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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第21回「殺られる前に殺れ! 殺人カーレース『デス・レース』が襲来!(その4)」
代表作が「モータル・コンバット」に「バイオハザード」ときたら,彼がゲームシネマ界のトップランナーであることは誰の目にも明らかだろう(ウーヴェ・ボル監督本人を除く)。
さて,そんなポール・W.S.アンダーソン監督の最新作が,11月29日(土)に公開される「デス・レース」である。この作品は,B級映画の巨匠として有名なロジャー・コーマン氏が製作し,1975年に公開された「デスレース2000年」のエッセンスを抽出し,新たに作られた作品であり,厳密に言うとシネマゲームでもゲームシネマでもない。
しかし,デスレース2000年が「グランド・セフト・オート」をはじめ,のちに登場するゲームへ影響を与えているとも言われているほか,今回のデス・レースでも随所にゲームっぽいテイストがちりばめられている。では,いったいデス・レースとはどんな作品なのか? というあたりを,久々に筆者の相棒である灸怜太と共に語っていこう。
ゲーム好きのアンダーソン監督がゲーム世代に向けて贈る作品
というワケで,今年一番デスいデス映画「デス・レース」についてなんデスけども。
ジャンクハンター吉田(以下,J):
いきなりデスデスとうるさいよ!
灸:
とりあえず吉田さんは,3週にわたって現役最強のゲームシネマ監督ポール・W.S.アンダーソン監督について語ってきたわけですが,ここはやっぱり11月29日(土)に公開される彼の最新作「デス・レース」についても触れなきゃいけないですよね!
J:
なんかそういうと,前回までのオレの原稿は全部,前振りだったみたいだな……。
灸:
ま,細かいことは気にせずに。
今回のデス・レースは,1975年に公開された「デスレース2000年」という,カルト映画のリメイクなんですね。
J:
それは前にもちょっと触れたよ。
デスレース2000年は,B級映画界の巨匠ロジャー・コーマン氏による奇跡の傑作なんだよな。
灸:
はい。この映画のポイントは,レース中に人を轢き殺したら得点になるという設定ですよね。
ファミコンですら影も形もなかった1970年代の作品にしては,かなりゲームっぽい設定だよね。逆にこの設定がいろんなコンピュータゲームに影響を与えてきたともいえる。あの「グランド・セフト・オート」の原点の一つに,この映画があるともいわれているし。
灸:
登場人物のキャラも立ちまくっていて,これまたゲーム的なんですよね。初見の人は確実に驚くでしょう。
J:
ウェスタン美女のカラミティ・ジェーンとか,ナチス女とか,ヤバい感じのキャラがイッパイ出てくるからねぇ。
灸:
それぞれのキャラに合わせたクルマのデザインも秀逸だし。なんというか,“黒いチキチキマシン猛レース”みたいですよね。
J:
それをアニメじゃなくて実写でやったというのが強烈だったなぁ。
灸:
でも今回のリメイク版デス・レースでアンダーソン監督は,全く違ったアプローチを試みています。一番大きな変更点は,旧作ではニューヨークからロサンゼルスまでアメリカ大陸を横断するという殺人ラリーレースだったんですけど,今回は刑務所内でのレースに変更しているんですよね。
J:
舞台は近未来の民営化された刑務所。ジェイソン・ステイサム扮する主人公が無実の罪でその牢獄に入れられ,優勝したらシャバに出られるという条件で,命がけのレースに挑む……ってなストーリー。
灸:
そして今回のポイントは,人を轢くのではなく,クルマ同士で殺し合うという設定ですよね。
ゲームで言えば「デストラクション・ダービー」とか,あのへんのテイストに近いんじゃないかな。
灸:
おお,ソニー・コンピュータエンタテインメントの「洋ゲーやろうぜ!」第1弾ソフトでしたね。でも,アメリカにはもともとそういう競技が実在するんですよね。
J:
そうそう。実際にやってるんだよ。クルマをひたすらブツけ合って,動かなくなったら負けみたいな。
灸:
いかにもアメリカらしいですね(笑)。でもデス・レースは武器を積んで攻撃し合うんで,ゲームでいえば「ツイステッドメタル」とか「ビジランテ8」に近いのかなって思います。
J:
確かに! でもツイステッドメタルシリーズのイカれたマシンデザインは,どちらかといえばデスレース2000年に近いかもね。
実際に映画を観てみると,またちょっと事前の印象とは違うんです。何よりも「剣マークの上を通過すると武器が使えるようになり,盾マークの上を通過すると防御アイテムが使用可能になる」というアンダーソン監督考案のゲームチックなルールがあって,これはもう完全に,“黒いスーパーマリオカート”なんじゃないかと。
J:
ショートカットできるコースもあるし。要するに,現代のゲーム世代直球な感じに生まれ変わっているわけだ。
灸:
アンダーソン監督自身がゲーム好きというのもあるでしょうけど,現代の観客に合わせていった結果なんでしょうね。デス・レースは全米にネット中継されているという設定もありますけど,これのイメージは最新のエクストリームスポーツのようだし。
J:
あのランキング画面は笑えるね。完全にESPNあたりの中継番組のパロディになってる。
灸:
もはやあそこまで行くと,シュワルツェネッガー知事の映画「バトルランナー」を彷彿とさせますよ!
