ムービー
1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」
Froblinというのは,デモに登場するカエル型キャラクターのことで,3000匹ものFroblin達は,石を寺院に運ぶ仕事に従事している。
このデモでは,
- DirectX 10.1を生かしたグローバルイルミネーションやダイレクトライティング
- 4x MSAA(Multiple Sampled Anti-Aliasing:マルチサンプルアンチエイリアシング)
- HDRライティング
- HD解像度によるレンダリング
- テッセレーション
といった,ATI Radeon HD 4800シリーズならではの技術を採用。さらに,ユーザーの視点から近いキャラクターのみを,より高品位なディテールで描画するLOD(Level of Detail)技術や,より現実的な地形描画を3Dグラフィックスにもたらす地形処理技術「Terrainシステム」など,最新のグラフィックス技術もふんだんに利用されている。
Froblinsで採用される最新グラフィックス技術
DirectX 10.1では,頂点シェーダ(Vertex Shader)への入出力が,従来比2倍となる128bit×32個(※DirectX 10では128bit×16個)へ拡張され,より複雑な処理が可能になった。その一方,4x MSAAの適用が最低条件となり,描画負荷は確実に高まっている。
そこでFroblinsでは,LODにより,ユーザー(=プレイヤー)の視点に近いキャラクターや地形などを多ポリゴンで表現し,遠くのキャタクターなどはポリゴン数を減らして描画することで負荷の軽減を図った。
Froblinsのデモでは,キャラクターを160万/6000/900ポリゴンの3レベルで切り替えて描画する。下の直撮りムービーはLODのデモで,視点から見たキャラクターの位置(≒距離)によって,ポリゴン数がダイナミックに制御されているのが見て取れよう。
AMDは,800ストリームプロセッサを持つATI Radeon HD 4800シリーズのパフォーマンスをそうアピールする。
また,Froblinsデモでは,Terrainシステムと呼ばれる地形処理でも,このLOD技術とテッセレーションを組み合わせることで,複雑な地形表現と描画負荷の低減を両立させている。
AMDは,この“ポストプロセス処理を組み合わせたグローバルイルミネーション”を,特別に「Advanced Global Illumination System」と呼んで区別している。Froblinsでは,1ピクセル当たり260命令を活用し,自然な光源処理を実現しているという。
GPUによるAI処理が変える次世代PCゲーム
さて,Froblinsの最大の特徴であるAI制御については,「キャラクターそのもの」と「集団」の2段階で処理されている。Froblin達は互いにぶつからないよう進路を決めたり,働いたり,食事を摂ったり,休んだりといった行動を自分で決断するようにプログラムされている。また,デモでは,任意にFroblins達の敵となるゴーストを出現させられるのだが,ゴーストが現れた場合,Froblin達はゴーストから逃げるため,集団で進路を決めていく。その様子は下のムービーで示したとおりだ。少々見づらいが,地表に見える無数の矢印がFroblin達の進行方向になる。ゴーストの動きに合わせて矢印の向きがダイナミックに変化している点に注目してほしい。
デモにおける行動パターンは単純そのものだが,Froblinsのように3000体ものキャラクターを制御する必要がなければ,さらに多くのパターンを実装できるはずだ。
Froblinsのデモは,「プレイヤー以外のキャラクターを制御するため,CPUに頻繁にアクセスしなければならないのなら,ある程度のAI制御はGPU側でまかなってしまおう」というスタンスに見える。これは,GPU側で物理演算処理も行い,CPU側に緻密なAI制御を行なわせようとするNVIDIAとは逆のアプローチともいえるわけだ。2008年6月25日の記事でお伝えしているように,AMDはHavokの物理アクセラレーションを,まずCPU向けに最適化する方向で動いており,ゲーム物理はCPU側で処理されることになるからである。
CPUを持つAMDと,物理演算処理エンジンを持つNVIDIAが,自社の土俵でGPUの並列処理性をアピールすることは自然な流れ。あとは,ゲームデベロッパがどちらの手法を取り入れるかによって,次世代ゲームの流れは決まるといっていいだろう。
- 関連タイトル:
ATI Radeon HD 4800
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(C)2008 Advanced Micro Devices, Inc.