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【山本一郎】今を生きる! あなたの心にお届けする「ハーツ オブ アイアンIII」ブルガリア繁盛記(後編)
切込隊長 / アルファブロガーにしてゲーマー。その正体は,コンテンツ業界で今日も暗躍(?)する投資家
切込隊長:茹で蛙たちの最後の晩餐 |
いろいろと大変なんだよ,おっさんゲーマーは!
しかし,あきらめずにデータを発掘していたところ,仕事のファイルに混ざってプレイメモが出てきました。そう,凝り性のこの私が残した克明なメモが。25時間という時間をかけてプレイした私の人生そのものを記したメモが出てきたのです。やれ嬉しや。
これをもとに,ブルガリアの健闘を読者の皆さまに少しでも伝えるため,原稿を書き始めたわけです。
その後も,第三子は生まれるわ,会社は事業分割するわ,猪瀬直樹は都知事辞めるわと,半年以上も経過してしまいましたが,ようやく,その後のブルガリアについてお話しできるようになりました。
もちろん「その後って,どの後?」というもっともな疑問を持つ読者もいると思いますので,下に一応あらすじは書きましたが,詳しくは2013年3月13日に掲載した「ブルガリア盛衰記 前編」を読んでください。
前編のあらすじ
東欧制覇に意欲を見せる,ヨーロッパ随一の微妙国家,ブルガリア王国。
ブルガリア国民はヨーグルト片手に結束を固め,宿敵ルーマニアへ奇襲攻撃を敢行し,これを屈服させ,石油生産力とわずかばかりの工業力を手に入れた。しかし,生産性は増大したものの,それを支える資源産出量が不足しており,これでは国が大きくなっても社会が富まない。安全も保障されない。
隣国や東欧各国にスパイを送り込んで敵情を視察し,資源をたんまり溜め込んでいると思われたハンガリーに「おまいの顔が気に入らないから」という些細な理由で宣戦布告。しかしハンガリーの抵抗は激しく,そうこうしているうちにドイツを盟主とする枢軸国のメンバーになってしまった。
ドイツと戦争する力などあるわけないブルガリアは休戦に追い込まれ,あとには貧乏な国だけが残った。このまま自転車操業となるのか。明日はどっちだブルガリア。
【山本一郎】「ハーツ オブ アイアンIII」ブルガリア繁盛記(前編)
「Hearts of Iron III」英語公式サイト
資源がなくて本格的にヤバイ
泣く泣くハンガリー戦線から撤収したブルガリア。汚い裾で涙をふくものの,いつまでも寝転がってはいられません。AI任せにせず,ちまちまと優良な条件の貿易を選び出して希少資源の確保に励み,工業力の確保に血道を挙げます。
ここにきてルーマニアの石油生産が若干軌道に乗り,ささやかな余剰物資になってくれました。ちょっとした中戦車と,もうしわけ程度の迎撃機ぐらいしか石油を使わないですからね,ブルガリア軍って。
次の戦争では,工業力以前にマンパワーが激しく不足することが予想されるので,今のルーマニアに必要なことは人海を必要としない高い効率の戦闘能力です。敵を技術力で上回り,戦術眼をさらに磨いて一人百殺(無理ですが)の精神で戦い抜くしか方法はありません。
「難しいなら,領土拡張しなきゃいいじゃん」という読者もいるでしょうが,そんな人は,この時代の狂気をもっと肌で感じる必要があります。隣のドイツやソ連からささいなことで言いがかりをつけられ,戦争を仕掛けられ,領土を奪われ,村は燃やされ,国土は蹂躙されるのです。そうなればもちろん,国家は滅びます。国家を率いるからには,国民を守る安全保障について考え抜き,対策を立てなければなりません。
