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ASUSのサングラス型ディスプレイ「ROG XREAL R1」を試す。究極のゲーマー向けディスプレイはサングラス型か?
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ASUSブースでは,実機を試すことができたので,その様子をレポートしたい。
最大240Hz表示に対応したゲーマー向けサングラス型ディスプレイ「ROG XREAL R1」が登場
米国時間2026年1月5日,ASUSは,ゲーマー向けのサングラス型ディスプレイ「ROG XREAL R1 gaming glasses」を発表した。本製品は,サングラス型ディスプレイを手掛けるXREALと共同で開発されており,240Hzという高いリフレッシュレートに対応する有機ELパネルを採用するのが見どころとなっている。
ROG XREAL R1はARグラスではない
名称に「XREAL」とあるように,本製品はサングラス型ディスプレイの最大手であるXREALと共同開発した製品となる。正確にいうと,基本技術はXREALのものを,そのまま流用したといっていい。
ただし,あえてROGブランドを掲げた製品として発表したことからも分かるように,ゲーマー向けのカスタマイズを施してきたことがポイントだ。
まず,基本的な話に触れておくと,グラス本体でOSが動作していて,アプリやゲームをインストールして楽しむタイプの製品,いわゆるVRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)やARグラスと,ROG XREAL R1は明確に異なる。そういった機能はない。
ROG XREAL R1は,眼鏡型,あるいはサングラス型のゲーマー向けディスプレイという例えるべき製品だろう。
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使用するには,DisplayPort Alternate Mode対応のUSB Type-Cポートを搭載したスマートフォンやタブレット,PCと本製品を接続するだけ。
ゲーム機やゲーマー向けPC(ホスト機器)に,映像出力が可能なUSB Type-Cポートがない場合は,ROG XREAL R1に付属するドック「ROG Control Dock」とホスト機器を,HDMIケーブルやDisplayPortケーブルで接続したうえで,ドックとグラスを接続すればいい。
使い勝手は,まさにディスプレイそのものである。
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ROG Control Dockは,背面側にHDMI 2.0入力×2,DisplayPort 1.4入力×1,USB Type-C×1の4系統入力を備える機器だ。これに,最大4台までのゲーム機やPCを接続すれば,このドックを切換器代わりにして,ROG XREAL R1本体に映す映像を切り換えられる仕組みだ。
ドックのフロント側にもUSB Type-C×1があり,ここにROG XREAL R1を接続する。
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ROG XREAL R1のスペックを確認しよう。
映像パネルは,解像度1920×1080ピクセル(以下,フルHD)の有機ELパネルを,片眼ごとに1枚の計2枚採用してる。2枚合わせて横3840ドットの映像を表示できそうに思う人もいそうだが,同じ映像をそれぞれのパネルに表示するので,そういうことはできない。
画角は,対角で公称57度。ASUSによると,仮想的な画面サイズは「4m先に171インチ」だそうだ。
画素応答速度は,約0.01msと速く,最大リフレッシュレートは240Hzを実現。入力遅延は非公開だが,ASUSのスタッフは,「ゲーマー向けディスプレイと同等だ」と豪語していた。
M2P(Motion to Photon),すなわち,動きを検知して(※本機の場合は,ホスト機器が映像を出力して),それを目で見える映像として表示するまでの速度は,約3msだとのこと。
VR HMDではないのに,スペック情報にM2P値があることに驚くが,これは後述する「アンカーモード」を実現するためのものだ。
サウンドは,テンプル部分にあるBose監修の小型指向性スピーカーで再生する。
グラス本体にもドック側にも,ヘッドフォンやヘッドセットを接続する手段はなく,Bluetoothによる接続にも対応していない。もし,イヤフォンやヘッドセットと併用したい場合は,それらとホスト機器側を別途接続することになりそうだ。
バッテリーはないので,有線で給電しないと動かない。グラス本体に接続するケーブルはUSB Type-Cが1本だけなので,映像や音声と同時に,ホスト機器や付属ドックから電力をもらう方式だ。
そのため,たとえば市販のUSB Type-C to HDMIケーブルで,PCやゲーム機のHDMI出力とROG XREAL R1をつないでも,映像は表示できない。
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ROG XREAL R1の光学系
ASUSが,ROG XREAL R1で搭載した有機ELパネルは,1インチ未満のマイクロ有機ELパネル(以下,マイクロOLED)である。筆者の取材によれば,「0.55インチのソニー製」とのことなので,おそらく「ECX348E」だろう。
