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SteelSeriesの偉い人,Kim Rom氏に聞く新型マウス「Xai」「Kinzu」――キーワードは「パーソナライゼーション」
なお,先に速報でお伝えしているが,各製品の予想実売価格は以下のとおりだ。また,製品概要については,第一報をお伝えした7月24日の記事を参考にしてほしい。
- Xai(レーザーセンサー搭載ワイヤードマウス):1万980円前後
- Kinzu(光学センサー搭載ワイヤードマウス):3980円前後
- 9HD(プラスチック系マウスパッド):4980円前後
- 4HD(プラスチック系マウスパッド):2980円前後
「才」の名を冠した「世界で最もパワフルなマウス」
〜SteelSeries Xai Laser
最もパワフルだとする根拠として氏が挙げたのが,10.8MPixels/sに達するというレーザーセンサーのイメージ処理能力だ。
「なぜ戻ったのかというと,戻ることができるようになったからだ」(Rom氏)。30×30ピクセルの画面を,1秒間に1万2000回撮影でき,しかも,トラッキング速度は150IPS(Inches Per Second),最大加速度は30G。今までのマウスでは実現できなかったパフォーマンスを実現できるようになったため,Xaiでは一般的な面積相関法を採用したというのが,Rom氏の主張である。
一方でRom氏は,こうも述べる。
「一般的なCounter-Strikeのプロゲーマーは,フレームレート9000fps程度のマウスを使っている。それから,トラッキング速度の150IPSというのは,要するに秒間3.8mで,こんなスピードで動かすゲーマーには出会ったことがない。せいぜい100IPSだ。また,最大加速度は,戦闘機乗りのエース級が15Gに耐えられる程度だ」
つまり,Xaiのスペックは,SteelSeriesの想定するゲーマーのスペックを大きく超えるわけだ。この理由についてRom氏は「悲しいことだが」と断ってから,マウスパッドを使わないゲーマーが存在するためだと説明した。ゲーム用途ではサーフェスの能力が低すぎる机の上でも高いスペックを実現するために,高いスペックを実現したのだという。
●500“1”CPIの理由
「DPI(Dots Per Inch)は,(マウス市場において)マーケティング的な理由から,不正確な使われ方をしている。Windowsのマウス設定がデフォルトのとき,マウスを1インチ動かしたとき,画面上で何インチカーソルが動くのかを規定するためだけのものであるはずなのに,『5000DPIはすごい』とか,『6000DPIはもっとすごい』とかをやっているんだ」
言ってRom氏は,右手を握って,中指を立てた。「5001CPIの『1』は,コレなんだよ(笑) ほかにもっと重要なスペックがあるのに,そんなバカげたことをやっていることに対して,ね」
●徹底的に最適化を図ったデザイン
Rom氏いわく,Xaiの開発に3年かかった理由は二つ。センサーの技術がSteelSeriesの期待するレベルに引き上げられるのを待っていたというのと,「シェイプ」,つまり形状の最適化にも,相当な時間を要したためだという。
SteelSeriesによると,プロゲーマーの持ち方は「Fingertip」(つまみ持ち)と「Palm」(かぶせ持ち),斜に構えて持つ「Swipe」の3種類に大別できる。これに,手のサイズや筋肉の付き方,どう座るかが影響してくるが,どのような握り方,どのようなプレイスタイルであっても,不満なく使えるようにする点に,最大限の配慮を行ったとのことだ。
「すべての部品を正しい場所に置くというのは,やろうとさえ思えば誰でもできることかもしれないが,量産したときに,それぞれがブレのない,正しい重量であるよう,パーツメーカーに辛抱強く依頼し,調整を行ってきた。これは,我々が(マーケティングではなく)エンジニアの会社だからできたことだ。妥協してしまうと,そこで3年間がムダになってしまうからね」
例えば底部後方のカットイン。これは,ローセンシプレイヤーがマウスを切り返すに当たってマウスの“尻”を持ち上げるとき,最小限の動作で済むようにするためとのこと。
