レビュー
コーエーテクモが放つ国産カバーアクションTPSの実力やいかに。「QUANTUM THEORY」のインプレッションを掲載
「QUANTUM THEORY」公式サイト
この謎の男が,本作の主人公であるシドだ。つまり,シド自身が謎の存在として,物語はスタートする。ちなみにシド本人も,自分が何者なのか明確には分かっていないようだ。あるのは,ただ,塔を破壊するという使命だけである。
ゲームは,このシドがひとつの塔(アーク)に立ち向かっているところから始まる。本作では,カバーアクションなどのほかに,パートナーを使った攻撃アクションが存在し,冒頭のシーンはそのチュートリアルを兼ねたものとなっている。この簡単なチュートリアルのあと,オープニングが挟まり,義勇兵達と合流したシドは,彼らと共に次の塔を目指すことになる。
シドが本格的に戦うことになる最初の敵は,侵蝕の影響を受けた義勇兵のなれの果てである“インフェクテッド”。チュートリアルのときお世話になるパートナーのニュクスは,本編開始時にはいなくなっているので,最初はカバーアクション重視のTPSとして敵と戦っていく。
本作ではXボタンでダッシュできるのだが,そのまま壁や障害物などにぶつかると,自動的にカバー状態に移行する。カバー状態からは,トリガーであるR1ボタンで隠れたまま射撃したり,L2ボタンで武器を構え,身を乗り出しつつ精密射撃したりすることが可能だ。
ちなみに,アナログスティックとXボタンを押すことでカバーを解除したり,オブジェクトの向こう側に飛び出したりする,カバーアクションTPSではおなじみのアクションももちろん可能だ。
シドの基本装備は,最初から持っている独自武器のみだが,特定の敵を倒すことで,マシンガンやショットガンなどを入手できる。いずれも,侵蝕の影響を受けた独特のデザインの武器なので,最初は,どれがどういう武器なのか直感的に把握できないだろうが,こればかりは戦いながら覚えていくしかない。
敵はこちらに突っ込んできたり,頻繁にカバー位置を変えたりと良く動き回る。とはいえ,戦闘力は圧倒的にコチラが高いので,敵の策を力でねじ伏せて進んでいこう |
三つの武器を使い分けて戦っていくTPSというと,ちょっと物足りなさを感じる人もいるかもしれないが,デフォルト武器の使い勝手が悪くないので,実際にプレイしていてとくに不満は感じなかった。弾薬の補給も,所持している武器に均等に行われるので,タイプの異なる武器をまんべんなく使っていくスタイルが効率的と言えるだろう。
非常にヒロイックな主人公がストーリーへの没入度を高める
本作をプレイしていて強く感じるのは,主人公 シドの英雄性だ。ゲーム中では,シドが敵を力強くなぎ倒したり,同行する仲間を守ったりといった場面が随所に挿入されており,主人公としての個性が演出されている。
本作はダメージを受けても,体力が徐々に回復していくシステムになっているので,一気に大ダメージを受けないかぎり,シドはそう簡単に死なない(隠れていれば回復できる)。しかもシドの体力は,多少の集中砲火を浴びても簡単にはやられない程度に高く設定されているので,派手な立ち回りがたっぷりと楽しめる。
無茶をして瀕死になっても,物陰に隠れることができればスグに回復する。グレネードを2発食らっても平気だったケースもあった |
○ボタンによる回避アクションで大抵の攻撃は回避できる。アクション後にわずかな硬直はあるが,さほど気にならないレベルだ |
また射撃に関してだが,少し命中補正が入っているようで,外れたかな? と思ってもしっかり命中していることが少なくなかった。このあたりは,選択した難度(今回はノーマルでプレイした)も影響しているのかもしれないが,ヒロイックなゲームプレイが楽しめる一因となっているのは確かだ。
パートナーの使い勝手は?