ROG XREAL R1では,マイクロOLEDを眼の前に配置するのではなく,レンズの上辺あたりに寝かせて配置し,表示面を下に向けたレイアウトとなる。
こうした光学系は,XREALのサングラス型ディスプレイ「XREAL One Pro」の光学系「X-Prism」とよく似ているので,これをそのままROG XREAL R1に流用したとみて間違いないだろう。
ちなみに,X-Prismという技術は,XREALによる論文発表時に「Flat Prism」と呼ばれていたものである。
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X-Prismは,長く使われてきた「Birdbath」光学系に変わる,新世代のXRグラス向け光学系になる。なお,注意したいのは,X-Prism光学系も,広義的にはBirdbath光学系に分類されることだ。それについては後述しよう。
従来のBirdbath光学系では,眼前に45度傾けた平面ハーフミラー(Polarization Beam Splitter,以下 PBSハーフミラー)を配置する必要があるので,どうしてもレンズ部分が前に突き出るような形となってしまっていた。一般的な眼鏡に比べると,一目瞭然の違和感が出てしまうのだ。
PBSハーフミラーの問題は,デザインよりも,ユーザーが見る仮想的な映像の表示位置が遠くなるため,「FOV」(映像の画角)が狭くなって,結果的に大画面表示に限界があること。
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この利点により,PBSハーフミラーを45度傾けなくても,映像を眼鏡のレンズ側にある凹面鏡に反射させられるようになったという。
PBSハーフミラーの設置角度は非公開だが,20度前後――水平方向を0度とすれば70度前後――といわれており,水平に対しては,かなり垂直に近い角度のイメージだ。
実際,前掲の図でも,PBSハーフミラーがかなり立っているのが分かる。これで光学系が外に突き出すサイズを,劇的に小さくできたとのこと。
PBSハーフミラーで反射された光は,眼鏡のレンズ側にある凹面鏡ハーフミラーへと導かれる。凹面鏡ハーフミラーは,ユーザーの眼に向けて映像を反射させるだけでなく,最終的な拡大光学系も兼ねる仕組みだ。
また,凹面鏡ハーフミラーには90度の円偏光プレート(Quarter Wave Plate,QWP)も仕込まれているので,凹面鏡で拡大反射した映像の光は,位相が回転するため,PBSハーフミラー方向に反射することなく,透過できるようになる。
このように複雑な光学設計により,周囲の情景は明るさが半分になるものの,マイクロOLEDからの映像光は,ほぼ減衰することなく眼まで運ばれるのだ。
画質は驚くほど良好。自動遮光機能も優れる
それでは,試作機によるインプレッションを述べていこう。
まずは,実感する画面サイズについて。筆者の率直な感想としては,ASUSが主張する「4m先に171インチ」は,やや言い過ぎという印象だ。
たしかに,公称スペックの画角が57度あると,計算上は,視距離4m相当で171インチになる。しかし,体感ではとてもそんな大画面には見えなかった。
画角57度だと,計算上は,視距離50cm/1m/2m/3mでは,それぞれ約21インチ/43インチ/86インチ/128インチとなる。この計算結果から,体感で最も近い値を選ぶなら,視距離1mの約43インチだ。
体感の画面サイズは,個人差があるとは思う。ASUSスタッフによれば,「体感画面サイズは,普段使っているテレビやディスプレイのサイズに引っ張られる」とのこと。
まさに筆者は,原稿書きPCの画面サイズが40インチなので,43インチくらいに見えたのかもしれない。
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逆にいえば,普段からeスポーツタイトルを23〜24インチ級のディスプレイでプレイしているeスポーツプレイヤーたちにとっては,ROG XREAL R1は,視距離50cmで約21インチに見える可能性がある。
eスポーツプレイヤーは,画面を一望できることを最優先して,20インチジャスト前後のサイズを好むと聞く。気になるeスポーツプレイヤーは,ROG XREAL R1の実機を試してみる価値はあるかもしれない。
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一方で,レンズの前の情景は,ARグラスのようにシースルーで見える。ただし,カメラ映像ではなく目で見ているそのままの情景なので,フルカラーかつ立体的だ。
映像表示自体は,普通に美しい。さすがはソニー製マイクロOLEDといったところか。発色も良好で,なにより黒や暗部階調のしまりもよい。コントラスト感も良好だった。
表示可能な色域は,sRGB色空間カバー率が約108%で,DCI-P3色空間カバー率は95%とのこと。ゲーマー向けディスプレイとしても及第点だ。ネイティブコントラストも100万:1と,自発光画素のOLEDならではのスペックである。
HDR10規格にも対応しており,一般的な映画コンテンツのHDR表示も可能だ。
ROG Control Dockと組み合わせれば,PCやPlayStation 5,Xbox Series X|S,Nintendo Switch 2のすべてに対応できる。
解像度はフルHDではあるが,この鮮明な描写力があれば,実用に不満はないと思う。
視認性についてもチェックしてみた。筆者の視力では,文字やゲージも普通に読み取れるレベル。文字類の視認性も40インチ程度の実感はある。
