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プレイレポート
2本めの拡張パックで,広く深い歴史ストラテジーに
ヨーロッパ・ユニバーサリスIII イン・ノミネ【完全日本語版】
ついに完成を見たEU3
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進行はリアルタイムであるものの,随時ポーズ可能であり,進行速度も自由に変更できる。いわゆるRTSとはまったく異なり,アクション性のない純然たるストラテジーゲームである。
本作をもって,EU3エンジンのいわば“試行錯誤”はいったん完了し,これまでやや野放図な印象のあったEU3が,いたって当を得た仕組みにまとまった。
![]() 当然,日本も選択できる。ただし,リサーチの正確さと活躍可能性については要注意 |
![]() そ,それは時代がだいぶ違いませんか……? |
![]() マルチプレイも健在。マルチ専用のバランス調整やシステム変更も行われている |
![]() ゲームの設定は実に細かく管理できる。ただ,「イン・ノミネ」の追加要素が,これでオン/オフできてもよかった気はする |
プレイヤーはヨーロッパの勢力と論理が世界全域に拡大していく時代を眺められると同時に,やや大げさにいえば,その時代の雰囲気をも楽しめる。
そしてその過程で,勢力を拡大しなくてはならない恐怖と,拡大することによる恐怖の間で板ばさみになった専制君主達の,苦悩と決断を追体験することとなるだろう。この鋭くもシニカルなジレンマこそ,Paradox Interactiveの歴史ストラテジーファンが求めてきたものだ。
![]() ちなみに日本は神道一色の国。EU2では仏教と混在していたが,それが宗教対立になるのは何か違うと思ったものだ |
![]() 植民した先で何が採れるかは運次第。ゲーム展開の基本でありながら,ギャンブル要素が最も強い行動かもしれない |
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史実に沿った,ミッションオリエンテッドなプレイ
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ミッションそのものは,ちょっと違った形で「ヨーロッパ・ユニバーサリスII」にもあった要素なのだが,AIもまた,その国に設定されたミッションを達成しようとするのが「イン・ノミネ」の大きなポイントだ。他国のそれを参照することで今後の動向をある程度推測できるし,その国家特有の政策方針やミッションもあって,全体として各国の個性が強化されている。
![]() 宗教面での施政方針決定。これももちろん副作用付きだが,改宗成功率+8.0%は驚異的とすらいえる |
![]() プロヴィンスに対する施政方針の決定。プロヴィンス単位といえども,大きな選択が可能な場合も |
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反乱ルールの充実を筆頭に,国家の規模が大きくなることによるペナルティが厳しくなっているのも重要なポイントだ。大帝国が1回の海戦における敗北をきっかけとして,没落への道を歩み始めたりするといった“大国の興亡”も満喫できる。
![]() 反乱発生。反乱軍が,きちんと目的を持った存在として生成されているのが分かる |
![]() 反乱軍には指揮官がいる場合も。同程度の兵力で攻撃すると,負けムードが漂うことも |
![]() 反乱勢力との交渉。普通こんな条件は飲めない。反乱の種類によって要求も変化する |
きちんと固有の利益を追求するAI担当国
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必然的に考えるべき事柄は増えるものの,ゲーム全体の見通しの良さが格段に向上していること,操作の煩雑さをできる限り抑える設計もあって,プレイヤーは国家経営にまつわる,より真に迫ったジレンマと正面から向き合えるようになった。
![]() 海賊は大幅に強化されている。多重発生した海賊を退治するのは,ぽっと出の海軍国にはとても無理なくらいだ |
![]() 「哨戒」で海賊発生を抑止。なお陸地に接していて,海上補給の範囲内にある海域の艦隊には,損耗が発生しないようになった |
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また外交,とくに和平交渉において,AIはタフな交渉相手となっている。楽観的に見切り発車した戦争が泥沼の消耗戦へと発展していくさまは,実にParadox Interactive作品らしい魅力的な光景だ。
![]() 従来どおり,戦争を終わらせるには和平条約の締結が必須。軍事的に占領しただけで,領土の支配権が移ることは基本的にない |
![]() 以前に比べて敵国との和平はかなり辛くなっている。五分五分の状況で,こちらから提案する痛み分けが通る可能性は,ないと思ってよい |
情報の把握と操作は快適に
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選択できる国家の種類や,国家経営をサポートしてくれる宮廷顧問の職種が増えたり,国家の特徴を補強する国策の種類が追加されたりといった,拡張パックではお約束ともいえるデータ追加も,きちんと行われている。通りいっぺんの「拡張パック」であれば,これらこそが中心になるのだが,「イン・ノミネ」ではシステムの改善要素が断然大きい。データ追加はもちろん歓迎すべきであるものの,あくまで副次的なものに留まる印象だ。冒頭でも少し述べたとおり,なにより「EU3が完成した」ことのインパクトが,最も重要なのである。
![]() 戦闘画面は相変わらずシンプル。プレイヤーにできるのは撤退指示と援軍の投入程度だ |
![]() 一撃で敵軍を全滅させたところ。足の速い敵との不毛な追いかけっこは,だいぶ縮減された |
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パラド新世代エンジンとしても期待大
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むしろ,この上にギミックをまだまだ積んでいけるだけのポテンシャルを持ったゲームエンジンとして,本作がいったんの完成を見たことは,PCストラテジーゲームファンにとって福音とすらいえるだろう。
![]() 政体スライダーの効果は全面的に見直されている。イベントでうかつに「地方分権化」に進む選択肢を取ってしまうこともなくなった |
![]() 国策にも調整の手が伸びている。これまで定番だった選択肢が否定されているあたり,市場調査とゲーム改善の熱心さが分かる |
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少々値が張るのが泣きどころであるとはいえ,いままでParadox Interactiveの歴史ストラテジーを敬遠してきた人も,この機会にぜひプレイしてみてほしい。
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- ライター:徳岡正肇
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