連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第144回「『めいわくかん』じゃなかった……」
例えば,私は漠然と映画が好きなんだけど,詳しいわけではないの。だからDVDで映画を見るときなんかは,ついつい早送りしてしまうこともあるわ。その点,暗闇でスクリーンを見るか,もしくは目を閉じてラリホることしか許されない映画館で見るときのほうが,腹を括れて個人的には集中できるのよね。作品と向かい合う覚悟ができるというかなんというか。
さらに言うと,映画が好きとはいっても,今月はどの映画が封切られるか的なことにまでは興味がいかないの。結局好きだって言ったところで,私の映画に対する思いなんてこの程度なのよ。
ただ,ゲイムに関しては違うのよね。毎週どんなゲイムが発売されるかのチェックは怠らないし,ヤりたいゲイムは可能な限りヤる。詳しいわけではないけれども,それくらい好きなわけ。
何が言いたいかというと,エンターテイメントにおける「ファンの温度差」が,ここ最近,えらいことになり始めているんじゃないかなぁってこと。
簡単に事実だけ言うと,今はゲイムがなかなか売れない時代なわけですよ。なぜ売れないのか。そんなもんあたしゃ知らん。いくつかの理由は予想できるけど,当たってるかどうか分かんないし,それが当たっていたところで,私に出来ることなんかとくにない。ホラ,私はマーケティングの専門家じゃないんだから。
ただ,「気になるゲイムは自分の手が届く範囲内で買う」という,ゲイマーとしての義務は果たしているつもりよ。逆に言うと,ゲイムで消費している限りは,ゲイマーを名乗っていいんだと自分に言い聞かせているの。
だから私は毎週そこそこの数のゲイムを買ってるんだけど,残念ながら,ゲイム(とくにパッケージ販売のもの)にお金をかける人は,少なくなっていると思うのよ。
ただ,世の中の人がゲイムというものを嫌っているから売れていないのかというと,それはそうでもない。むしろ,概念としてのゲイムを好きな人は多いはずなのよ。滅多にお金をゲイムに費やさないだけで。その程度の“好き”っていうことね。
では,実際のところゲイムに対してコンスタントにお金を払う層はどこかというと,今だとアニメ好きであったり声優さん好きだったりの層だと思うわけ。事実,アニメ好きや声優さん好きの層をターゲットにした作りのゲイムが多いの。だいたい毎週1本以上は,そういうタイトルのゲイムが出ているわ。
別に私は,こういう風潮を否定したいわけじゃないの。世の中のエンターテイメントは全般的に,特定の層に向けて作るなり売るなりするのが普通になりつつあるから,きっと自然な流れだろうと思うのよ。
例えばAKB48もそうじゃない? あれって,好きな人とそうでない人の温度差が,もの凄く大きいのよ,きっと。お金を使う人はもの凄く使うし,そうでもない人はそうでもない。まあ,もともとアイドルはそういうものだと思うんだけどね。
ただ,AKB48の場合はメンバーが持つ潜在的な経済効果を数値化してしまうという荒技を使ったわけ。これって,世間の「好き熱」の温度差が大きいってことに対して,開き直った企画でもあると思うのよ。お金をもの凄く使う人に対して,君達の“好きの熱量”はこれぐらいの数字だよと,お金を使う層に向けたアプローチでありながら,同時にそれ自体をエンターテイメントとして仕立て上げることで,お金を使うほどでもない層さえも,同じ話題を提供することに成功したわけじゃない。これって凄いことだと思うのよね。
だって,結果的に「お金を使うほど好きな層」と「なんとなく好きだけど金までは使わない層」という,正反対とは言わないまでも,明確に質の異なる二つの層にアプローチができているわけだから。
ただ,こうした手段によって,お金を使う層と使わない層の差が,よりハッキリと浮き彫りになったとは思うわ。一昔前って,ここまでの層の差って,無かったわよね。それこそ,ヒット曲であれば,それを歌っている人のファンじゃなくてもCDを買ったりしていたんだけど,今はそういうわけでもない。