現代社会で領土拡張のために戦争を仕掛けるのはきわめてマレですが,第二次世界大戦の頃は必ずしもそうではありません。史実でもゲームでも,国力は領土であり人口であり,力あるものだけに安全が保証されたのです。
微妙国家であるブルガリアは,常に大国の意向に翻弄される存在です。そうでない運命をブルガリア人が切り開くためには,然るべき戦力を整え,より良い同盟に加わり,生き残りるために自力で戦線を維持できる能力を身につける必要があるのです。
といった理屈で,気に入らない隣国に言いがかりをつけて戦争を始めたわけですが,対ハンガリー戦では,先方の危機意識が高まった挙句,より大手の同盟に加入されてしまったため,戦争の損害だけが手もとに残りました。つまり,素早く敵を殲滅し,降伏を引き出せなければブルガリアに栄光は訪れないということです。以上,お分かりいただけましたでしょうか。
そういうわけで,新たに「おまいの顔が気に入らない」と難癖をつけたユーゴスラビアに焦点を当てましょう。ちなみに,前編でルーマニアを占領したブルガリアは,恐ろしいことにベッサラビアの高地でソ連の皆さんと対面することになりました。ソ連怖いんですけど。
一応,お情け程度の砲兵つき歩兵が塹壕掘って陣を構えていますが,万が一ソ連と戦争でも発生したら8時間(ゲーム内時間)ほどで壊滅させられ,首都ソフィアまでソ連軍のフリーラン状態が発生してしまうでしょう。
何気に枢軸入りしたハンガリーも,たぶん私達が嫌いなんでしょう,国境線に分厚い軍隊を配置してニラみを効かせています。ちょっと,こんなに平和を愛するブルガリアに銃口を向けるなんて,どういうつもりですか?
かくして,ブルガリア王宮は意を決しました。気に入らない隣人の排除へ向けて軍勢を動かしたのです。ユーゴスラビアにはブルガリアのスパイが次々入り込み,我が物顔で情報を漁ります。クロアチア方面には,工業力が配置されていたり資源が出たりしますが,希少資源が7200で,鋳鉄が6000という感じ。まあ,ブルガリアの資源数年分の赤字を埋められる程度ですが,貴重であることに違いはありません。
戦争開始は,1939年4月にしました。ドイツがまさにポーランド戦を開始するかもしれない時期の直前を選んだのは,対ポーランド戦で忙しいドイツの関心がユーゴスラビアには向かないと思ったからです。国王は,宮殿で宣戦布告の勅命を発令しました。
国境に砲火が鳴り響きます。行商人などに扮していたブルガリア歩兵師団が工兵を引き連れて山岳地帯を越え,無警戒のユーゴスラビア守備隊に襲い掛かります。戦争です。
破竹の勢いで進軍するブルガリア軍は,夏の終わり頃にはマケドニア,コソボ,セルビアを制圧。快速兵団を仕立てたブルガリア軍に包囲殲滅され,ユニット解体に追い込まれるユーゴスラビア軍ですが,やがてクロアチア方面の軍勢がやってきて体勢を立て直し,ボスニア近郊に防衛線を築いてニラみ合いが始まりました。ヤバイ,真面目にやらないと大変なことになるかも。
しかし,ルーマニアとハンガリーという二つの戦争を戦ってきたブルガリア軍は精強でした。地道に補充してきた中戦車師団を,突破に防御にと柔軟に使い分け,動員の完了していないユーゴスラビア軍を木っ端微塵にしていきます。
もっとも,あまりぼやぼやしていると枢軸陣営がユーゴスラビアに軍を進めるかもしれないので,全力です。気合と根性でユーゴスラビアを屈服させるのだ,ブルガリア!
