レビュー
GPU PhysX専用のGTS 250も搭載したGTX 275カードを試す
EVGA Geforce GTX 275 CO-OP PhysX Edition
GPU PhysX対応タイトルの数を考えるに,相当ニッチな市場に向けた製品であるのは明らかだが,実際のところ,その挙動,そして使い勝手はどんな案配なのか。今回は,販売代理店であるシネックスから国内販売が予定されているという実機をエヌビディアジャパンの協力により入手できたので,使ってみた結果をレポートしたい。
動作クロックがリファレンスよりやや低いGTX 275と
メモリ容量の少ないGTS 250を1枚のPCBに
GTX 275 CO-OPを別の角度から | |
2009年7月6日のレビュー記事より,リファレンスデザインを採用したGalaxy Microsystems製のシングルPCB版GTX 295カード「GF PGTX295/1792D3 DVI2」。ご覧のとおり,GTX 275 CO-OPとよく似ている |
GPUクーラーを外してみると,外部給電コネクタ側にGTX 275,NVIDIA SLI(以下,SLI)ブリッジコネクタ側にGTS 250を搭載するのが分かる。
PCI Express 2.0対応のブリッジチップ「nForce 200」の先に両GPUが接続される仕様なのはGTX 295と同じだが,HDCPなどインタフェース周りを制御する外部チップである「NVIO2」を必要とするのはGTX 275だけ――GTS 250では内蔵されている――ため,GTX 295と比べると,NVIO2の1チップ分,基板デザインには余裕が生まれているのを確認できよう。
また,GTS 250側と組み合わせられるメモリチップが6枚となった関係で,メモリ周りに若干のスペースが生まれていたりもする。
メモリチップが6枚? と不審に思ったかもしれないが,実際,EVGAの製品情報ページでも,搭載するGTS 250のメモリインタフェースは192bit仕様となっている。GPU PhysX専用なら,256bit仕様のフルスペックは必要ないという判断が働いたのではなかろうか。
ちなみにGTX 275 CO-OPが搭載する両GPUおよび組み合わされるメモリチップの動作クロックは以下のとおり。GTX 275のシェーダクロックだけ,リファレンスから1割弱引き下げられていたので,[ ]書きでリファレンスクロックを付記している。
《GTX 275 CO-OP:GTX 275 GPU》
- コア:633MHz
- シェーダ:1296MHz[1404MHz]
- メモリ:2268MHz相当(実クロック1134MHz)
- コア:738MHz
- シェーダ:1836MHz
- メモリ:2200MHz相当(実クロック1100MHz)
NVIDIAコントロールパネルで動作を制御
GTX 275シングルカードとのSLI構成も可能
つまり,「GTS 250 GPUを一切使わず,GTX 275 GPUにGPU PhysXも行わせる」ということも,一応はできるというわけだ。その意義については後ほど検証したいと思う。
なお,グラフィックスカードとしては,あくまでも「GTX 275 GPU搭載製品」なので,無理矢理GTS 250にグラフィックス処理をさせたりすることはできない。デバイスマネージャからGTX 275を無効化すると,表示がGTS 250に切り替わったりはせず,なにも映らなくなるので,この点はご注意を。
以上を踏まえ,今回は,以下の組み合わせでテストを行うことにした。太字にした部分は,以後,本稿でそう呼ぶという宣言になる。いろいろ紛らわしいが,ざっくり「:」(コロン)の前が「GPUの組み合わせ」を示し,後ろが「どこでGPU PhysXを行うかの指定」を行うものだと理解してもらえれば幸いだ。
- GTX 275シングル: None
GTX 275シングルカード。「SLIとPhysXの設定」からGPU PhysX無効 - GTX 275 CO-OP: None
GTX 275 CO-OPのGTX 275 GPUを利用。「SLIとPhysXの設定」からGPU PhysX無効 - GTX 275+GTX 275 CO-OP: 250
ブリッジケーブルでGTX 275シングルカードとGTX 275 CO-OPをつなぎ,「SLIとPhysXの設定」からSLIを有効化。また,同じく「SLIとPhysXの設定」からGTX 275 CO-OP上のGTS 250 GPUでGPU PhysX有効 - GTX 275+GTS 250: 250