サイドの窪みも,個人的に気に入ったが,相当なトライアンドエラーの賜物のようだ。「1mmの違いがとても大きな体感の差になるので,大変。ゲーマーが判定してくれないと何も決まらないから,モックアップを持ってゲーマーのところを回るだけで,航空会社3社のマイルが溜まって,そこかしこで特別扱いを受けられるようになったよ(笑)」
そのスイッチ,「ずらりと並べて,目隠ししたプロゲーマーに押してもらって,得られたデータと,SteelSeries内部の検証結果を摺り合わせ」(Rom氏)る過程を経て決定したとのこと。現時点において,スイッチの製造メーカーは非公開だが,Ikariのそれと似た印象だった点を質問してみたところ,「プロゲーマーの選ぶ上位3スイッチに,Ikariのスイッチは入っていた」とのことなので,同じか,似たようなフィーリングのものという理解で,そう間違っていないような気もする。
●キーワードは「パーソナライゼーション」
Xaiには,Ikariから引き継いでの採用となるもの,そして完全新作となる独自機能がいくつか用意されている。それを,Rom氏の解説を基にまとめてみよう。なお,(新)と付けたものが,Xaiでの新機能だ。
SteelSeries ExactSens:
「FPSをプレイするに当たって最初にやることは,センシティビティの設定だ。ただし,インゲームでセンシを設定してしまうと,マウスの正確性を損ねる。例えばCounter-Strikeで2.4を設定すると,Windowsデスクトップで1の移動量が,ゲーム上では2.4倍になってしまう――2.4ピクセル単位の動きになってしまうわけだ。
SteelSeriesでは,これを『ピクセルスキッピング』と呼んでいるが,インゲームの設定を1にして,マウス側で1CPI単位の設定を行えば,100%ハードウェアベースの設定を行えるので,ピクセルスキッピングのない操作が可能になる」(Rom氏)
SteelSeries Freemove:
マウスの「直線補正度合い」を設定する機能。
「ゲーム市場にあるマウスの65%は,『アングルスナップ』(=直線補正)を行っている。Photoshopなどで試すと分かるが,人間の腕はそこまで正確でないはずなのに,“ありえない”直線が引けてしまう。なぜこういうことになるかというと,ゲーマー向けを謳うほかのマウスは,別の用途に向けて作られたセンサーを流用しているに過ぎないからだ。
ゲームにおいて,マウスを上下左右に激しく動かし,的確に敵の頭を狙うとき,アングルスナップは必要ない」(Rom氏)
SteelSeries ExactAim(新):
センサーがPCに送るデータを,どこまで“生”のままにするか設定する機能で,これにより,マウスカーソルがぴくぴく動いたり,勝手に移動していったりする不具合の解消を図ることができるという。
「センサーは,マウスの停止中も“写真”を撮影している。そのとき,センサーに理解できないデータがあると,センサーが震えたり,動いたりしてしまうのだ。こういう現象を我々は『ジッタ』と呼んでいるが,センサーに対応していないマウスパッドや机でよく生じがちなジッタを抑えるのが,ExactAimだ。
ジッタを抑えるためには,撮影したデータにスムージングをかければいいのだが,100%適用してしまうと,センサーの正確性に負の影響が出る。『○○という設定が正しい』からそれを適用するのではなく,『スムージングの程度をどうするか』という選択肢を,ユーザーに与えるものとなる」(Rom氏)
SteelSeries ExactRate(新):
マウスのレポートレートを125〜1000Hzの範囲で,1Hz刻みで設定する機能。
「ゲームの画面を滑らかに表示するために必要なのは,グラフィックスカードのフレームレートと,ディスプレイのリフレッシュレートと,マウスのレポートレートだ。例えばここに,75Hzのディスプレイ,1000Hzのマウスがあったとすると,75Hzというタイミングの間に,1000Hzを入れ込んで同期させなければならないが,1000は75の倍数ではないので,どこかで必ずズレが生じる。これが,180度のターンを行おうとしたときなどに,どうしても画面がスムーズに流れない理由だ」(Rom氏)
氏によると,ExactRateは,その同期ズレを補正しながら,レポートレートを設定するための機能とのこと。60Hzのディスプレイを使っているなら,60の倍数でレポートレートを設定すべきというのがSteelSeriesの主張である。「ほかの会社とは,同じような機能でも,開発哲学がまったく異なることを証明できるのが,この機能」と,氏は胸を張る。
