Intel in Akiba 2009 Summerの会場となったベルサール秋葉原
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Intelの日本法人であるインテルは,2009年7月11〜12日の2日間,毎年恒例となりつつある夏のエンドユーザー向けイベント,
「Intel in Akiba 2009 Summer」を東京・秋葉原で開催した。会場となったのは,7月10日に正式オープンしたばかりのイベントホール,「ベルサール秋葉原」。中央通り沿い,以前は日本通運ビルのあった場所で,長らく工事の行われていたビルの1Fだ。
秋葉原で最も人通りの多い交差点に面したイベントスペースということもあり,例年以上の来場者を集めていた雰囲気の本イベント。本稿では,セッションや展示機から,4Gamer読者の興味を惹きそうな話題をピックアップしてお届けしたい。
34nmフラッシュメモリ採用のSSDはまもなく登場
Lynnfield発表時には「お詫びすること」がある?
天野伸彦氏
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さて,インテルのイベントといえば,「神様」こと天野伸彦氏のセッションがいつも人気となるが,その天野氏は,「春の時点で,そのタイミングで述べてはいけなかった『Core i5』『Core i3』というブランドを口走ってしまった」ことが社内で問題になったそうで,「前のイベントで大事件を起こして社内で問題になった。お詫び行脚をして,ようやく今回のイベントに出させてもらうことができた」と今回のイベントにいたる顛末を紹介。今回のセッションで掲載するスライドが,すべて広報担当者のチェック済みであることを断ったうえでセッションをスタートさせた。
今回のスライドは,広報担当者の「検閲済」だそうだ
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大小さまざまなメーカーが乱立するSSD市場だが,IntelのSSDにはさまざまなアドバンテージがあると天野氏
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そのテーマは大きく分けると,SSDと,次世代CPU群。2009年夏を迎え,カタログスペックでIntel製SSDを上回る製品は多く登場してきているが,それでも「IntelのSSDはランダムリードの性能やウェアリングなどの点で他社製品を上回っている」と,天野氏はIntel製品の特徴をアピールする。「SSDの速度はシーケンシャルリードで比較されることが多いが,IntelのSSDはランダムリードの性能が高い」(天野氏)。
一般的なPC用途では,シーケンシャルリードよりもランダムリードが多く,実際の性能ではIntel製SSDのほうが優れているという。「まだ若いモン(後発製品)にゃ、負けられネェ」(※示されたスライドより原文ママ)そうだ。
PCではランダムアクセスが多用されているとして,天野氏は「Mobile Mark 2007」のワークロードを示したグラフを引用。ランダムアクセス性能の重要性をアピールした |
ランダムアクセス性能が発揮される例として示されたのがこのグラフだ。ただこれ,Webサーバーの性能テストのものなので,PCの性能とは必ずしもイコールではないかも |
34nmプロセス技術で製造されるフラッシュメモリを搭載したSSDが,まもなく量産開始になるという
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また,SSD製品では,「現行モデルは50nmプロセスのNANDフラッシュだが34nmプロセスの製品がまもなく登場する」と予告。その外見は「検閲済み」で,ボカされているが,スライドからも見て取れるとおり,「銀色になると思う」と天野氏。業界筋によれば,34nmプロセス版でも,基本性能や容量に大きな変化はないようだが,長期間に亘(わた)って利用してもよりパフォーマンスが下がりにくいチューンがなされているようなので,その登場に期待したいところである。
Lynnfieldは,メモリコントローラがデュアルチャネルになることや,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が95Wになること,トータルのシステムコストが低くなることなどが特徴とされた
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もう一つの話題,次世代CPUについては,
北米時間6月17日に公開された新しい製品命名ルールを,来場者にあらためて説明。2009年後半の市場投入が予定されている「Lynnfield」(リンフィールド,開発コードネーム)は,上位モデルがCore i7,下位モデルがCore i5と分けられることになることを強調する。
ちなみに,今回の命名ルール変更は,「パソコンに詳しくない人にとっては分かりやすく,詳しい人にとっては分かりにくい」(天野氏)。会場に詰めかけた“詳しい人”達に向けて,氏は「プロセッサナンバーで見てもらったほうがいい」とアドバイスしていた。
Lynnfieldは,Hyper-Threading Technologyの有無やL3キャッシュ容量で,Core i7/i5の名称が分かれる可能性や,LynnfieldのTurbo Boost Technologyが,シングルスレッド動作時は最大で5段階引き上げられる可能性が示唆された
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なお,氏によると,Lynnfieldの発表時点で,何か「お詫び」することがありそうだという。詳細は明らかにされていないが,「普通に使っている人には,ほぼ影響ない」と断られていることからすると,Lynnfield,もしくは対応するチップセット「Intel P55 Express」(以下,P55)のマイナーなエラッタ,といったところだろうか?
