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デュアルGPU搭載グラフィックスカードはニッチから主流へ
だが,そんな状況ということもあってか,グラフィックスカードベンダーは競合との差別化を図るため,さまざまな工夫を凝らしている。なかでもデュアルGPU(グラフィックスチップ)構成のグラフィックスカードと,ヒートパイプや液冷ユニットを使った静音グラフィックスカードの充実が目立った。
■RV6xxのデュアルGPUカードに向けて準備中のAMD陣営
■ハイエンドとミドルレンジの間を埋める製品に
ところで,旧ATI Technologiesが「Gemini」の開発コードネームでデュアルGPUソリューションを開発していたのを憶えているだろうか。当時同社は,シングルチップ構成でも(当時の)ライバルとなる「GeForce 7950 GX2」などと戦えると判断し,計画そのものが中止されたという歴史的経緯がある。
しかし,その流れそのものは止まらず,次世代GPUに受け継がれた。そう,R600のアーキテクチャを採用するミドルレンジ/ローエンド向けGPUである「RV630」「RV610」(開発コードネーム)シリーズには,デュアルGPU構成をサポートする機能があらかじめ実装されているというのだ。
SapphireもGeCUBEも,この件については堅く口を閉ざすが,ほかのグラフィックスカードベンダー関係者は「両社がこのタイミングでデュアルGPUカードをアピールするのは,後に控えるRV630などのデュアルGPUカードに対する布石」と指摘する。同関係者によれば,RV630やRV610は現行のATI Radeonとピン互換性が確保されており,基板デザインを共通化できるという。今のうちに,デザインを終えておいたということなのだろう。実際,SapphireやGeCUBE以外にも,デュアルGPUカードの開発を進めているベンダーは存在するようだ。
ではどうするか。グラフィックスカードベンダー関係者は,AMDのRV630やRV610,NVIDIAの「G84」「G86」(開発コードネーム)では“モバイルGPUデザイン”を採用することで消費電力を抑えているという。
これは結果として,ミドルレンジ/ローエンド製品とハイエンド製品とのパフォーマンスギャップを広げてしまう。そこで,比較的消費電力の低いこれらミドルレンジ/ローエンドGPUを2個用いることで,ハイエンドGPUとの間を埋める製品を実現できる――これがグラフィックスカードベンダーの思惑であるようだ。
一部のベンダーは,次世代GPUを2個搭載したカードを2007年6月のIT展示会「COMPUTEX TAIPEI 2007」で公開する計画を持っていると,筆者の取材に対して答えた。なかにはNVIDIAの「G84」=「GeForce 8600」によるデュアルGPUカードを計画しているベンダーもあるようで,デュアルGPUカードは,今後のグラフィックスカード市場において成功の鍵を握るトレンドになりそうだ。
■ハイエンドグラフィックスカードを
■いかにして“黙らせる”かが重要に
一方,消費電力がひたすらに上がっていくハイエンドグラフィックスカードに対応した静音クーリングソリューションの開発も進んでいる。Thermaltakeは,グラフィックスカードのデザインに応じて“液冷化”できるグラフィックスカードクーラーシリーズを展開。同社の「Tide Water」シリーズと組み合わせて利用できる。「Tide Water」といえば,Sapphire製の「ATI Radeon X1950 XTX」搭載カード「TOXIC X1950 XTX」やASUSTeK Computer製の「GeForce 8800 GTX」搭載カード「EN8800GTX AquaTank」での採用実績があるユニットだ。
先ほど説明したThermaltakeのほかにも,Zalman TechやArctic Cooling製クーラーを採用する特別モデルは数多く展示されており,グラフィックスカードベンダーと冷却ソリューションベンダーの協業体制は,ますます強化されていく傾向にある。なかにはBIOSTAR MICROTECHのように,ハイエンドモデルについてはサードパーティ製クーラーへの換装容認(=クーラーを換装しても保証を継続)を検討するところも出始めており,ひょっとすると近い将来,グラフィックスカードの冷却システムをユーザー自身が交換するのが当たり前になる時代がやってくるのかもしれない。(ライター:本間 文)
- 関連タイトル:
ATI Radeon HD 2600
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(C)2007 Advanced Micro Devices, Inc.
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