「どんな持ち方でも対応でき,どんなセンサーの挙動でもカスタマイズできる。つまり,MicrosoftやLogitech,Razer製マウスを,一つで全部エミュレートできてしまう。それほどまでにXaiはパワフルだ」(Rom氏)。カスタマイズした設定は,プロファイルとして最大5個を本体内蔵のフラッシュメモリに保存して持ち運べ,専用ドライバなしで利用できるため,「トーナメントに参加するプレイヤーに与えられる時間はたいてい15分。そのうち,マウスの設定にかかっていた5分を,別のことに使えるようになる」とのことだった。
ちなみに,センサーユニットは「現時点では非公開。センサー自体は,いずれほかのメーカーも使えるようになるので,センサーを買ってきて組み込むのは,すごく簡単だろう」とRom氏。「ただし,パーソナライゼーションの機能を持つのは,SteelSeriesだけだ。ほかのメーカーは,(同じセンサーの技術に,もっともらしく)“なんちゃらTM”と付けるけども,SteelSeriesはそんなことはしない。面倒だし,センサーメーカーと共同開発なので,そもそも他社はこの機能を使えないからね」
戦略的な価格で「本当のゲーム用マウス」を訴求する
〜SteelSeries Kinzu Optical
第一報でお伝えしているように,Kinzuの外観はXaiと同じ。ただし,本体の大きさはXaiの93%と若干小さく,サイドボタンなし,センサーユニットは光学タイプと,仕様はずいぶんと異なる。そして何より,Xaiの半額以下,4000円程度という予想実売価格のインパクトが大きい。
「2週間前にストックホルムで,Fnaticのメンバー5人に,最終テスト用のKinzuを渡したのだけれども,そのうち3人が,その場でメインのマウスをKinzuに切り替えたんだ。そして彼らはそのまま韓国のe-Stars SEOUL 2009に出て,優勝した。(たった1週間で慣れ,しかも大きな大会で最高の成績を残すなんてことは)ほかのマウスでは考えられない。それだけ,完璧に近いということなんだ」(Rom氏)
Kinzu(左)とXai(右)の違い。大きさの違いは7%とされるが,横に並べてみるとけっこう異なる |
Kinzuではサイドボタンが省略されている。窪み方は基本的にXaiと同じ |
ちなみにサイドボタンを省略した理由についてRom氏は「Xaiとはちょっと違うことをしたかったというのがある」と説明する。手の小さな人はもちろん,完全にマウスを包み込むようにしてプレイする人や,「Warcraft」や「StarCraft」のプレイヤーが想定されており,「包み込んでプレイする場合は,そもそもサイドボタンは押せないし,WarcraftやStarCraftのプレイヤーは,そもそも2ボタンしか使わない」(同氏)ため,サイドボタンは不要,ということのようだ。
※Kinzuは最大三つのプロファイルを切り替えて利用できるが,そのデフォルト設定は以下のとおり。
・プロファイル1:400/800CPI,500Hz
・プロファイル2:400/3200CPI,1000Hz
・プロファイル3:左利き用のプロファイル1設定。ボタン配置が左右逆になっている)
「Xaiと完璧なセット」
〜SteelSeries 9HD/4HD
両製品にサイズ以外の違いはないため,以下,9HDを代表して紹介するが,9HDは,4層構造のプラスチック系パッドになっている。Rom氏の解説を基に,それぞれ紹介していきたい。
- 第1層:透明のプラスチックで,非常に細かな突起がある。凹凸の度合い設定に時間がかかった
- 第2層:Xaiの「次世代のセンサー」で完璧に動くことを念頭にして開発した層。ロゴのある面だ。反射性の非常に高いプラスチックになっている
- 第3層:形状を安定させる硬質プラスチック層
- 第4層:バスケットボールの表面のような構造。今後のスタンダードになる。少し力を入れて押してもまったく動かないグリップ力があるとして,実演してくれた。確かに滑りにくい
クセのなさがとにかく魅力的
これは期待大だ
やや余談気味に続けると,個人的には,愛用している「SteelSeries SP」の後継というか,キメが細かくなったような印象の9HD/4HDも気になるところ。9月中旬予定とされる市場投入が,非常に楽しみになってきた。
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