早い段階で,ブルガリアは補充に必要なマンパワーが尽きました。損害を受ければ回復する手段はありませんが,ほんのわずかに先進的な中戦車の装甲があるじゃないですか。浸透せよ。迂回して孤立させよ。
あらゆる戦術的な技巧を駆使して,ついにベオグラードを解放。続いてスプリト,ノヴィサド,オシエクほか主要都市にブルガリア王国の旗が翻り,総崩れとなったユーゴスラビア軍は補給線を断たれて包囲され,次々に解体されていきました。
勝利です。ユーゴスラビアも奮戦しましたが,ブルガリアの質と量,そして巧緻な戦術の前に崩れ去り,降伏。ユーゴスラビアはブルガリア領となりました。よしよし。
ちなみに,ドイツによるポーランド侵攻はまだ始まっていません。これじゃ「欧州の戦争は,ブルガリアが引き起こした」と後世の歴史家から糾弾されそうですが,気にしません。あーあー,何も聞こえない。
資源がなくて超絶マジヤバイ
ブルガリアはユーゴスラビアの首都ベオグラードを占領し,同国が保有していた資源を確保しました。しかし,それはいずれ尽きるストックです。
予測によれば,国内の資源は3年8か月ほど先に枯渇します。その間,少しばかり増えた工業力とリーダーシップを振り分け,次の成長に賭けて投資を続けていかなければなりません。国が拡張しているのに,その大きさを維持するために必要な資源が枯渇してしまうという悲しい自転車操業がブルガリア王国の現状です。助けてほしいよ,ホント。
北ヨーロッパではドイツが戦端を開き,あっという間にポーランドが踏みにじられ,モロトフ・リッベントロップ協定が締結。ポーランドはドイツとソ連に分割されました。力のない国家の悲しい末路です。ブルガリアがそのような運命に陥ることは,何としても阻止しなければなりません。ヨーグルト食って,気合を入れ直します。
マンパワーが枯渇し,貿易によるギリギリの運営を余儀なくされる貧乏国のブルガリアですが,戦力を歩兵(自動車化歩兵),中戦車,迎撃機に限定してドクトリンの改良と内政技術の革新に邁進しました。それでもドイツやソ連,イタリアといった周辺の先進国とは,時代が下れば下るほど,技術力が突き放されていく宿命にあります。
微妙国のポテンシャルは乏しいのです。せめて有効な反撃法を駆使すれば,敵の攻勢を食い止められるかもしれません。
だが,前線がいくら粘っても,援軍がない限りいずれ物量に押し切られるのが戦争です。というわけで,自国を高く買ってくれる陣営を見つけることが課題かもしれません。どこかにいいの,ありませんかね? 英仏を中心にした連合国は貿易の面で有望ですが,地理的に援軍がやってくるまで時間がかかります。それになにより,ちょっと前に連合国はポーランドを見捨てたばかりじゃないですか。
なにしろ,ベストのタイミングで何らかの同盟に仲間入りしても,戦争の旗色が悪くなってその同盟が劣勢となっては,一緒に滅亡するだけです。また,先のハンガリーがまさにそうであったように,食われ始めてからドイツに駆け込むことも主体的な生き残り策とはいえません。我がブルガリアの脅威は排除できましたが,やがてドイツに指示されるがまま,ハンガリーは苛烈な東部戦線に駆り出されることになります。
さて,地図を見ると,ブルガリアの貿易は地中海に依存していることが分かります。幸いアドリア海に面した港を確保しましたが,ここでイタリアに事が起きると,辛うじて保っている資源確保の手段は失われ,ブルガリアは資源不足で倒産してしまいそうです。
