ドイツ,ハノーバー市で現地時間2009年3月3日に開幕した,IT関連製品見本市,「CeBIT 2009」。その初日にIntelは全世界の報道関係者を対象に会見を行い,32nmプロセス技術の現状を発表するとともに,これから同社が市場投入するソリューションの活用事例を披露した。
Clarkdaleのモバイル版となるArrandaleを搭載したノートPC
本セッションの主役となったのは,
米国時間2月10日に公開された ,32nmプロセス技術を採用したCPU群だ。「Nehalem」(ネヘイレムもしくはネハレム)マイクロアーキテクチャに基づく32nmプロセス世代「Westmere」(ウエストミア,開発コードネーム)のグラフィックス機能統合型CPU,
「Clarkdale」 (クラークデール,同)と
「Arrandale」 (アランデール,同)の量産出荷は,2009年末までに始まる見込みとなっている。
Intelでヨーロッパおよび中東,アフリカ地域を統括するChristian Morales(クリスチャン・モラリス)副社長は,「Nehalemアーキテクチャをメインストリーム市場にまで浸透させるには,32nmプロセスへの移行がカギを握る」と述べたうえで,45nmから32nmへとプロセスを移行することにより,
従来製品と同じパフォーマンスであれば,リーク電流量を5分の1以下に低減できる
同じリーク電流量であれば,パフォーマンスを14〜22%引き上げられる
2007年9月にSRAMテストチップの生産で立ち上がった32nmプロセス技術は,急速に成熟が進んできた
と,32nmプロセス技術のメリットをアピール。2007年9月にSRAMテストチップの製造からスタートした32nmプロセス技術が,わずか2年でCPUを量産できるまでに成熟したことが,32nmプロセス版CPUの投入を前倒しした要因の一つであるという。その証拠,といわんばかりに,Clarkdaleと,そのノートPC向けモデルとなるArrandaleのデモを披露してみせている。
1970年代のプロセス技術と比較すると,32nmプロセスではトランジスタ数が1000万倍も集積度を上げ,一方で価格は1000万分の1まで下げられるようになったというスライド
Nehalemマイクロアーキテクチャのロードマップ。Intelは,32nmプロセス世代のClarkdaleとArrandaleを,Nehalemアーキテクチャの拡張版となる「Westmere」アーキテクチャの製品と位置づけている
WestmereアーキテクチャのデュアルコアCPUにグラフィックス機能を統合したCPU,Clarkdaleの実動デモが披露された。左がそのシステムだ
※ムービーファイルへのリンク
Morales副社長。手に持っているのはNehalemアーキテクチャをベースとするXeonプロセッサ,Nehalem-EPのダイだ
またMorales氏は,「Nehalem-EP」という開発コードネームで知られる次世代Xeonプロセッサのダイ(die,半導体そのもの)も報道関係者に公開。「これまで,何台ものサーバーを連係させた『クラスタサーバー』を用いなければ(実用的な速度で処理)できなかった(クラス負荷の高い)レイトレーシング処理を,Nehalem-EPベースのデュアルCPUサーバーならラクラクこなせるようになった」と,Nehalem世代における優れたエネルギー効率,そしてパフォーマンスの高さをアピールした。
Nehalem-EPシステムの活用事例として,2-wayのNehalem-EP搭載システムによるレイトレーシングのデモも行われた
Barrett会長が積極投資へ踏み切った背景を語る
2月11日の記事 や
3月2日の記事 でお伝えしているとおり,Intelは先に,32nmプロセスの製造拠点を整備すべく,70億ドルという投資を決定している。
その背景には,「2年ごとに製造プロセス技術の進化と,アーキテクチャ改良を繰り返す」という,Tick-Tock(チック・タック)モデルを堅持することで,世界的な経済不況下においても,技術の進歩を鈍化させることなく,ムーアの法則を維持したいという考えがあるようだ。
深刻な経済危機にある現在も,積極的な投資を続ける姿勢を示すBarrett会長
発表会で登壇したIntelのCraig R. Barrett(クレイグ・バレット)会長は,「IT産業は,たびたび訪れた経済危機にも,技術革新の歩みを止めることはなかった」として,現在の深刻な経済状況においても,技術革新を追い求める姿勢を崩さない姿勢を明らかにする。
もっとも,半導体関連ベンダー各社が,設備投資や次世代プロセスへの移行を保留するなか,Intelがとった強気の戦略が吉と出るか凶と出るかはまだ分からない。32nmプロセス技術の熟成はもちろん,今後のWestmere世代CPUが,いかに速やかに浸透していくかにかかっているといえそうだ。
本文とは直接関係しないが,CPUパッケージの小型化と省電力化が図られた組み込みシステム向けプロセッサ,「Atom Z5xx」シリーズも公開されたので,同CPUを搭載するシステムの写真を載せておきたい