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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第447回「目指すは“みんなのプロレス”」
とはいえ,いくら雇われでもプロデューサーはプロデューサー。プロデューサーたるもの,ターゲット層というものを意識しなければならないわけでございます。今までは,私個人の意識でターゲット層というものを設定していたんだけども,団体のプロデューサーになった以上は団体のターゲット層を明確にして,そのうえで自分個人としてはどのような層に訴える活動をするかを定め直さねばならないと思っていてね。
プロレスラーはね,みんな思っているの。いい試合をしたい,と。実際にそういうコメントをする人が多いわ。その考え方自体は間違っていないと思う。ゲイムの場合,「いいゲイムを作りたい」って言っているようなもんだから。そりゃ,いいゲイムは作るべきよね。ただ,私,昔から疑問なのよね。じゃあ「いいゲイムって何?」,プロレスの場合,「いい試合って何?」って。
いや,受け手が感動するような商品,試合だというのは分かるの。そりゃまあそうでしょう。ただ,そのためにどういう準備をするか,もう少し言うと,どういう種類の感動を与えるかまで,きっちり考えてるんだろうか? と。あ,別にそこまで考えていないとしても,それが悪いってことではないの。それをうまくマネジメントする人がいれば。だって,いい試合をしてくれる人は必要だからね。
ただ,これからの私の立場からすると,そこらへんも考えなきゃいけないんだろうなって。個人の失敗じゃ済まないからね。なので,ターゲット層は定めないとな,と思っているわ。
で,今のところではあるけど,私はDDTプロレスを少年漫画雑誌のようなプロレス団体にしたいと思っていてね。あれって,購買層は少年だけではないじゃない。女性が楽しめるような漫画もあれば,おっさんしか分かんないだろそのギャグっていう漫画もある。王道ストーリーもあるし,スポ根だってある。そういう,それぞれが意図と癖とターゲットを持っているようなプロレス団体にしたいのよ。
「俺は○○が好き」「私は○○が好き」,それでいいじゃないかと。それを見ることができるのがDDTプロレスなんだぞ,と。私がそうだからかもしれないんだけど,例えばプロレス界からの評価を絶対視しなくていいんじゃないかとすら思ってるの。公平に言うと,プロレス界からの評価も必要ではあるわ。
ただ,そこだけの評価にこだわらなくてもいい。プロレスを知らない人が楽しめる要素があったっていい。目的は,多くの人に楽しんでもらってその対価としてお金を多く得ることだからね。だから,例えばゲイム好きの人にも楽しんでもらえるような要素があったっていい。それは,アニメ好きでもマンガ好きでもアイドル好きでもロック好きでも何でも構わない。そんな,プロレス好きな人以外からも面白いと思ってもらえるような団体にしたいのね。まあ,これはプロデューサーになるより前から思っていたことだけど。もちろん,王道マンガ――純粋なプロレスも含めてね。
だから,言ってしまえばターゲット層はすべての人,すなわち“みんな”なの。100%は難しいにしても,できるだけ広い層が引っかかる要素を残しておきたい。私がプロデューサーとして目指すは“みんなのプロレス”ってことね。
タイトルって大事だからね。入り口ですから。そこから勝負が始まると言っても過言じゃない。それほど,この“みんなのGOLF”というネーミングは素晴らしい。で,さらに何が凄いって,実際にゲイムの中身もこれでもかっていうほど“みんな”に向けて作られているって点。
このゲイムでヤることって,打つ方向を決めて,打つ強さを決めるためにボタン押すだけだからね。これだけでゴルフが楽しめる。細かく言えば,クラブを選んだりスピンをかけたりもできるんだけど。ヤることは簡単,でも奥は深い。で,何より楽しい。文字どおり,みんなが楽しめるゴルフゲイム。
ゴルフゲイムだったら大なり小なりそうでしょ? って思うじゃん。確かにそこは否定しない。ゴルフゲイムって基本は簡単ではあるわよね。でもね,みんゴルは,大なり小なりで言うと,大なのよ。みんなが楽しめる要素が。普通にさらっとプレイできるから気付きづらいけど,ナイスショットの場合はナイスショット感,ミスショットした場合はキャディさんが「ファー!!(危ない)」って叫ぶことでやっちまった感がすんなりと自覚できるのよ。
音だったり,演出だったりも含めて,ゴルフをしている気にさせてくれる。私,実際にゴルフをヤったことはないんだけどね。そんな私でも,ゴルフって楽しいなあって思えるのって凄いことだと思うの。スポーツの疑似体験ができて,しかもその楽しい部分を抽出している。まさにみんなのためのゴルフ。
誰に向けてそのコンテンツを提供しているのか? って,エンターテイメント産業にとっては避けては通れない命題なのね。もちろん,どなたも楽しんでもらいたいっていうのが本音ではあるわよ。でも,現実はなかなかそうもいかない。こっちを立てればあっちが立たないっていうケースだってあるわ。例えば10〜20代の男性をターゲットにしたコンテンツを目指した場合でも,ターゲット以外の層が楽しめる余地は必要だったりする。
つまりはメインターゲットではないイレギュラーターゲットも考慮しなきゃいけないのね。そんな中,ちゃんと“みんな”をターゲットにして,かつしっかりとみんなが楽しめる作りに仕上げられたコンテンツの,なんと素晴らしいことか。ホント,凄いわ。
なんならゴルフに興味のない人にも,オススメできるゲイムね。難しいこと考えずに楽しめるし,今作では自分で作ったキャラクターを育成する要素もあるし,これは意味が分からないんだけど釣りの要素もあるし。気軽に楽しむ系のゲイムでは最高峰と言っていいんじゃないかしらね。期待を裏切りはしないはずよ。
というわけで,今週は“みんな”に向けて作ることの難しさ,そしてターゲット層に対して実際に「あなたに向けてますよ」って伝えることの難しさ,そしてそれをきっちりやってのけているNew みんなのGOLFの凄さを思い知らされましたってお話でした。
いや,誰に向けてっていうのは本当に大切。せっかく誰かのために一生懸命ご飯を作っても,その人に味わってもらえないと意味が薄くなるじゃない。意味がないとまでは言わないけどね。ちゃんと食べてほしい人に食べてもらうための努力も必要なんだなと思った,そんな秋の始まりでした。
……ということを,一体誰に伝えようとしてこの連載で書いているのかしら,私。そんな「男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ」,また来週もよろしくお願いいたします。
今週のハマりゲイム
PlayStation 4:「New みんなのGOLF」
PlayStation Vita:「GOD WARS 〜時をこえて〜」
Nintendo Switch:「ARMS」
ニンテンドー3DS:「スナックワールド トレジャラーズ」
iOS:「クラッシュ・ロワイヤル」
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