GTS 275シングルカードとGTS 250シングルカードの組み合わせ。「SLIとPhysXの設定」からGTS 250シングルカード側でGPU PhysX有効 - GTX 275+GTX 275 CO-OP: SLI
ブリッジケーブルでGTX 275シングルカードとGTX 275 CO-OPをつなぎ,「SLIとPhysXの設定」からSLIを有効化。同じく「SLIとPhysXの設定」からGTX 275 CO-OP上のGTS 275 GPUでGPU PhysX有効。GTS 275 CO-OP上のGTS 250 GPUは利用しない - GTX 275 CO-OP: 250
GTX 275 CO-OPで想定される標準的な動作。「SLIとPhysXの設定」からGTS 250 GPU側でGPU PhysX有効(※グラフィックス描画はGTX 275 GPUが担当) - GTX 275シングル: 275
GTX 275シングルカードでGPU PhysXを利用するときの標準的な構成。「SLIとPhysXの設定」からGPU PhysX有効 - GTX 275 CO-OP: 275
GTX 275 CO-OP。「SLIとPhysXの設定」からGTS 275 GPU側でGPU PhysX有効。GTS 275 CO-OP上のGTS 250 GPUは利用しない
GTX 275シングルカード: NoneとGX 275 CO-OP: Noneでは,PhysXアクセラレーションを無効化することで,「GTX 275 GPU搭載グラフィックスカード」として,基本的な3D性能の違いを見る。
GTX 275 CO-OP: 250は,GTX 275 CO-OPというグラフィックスカードの最も正統な使い方になるが,ここではGTX 275+GTS 250: 250,あるいはGTX 275+GTX 275 CO-OP: SLI,GTX 275シングル: 275と,パフォーマンスを比較することになる。GTX 275+GTX 275 CO-OP: 250は,2-way SLIにGPU PhysXを組み合わせたリッチな構成,GTX 275 CO-OP: 275は,GTX 275 CO-OPカードでGTS 250にグラフィックス処理を任せたときの結果をそれぞれ見るものだ。
テスト環境は表のとおり。比較対象には,4Gamerで独自に,リファレンスクロックで動作するGTX 275およびGTS 250搭載カードを用意している。
CPU側の「Intel Turbo Boost Technology」は無効化する一方,「Intel Hyper-Threading Technology」は有効化したので,この点はあらかじめお断りしておきたい。
GPU PhysXの検証ということで,アプリケーションには,「Batman: Arkham Asylum」(以下,Batman)と,「3DMark Vantage」(Build 1.0.1)を用意。Batmanのテストに当たっては,同タイトルにおけるGPU PhysXの有効性を見るべく,2009年11月21日に掲載したテストレポートと,シーンを揃えることにした。具体的には下記のとおりだ。
- 「BENCHMARK」:ゲームに標準で用意されているベンチマークモード
- 「WAYNE MANOR」:実際のゲームプレイ,その1。風が吹き,それによってオブジェクトが動いたり,舞い上がったりするシーン
- 「BOILER ROOM」:実際のゲームプレイ,その2。Jokerによって改造され,屈強な肉体を持つ「Bane」と戦うシーン
Batmanでは,PhysX効果の度合いを「NORMAL」「HIGH」の2種類から選択できるが,今回は,より適用される規模の大きな「HIGH」を選択。解像度は1920×1200ドットで統一し,4Gamerのベンチマークレギュレーションで規定する「標準設定」と「高負荷設定」の2パターンでテストを行う。
先のテストレポートで対処方法を説明しているとおり,Batmanでは標準でフレームキャップが設定されている。今回は最低フレームレートを0,最高フレームレートを500へ変更しているので,この点もお断りしておきたい。
→「Batman:Arkham Asylum」に見るPhysX(前編)〜プレイムービーとスクリーンショットで“PhysXの現在”を確認