塔に入りしばらく進むと,パートナーとのコンビネーションが本格的に使えるようになる。チュートリアルのそれとは異なる新たなパートナーは,フィレーナというキャラクターだ。非常に身軽で,敵陣に切り込んで引っかき回してくれるので,こちらはかなり安心して戦える。あまり放っておくと行動不能になってしまうようだが,それでゲームオーバーになることはほとんどないので,そういう意味でも遠慮なく使える。
謎多き金髪の美女フィレーナ。デモシーンでもその流麗なアクションを披露してくれる |
放っておくとフィレーナも行動不能になるが,一定時間が経過するか,近づいてやれば回復する |
彼女とのコンビネーションは,主に二つあり,一つは,彼女を抱えて敵へ投げ飛ばすことで,敵に攻撃ダメージを与えられること。もう一つは,接近戦のときにタイミング良く□ボタンを押すことで,連続攻撃が発動できるというもの。
ちなみに,本作では敵が距離を詰めてくる傾向にあること(犬や猿のような獣タイプなど,接近戦しかしかけてこない敵もいる),意外と接近戦が強いことから,前述の回避アクションと組み合わせれば,雑魚は簡単に一掃できてしまう。大型の敵に対しても,コンビネーションがうまく決まればほぼ一撃で倒せてしまうほどだった。もっとも,彼女が常に近くで控えてくれているとは限らないので,そこはケースバイケースといったところだろう。
アクション要素を強く感じるTPS
その一方で,各シーンのクライマックスなどでは,比較的攻略難度の高いシチュエーションが用意されている。こういったシチュエーションでは,食らうと一撃で死んでしまうビームをかいくぐりながら砲台を攻撃する,あるいは,ターレット(砲座)の硬い防壁の向こう側にいる敵を,フィレーナを上手く利用して倒すなど,ある程度決まった攻略手順を踏むことで敵を倒すようになっている。基本的に戦略性はさほど求められないが,より少ない損害で(より速いタイムで)攻略しようと思ったら,プレイヤーのテクニックと作戦が,戦果に大きな影響を及ぼすだろう。
シチュエーションによっては,クリア方法が説明されない場合もあるのだが,「こんなの分からないよ!」というほどのものはなかった。今回プレイしたバージョンでの具体例を挙げると,徐々に足場が崩れていく中で,次々と現れる敵を撃破しつつ,戦う位置を変えていき,最後に足場へジャンプするという場面で,若干戸惑わされたくらいだ。
“地形の変化”や“次々と現れる敵”という要素は序盤から体験できるので,頭では何をすればいいのか理解できる。とはいえ,このときはそれらを連続的に行わなければならず,最後のジャンプの直前に現れる敵が,その時点で初登場のすばしっこい接近戦タイプだった。これに手間取っていると,足場が通り過ぎてしまうし,敵を避けながらあわててジャンプすると,上手く足場に着地できない(着地した先で滑り落ちたこともあった)ために,ゲームオーバーを重ねることになってしまった。
QUANTUM THEORYを一通り遊んでみたうえで考えてみると,コテコテのシューターであれば,いきなり難度ハードでプレイしても十分楽しめるのではないかと思う。逆に,あまりTPSに慣れていない人であれば,ノーマルの難度がちょうどいいような気がする。TPSに不慣れなゲーマーでも,TPSのおもしろさを十分堪能できるが,全体として決してイージーな作りになっているわけではないのだ。
ともあれ,硬派なシューターからの賛否は分かれるかもしれないが,「面白ければいい」という雑食系ゲーマーにとっては,アクション性の高い国産TPS「QUANTUM THEORY」は,素直に楽しめる1本であると言える。
なお,マルチプレイに関しては「こちら」でも紹介しているが,男性キャラと女性キャラで戦い方が大きく異なっており,ストーリーモードとはひと味違ったプレイ体験が味わえる。ストーリーモードで培った知識とテクニックを発揮し,射撃のエキスパートである男性キャラで戦うもよし。機動力と近接戦闘能力の高さを味わうために女性キャラで戦うもよしだ。とくに,シングルプレイで物足りなさを感じたというコアゲーマーには,ぜひオンライン対戦に挑戦してみてほしい。
ただの銃撃戦では終わらせない仕掛けが随所に施されており,プレイヤーを楽しませてくれる |
TPSとして見ると,かなり遊びやすいバランスに仕上がっているといえるが,マルチプレイではひと味違ったゲーム展開が楽しめる |
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