「ワイルドアームズ」「アークザラッド」「勇者のくせになまいきだ」各シリーズの楽曲がオーケストラで奏でられた「GAME SYMPHONY JAPAN PREMIUM CONCERT」3公演をレポート

　アイムビレッジは3月4日，東京・日本橋の三越劇場にて「GAME SYMPHONY JAPAN PREMIUM CONCERT Vol.7」「同 Vol.8」「同 Vol.9」を開催した。


　GAME SYMPHONY JAPAN（以下，GSJ）といえば，これまでに多数のゲームメーカーの公式コンサートを実現していることで知られるが，中でも記憶に新しいのが，2017年5月に開催された「PlayStationを彩るJAPAN Studio音楽祭2017」（関連記事）だろう。
　“Jスタ”の愛称で知られるソニー・ インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオJAPAN Studioの人気タイトルの楽曲がオムニバス形式で演奏され好評を得た同公演だが，「個別のタイトルごとに，もっとじっくり演奏を聴きたい！」という来場者の声は多く，それを受けて実現したのが，今回のプレミアムコンサートである。
　昼公演で「ワイルドアームズ」，夕方公演で「アークザラッド」，そして夜公演では「勇者のくせになまいきだ。」と，三つの人気シリーズ作品の楽曲を，ゲームの展開に沿った形の“交響詩篇”という形で演奏する趣向となっていた。オリジナルの作曲者達もゲスト登壇し，ファン垂涎のコンサートとなったその模様をお届けする。

会場となった三越劇場は，1927年（昭和2年）にオープン。歴史ある会場でゲーム音楽が奏でられるのというのは，何とも感慨深い

GAME SYMPHONY JAPAN公式サイト

「ワイルドアームズ」シリーズ待望のオーケストラ演奏に

なるけみちこ氏が感涙

　前述のとおり，この日の公演の口火を切ったのは，“荒野と口笛のRPG”のキャッチフレーズで知られる「ワイルドアームズ」シリーズのコンサート。となれば幕開けは当然，シリーズ共通のオープニング曲「荒野の果てへ」だ。口笛による物悲しげなメロディが印象的な同曲だが，この日の口笛は口笛音楽コンクールの優勝者・早川章弘氏が奏でていただけあって，最初のフレーズが流れ出した瞬間から，一気にゲームの世界に引き込まれるほどの空気を作り出していた。


　その後も，ダンジョン曲→バトル曲→勝利曲とゲームのシーンを思い出させるこだわりのラインナップで次々と名曲が演奏されていき，その総数はなんと53曲に！　シリアスな「葬列」からコミカルな「あれれ？（ゼットのテーマ）」まで，シーンごとの楽曲が次々と奏でられ，最後は歌手・渡辺真知子氏の歌うエンディング曲「青空に誓って」，そして宿敵ブーメラン戦で流れる「戦鬼」を演奏し，ファンが20年待ち望んだ“初演”を終えた。

ソウルフルな歌声で会場を盛り上げた渡辺真知子氏。終演後には，涙ぐむなるけ氏を優しく抱き寄せる一幕も

　シリーズプロデューサーの本村健太郎氏，開発プロデューサーの福島 孝氏とともに，幕間のトークショウに登場した作曲担当のなるけみちこ氏は，最初にGSJから提出された曲順に厳しいダメ出しをした結果，今回の曲構成となったとこだわりを説明。
　「荒野の果てへ」で印象的な出だしのメロディは，口笛で曲を作ったことがなく思い悩んでいたところ，パーキングエリアの階段を昇ったときに“降りてきた”そうで，これまでにない経験だったと明かしていた。
　また，コンサートへのプレッシャー，そして当時の心境や関係者への思いを巡らせると，その目には涙が。声をつまらせつつ「音楽と作品が残っているのは本当に嬉しいこと」とコメントすると，場内は温かな拍手に包まれた。

左から，「ワイルドアームズ」開発プロデューサーの福島 孝氏，シリーズ作曲家のなるけみちこ氏，シリーズ プロデューサーの本村健太郎氏。本村氏からは，現在開発中のスマートフォン版ワイルドアームズに関しては，今年中に続報を届けられるとのこと

【GAME SYMPHONY JAPAN PREMIUM CONCERT Vol.7 〜ワイルドアームズ〜】曲目一覧

・第一章
荒野の果てへ
WILD ARMS
希望
荒野の渡り鳥
冷たい闇(ダンジョン)
クリティカル・ヒット!
Win!
Battle M-BOSS
世界にひとりぼっち
勇気(ダンジョン)
一攫千金!
驚愕
修道院
迷いの路
街
アーデルハイド城
宿屋
古代文明博覧会
悲鳴を上げる世界
破壊と喧噪のあとに
Power fighter
哀しみ断ち切って
葬列