→「Batman:Arkham Asylum」に見るPhysX(後編)〜ベンチマークテストで理想的なPhysX環境を探る
一方,3DMark Vantageでは,PhysX周りの設定を有効化しつつ,「Performance」「Extreme」の両プリセットでスコアの取得を試みる。
GTX 275+GTS 250: 250には敵わないが
まずまず妥当なスコアを示すGTX 275 CO-OP: 250
また,GTX 275+GTX 275 CO-OP: 250のスコアが,GTX 275シングル: 275の2倍以上という高いものになっている点も特筆すべきだろう。
ただ,GTX 275+GTS 250: 250という,一般的なグラフィックスカード2枚を使ったSLI PhysXと比べると,GTX 275 CO-OP: 250が2割ほど置いて行かれているのも気になった。GTX 275 CO-OPグラフィックスカードに搭載されるGTX 275 GPUのシェーダクロックが低いとか,GTS 250 GPUのメモリインタフェースが狭められているとか,ブリッジチップを介した接続になっているとか,理由はさまざまに考えられるが,少なくとも,グラフィックスカード2枚を使ったSLI PhysXと同等のスコアを出せるわけではないということも,押さえておくべきではなかろうか。
実際のゲームプレイから,敵キャラクターの登場しないWAYNE MANORのスコアをまとめたグラフ3,4でも,傾向は基本的に同じ。GTX 275+GTX 275 CO-OP: 250のスコアが突出する以外は,BENCHMARKを踏襲したものになっていると述べてよさそうである。
そしてその傾向は,敵キャラクターが多数登場するBOILER ROOMでも変わらなかった(グラフ5,6)。
なお,ここまであえて触れてこなかったが,GTS 250 GPUを無効化したGTX 275 CO-OP: 275は,案の定という結果に落ち着いている。
念のため,GTX 275シングル: NoneとGTX 275+GTX 275 CO-OP: 250,GTX 275+GTS 250: 250,GTX 275 CO-OP: 250の4者で,BENCHMARKとWAYNE MANORではテスト開始後90秒,BOILER ROOMでは120秒ほどのフレームレート推移を見たのがグラフ7〜9だ。極端に上がったり下がったりすることはなく,GTX 275 CO-OPにおけるSLI PhysXが正常に機能していることを確認できる。
最後は3DMark Vantageだが,ここでは純粋に,SLI動作しているかどうかでスコアが二分する結果となった(グラフ10,11)。GPU PhysX無効時よりも有効時のほうがスコアが高いのは当然として,注目しておきたいのは,Batmanと異なり,GTX 275 CO-OP: 250より,GTX 275シングル:275のほうがスコアが高めに出ている点だ。もっとも,総合スコアにおけるGPU PhysX性能の占める割合が低いだけ,と言ってしまえばそれまでだが。
その価値を理解できる人向けといえる
GTX 275 CO-OP
また,すでにGTX 275カードを持っている人なら,GTX 275 CO-OPを加えると,PCI Express x16スロットが2本しか用意されていないSLI対応マザーボードでSLI+SLI PhysXを実現できる。SLI対応のmicroATXシステムなどでは有用ではなかろうか。
課題は一にも二にも,そんな対象者が果たして日本に何人いるのか,という点に尽きる。価値を理解できる人にとっては面白いカードなのだが,より多くの人に理解してもらうには,GPU PhysX対応タイトルの数があまりにも少なすぎるのだ。PhysX関連の記事を掲載すると決まって同じ結論になるのは申し訳ないが,GTX 275 CO-OPが輝きを放てるかどうかも,結局はGPU PhysX対応タイトルの拡充状況いかんによるだろう。
- 関連タイトル:
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Copyright(C)2008 NVIDIA Corporation
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