ルーマニアとユーゴスラビアを抑え,欧州ではドイツ,フランス,イタリアに次ぐ国家に成長したブルガリアには,共産,連合,枢軸各国から関係改善のための使節がやってくるようになりました。領土は広がったものの,中身はスカスカですけどね。
結論は出ました。いきなりですが,前からギリシャが気に入らなかったんです。その理屈っぽいところがイヤでした。
かくしてブルガリア国王はまた新たな勅命を出します。ギリシャを打ちのめすのだ。奇襲だ。ブルガリア軍の主力が,ぞろぞろとギリシャ国境に集結します。
事前にスパイを送り込んで,政権を馬鹿にしたり,あいつヤバいっスよという誹謗中傷作戦を展開します。すべては戦況を有利にし,貴重な兵士諸君に損害が出ないようにするためです。
また,待ってもどうせたいした補充もないので,割り切った軍備に徹します。戦車師団の技術改良更新が終わり,可哀想なポーランドが滅んだところでおもむろにギリシャへ宣戦布告しました。
いつ攻めるの? 今でしょ! という死語を合言葉に,ブルガリア勢がアテネ目指して全力で攻め込みます。戦線が狭いために作戦立案に苦労しますが,そこは格下のギリシャ,ユニット数は揃っておらず,額に「戦争愛」のはちまきを締めたブルガリア兵の前に平押しに押されて壊滅してゆきます。
ところが,その戦況を見て,なぜかイタリアがギリシャに宣戦布告。どういうことなの……? 頑張って戦争を勝利に導こうとした瞬間,アテネがイタリア軍海兵隊に陥落させられるという悪夢に襲われました。ふざけんなイタリア。なに火事場泥棒してんだよ。ギリシャ確保するのにアテネなしとか,どういう意味があるのよ。ギリシャが貯めこんだ資源は全部アテネにあるんだぞ。おのれイタリアめ。おまえなんか風邪ひいちゃえ。
立て,ブルガリア国民よ! 次の時代に繁栄をつなげ
資源がない,資源がない,大変だ。それもこれも,国力が上昇し,その旺盛な資源需要をすべて国営の工場が賄っているからいけないのです。ですから,これを民間に任せ,その代わり資金を得る(税金を払わせる)形で国の負担を軽減させることで乗り切れないでしょうか。
熟考,そして熟考。思案の果てに出した結論は,
陸軍の近代化,そしてリストラ
もうね,これですよ。少ない戦力で戦線を維持し,安全保障の条件を満たすには,精鋭化させるしかないんです。徴兵制(ドラフト)から志願制へ。軍規を改善し,プロ化にシフトして,少ないマンパワーと経費で広い戦線を守れるドクトリンに切り替えていくしか方法はありません。
幸い,ルーマニアの石油によって燃料には事欠かないため,貿易でなんとかほかの資源を調達して生産を保てるまで,燃料を食う迎撃機と中戦車を増強します。
さらに自動車化歩兵を中心にした遊軍を準備し,奇襲があっても即応できる布陣を心がけます。戦地を横断する道路やインフラ整備に乗り出し,航空劣勢が戦線の崩壊に至らぬようレーダーを設置。航続距離の短い迎撃機のために,ハブ型ではなく碁盤状に小規模空港を建設していきます。
軍隊のリストラにより,軍隊を支える物資の生産が軽くなりました。この間,宣戦布告されたら即死の極みといった風情ですが,タイミングよく独ソ戦が始まったため,今が体制強化のチャンスです。歩兵師団7個,旅団20個が解体され,それを補うように中戦車,迎撃機を量産します。
そして,中堅国の切り札,原子力研究とミサイル発射試験場の建設に着手。やっぱり,必要なのは抑止力ですよ。攻めてきたら撃ち込むぞ,という気概ですよね。ゲームにはまったくといっていいほど抑止の概念はないんですけど,気持ちですよ,気持ち!
