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[NVISION 08#03]NVISIONは,誰のためのイベントか〜初日の基調講演から
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印刷2008/08/27 21:54

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[NVISION 08#03]NVISIONは,誰のためのイベントか〜初日の基調講演から

基調講演の会場となった「Center for Performing Arts」(CPA)
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 NVISION 08#01のレポートでお伝えしているとおり,NVIDIAは現地時間2008年8月25〜27日の日程で,米カリフォルニア州サンノゼ市において,「Visual Computing」(ビジュアルコンピューティング)をテーマとしたイベント「NVISION 08」を開催中だ。
 テクニカルセッションと新製品展示会,エンドユーザー向けイベントが渾然一体となった,一種独特な雰囲気を持ったこのイベント。初日のオープニングを飾る基調講演には,同社の共同創始者にして社長兼CEOであるJen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)氏が登壇。最新の事例を紹介しながら,「これからのビジュアルコンピューティングのあり方」を説くものとなった。

Huang CEOは,ビジュアルコンピューティングのエコシステムを構築する必要性を説く。その中心となるのは,CUDAで約1TFLOPSの演算性能を持つNVIDIAのGPUだという
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グラフィックス性能を駆使した

次世代のネットワークや放送,UIを披露


GPUの演算性能の伸びがCPUの伸びをはるかに上回っている今こそが,ビジュアルコンピューティングに取り組むタイミングだとHuang氏
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 Huang氏はまず,Tera FLOPS時代を迎えたGPUが,ビジュアルコンピューティングを加速させるとして,NVIDIAの並列コンピューティングを実現する仕組みである「CUDA」(Compute Unified Device Architecture)を中心とした,「新たなエコシステム」の構築が必要だと主張する。「GPUがコンピューティング環境に革命をもたらす時代が到来した」とは氏の弁だ。

 結論からいうと,同氏の基調講演は,1時間以上にわたった時間のほぼすべてが,「GPUがコンピューティング環境に革命をもたらす」実例の紹介に費やされた。順に紹介していこう。

●自動車メーカー向けCAD&レイトレーシングツール

Peter C. Stevenson氏(左)。フルスケールのCGモデルレンダリングが実現したことで,デザイン時に素材の細部まで確認できるようになったほか,顧客へのセールスツールとしても活用できるようになったと説明する
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 まず,自動車メーカーなどに向けてCADやレイトレーシングのツールを提供する独RTTのCOO,Peter C. Stevenson(ピーター・スティーブンソン)氏を壇上に招き,RTTの技術によって実現した,伊Lamborghiniのフラグシップスポーツカー「Lamborghini Reventon」のフルスケールレンダリングモデルを,リアルタイムに動かして見せた。

 Stevenson氏は,「レンダリングモデルを実車と同じスケールで作り込むことにより,細部にわたってデザインや素材の検討をすることができるようになった」と,グラフィックス処理性能の飛躍的な向上が,自動車デザインにも革新的な進歩をもたらしたと説明する。
 Lamborghiniは,100万ユーロ(約1億5700万円)という価格で,全世界限定20台しか生産されない同車の販売に,このレンダリングモデルを採用。試乗車を用意できないため,顧客の要望に合わせてボディカラーや内装をアレンジしたCGモデルを作り,そのビデオを提供することで,詳細の確認をしてもらっているのだという。

車のエクステリアのみならずインテリアもCGでデザインされる。そのクオリティの高さは,革の質感や刺繍の縫い目のひと針ひと針まで確認できるほど
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●3Dグラフィックス&PhysXが生む次世代SNS

オンライン仮想世界の人口は爆発的に増え続けており,2015年には世界中の人口の7人に1人がオンラインゲームや3D SNSを楽しむようになると見られている
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 「GeForce Power Pack」にデモ版「Nurien Alpha v0.7 Demo」が含まれたことで注目を集めている,次世代SNS「MStar」から,開発元である韓Nurien Softwareの創設者兼社長,Taehoon Kim(ティーホン・キム)社長が登壇。
 「ユーザーは,より写実的で,かつ自分だけのアバターを作ることができる」として,通信インフラが整備された地域であれば,バーチャルリアリティを持つSNS世界を構築可能な時代にさしかかっていることを示唆した。また,GeForce Power Packに含まれていることからも分かるように,MStar(=Nurien Alpha v0.7 Demo)では,スカートの動きなどにPhysXによる物理シミュレーションを採用し,より自然な動きの実現を試みている。
 Kim氏は「物理演算処理によって自然なキャラクター表現が可能になれば,ゲームやSNSにおけるバーチャルリアリティ環境もより親しみが湧くようになるだろう」と期待を寄せる。

Kim氏はSNSとオンラインダンスゲームを融合した「Mstar」を紹介。アバターの表現力は無限大と謳った。PhysXベースの物理シミュレーションにより,衣装の自然な動きを実現するともアピールする
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登場するや否や,基調講演会場を爆笑の渦に陥れた(?)Huang氏のアバター。ブレイクダンスを決めるシーンでは「実際のボクのダンスをモーションキャプチャしたものだよ」と冗談を披露して,さらに笑いを誘っていた
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●3Dステレオスコープ版「Medusa」デモ