・第二章
渡り鳥が集う水辺
世界を支える力
エルゥの村
キシュムの炎
緊張の一瞬 (レディハーケンのテ ーマ)
海上の偽装結婚式
あれれ? (ゼットのテーマ)
探し物は長閑な海辺に
荒波を越えて (バーソロミューの テーマ)
子供だなんて思ったらお嬢様?! (ジェーンのテーマ)
ナイトクォーターズ
滅びの讃歌
暗黒の聖母
孤高の世界
あいのきせき
ロディの仲間たち
空を駆る鳥 (エマのテーマ)
走れ亜精霊

・第三章
天を突く魔塔
星の海へ
Battle MOTHER
Battle ZEIK
アースガールズは頑張ったもんね
灰燼に帰す
ここからはじまるプロローグ
旅立ちの朝
姫巫女の想い
荒野の果てへ 〜新たなる旅路へ〜
青空に誓って
戦鬼

「アークザラッド」コンサートでは，

オリジナルスコアでの生演奏が20年越しに実現

　夕方からの公演は，“光と音のRPG”として記憶に残るファンタジーシミュレーションRPG「アークザラッド」シリーズ。2作にまたがる原作と同様に，第一作を第一幕，第二作を第二幕とした二幕六章構成でゲームの世界観を再現する，“交響組曲”としての演奏がなされた。
　なお，今回の公演は，22年前にアレンジャーを担当した奥 慶一氏の手によるオリジナルスコアでの公演となる。まさしく，ファンにとっても，関係者にとっても，待望のコンサートというわけだ。

「アークザラッド」単独でのオーケストラ公演は初めてとのこと

　最初の一曲は，TVCMでも使われたことで多くの人の記憶に残っているであろう「アークザラッドのテーマ」。これから始まる冒険にワクワクを感じさせるような勇壮なマーチの調べが流れ出すと，自然と来場者の表情に笑みが浮かんでいった。

　飛空艇に乗って世界各地を飛び回るタイトルなだけに，楽曲は各土地を思わせるバラエティに富んだモノに。ジャンルも同様，シンフォニックはもちろん，タンゴ調や民族音楽，さらにはエレキギターが加わってのロック調と幅広く，来場者を飽きさせない。

シャンテが歌う「MusicMan」は生歌で披露。しっとりとした雰囲気がホールに充満していった

　幕間のトークコーナーでは，「アークザラッド」シリーズで企画，原案，ゲームデザインを手がけた土田俊郎氏と，T-SQUAREのリーダーにしてシリーズの作曲家である安藤正容氏が登壇。
　ゲーム音楽を手がけるのが初めてだったという安藤氏は，テーマ曲こそ「ハリウッド映画のイメージで」スッと出てきたそうだが，たくさんある街の楽曲には頭を抱えたと振り返り，それを裏付けるように土田氏も楽曲のコンセプトを「世界旅行をしている感じを出したいということで，いろんな国のテーマ曲を無理にお願いしました」と苦笑い。このやりとりに，来場者もつられて笑顔となっていた。

「アークザラッド」シリーズで企画，原案，ゲームデザインを担当した土田俊郎氏（左）と，シリーズの作曲を手がけた安藤正容氏（中），指揮者の志村建一氏（右）

　「アークザラッド」といえばバトル曲の多さが記憶にあるが，その理由として土田氏は「一回のバトルが長く，それを繰り返すゲームなので，場所や状況などで曲を切り替えることで，飽きずに遊んでもらいたいという狙いがあった」と説明。なお，リブートとなるスマートフォン版でも安藤氏の手による楽曲が聴けるとのことなので，ファンは楽しみにしていよう。

【GAME SYMPHONY JAPAN PREMIUM CONCERT Vol.8〜アークザラッド I＆II〜】曲目一覧

交響組曲「アークザラッドI＆II」

・第一幕「アークザラッドI」
第一章「アークの旅立ち」
アークザラッドのテーマ
全ての始まり
父，ヨシュア
アーク
戦鬪1
アークデーモン
精霊
戦鬪2
勝利のファンファーレ

