テストレポート
写真で見る「ROG MAXIMUS XI FORMULA」。ASUSのゲーマー向けハイエンドZ390マザーボード
4Gamerではそれに合わせ,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)の「Republic of Gamers」(以下,ROG)ブランドに属する「ROG MAXIMUS XI FORMULA」の実機を入手することができた。
ROG(アールオージー)のMAXIMUS(マキシマス)は長く続く製品シリーズなので説明不要かもしれないが,あらためて簡単に確認しておくと,ROGブランドの最上位シリーズのみが冠する製品名だ。以前は「EXTREME」がオーバークロッカー向け,FORMULAがゲーマー向けのそれぞれフラグシップという扱いだったのが,最近ではEXTREMEがフラグシップ扱いになったため,FORMULAは「上から2番め」ということになるが,「ゲーマー向けのハイエンドマザーボード」なことは間違いない。
では,最新世代のゲーマー向けハイエンドマザーボードにはどんな特徴があるのか。写真を中心に,その製品概要を紹介していこう。
透過パーツを多用し豪華なルックスになったROG MAXIMUS XI FORMULA。スペック的には細かく改良が入る
冒頭でも簡単に触れたが,Z390はIntel 300シリーズチップセットの新しい最上位モデルとして「Coffee Lake-S Refresh」(開発コードネーム)ことデスクトップPC向け第9世代Coreプロセッサと同時に登場した製品で,既存の「Intel Z370」(以下,Z370)を置き換えることになる。Z370との違いは主に以下の2点だ。
- USB 3.1 Gen.2コントローラの統合:これまで外付けだったUSB 3.1 Gen.2コントローラをPCHに統合した。チップセットレベルで最大6ポートのUSB 3.1 Gen.2と最大10ポートのUSB 3.1 Gen.1(≒USB 3.0)に対応できる
- CNViの統合:IntelがCNVi(INtegrated connectiVity)と呼ぶ無線LANおよびBluetooth接続機能をPCHに統合した。マザーボード上にIntel製の「CRF」(Companion RF)モジュールを用意し,それをPCH側のインタフェース「CNVio」と接続するだけでマザーボードメーカーはWi-FiとBluetoothへの対応を実現できる。なお,CRFはオンボード以外にM.2ソケットに接続するモジュールとしても搭載可能な仕様となっている
実のところ,チップセットレベルでの新要素はこれしかないので,さっそくROGMAXIMUS XI FORMULAのチェックに入っていこう。
まずは外観だが,グラフィックスカードなど発熱の大きいパーツからマザーボードを守る機構で基板のざっくり半分以上を覆っている点や,バックパネル一体型のI/Oインタフェースを備えるといったあたりは,Z370搭載の従来製品「ROG MAXIMUS X FORMULA」と同じだ(関連記事)。ただ,見た目の印象はかなり変わった。
ROG MAXIMUS X FORMULAが採用していた「ROG RGB Armor」は,そのカラーリングがつや消しの黒をベースにしていた。それに対し,一方,MAXIMUS XI FORMULAでは光沢のある透明パーツを採用し,さらにその一部へフルカラーLEDを埋め込んだものへとROG RGB Armorのデザインが一新となった。そのため従来製品と比べて若干華やいだ印象がある。
一方で,ROG MAXIMUS X FORMULAから引き継いでいるオンボードのモノクロ有機ELパネル「LiveDash」は今回も使い勝手が高い。起動時にはPOST情報を表示でき,さらにWindowsの起動後にはASUSの同名ソフトウェアから「HARDWARE MONITOR」「IMAGE OR ANIMATION」「CUSTOM BANNER」という3種類の内容から選んで表示をカスタマイズすることができる。カスタマイズした例を下に写真で示しておこう。
ASUS NODEは,電源ユニットの制御や,PCケースに取り付けられた液晶パネルや有機ELパネルなどの表示管理をマザーボード上から行うための規格としてASUSが提唱しているものだ。ROG MAXIMUS XI FORMULA上にあるASUS NODE端子に対応ケーブルをつなぐことで利用可能になるという。
ASUSでは現在,パートナー企業に対してASUS NODE対応を呼びかけているところだそうで,対応製品の第1弾が間もなく登場する見込みとのことだ。
「ROG MAXIMUS VI FORMULA」以降のMAXIMUS FORMULAシリーズではVRM部の冷却用クーラーに液冷システムで知られるEKWBの液冷&空冷両対応ヒートシンクを採用し続けている。それは今回も変わらないが,ROG MAXIMUS XI FORMULAでは新しい「CrossChill EK III」に切り替わった。