J:
確かにそうかもなぁ。設定的にはクルマを使用した「バトルランナー」のリメイクといっても通じる部分があるし。
灸:
そしてブラックコメディ的なパロディ部分は,デス・レース2000年からのエッセンスを盛り込んでいる,と。
J:
まぁ,デス・レース2000年は設定のわりに本編はユル〜い感じで,あのテイストは最近の若い世代には合わないかもしれない。
今時の子供にファミコンの「元祖西遊記 スーパーモンキー大冒険」をやれといってもムリでしょうからね。
J:
プレイしながら寝るだろうなぁ。……って,例えがおかしいよ!
まあなんだ,デスレース2000年のファンは,今回のリメイクにいろいろと言いたいこともあるだろうけど,アンダーソン監督のアプローチは悪くないと思うんだよね。だってリメイクじゃないもん。殺人レースのエッセンスをコーマン氏からオフィシャルに譲ってもらって,自分の映画にしちゃっているわけだからね,でも……個人的にはあの結末に納得いかないけどもさ。
灸:
まぁまぁ,公開前なんでそのあたりの話はやめておきましょうよ(苦笑)。ただ,ゲーム世代の監督が,ゲーム世代のためにアレンジした感じなのは確かだと思うんで,ゲームファンは機会があったらぜひ! ってところで。
ところで,主役のジェイソン・ステイサムなんですけど……。
J:
……今回はジェイソン・ステイサムの話をするはずだったよね?
灸:
そうなんですよ! ステイサムはゲームとの関わりが深いんですよ!
J:
うーん,これまた長くなりそうだから,次回にあらためて掘り下げていこうかね。
ドブ漬けゲームスープレックス(21)
ニンテンドーDS
「もえたんDS」(アイディアファクトリー)
38歳にもなったというのに,秋葉原に勤めている映画とゲームをこよなく愛する,暑苦しくてむさ苦しいメタボリックなオッサンが,今回は萌えゲーをプレイ! ほらやっぱ,食わず嫌いせずに毎週プレイしたゲームをレポートしていくからには,そういうジャンルにも手を出す必要があるのだ。
この「もえたんDS」は,英単語を覚えることを目的としたエデュケーションソフトだ。以前,とある映画誌のゲームコーナーで紹介するために,3時間ほどプレイしたことがあるのだが,そのまま放置していた。
だが先日,海外のジャーナリストと,ポストプロダクション作業に入っているとある有名ゲームの“ゲームシネマ”タイトルに関してやりとりをしていたところ,先方からメールに「ヘイ,ヨシダ! オマエは英単語の綴りが間違っているからビジネス文書は英語で書いてはいけないぜ! ベイビー!」と送られてきたため,悔しくなって勉強し直そうと思ったところ,手元にあったのがこのソフトという次第だ。
自宅のある板橋から池袋へ向かうバスの中でプレイしていたところ,「あの人,もえたんのゲームやっているっぽいね」と,カップルがヒソヒソ話をしていた。聞こえているんだってばさ,ネエチャン! でも恥ずかしくないぜ,ベイビー! と思ったんだけど,バスを降りてふと思った。なぜ,もえたんのゲームって,あのネエチャンは分かったんだろう,と。一緒にいたカレシが持っていたのかなぁ。
「もえたんDS」公式サイト
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