さらに,空母と駆逐艦に絞った研究とドクトリンの開発にも着手します。通商こそ,ブルガリアの生命線ですから。
ドイツの,そしてソ連の暴力に倒れた欧州諸国の避難先として,ブルガリアは欧州で安定した影響力を持たねばならないんです。は? ルーマニア? ユーゴスラビア? ギリシャ? 何言ってんの,我々は彼らを圧政から解放した正義なんだぞコラ。
必然的に,我が国の前線はスカスカになってます。思った以上に前線に軍隊がいません。ユニットを解体したので,余ったマンパワーが損害を受けた部隊に補充され,少しは近代的な軍隊になりつつありますが,ドイツやソ連の物量を真正面から受け止めるだけの戦力はありません。
共産,連合,枢軸という世界の三極から中立を保ちつつ,さらなる領土拡大も視野に入れてチャンスをうかがっていたら,なんだかイタリアが超頑張ってるじゃないですか。アフリカで旧フランス勢力を駆逐したうえに,何とイギリス本土に上陸。あっという間にイギリス本土を制圧してしまいました。何この不思議大戦。
しかも,黒海から地中海全域にかけて,なぜかソ連やイタリアの軍艦や潜水艦がうろうろしていて超ヤバイ。こんな機雷だらけの地中海にしたのは,誰の仕業なの。
いずれにせよ,連合国は欧州からつまみ出され,いまやアメリカ様とオーストラリア,カナダぐらいしか,まともな戦力を有さない状況です。
ミサイル発射場を多数整備し,資源供給増大の研究も充実させ,改革の成果を実感しつつ国富を積み上げ始めたブルガリア。虎視眈々と戦局を見つめます。
うお,ヤバイ。思ったより崩壊早いぞ枢軸側。そろそろブルガリアも枢軸に宣戦布告して,イタリアに対する積年の恨みを晴らしまくるときでしょうか。でも,いま宣戦布告すると地中海のイタリア海軍にブルガリアのシーレーンをぶった切られてしまうんですよね。それに,イタリア陸軍は今のところ無傷だし。
いやー,参戦したいんすけど,勝てないし,犠牲が大きすぎるでござるよ。
躊躇。
この躊躇がブルガリアの,いや世界の命運を分けました。この「チャンスなんだろうけど,最後まで勝ち切る見通しが立たない」は,ブルガリア王宮を常に支配する強いプレッシャーです。それに,仮に枢軸に宣戦布告をしてある程度の領地を確保したとしても,ドイツ降伏後にソ連が中立国ブルガリアに宣戦布告してくる可能性はマキシマム。
といって,ブルガリアが枢軸に加担しても,ドイツ軍を打ち破ったソ連軍はブルガリア王国など簡単に灰燼に帰さしめるでしょう。
うおー,ちょっと待って。こんなたかだか2か月半かそこらで枢軸一気に壊滅するとか思ってなかったっすよ。焦るブルガリア王国を嘲笑うかのように,ソ連は欧州を赤一色に染め上げます。
これって,放っておくとソ連がVP(ビクトリーポイント)を全部ガメて,共産陣営の勝利に終わってしまうのではないですか。世界は共産主義となりました,めでたしめでたし,とかぶっちゃけなんのためにブルガリア王国が頑張ってきたのか分からないですよこれは。ヤバイヤバイ。
意を決して,ブルガリアは外交の一手を踏みました。
そう,ブルガリア決死の連合国入りです。盟主イギリスが息も絶え絶えに香港に亡命政権を築いて復興の時を待ってますが,その背後にいるアメリカは日本との戦争にほぼ勝利し,中国国民党政権や満州国にまでその勢いを伸ばしています。このアメリカと組むことさえできれば,ソ連がブルガリアに攻め込もうという意図を封じることができるかもしれません。まさに,起死回生の一策です。
ブルガリア外交部は,崩壊に瀕したイギリスに関係強化の使節をそっと送ります。そして,ある程度の関係改善が見込める段階になって,アテネやティラナを憎きイタリアから奪取するべく,声高らかに宣戦布告したのです。
そして成長国家定番の病理,パルチザン祭が発生。おまえらのためにこっちは頑張ってるんだ。反乱起こしてねえで,おとなしくしてろ |
アメリカ様が日本を完全制圧したようで,大量の「併合しますた」の報告が。さすがはアメリカ様,できる人は言うことが違う |