原稿執筆時点でCrossChill EK IIIの詳細なスペックは明らかになっていないが,ROG MAXIMUS X FORMULA時代の「CrossChill EK II」と比べて冷却能力の向上は実現しているはずだ。
拡張スロットの構成はZ370搭載のMAXIMUS X FORMULAと同じ。つまり,
- DIMMスロット:4本(※DDR4-800〜DDR4-8533まで133MHz刻みで対応)
- PCIeスロット:x16 ×3,x1 ×1
(※x16スロットのうちCPUに近い2本は16+0レーンもしくは8+8レーンでCPUに直結。残る1本はPCHとつながっており,Serial ATA 6Gbpsポートの使用状況に応じて2もしくは4レーンに自動で切り替わる) - M.2スロット:(※いずれもPCIe Gen.3 x4接続とSerial ATA 6Gbpsに対応)
という仕様である。
DIMMスロット。グラフィックスカードとの干渉を避けるべく片側のノッチを外してあるのはASUS製マザーボードでお馴染みの仕様となる |
Serial ATA 6Gbpsポートは6基。使うのを4基以内に抑えると,CPUから最も遠いPCIe x16を4レーンで利用できる。5基以上だと2レーン接続だ |
しかも2基のM.2スロットは標準でヒートシンクが覆うため,2枚めのM.2接続型SSDを使うときの熱対策はぐっと容易になった。また,M.2モジュールを立てる仕様は省スペース性という点では悪くなったが,物理的にやや不安定で,またPCケース内で邪魔になりやすいという問題もあったので,ROG MAXIMUS XI FORMULAにおけるこの変更は歓迎できそうだ。
さて,このI/Oインタフェース部におけるトピックは,5Gbps接続対応の「IEEE 802.3bz」へ対応したLANポートを備えた点にある。
残念ながら対応するスイッチやハブの価格が高価なので個人宅での利用は現実的でないかもしれないが,将来に向けた備えとしては意味があるはずだ。
また,Z390においてコントローラを統合したのを受け,USB 3.1 Gen.2ポートはType-Aが3基,Type-Cが1基と増えている。Thunderbolt 3をサポートしないのは従来製品と同様だ。
そのほかはおおむねROG MAXIMUS X FORMULAを踏襲している。総じてFORMULAシリーズらしさを継承しつつ,細かくアップデートを果たした製品と言っていいのではなかろうかと思う。
ATX拡張電源端子は8ピン+4ピン構成。8ピン単独でも動作はする |
Wi-FiアンテナとSLI HB Bridgeブリッジが製品ボックスに付属していた |
Aquantia製の5Gbps有線LANコントローラを採用
一通り概観したところで,ここからはROG RGB Armorやヒートシンクなどを取り外し,基板上の主要なデバイスを見ていくことにしよう。
背面カバーを外すと,VRM部の背面側に熱伝導シートが貼ってあり,カバーがヒートシンクとして機能するようになっているのが分かる |
ROG RGB Armorを外したところ。CrossChill EK IIIとは別にチップセットにもヒートシンクが用意されていた |
というわけで基板の全景は下のとおりである。
他社のZ390マザーボードだとハイエンドモデルでさらに多フェーズ化している例もあるので(関連記事),それと比べると規模感はややおとなしい。
細かく見てみると,スイッチングデバイスにはパワーMOS FETを集積するVishay Semiconductors製パワーステージ「SiC639」を採用している。チョークコイルは低損失,低発熱と謳われる「MicroFine Alloy Choke」,またコンデンサにはニチコン製の「10K Black Metallic Capacitors」という並びだ。
MAXIMUS FORMULAシリーズでは定番だが,Extreme Engine Digi+による電源部と,CPUの電圧制御を行う「TurboV Processing Unit」(以下,TPU)により高度なオーバークロック設定が可能だ。
オーバークロック設定はUEFI(BIOS)上の「Extreme Tweaker」,あるいはASUS製のWindows用ハードウェア設定統合ツール「AI Suite III」に含まれる「Dual Intelligent Processor 5」(以下,DIP5)から行える。CPUやメモリのクロック,電圧といった一般的な設定のみならず,VRMのスイッチング周波数などマニアックな設定まで対応しているのが特徴と言えるだろう。
メモリの電圧制御にはASUS独自の「Digi+ ASP1103」を使っている |
ROG MAXIMUS XI FORMULAでTPUはマザーボード裏に実装されていた |
もう1つ基板上で注目しておきたいのは,前段でも紹介した「5Gbps接続の有線LAN」を実現する,米Aquantia製の「AQC111C」である。
