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[GDC07#03]“暴れ馬”トリップ・ホーキンスが基調講演に登場
そう,Trip Hawkins(トリップ・ホーキンス)氏が,久々にゲーム開発者達の前に姿を見せたのだ。
ホーキンス氏は1970年代,ハーバード大学から「ゲーム理論」という論文で修士号を得て卒業,さらにスタンフォード大学でビジネスの博士号を取得し,当時日の出の勢いだったApple Computerで戦略/マーケティングを担当していた。
1982年には独立を果たし,Electronic Artsの創設メンバーの一人として社長に就任。Electronic Artsが業界の巨人としての地位を不動にしつつあった1991年に再び独立し,“初のCD-ROM搭載ゲーム機”である3DOをThe 3DO Companyから送り出して,ゲーム史に名を刻んだ。
だが3DOは,1993年のリリース当時に700ドルという価格設定が災いし,翌年登場したプレイステーションに市場を奪われることになる。その後,The 3DO Companyはソフトウェア販売会社としての生き残りに賭けるが,売り上げランキングの上位に浮上するほどの成功作を生み出すこともなく,2003年に倒産してしまった。
ホーキンス氏はその後,南カリフォルニアへと舞台を移し,携帯電話用のゲームに特化したDigital Chocolateを設立。今回のGDCには,「モバイル・サミット」の基調講演スピーカーとして登場することになった。
3DOをプロモートしていた頃から,ホーキンス氏は任天堂やセガのビジネスモデルを攻撃するなどの激しい言動で,“業界のムスタング”(暴れ馬)という異名を持っていたのだが,今回の講演「Making Mobile Games The Ultimate Games Platform」(モバイルゲームを究極のゲーム用プラットフォームにしよう)でも,その過激さは相変わらずであった。
映画や音楽産業などのIP(知的財産)所有者達に対して,「(彼らが)版権を握り,我々からライセンス料を徴収している間は,この業界は大きく成長できない。この時代に50%近いライセンス料など馬鹿げているし,その結果,消費者の手元には出来の悪いソフトウェアしか届かないということになる」と,単価あたりの儲けが少ないモバイルゲーム市場の現状を嘆く。古巣のElectronic Artsにも触れ,「テトリスのようなモバイルゲームを販売してお茶を濁しているが,モバイルゲーム機としての携帯電話の特性を利用するわけでもなく,消費者は損をしている」と手厳しい。
その一方,モバイルゲーム機の未来には相当な期待を抱いている様子で,「車で通勤したり,家でテレビを観たり,大都市に住む現代人はいつも一人ぼっち。携帯機は,そんな我々がつながり合う,ソーシャルネットワークとしての利用価値がある新技術だ。その価値は非常に大きく,消費者達は必ずお金を使ってくれる。“ソーシャル・コンピューティング”の時代が,ようやくやってきた」と熱く語り,今回の基調講演を締めくくった。(ライター:奥谷海人)
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