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  • AMD
  • 発表日:2008/06/19
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1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」
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印刷2008/06/27 17:01

ムービー

1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」

 AMDは,「ATI Radeon HD 4800」シリーズの発表に当たって,その機能とパフォーマンスを生かした新しいテクノロジーデモ「Froblins」(フロブリンズ)を用意した。下に示したのが,そのデモムービーだ。


 Froblinというのは,デモに登場するカエル型キャラクターのことで,3000匹ものFroblin達は,石を寺院に運ぶ仕事に従事している。
 このデモでは,

  • DirectX 10.1を生かしたグローバルイルミネーションやダイレクトライティング
  • 4x MSAA(Multiple Sampled Anti-Aliasing:マルチサンプルアンチエイリアシング)
  • HDRライティング
  • HD解像度によるレンダリング
  • テッセレーション

といった,ATI Radeon HD 4800シリーズならではの技術を採用。さらに,ユーザーの視点から近いキャラクターのみを,より高品位なディテールで描画するLOD(Level of Detail)技術や,より現実的な地形描画を3Dグラフィックスにもたらす地形処理技術「Terrainシステム」など,最新のグラフィックス技術もふんだんに利用されている。

Froblinsに利用された基本技術と先進技術。DirectX 10.1やテッセレータだけでなく,LODやTerrainシステムなどの最新技術が盛り込まれている
画像集#003のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」 画像集#004のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」

左がテッセレーションを用いていない場合,右が用いた場合におけるFroblinの皮膚表現。少ないポリゴン数で,より“カエルっぽい”表現が可能になる
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Froblinsで採用される最新グラフィックス技術


 DirectX 10.1では,頂点シェーダ(Vertex Shader)への入出力が,従来比2倍となる128bit×32個(※DirectX 10では128bit×16個)へ拡張され,より複雑な処理が可能になった。その一方,4x MSAAの適用が最低条件となり,描画負荷は確実に高まっている。
 そこでFroblinsでは,LODにより,ユーザー(=プレイヤー)の視点に近いキャラクターや地形などを多ポリゴンで表現し,遠くのキャタクターなどはポリゴン数を減らして描画することで負荷の軽減を図った。

LODを使ったポリゴン制御。赤いワイヤーフレームがより詳しいディテールで表現されるFroblinを示す。緑色のワイヤーフレームではポリゴン数が減っており,シーン全体の描画負荷を低減する
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 Froblinsのデモでは,キャラクターを160万/6000/900ポリゴンの3レベルで切り替えて描画する。下の直撮りムービーはLODのデモで,視点から見たキャラクターの位置(≒距離)によって,ポリゴン数がダイナミックに制御されているのが見て取れよう。


900ポリゴンから1600万ポリゴンまでテッセレーションレベルを切り替えながら,3000匹のFroblinたちを平均22fpsで動かせるのも,1TFLOPS以上の演算性能を誇るRadeon HD 4800シリーズならでは
画像集#009のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」
 「1フレーム当たり最大1800万トライアングルの描画でも常に20fps以上のフレームレートを維持し,すべてのオブジェクトに複数のシャドウマップを適用しても,3000匹のFroblins達を平均22fpsで動かせる。」
 AMDは,800ストリームプロセッサを持つATI Radeon HD 4800シリーズのパフォーマンスをそうアピールする。

 また,Froblinsデモでは,Terrainシステムと呼ばれる地形処理でも,このLOD技術とテッセレーションを組み合わせることで,複雑な地形表現と描画負荷の低減を両立させている。

AMDがFroblinsで用いたAdvanced Global Illumination System。オブジェクトの透明度や人間の視覚に合わせた補正をポストプロセス処理することで,ピクセル当たり260命令もの処理をこなしている
画像集#010のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」
 グローバルイルミネーションとポストプロセッシングによる光源処理も見物だ。例えば,光源を背にしたキャラクターが画面の最も手前にいる場合,その手前には光を反射するオブジェクトがないため,普通に処理するとキャラクターが真っ暗に見えてしまう。そこで本デモでは,(ポストプロセスで)ガンマ補正をかけることで,人間の視覚に近い明るさに調整することも可能になっている。
 AMDは,この“ポストプロセス処理を組み合わせたグローバルイルミネーション”を,特別に「Advanced Global Illumination System」と呼んで区別している。Froblinsでは,1ピクセル当たり260命令を活用し,自然な光源処理を実現しているという。