第二章「精霊の宿る国々」
エリア移動
スメリア
ミルマーナ
アララトス
グレイシーヌ
アリバーシャ
ニーデル

第三章「暗黒の支配者復活」
危機一髪
謁見の間
戦闘9
Finale 〜Vox Dei
別れ
Departure
Ending

・第二幕「アークザラッドII」
第四章「エルクとリーザ」
オープニング
四将軍
地下牢
西アルディア
空港
戦闘1
リーザとの出会い
戦闘2
エルク

第五章「ロマリア王国と英雄たちの戦い」
ヤゴス島
浜辺
MusicMan
思い出
戦闘5
ミリル
リーザ
戦闘3
父，ヨシュア
ロマリア城
四将軍戦闘

最終章「崩壊〜明日へ」
戦闘9
怒り
Opening
ラストバトル
エンディング
アーク
明日へ

進行役はムスメ。魔王軍宮廷音楽部も演奏に加わった，

「勇なま。」10周年コンサート

　この日の3公演のトリを務めたのは，破壊神となり勇者をやっつけて世界征服を目指す「勇者のくせになまいきだ。」（以下，勇なま。）シリーズの10周年を祝うコンサート。
　それだけに，感動ひとしおな前の2公演とは違う，一風変わったワクワクする雰囲気に。なにしろ，予ベルが鳴り終えたとたん，スピーカーからは「ようこそ，導かれし破壊の神々よ！」とムスメからの通信音声が流れ出したのだからビックリ。
　その後もムスメからの通信はたびたびあり，茶目っ気（というか毒っ気）たっぷりにコンサートを進行していった。

コンサート中は，ムスメは姿を見せなかったので，かわりに来場者特典のパンフレットとミニ色紙をどうぞ

　「勇なま。」といえばリコーダーや鍵盤ハーモニカなど，小学校にある楽器を使っているのが特徴だが，この日はバリバリのプロが演奏（しかもリコーダー奏者はノールトホルン国際リコーダーコンペティション2位の中村栄宏氏 。公式サイトはこちら）。それだけに，素朴でありつつもハイクオリティな響きがホールに満ちあふれるという，不思議な空間を生み出していた。
　さらに，コンサート後半では，坂本英城氏が代表を務めるノイジークローク所属の作曲家で構成された“魔王軍宮廷音楽部”も演奏に参加。ゲームと同じメンバーによる演奏を，生で聴けた貴重な機会ともなっていた。


　トークコーナーでは，3作目以降の作曲を担当した坂本氏，シリーズプロデューサーの山本正美氏，シリーズディレクターの大橋晴行氏（アクワイア）が登場。山本氏によるシリーズの歴史を遊び心（というか悪ふざけ感）たっぶりに紹介したパワポ芸は，来場者に大受け。しかも山本氏と坂本氏の出会いは，「将棋を教えてもらいたくて会社に来てもらった」ことだという衝撃の事実までが暴露されたのであった（もちろんマジメな挨拶もあったけど）。

左から3公演の司会を務めた女優の結さん，シリーズプロデューサーの山本正美氏，シリーズディレクターの大橋晴行氏，作曲家の坂本英城氏

【GAME SYMPHONY JAPAN PREMIUM CONCERT Vol.9 〜勇者のくせに10周年！なまいきシンフォニーの調べ〜】曲目一覧

・交響詩「勇者のくせになまいきだ。」
すべてのはじまり
こんかいのお題
さわやかな朝のダンジョン
おだやかな夕暮れのダンジョン
なごやかな夜のダンジョン
なまいき勇者あらわる
魔王は，どこにいればよろしいか？
魔王を守れのテーマ
みごと勇者を撃退
エンディング 〜素晴らしき地下帝国〜

・交響詩「勇者のくせになまいきだor2」
すべてのはじまり or2
Mawoo!地図
俺はリリスを離さない
終わりなきゆうなま
あのつるはしにつるはしを
トカゲおとこが叫んでる
大ピンチな魔王or2
BUG CRASH
魔王の願いが叶うころ

・交響詩「勇者のくせになまいきだ:3D」
すべてのはじまり: 3D
手のひらの世界
はじまりはいつもダンジョン
ダンジョンは上々だ
勇者たちに明日はない
トビラが開いたら
ツルハシと魔王と
魔王を守れのテーマ：3D
みんなで喜んだのに
眠る魔王
悪のトライアングル
ファイナル・ギャザリング!
ミラクル・ダンジョニスタ！
来たるべきセカイ

・交響詩「V!勇者のくせになまいきだR」
魔界より魔ごころをこめて
魔王のへやで悪巧み
そっと悪夢にこんにちは
正義を蹴散らして悪をしめすのだ
物語を超えて今日も明日も
さよならの向う側から
崩れゆくひとかけらの夢
空と生命のあいだに
紡がれた想いは散らばって
忘れ去られた勇者たちは
錆びついた記憶と凍てついた希望と
新世界カンタービレ

最後は出演者と来場者が一緒になって，10周年をお祝いしての記念撮影。なんともアットホームなエンディングとなった

GAME SYMPHONY JAPAN公式サイト