むしろ,どれだけファンを作って,そのファンに対していかに売るかという時代。早い話が囲い込み商法ね。ま,全部がそうだというわけでもないんだろうけど,あくまで傾向としてね。
ビックリしたわ。これはハッキリ言って,時代の流れに乗ってないの。どれくらいって,さっきまで私が時代について散々語ってたのがバカバカしくなるくらい。もちろん,いい意味で。少なくても私の中ではね。
というのも,媚びる要素がまるでないのよ。キャラクターもオリジナルだし,予備知識もまったく必要ない。ただプレイするだけ。基本はただ話を進めていくアドベンチャーなんだけど,プレイヤーにニンテンドー3DSの機能をフルに使わせようとする,作り手の気迫みたいなものを感じたわ。
個人的にはゲイムとしては物足りない部分も感じたんだけど,それを補って余りある「なんとなく先に進んでしまう感」に溢れているのね。私のようなすれっからしのゲイマーは“ゲイムでしか味わえない感動”みたいなものをゲイムに求めがちなんだけど,そういった気負いはゲイムからまるで伝わって来ないの。
ただ単純かつ独特に,ニンテンドー3DSって,こういうことができるんだよ? というプレゼンをされてるような,それでいて,普通に怖くてのめり込めるという,不思議な手触りのゲイムなのよ。で,最終的に「これってニンテンドー3DSでしか味わえない遊びだよね」って思わされたわ。
これがニンテンドー3DSのローンチタイトルとして発売されていたら,もう少しニンテンドー3DSのポテンシャルに,私を含めた多くのゲイマーが気付けたんじゃないかしら。そう思うと残念でならないわ。これこそ,滅多にゲイムを買わない層の人に,買ってプレイしてもらいたいゲイムね。そして,ゲイマーを自認している人がアホみたいにハマるってことはないだろうけど,ゲイマーとして押さえておきたいタイトルだとも思うわ。
ちなみに,私はこのゲイムのこと,「めいわくかん」って読んでたんだけど,どうやら正しい読み方は「なぞわくやかた」らしいわ。本当に心からどうでもいい情報だけども,もしプレイしたくなってゲイムショップ行って「めいわくかんください」って言ったら,店員さんに「ぷぷ」って思われるか,もしくはしれっと「なぞわくやかたですね」って修正されて恥ずかしい時間を過ごすことになるか,最悪,店員さんも読めなかったら「めいわくかんの在庫はありません」という誰にとっても得しない事態に陥るか……といった可能性があるので,もう二度と私が見舞われたような,恥ずかしく悲しい悲劇が繰り返されないよう,アンタ達にも教えておくわね。うわーん!
という感じで今週は謎惑館について,っていうかむしろ謎惑館をいい感じで紹介するために垂れた長い講釈をメインにお届けしたわけだけれども。「自分が今好きなもの」以外にも,きっとまだ見ぬ「自分が好きになれそうなもの」はあるんだろうなあということに,これを書きながら気が付いたわ。
だから,現時点で自分が好きではないものに対しても否定するのではなく,体験してみるというのは大事なのかもしれないわね。まあ私としては職業柄,一応「プロレス」を推してはみるけども……本音としては,プロレスは気が乗ればでいいや。
それより前に,まずは自分の守備範囲外のジャンルのゲイムにも挑戦して,もし面白ければまた違うジャンルや今度はゲイム以外の気になるものに手を出してみる。そうやってお互い,人生を楽しめればいいね。っていう平和なケツ論で今週はおさらば。来週は「ファミリーフィッシング」について。
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「ワールドサッカー ウイニングイレブン2011」
PSP:「J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!7 EURO PLUS」
ニンテンドー3DS:「謎惑館 〜音の間に間に〜」
Wii:「ファミリーフィッシング」
Xbox 360:ええじゃないか
- 関連タイトル:
謎惑館 〜音の間に間に〜
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