Terrainシステムによって,よりダイナミックな地形表現が可能になる。また,同じ光源でも,グローバルイルミネーションを使うことで,冬と春とで異なる印象になる
画像集#011のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」 画像集#012のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」

単純に「テクスチャをポリゴンに貼り付ける」のではなく,実際の凹凸もポリゴンで再現するTerrainシステム。画面の奥行き情報を基に,LODによるポリゴン数の制御とテッセレータによって負荷を低減する
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GPUによるAI処理が変える次世代PCゲーム


 さて,Froblinsの最大の特徴であるAI制御については,「キャラクターそのもの」と「集団」の2段階で処理されている。Froblin達は互いにぶつからないよう進路を決めたり,働いたり,食事を摂ったり,休んだりといった行動を自分で決断するようにプログラムされている。また,デモでは,任意にFroblins達の敵となるゴーストを出現させられるのだが,ゴーストが現れた場合,Froblin達はゴーストから逃げるため,集団で進路を決めていく。その様子は下のムービーで示したとおりだ。少々見づらいが,地表に見える無数の矢印がFroblin達の進行方向になる。ゴーストの動きに合わせて矢印の向きがダイナミックに変化している点に注目してほしい。


 デモにおける行動パターンは単純そのものだが,Froblinsのように3000体ものキャラクターを制御する必要がなければ,さらに多くのパターンを実装できるはずだ。

Froblinsに採用された技術などを解説するNatalya Tatarchuk氏(3D Application Research Group, AMD)
画像集#017のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」
 Froblinsのデモでは,キャラクターごとに3200命令がAI処理に使われている。そのため,北米で開催されたATI Radeon HD 4800シリーズの技術説明会で実施されたFroblinsのデモでは,ATI Radeon HD 4870を2枚構成にし,一方をグラフィックス表現,もう一方をAI機能に振り当てることでFroblin達のダイナミックな制御を可能にした。同デモの解説を担当したAMDのNatalya Tatarchuk氏は,「現在のゲームにおいては,プレイヤー以外のキャラクターの動きが単調で,ゲームの楽しさを削いでしまうケースも少なくない。しかし,Froblinsで用いられるAI機能がゲームにもたらされれば,楽しさもよりいっそう膨らむはずだ」として,GPU処理能力をAIに活かしたゲーム開発の有効性を説く。

GPUによるFroblin達のAI制御。Froblin 1匹当たり3200命令もの複雑な処理を行うことで,意志を持つキャラクターとしてのFroblinを生み出している。個々のFroblin達が判断するパターンは少ないが,これは3000匹ものFroblinを制御することとのトレードオフだ
画像集#018のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」 画像集#019のサムネイル/1TFLOPSの演算能力でAI処理。ムービーでチェックするATI Radeon HD 4800用デモ「Froblins」

FroblinsでAIシミュレーションに必要とされる演算能力は0.9TFLOPSにも達するとのこと(左)。右はFroblinsのパフォーマンスをATI Radeon HD 3870と比較したもの。フレームレートで倍近い差があるという
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Froblinsこそが新しい業界標準のベンチマークだとするジョーク。むろん,DirectX 10.1やテッセレータがサポートされていないGeForce GTX 200シリーズは比較対象にならない
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 Froblinsのデモは,「プレイヤー以外のキャラクターを制御するため,CPUに頻繁にアクセスしなければならないのなら,ある程度のAI制御はGPU側でまかなってしまおう」というスタンスに見える。これは,GPU側で物理演算処理も行い,CPU側に緻密なAI制御を行なわせようとするNVIDIAとは逆のアプローチともいえるわけだ。2008年6月25日の記事でお伝えしているように,AMDはHavokの物理アクセラレーションを,まずCPU向けに最適化する方向で動いており,ゲーム物理はCPU側で処理されることになるからである。

 CPUを持つAMDと,物理演算処理エンジンを持つNVIDIAが,自社の土俵でGPUの並列処理性をアピールすることは自然な流れ。あとは,ゲームデベロッパがどちらの手法を取り入れるかによって,次世代ゲームの流れは決まるといっていいだろう。
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    ATI Radeon HD 4800

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