは,計器類の視認が容易なモニター視点,戦闘機乗りという部分にこだわるのであれば,視野は狭いが最も雰囲気のあるコクピット視点と,状況や好みに応じてリアルタイムで変更しつつ楽しめる。
ステージによっては暗闇の中を飛ぶ必要が出てくるので,上下の区別が付きにくいケースもある。臨機応変に視点を切り替えることで戦闘が楽になることもあるので,このあたりはあれこれ工夫しつつ,ストレスの溜まらない視点を選ぶといいだろう。
最高難度であってもクリアは難しくない
それに加えて,ミッションに失敗しても経験値が溜まるので,根気強く挑戦し続ければ,新たな機体や武装がアンロックされていき,攻略はどんどん容易になる。
一方,ゲームそのものの難度に関係なく,「クリア不可能かも……」と悩まされることがあるのが,機体の相性だ。地上戦メインの武装で出撃したのに,空戦用戦闘機に囲まれると何もできないまま撃墜されてしまう。
しかし,これを回避するためにアシストオフ機能がある。このモード,視点に難があるものの旋回能力が著しく上昇する。G(重力加速度)がかかりすぎて生身の人間では不可能であろうブレーキターンすら可能になる。失速からの墜落というリスクはあるのだが,空戦でピンチに追い込まれたら,このモードに切り替えることで多少の不利は挽回できる。
アシストオフ状態では独特の操作感とカメラワークになるので,かなり使いづらいのだが,慣れると非常に便利(そして刺激的)なモードである。
ほかにも,ラクにミッションをこなす方法としてCo-op(協力プレイ)が挙げられる。これは,このゲームのミッションを楽しくこなす方法の一つでもあるのだが,自分以外の仲間にすべてを任せてしまうことも可能だ。
H.A.W.Xではすべてのステージで,最大4人まで同時にプレイできる。当然ながら一人でプレイするときよりも敵の数が増えるのだが,4人もいれば何とかなる。しかも,迎撃や対地攻撃,護衛といった具合に役割を分けることで,機体/武装選びも変わってくるので,ゲームの楽しさそのものも激変する。
もちろん,中には機体選びを失敗して,空戦メインのミッションで地上攻撃特化型の機体を選ぶ人間もいるが,そういった事故も含めて楽しめるのがCo-opの醍醐味といえる。
大事なことなのだが,このゲームのCo-opでは一人で遊ぶときと異なり,誰か一人でも一緒にプレイしていれば,撃墜されても再出撃できるので,難度は極端に下がる。普段は撃墜されるとチェックポイントからやり直しになるのだが,Co-opならそのまま数秒間待てば弾丸補充までされた状態で再開可能。難度エリートでもクリアが楽々なのは,ひとえにこのCo-opモードがあるからこそだ。
なお,Co-opに関しては,プレイする前に“入室可能”にしておくと,ステージのどのシーンであっても乱入/招待が可能になる。世界中の誰かに助けてもらってもいいし,フレンドのミッションに飛び込んでもいい。一人ではなく部隊だからこそ楽しめる空戦を堪能してほしい。
マニア向け,もしくは禁じられた神々の遊び“ルーデルごっこ”
このゲームの特徴として,EndWarでも採用された“ボイスコマンド”というものがある。「シューティングにボイスコマンドなんていらないのでは……」と考えてはいけない。実際,複座機体は少なくなく,パイロットとガンナーという役割分担は第二次世界大戦の頃から存在しており,近年の巨大化,高性能化された戦闘機でもそれは同様だ。つまり,ボイスコマンドを使うことで,自らは操作に集中し,攻撃指示を声で出すという遊び方ができるのだ。
問題点は,このボイスコマンドをオンにしていると,Co-op中に味方との会話ができなくなってしまうことと,ガンナーがこなすべき仕事(武器の切り替えや攻撃)がコントローラで簡単にできるので,イマイチ必要性を感じない部分。
しかし,このボイスコマンド。コントロールが難しいので難度が多少上昇するし,予測不能なトラブルを巻き起こす可能性があるしで,なかなか遊び甲斐がある。筆者は“ルーデルごっこ”と呼んで楽しんでいる。選ぶ機体はドイツが誇る破壊王ハインリッヒ・ルーデルが開発に関わった地上攻撃機の最高傑作A-10A。自分の中では,ボイスコマンドで指示を出す相手はガーデルマンという設定で空へと繰り出す。
通常,「ショット」といえばミサイルを発射してくれるのだが,筆者の発音上の問題でうまくいかないことが多い。たまたま上手くいったときに「良くやったガーデルマン」とつぶやいたところ,脳内ガーデルマンことボイスコマンドの中の人は,敵もいないのになぜか全弾発射するという暴挙に出た。どうやら「オールアウト」と言った判定になったらしいのだが……。
ともあれ,ゲームそのものの難度がそれほど高くないので,こういった遊びを織り交ぜると,さらに楽しめること請け合いだ。
一人で突き詰める遊びには向いていないが
比較的気軽に楽しめる秀作フライトアクション
ここまでの説明で,このゲームがフライトシミュレータというよりも,よりゲームとしての楽しさを求めた作品であることを理解してもらえたと思う。個人的な感想としては,「エースコンバット6 解放への戦火」よりもさらに“ゲーム寄り”だと感じている。ストイックに追求するタイプのパイロットにはお勧めしにくいのだが,ゲームとして気楽に楽しんだり,Co-opでバカ騒ぎしたり,フライトシム未経験者が入門用として楽しんだりするタイトルとしては,かなり良くできている。いまだにF-4やA-4が使える珍しいゲームでもあるので,初心者からマニアまで,幅広い層に“楽しんで”もらいたいタイトルだ。
動画撮影機材:トムソン・カノープス HDRECS
動画編集用ソフト:トムソン・カノープス Edius Pro 5
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