7月9日の記事でお伝えしているとおり,ASUSTeK Computerは,現状のP55マザーボードが,USB周りと,C-State周りの不具合を抱えていると述べているので,ひょっとすると,発表時点ではこのあたりが100%は直らないのかもしれない。
各社がLynnfieldマザーボードを展示
製品レベルのサンプルもちらほらと
会場では,大手マザーボードベンダーや秋葉原のPCショップがブースを構え,さまざまなデモや展示を行っていた。とくに注目を集めていたのはP55マザーボードだったが,これらは,製品に近い雰囲気のものや,一目見て開発途上版であることが分かるレベルのものなど,完成度はまちまち,といったところだ。
COMPUTEX TAIPEI 2009の時点と比べて,ぐっと製品版に近づいた印象のGIGABYTE TECHNOLOGY製マザーボード「GA-EP55-UD5」。電源周りが24フェーズから12フェーズに半減したり,DIMMスロットが6本から4本に減ったり,フレームバッファが削除されたりと,より現実的な仕様になった |
MSIのハイエンドP55マザーボード「P55-GD80」。こちらも COMPUTEX TAIPEI 2009の展示機からはずいぶんと様変わりした。冷却機構が新規に搭載されただけではなく,オンボードのスイッチ類がタッチパネルに切り替わった点も要注目といえるだろう |
Intelのフラグシップ製品シリーズ「Extreme」で共通の黒色基板を持つDP55KG
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そんな展示機のなかで,異彩を放っていたのが,筆者の記憶する限り初公開のIntel製マザーボード「DP55KG」だ。これは,開発コードネーム「Kingsberg」(キングスバーグ)と呼ばれていた,P55マザーボードのフラグシップモデルである。
フラグシップの証であるドクロマークを持ったDP55KGだが,よく見てみると,そのドクロマークの隣に,フラットケーブル用と思われる謎のコネクタが,そして,電源部のすぐ近くにはUSBポートが見て取れる。ブースにいたIntel関係者に用途を聞いても,「分からない」という回答しか得られなかったので,果たしてこれらで何ができるのかは不明だが,いろいろなギミックが仕込まれている可能性は感じ取れよう。
写真でドクロマークの右に見えるのが謎のコネクタ。「PCH XDP」とある。デバッグポートだろうか |
PCケースの内部に向かって,標準タイプAのUSBポートが設けられている。インテルいわく「ブート用では?」とのことだった |
S58X7型,とされるShuttleのマザーボード。どう見てもIntel X58 Express搭載製品ではない
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もう一つ,「Shuttle S58X7型」というタグが付けられていたマザーボードもなかなか興味深い。製品型番自体は「Intel X58 Express」チップセットを搭載する現行製品と同じなのだが,チップセットは1チップ構成で,しかもヒートシンクの搭載されていないチップの型番を見ると,「FH55」と刻まれているので,これはデスクトップPC向けのグラフィックス機能統合型CPU,「Clarkdale」(クラークデール,開発コードネーム)対応の「Intel H55 Express」搭載マザーボードだろう。
マザーボードのI/Oインタフェース部にはDVI-IとHDMIのコネクタが見える(左)。そして。マザーボード上には「FH57」という刻印が
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以上,市場で大きな成功を収めた「Core 2」世代から,Lynnfield世代へ移行するのだという,インテルの意気込みが強く感じられるイベントだったといえる。今をもってなお,Lynnfieldの発売時期は明らかになっていないのだが,こうしてインテルが予告する以上,そう遠くない将来に登場することは想像に難くない。
近々PCの刷新を考えているという人には,Intel/インテルの動向を注視しておくことをお勧めしたいところだ。
GIGABYTE TECHNOLOGY(左)とMSI(右)はLynnfieldのライブデモ――といっても文字どおり「動いていただけ」だが――を行っていた。CPUクーラーは「銅柱入り」(インテル)だが,背は非常に低い
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