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AMD,“Phenom世代”のHT3.0対応チップセット「AMD 7」発表――Reuven Soraya氏に聞くSpiderプラットフォームの意義
COMPUTEX TAIPEI 2007の時点ではRD790=AMD 790Xと紹介されていたAMD 7シリーズだが,正式発表に当たって,3モデルが用意されている。具体的なラインナップは以下のとおり。
- AMD 790FX:複数のGPUによるマルチGPUスケーリングを可能にする「CrossFire X」サポートの最上位
- AMD 790X:従来と同様の,2枚のグラフィックスカードによるCrossFireをサポート
- AMD 770:シングルカード構成のみのサポートとなるエントリー向け
AMD 7シリーズは,Phenom対応チップセットとして,搭載マザーボードレベルで変更が加えられている。その最大の特徴は,Phenomが採用する「AM2+」CPUパッケージへの対応だ。
なお,3製品ともHyperTranspot 3.0とPCI Express 2.0対応。製造に65nmプロセスを利用することで,最上位モデルのAMD 790FXでも10Wという,非常に低い消費電力が一つのウリとなっている。
AMD 7シリーズは,製造技術に65nmプロセスを採用することでAMD 790FXでも最大消費電力を10W以下に抑えている。アイドル時の消費電力はなんと3W前後だ |
HyperTransport 3.0に対応するとともに,次世代CPUが採用する新パッケージもサポート可能な,AM2+環境を支えるチップセット。それがAMD 7シリーズだ |
Spiderプラットフォーム
=Phenom+AMD 7+ATI Radeon HD 3800
AMDのGPUであるATI Radeon HDシリーズは,8192×8192ピクセルという巨大なテクスチャデータを扱えるが,データ帯域幅が倍になったPCI Express 2.0の登場により,このような高精細データでより高速なグラフィックス処理が可能になる。
冒頭で説明したとおり,Spiderプラットフォームでは最大4枚構成のマルチグラフィックス環境「CrossFire X」をサポートするが,対応できたのは,PCI Express 2.0やDirectX 10.1世代のGPUだけではなく,HyperTransport 3.0によってCPUとの接続インタフェースを高速化できた部分によるところが大きいという。
CrossFire Xについて見ていくと,AMD 790FXでは,2本のPCI Express 2.0 x16インタフェースを,スイッチチップを用いて16レーン×1+8レーン×2,あるいは8レーン×4に分けることで,2/3/4枚のグラフィックスカードによるCrossFire構成を実現する(表)。ちなみに,PCI Express 2.0の転送速度は従来比2倍なので,8レーン×4構成時でも,PCI Express 1.1 x16 ×4相当の転送速度を確保できることになる。
さらにSoraya氏は,「(CrossFire Xを実現する)すべてのPCI Expressインタフェースが,『CPUとHyperTranspot 3.0で結ばれる』ノースブリッジ側に実装されている。これが4枚構成のCrossFire Xを実現するうえで役立っている」と指摘していた。また,PhenomがDDR2-1066をサポートし,メモリバス帯域幅が拡大したのも,CrossFire Xのパフォーマンス向上には寄与するとのことだ。
マザーボードを問わずパフォーマンス調整できる
「AMD OverDrive」
AMDでは,フラッグシップチップセットとなるAMD 790FX搭載マザーボードでのみ利用できるパフォーマンスチューニングツールとして「AMD OverDrive」を提供する予定だ。
AMD OverDriveは,ATI Radeonでお馴染みのパフォーマンスツール「ATI OverDrive」のマザーボード版という位置づけのソフトウェアだ。AMD OverDriveでは,CPUのコア電圧や動作クロック,HyperTransportクロックや各種電圧,メモリクロックなどをWindows XP/Vistaから変更可能だ。また,ATI Radeon HD 3800シリーズなど,AMD製GPUを利用している場合,GPUのチューニングもAMD OverDriveから行えるようになる。
Novice ModeとAuto Clockで可能なのは,最大10%のオーバークロック。一方,Advanced Modeでは,HyperTransportインタフェースのクロックや電圧,一部のメモリレイテンシなど,BIOSを介さずに変更できる設定はすべてAMD OverDrive(=Windows上)で行えるようになっている。もちろん,「倍率制限のある一般的なCPUでは規定倍率以上に倍率を設定できない」などといった制限は存在するものの,比較的システムクラッシュを招いてしまいやすいようなものまで,項目は非常に豊富。オーバークロックに慣れた上級ユーザー向けの設定といえるだろう。
CnQ 2.0有効時に,特定のコアにだけ負荷をかけると,そのコアだけフルスピードで動作するようになる。そんな状態もAMD OverDriveから確認可能だ |
AMD OverDriveはWindows Vista専用ツール……ではなく,Windows XP環境でも利用できる |
もっとも,チップセットやGPU,無線LANコントローラなどで,幅広い選択肢を提示できるのがAMDプラットフォームのウリだとして,「Better by Design」を提唱していたのが2007年初頭のこと。「競合(=Intel)はハードウェアの仕様を決め打っている」と批判していたアレはいったい何だったのかという気も,しないでもない。
しかし,AMD 790FXは,CPUとグラフィックスを持つAMDの強みを活かし,Phenomのパフォーマンスを最大限に引き出せるように設計されたチップセットということはできそうだ。Spiderプラットフォームは,CPUとチップセット,GPUを“AMD純正”で固めたときにこそ,その威力を発揮する存在とも換言できよう。
(C)2007 Advanced Micro Devices, Inc.