文字はきちんと読めたので,ROG XREAL R1でも,文書作成や表計算ソフトは使えなくはない,と思う。ただ,そうした細々とした作業であれば,もう少し大きい画面,すなわち画角が広いほうが,目の疲れを減らせるだろう。
繰り返しになるが,171インチもの大画面を見ている感覚ではないからだ。
とはいえ,少なくともゲーム画面上のアイテム名やゲージ類,数値といった文字情報は,きちんと読み取れるレベルではあった。短い使用時間ではあったが,ゲームプレイに支障はない感じだ。
シースルーで見える周囲の情景は,テンプルにあるボタンを押すことで,透明モードと半透明モード,遮光モード(※名称は筆者独自)の3段階に切り換えられる。
ただ。内部にハーフミラーなどがあることから,透明モードであっても,前方は若干暗く見える。
遮光モードにすると,目の前に眩しい光源があれば,ほんのり,その存在が分かる程度は見える。しかし,周囲が常識的な明るさであれば,ほとんど完全遮光に近い暗さとなる。
没入感を最高にしたいとか,表示映像の画質を最優先したいといった用途の場合は,遮光モード一択だ。
半透明モードや透明モードでは,表示映像の黒い部分が透明となるため,そこから周囲がシースルーで見える。また,それほど広くはないが,表示画面外の領域も,半透明や透明モードでは周囲が見えて,遮光モードでは暗く見えにくくなった。
遮光モードを自動(自動調光モード)にすると,眼前に明るい発光物がない限り,シースルー状態を優先する。眼前に明るい光がくると,遮光性能を強めて外光を極力遮断することで,映像表示を優先するような制御が行われる。これはなかなか賢くて,感心した。
無段階の自動遮光モードは,眼鏡側の前面中央にある照度センサーが得た輝度情報に応じて動作するとのこと。
バスや電車に乗っているときや公共空間にいて,ある程度,周囲の様子を気にしていないといけないときには,自動モードが便利だ。
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ASUSスタッフによると,同社がROG XREAL R1で採用した遮光機能は,電気変色材料技術(Electrochromic Technology)が使われているという。旅客機や自動車の窓の電子カーテンや調光窓などに使われている技術だ。
この技術は,構造的には液晶シャッターとよく似ており,ペアになる「酸化インジウムスズ」(Indium Tin Oxide,ITO)などの透明電極で,遮光できる素材を挟み込んで制御する仕組みとなっている。ただ,遮光素子は液晶シャッターではなく,イオンから電荷を受けとると不透明色に変色する素材を使う。
変色する素材には,酸化タングステン(WO3)を,対となる素材(※イオンの待避所)とには,酸化ニッケル(NiO)を使う。
酸化ニッケルは,イオンを失うと不透明になるが,酸化タングステンは,イオンを受けとると不透明になる。つまり,両素材が不透明化することで,光を遮るわけだ。
電荷を逆方向に弱くかければ,少し透明に戻る。さらに,電極を逆方向にかければ,今度はイオンが元の位置に完全に戻るので,両素材が透明になるという理屈だ。
ASUSスタッフによると,液晶シャッターを使わなかった理由は,電気変色であれば,透明化や不透明化の状態をセットすると,通電しなくてもその状態を維持できるためとのこと。つまり省電力性に優れるのだ。
この挙動,なんだか「Eインク」とよく似ている。実際,Eインクと同様に,電気変色の書き換え速度は,とても遅い。でも遮光用途には必要十分な性能なのだ。
ところで,試着したまま首を振ると,映像が視界から飛び出して見えなくなってしまうことがあった。これは,「たまたまアンカーモードになっていたからだ」とのこと。
ROG XREAL R1(およびXREAL One/One Pro)は,3軸自由度(3DoF)の加速度センサーを内蔵しており,この機能を活用して,映像表示を任意の位置に固定表示できるのだ。
たとえば,ROG XREAL R1で映像を現実にある机の上にロックした場合,首を動かしてデスク正面から横を向くと,視界から映像は消えて,デスク正面に向くと,再び映像は視界に入る。
ROG XREAL R1の表示を,あたかも物理的に存在するディスプレイのように活用できるわけだ。
余談だが,「ROG XREAL R1の表示解像度よりも高い解像度の画面を定義して,仮想的な大画面環境は構築できるか」と聞いてみたところ「それには対応していない」とのことであった。
XREAL製品なら,仮想ウルトラワイドモードがあるので,少々残念である。
加えて,「せっかく2眼で個別映像を見せられるのであれば,3D立体視の映像や対応ゲームはプレイできるのか」とASUSスタッフに聞いてみたが,「技術的には可能だが,今のところ,対応するかどうかは未定だ」とのこと。こちらも残念だ。
ROG XREAL R1は,日本での発売も予定しているそうで,発売時期は2026年2月頃を予定している。価格は未定だが,「現在の中堅有機ELディスプレイくらいの価格を想定している」とのことなので,10万円は超えてくるかもしれない。
ブースをうろうろしていたときに,「北米価格は700ドル以上」と,答えていたASUSスタッフもいたので,実際,そのくらいなのだろう。
筆者としては,使い方の面倒な情報端末としてのXRガジェットよりも,機能を割り切ったゲーマー向けサングラス型ディスプレイは,むしろ「あり」なんではないかと思う。発売が楽しみだ。
- 関連タイトル:
Republic of Gamers - この記事のURL:
(C)ASUSTeK Computer Inc.




