カメラにメガネをかけさせるわけにはいかないので像がブレているが,ステレオドライバを利用した立体表現の例。このほか,「Call of Duty: World at War」「デビル メイ クライ 4」「Uneral Tournament 3」も立体視に対応するとのこと。
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 次世代グラフィックス表現の一つとして,3Dステレオスコープ(※いわゆる「3Dメガネ」)を用いた立体映像技術による,GeForce GTX 200シリーズ用デモ「Medusa」を披露。また,かねてより映像の立体化と相性がいいと言われている「Microsoft Age of Empires III」を用いた動作デモも公開した。

 「ゲームの世界がプレイヤーを取り囲むような立体映像の表現により,ゲームはさらなる進化の道をたどるだろう」(Huang氏)。

●次世代タッチディスプレイインタフェース

マルチタッチディスプレイのデモを披露したPerceptive PixelのHan氏
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 続いて,米Perceptive Pixelが開発したタッチディスプレイインタフェースも披露された。
 同社の創設者でチーフ・サイエンティストのJeff Han(ジェフ・ハン)氏は,「ユーザーインタフェースという面では,2軸しか制御できないマウスがボトルネックになっている」として,iPhoneのように,2本の指を使ってタッチディスプレイに直接触れることにより,あらゆる操作を実現するというマルチタッチシステムを実演した。

衛星写真地図の上にウィンドウを開き,地形図をオーバーレイ表示するといった使い方も,今日的なグラフィックス性能があれば実現可能とHan氏
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 Han氏は,もともとグラフィックスを専門とした科学者で,現在のリッチなグラフィックス性能を活かすシステムとして,タッチパネルを使った新しいインタフェースを開発したとのこと。「人間が直感的に操作できるマルチタッチシステムと,現在のビジュアルコンピューティング性能を組み合わせれば,まったく新しいユーザー体験を実現できる」として,「衛星画像を使った地図アプリケーションの上に新しいウインドウを重ね,そのウインドウを部分だけを地形図に切り替えて表示させる」というデモを行った。
 もちろん,このとき操作するのは指。ウインドウを指で移動させれば,地形図の描画エリアも同時に変更されるため,「いちいち場所を特定してから描画方式を切り替える」といった面倒な操作が必要なくなるというわけだ。両手の指を画面上で広げれば拡大,狭めれば縮小と,操作方法も直感的である。

画面上にソフトウェアキーボードを呼び出し,画像をサーチしたり,画像をフリーハンドで加工したり,さらには即席でアニメーションさせたりもできる(※回線状況の問題でムービーをUpできないので,詳細はPerceptive PixelのWebサイトを参照してほしい)。これも,現在のグラフィックス性能があれば実現可能な技術とのこと
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手元の操作でメニューを呼び出すデモ
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 またHan氏は,「メニューを開くため,画面下にマウスカーソルを持って行くのはナンセンスだ」として,指でサインを描くことで手元にメニューを呼び出す方式を提唱する。イメージとしてはマウスジェスチャーで開くランチャーソフトに近いが,指を動かすことでメニューがぱっと開くのはユニークだ。このマルチタッチスステムが実用化されれば,ビジネスアプリケーションやWebサービス,そしてゲーム操作にも,新しい可能性をもたらしてくれるだろう。


新製品や新技術に関する情報開示は一切なし

NVISIONは「産業中心」のイベントに


 Huang氏の基調講演で,同社の新製品や新技術については何一つ触れられず,ひたすらビジュアルコンピューティングの可能性を説くものとなった。これは世界初の「The Great Big Visual Computing Show」と位置づけられるNVISION 08の基調講演として,ブレていないといえるが,一方,自社製品のアピールを控えてまで“お題目”を繰り返し続けた背景には,競合他社が環境整備に手間取っている間に,GPUを使った並列コンピューティングのエコシステムを構築してしまいたいという思いがあったことは想像に難くない。

SportsVisionのCTO,Marv White氏を招き,実写にリアルタイムでCGを合成するデモ。アメフトやNASCARのファンにはおなじみかもしれない。右は,空気抵抗をリアルタイムで可視化している例
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こちらは,複数の写真から3Dグラフィックスを生成したりできるMicrosoftの無料ツール「Photosynth」。写真と文字で説明するよりも,使ってもらったほうがわかりやすいので,Microsoftが設けている専用のWebサイトから入手し,ぜひ試してみてほしい
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 「科学演算や医療解析といった,ハイパフォーマンスコンピューティング分野の技術者や学術関係者向けにCUDAの有用性を説く」テクニカルカンファレンスにせず,4Gamer読者をはじめとした一般ユーザーにも親しみやすいような「ビジュアルコンピューティングの事例」ばかりを集めたのも,開発者のモチベーションを高め,CUDAを使った一般アプリケーションの整備を一気に推し進めたいという狙いからだろう。その意味でNVISION 08は,SIGGRAPHなどといった,学術中心のテクニカルカンファレンスでなく,産業中心のイベントといえる。
 ビジュアルコンピューティング産業を中心としたイベントとして,NVISIONが今後どのように発展していくか,非常に気になるところだ。
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