しかし連合国入りすれば,いずれ専制君主制を捨て,議会制民主主義の導入を連合国に求められるでしょう。そして,ルーマニア,ギリシャ,ユーゴスラビア諸国によるイギリス型の連邦制へとシフトするはずですが,それも仕方ないことです。
そうこうするうちに,こちらがせっかくいくつかの都市を奪ったイタリア半島をソ連が制圧。黒海からやってきた輸送船がイタリア領アフリカ,そしてイギリス本土へ陸軍を送り込んでいく姿が見えます。壮観です。
凄まじい勢いでイギリス本土がソ連の手に落ち,なぜか連合国盟主のイギリスは本土を回復しました。ソ連の手によってイギリスが主権回復って,大丈夫なんですかね,この世界。
ブルガリア国境にはソ連軍のユニットがうず高く積まれています。明日宣戦布告されれば明後日には全戦線崩壊してもおかしくない状況です。勝ち目なし。
この,「ソ連の完全勝利」というフィナーレを阻止するためにブルガリアができることは,欧州戦線にアメリカを引き込むこと。すなわち,連合国入りのあとにソ連に対して宣戦布告をするという決断です。
ですが,それは築き上げてきたブルガリア王国が,ふたたび戦場となることを意味します。ソ連との戦闘の最前線を担うために,多くのブルガリアの若者達が戦場に屍をさらすことになります。
しかも,ブルガリアに勝てる戦いではありません。アメリカからの援軍がやってくるまで,二か月以上も精強なソ連軍との戦いを耐え抜かなければならないのです。極限まで減らした常備軍,そしてその間,温存してきたマンパワー。かつて文字どおりゼロだったマンパワーは,いまや700を超えています。
兵役期間の変更や,民間主体の経済に切り替えてからというもの,若者達は平和を謳歌し人生を楽しんでいます。指導者として,彼らを再び戦場に送り込むのは辛い。ちょっと前まで,ギリシャ人の顔が気に入らないとかいって戦争吹っかけてた指導者が,相手が強くなると途端にチキンになる心情を,精神の奥まで噛み締めて,私はソ連への宣戦布告をあきらめ,ゲームとしての敗北を選びました。
おめでとう,ソ連の皆さん。本当に強かったよ。でもブルガリアはブルガリアで,激動の時代を生き抜いたのです。そして,このあと訪れるのは厳しい冷戦の時代と,ソ連のコメコンに組み入れられた欧州諸国です。その中で数少ない民主主義陣営として,そしてソ連の隣国として,ブルガリアは21世紀へ向けての一歩を踏み出すことになるのです。
いやー,しびれました。ソ連め,来るなら来てみろ,手持ちの核ミサイルを全部撃ってやる,とマウスに手を乗せたまま5年間あまり。これこそが赤ボタンに手のかかった,冷戦の緊張感というヤツでしょう。
って,そういうゲームじゃないんですけどね,HoI3。最後に独裁を捨て民主主義に切り替えたので,王宮の前に集まった国民の,国王万歳の合唱が聞こえてくる……ような気がします。ありがとう,ブルガリア。でもいいんだ,世界が平和なら,それで。
■■山本一郎■■ 言わずと知れたアルファブロガーで,その鋭い観察眼と論理的な文章力には定評がある。が,身も蓋もない業界話にはもっと定評がある。ゲーマーとしても知られており,時間が無いと言いつつも,膨大に時間を浪費するシミュレーションゲームを愛して止まない。しかし、前編の掲載から約10か月。いくら投げやりで適当な本コーナーでも,文字通り“異例”の後編掲載となりました。正直に言うと,後編の掲載は途中から諦めていて,適当な理由(ネタ)で原稿を落とす代わりに,他の話題の記事を書いてもらいたいだとか,担当編集的にはそんなことを考えておりましたし,実際にそういう提案もしてました。それがまさか,いまさら後編の原稿が届くとか,まさに「インド人もビックリ」という表現に相応しい。変なところで律儀です,山本さんってば。……ってか,頼みます,マジで(泣)。――というわけで,原稿取り立てという名の戦(?)いはこれからも続くのであります。読者の皆様におきましては,本連載を今後とも生暖かい目で見守って頂ければ幸いです |
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