残念ながら5Gbpsの有線LANに対応する製品を用意できていないため,「5Gbpsを体感する」ことはできなかったが,本コントローラは下位互換性が確保されているため,1000BASE-T LANコントローラとして利用することはできる。当面は別途搭載するIntelの「I219-V」と合わせて2系統の1000BASE-T LANコントローラとして使い,5Gbps対応のネットワーク機器が安価になったらAQC111Cを活用するといったことができるわけだ。
サウンド周りの仕様の詳細は手元に情報がないが,LSIの構成から見てそれほど変わっていないようだ。
そのほか気になる部分は以下,写真とキャプションで紹介してみたい。
CPUに近いPCIx 16スロットの近くにはPCIe用VRMと思われるチップ群がある。コンデンサやコイルはCPUのVRM部と同じ高性能パーツで固められていた |
AURA SYNC用と思われるLSIと,その近くにはCortex-M0ベースのSTMicroelectronics「STM32F072CBU6」がある。このあたりは最近のMAXIMUS FORMULAで共通の仕様だ |
ドライバのインストールは極めて簡単だが,「分かっている人」向け
マザーボードというハードウェアの紹介は以上だ。多機能かつ高度なオーバークロック機能を持つROG MAXIMUS XI FORMULAはマニア向けという印象を受けたと思うが,最近のASUS製マザーボードらしく,ドライバのインストール周りが極めて簡単になっている点はお伝えしておきたい。
ROG MAXIMUS XI FORMULAでは,Windowsのインストールが終わると,「Armoury Crate」(アーマリークレイト,装備品入り木箱)と「LAN Driver」のインストールを促すWindows 10の通知が自動的にポップアップする。
ここでインストールできるLAN DriverはI219-V用のほうだ。Aquantia製LANコントローラのドライバはこの段階ではインストールできない。
通知の[Install]をクリックするとLAN Driverがまずインストールされ,続いて,1000BASE-T LANかまたはWi-Fi接続でインターネットに接続しているならArmoury Crateのインストールも始まるようになっている。
何の説明もなしに英語版のポップが出てくるので「極めて不審」に思うかもしれないが,このポップアップは[Install]ボタンを押しても問題ないものであることを押さえておきたい。こういう重要なポップアップこそ日本語化してほしいところだが……。
Armoury Crateのトップ画面には広告などが表示されるので何のツールか分かりにくいが,これはドライバやASUS製ユーティリティアプリケーションのインストールおよびアップデートを行うツールである。
PCがインターネットにつながっていれば,2クリックでArmoury Crateをインストールすることができる。Armoury Crateを導入してしまえば,本文でここまで紹介してきたものも含め,ASUS製ツールはここから導入できる。びっくりするほど簡単である。
いきなりのポップアップなど,導入までいろいろハードルを乗り越える必要があるうえ,インストール時も気を付けないと必須のドライバやツール以外に「使わない可能性がけっこうある」サードパーティ製ツールが導入されてしまうので,お世辞にも「自作初心者に向いている」とは言えないが,「分かっている人」は便利に使えるように思う。
8コア16スレッド対応のデスクトップPC向けCoreプロセッサを待っていた人にとっては有力な選択肢になりそうな1枚だ。
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北米時間2018年10月8日,Intelは,デスクトップPC向けとしては初のCore i9であり,また8C16T対応モデルとなる「Core i9-9900K」など第9世代Coreプロセッサを発表した。発売日は北米時間2018年10月19日だ。
Z390搭載マザーボードがASRockとASUS,GIGABYTE,MSIから登場。ゲーマー向けモデル総まとめ
2018年10月9日01:01,ASRock,ASUS,GIGABYTE,MSIの4社は,新発表となった第9世代Coreプロセッサと既存の第8世代Coreプロセッサに対応するの「Intel Z390」チップセット搭載のゲーマー向けマザーボードを発表した。チップセットの進化がわずかなので見どころは少ないが,まとめて紹介しよう。
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Republic of Gamers
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(C)ASUSTeK Computer Inc.